Blue Roses Garden > アキの話 > 第四話 ユカ

ユカ

みなさんこんにちは、アキです。 アキは今大ピンチです。

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 金曜日のお昼休み、昼ご飯を食べ終わった僕は教室で同級生たちとおしゃべりをしていた。 あのゲームはどうだとか、昨日のテレビ番組がどうだったとか、時間つぶしのとりとめも無い話題だ。

 開け放されていた扉のほうから足音が近づいてくる。 背後になっていて見えないけど、僕は特に気にしていなかった。 しかし、僕の前にいた同級生が急に口をつぐんで僕の背後を注視した。 何の気なしに振り向いた僕は、そこに場違いな人物を目にする。

 彼女が着ているのはもちろんうちの学校の制服なのだが、ブレザーのネクタイの色が三年生のもの。 つまり僕たちから見ると上級生だ。 ショートの髪は少し茶色がかり、肌は健康的に焼けている。 少しきつめの目が印象的だ。

「あなたが白河晶君?」

 その先輩が僕に向かって聞いてくる。僕は反射的に答えていた。

「あ、はい、そうですけど」

「3-Aの山瀬祐香です。あなたに大事なお話があるの。少し付き合ってもらえる?」

「……あの、ここではいけないんですか?」

「ええ。ちょっと」

 四方八方から好奇の視線が飛んでくる中、僕と山瀬先輩は教室を出た。 先に進む先輩の後を黙ってついて行くと、先輩は屋上に上がる階段を上がっていく。 屋上に出るための扉は施錠されているはずだから、目的はその手前の踊り場部分だろう。

 扉の前にくると、先輩はポケットからキーを取り出して、屋上に出る扉を開けた。 あっけにとられている僕に手招きをすると、さっさと外に出て行く。 屋上に出ると、外から施錠しなおした。

「……話というのはね、私の弟の事なんだけど」

 弟……、山瀬……。もしかして祐樹君のお姉さんかな?

「あの、もしかして、祐樹君の?」

「ええ。あなたには『ユキちゃんの』と言ったほうがいいかしらね」

 心臓が止まったかと思った。実際呼吸をするのを10秒は忘れていた。 僕はなんと言っていいか分からず、呆然と先輩の顔を見つめていた。

「……はあ、否定しないのね。じゃあ祐樹が言ったことは全部本当なのね」

「祐樹君は、何を……?」

「いきなり女物の下着で迫ってくるから何事かと思ったわ。 いじめでもされてどうにかなったかと、最初は真剣に心配したわよ」

「……げ。冗談だったのに……」

「祐樹は思いっきり真に受けてたわね」

「すいません……」

「ああ、謝らなくてもいいのよ。ただちょっとどうしても話しておきたい事があるの。 今日放課後、家に来て貰えないかしら」

「……はい」

 教室に戻った僕は質問攻めにあったけど、何をどう受け答えしたか覚えてなかった。 午後の授業も上の空で過ごす。

 放課後に正門で待っていると、少し遅れて山瀬先輩が来た。

「ごめんなさい。部活を休ませて貰うのに手間取っちゃって」

「部活はどちらを?」

「水泳よ。あなたは祐樹と同じ文芸部だっけ?」

「はい」

「男子で文芸部とはね」

 先輩がくすっと笑う。女の子っぽいと思われてるんだろうなあ。

 20分ほど歩いて、僕の家とは駅をはさんで反対側の住宅地に入る。 少し奥まった位置にある一戸建てが先輩の家だった。

「ただいま。さ、あがって」

「お邪魔します……」

 先輩に促されて家に上がる。奥から誰かが出てくる足音がした。

「お帰りなさいませ、お姉さ……!」

 聞き覚えのある声に顔を上げた僕は、とんでもないものを見て言葉を失った。

 祐樹君がメイドさんの格好でそこに立っていた。 ミニスカートにパフスリーブのいわゆるフレンチメイドではなく、 かっちりしたファッションのビクトリアンゴシックメイドの衣装だ。 肌が真っ白な上に髪や瞳の色も薄い祐樹君が着ると、とてもよく似合っている。

 祐樹君はこっちを見て硬直している。 どうやら僕がいるとは思ってなかったみたいだ。

「ユキ、コーヒー淹れてきて頂戴。あなたの分もね。私の部屋に持ってきて」

「っ! はい、お姉さま。ただいま」

 祐樹君がキッチンに足早に姿を消した。その背中を呆然と見送る。 ……お姉さま?

「こっちよ」

 先輩が僕を促して階段を上がる。どうやら二階に部屋があるらしい。 僕は先輩を追って階段を上がった。

「はいって」

 先輩の部屋に入る。フローリングの床にミニカーペットが敷いてあり、 その中心に丸いローテーブルが置かれている。 窓よりの壁際にベッド、反対の壁沿いに箪笥と本棚という配置になっている。

「あの、先輩、さっきの祐樹君の格好は……」

「ユキって呼んであげて。あなたがつけた名前でしょう?」

「……ええっと、さっきのユキちゃんの格好は……」

「よく似合ってたでしょ? あれ結構高かったのよ」

「いえ、あの、そういう事ではなくて、いえ似合ってましたけど」

「あなたから貰ったのは下着とリボンだけだったのよね。 だから私がいろいろ買ってあげたわけよ」

「先輩が、ユキちゃんに買ってあげたんですか?」

「ええ。他にもいろいろと」

「……あの、僕にお話って言うのは、ユキちゃんのことなんですよね?」

「そうよ。……ああ、もしかして非難されるんじゃないかと思ってた?」

「はい……」

「そんなんじゃないから安心して。むしろお礼したいの。 あとちょっとお願いしたいこともあるわね」

「え?」

 コンコン。

「失礼します、お姉さま」

 ちょうどそこで祐樹君、いや、ユキちゃんがトレイを持って入ってきた。 トレイにはカップが三つと砂糖とクリームのポット、クッキーとチョコを盛ったお皿が載っている。 ユキちゃんがそれをテーブルの上に並べた。

「ま、一服して頂戴。ユキ、あなたも座って」

「いただきます」

「はい……」

 ユキちゃんも僕と先輩の間に座る。三人でコの字を描く形になった。

 ユキちゃんは俯いたままこちらをちらちらと見ている。 視線を返すと、俯いて目を合わせようとしない。 ……恥ずかしがってるのかな?

 コーヒーを半分ほど飲むと、僕は山瀬先輩に向き直った。

「あの、それで先輩、僕にお話って言うのは……」

 そこまで言ったところで、急に強烈な眠気が襲ってきた。 視界が暗転する。慌てて頭を振ろうとすると、そのまま身体のバランスが崩れた。 誰かが僕の身体を受け止める。

 ユキちゃん? と思ったところで意識が完全に途絶えた。

●  ●  ●

 誰かの悲鳴が聞こえる。 なんだか聞き覚えがある声のような? と、思ったところで目が覚めた。

 一瞬夢でも見てたのかと思ったけど、そうじゃなった。 意識がはっきりしても悲鳴は聞こえてる。 よく聞くと悲鳴じゃなくて、それはよがり声だった。

「あんっ、お姉さま、お姉さま、もっと、ユキの、奥までえぐってえ!」

「ああもう、ユキは、変態ね! ケツにチンポつっこまれて、そんなに、よがるなんて!」

 視界がはっきりすると、目の前でメイドさんが女の人に犯されてました。 後背位の姿勢で、ユキちゃんが山瀬先輩に犯されて……!?

「ユキちゃん!」

 眠気が完全に吹っ飛ぶ。同時に自分が動けないことに気がついた。 右手首と右足首、左手首と左足首が皮製の手錠でつながれている。 服は脱がされていて、黒い皮のコルセットとガーターストッキングをつけさせられている。 パンツのたぐいはなく、股間は剥き出しだ。 その格好で箪笥の前に集められたクッションに寄りかかっていた。

「あら、ユキ、アキちゃんがお目覚めみたいよ」

「!」

 ユキちゃんがこっちを見る。

「いや、アキ先輩、見ないで! お姉さま、許して!」

「ほら、見られながらいっちゃいなさい!」

 山瀬先輩がいっそう激しく腰を打ちつける。 ユキちゃんは男の子とは思えない甲高い悲鳴を上げると、仰け反って痙攣した。 お尻を上げたまま、ベッドに崩れ落ちる。

 ユキちゃんの絶頂が収まるのを待って、山瀬先輩がペニスを引き抜いた。 一瞬本物かと思ったけど、よく見ればそれはいわゆるペニスバンド、ストラップオン・ディルドーだった。 色や形が本物のペニスにそっくりなタイプ。かなり大きいサイズだ。

「や、山瀬先輩」

「お姉さまって呼んで頂戴。ユカ様でもいいわよ」

「え、ええっと」

「さっきお礼がしたいって言ったわよね?」

「え、あ、はい」

「私ね、男には興味が無いの」

「え? でも、今……」

「うん。ユキは別。あの子普段でも女の子っぽいでしょ?」

「はい……」

「うちは母子家庭なんだけど、あの子の面倒はほとんど私が見ててね。 私がああいうふうに躾けちゃったわけ」

「……」

 ボクは先輩が何を言いたいのか分からず、黙って話を聞いていた。

「それで実はね、前から何とかあの子を私のネコに出来ないかと思ってたのよ。 でも失敗して嫌われちゃったら困るじゃない? そこをあなたが踏み切らせてくれたわけでね、そこは感謝してるわ。 ありがとう」

「……お話したいことって言うのは、それだったんですか?」

「他にもあるんだけどね」

「え?」

「あなた、あの子のファーストキスと、初フェラと、バージンまで奪ってくれちゃったそうね?」

「……」

「私はたとえあの子のでも挿入させる気は無いの。 つまりチェリーだけ残っててもしょうがないわけ」

「……」

「そこのところを、違う意味でお礼させてもらいたくてね。 ねえ、『アキちゃん』」

 ……もしかして、いやもしかしなくても、ボク絶体絶命?

「念のため言っておくと、逆らおうとしない方がいいわよ。 その格好でお尻の穴まで晒してる写真を学校やご近所にばら撒かれたく無かったらね」

 すでに命綱を握られてました……。

「返事は?」

「はい、先輩……」

「声が小さいわよ。それと私のことを呼ぶときは『お姉さま』か『ユカ様』って呼びなさい」

「はい、……ユカ様」

「はい、よろしい」

 これからどうなるの? ユカ様はボクをどうするつもりなんだろう? そんなことを考えると、ボクは不安でたまらなくなってきた。

「そんなにビクビクしなくてもいいわよ。別に取って食いやしないから」

「はい……」

「さしあたってやって欲しいことが一つあるわね。ユキ、起きなさい」

 ユカ様がユキちゃんのお尻をぱちんと叩く。 ユキちゃんはまださっきの絶頂が残っているのか、だるそうにのろのろと起き上がった。

「脱ぎなさい」

「はい、お姉さま」

 ユキちゃんがスカートとブラウスを脱ぐ。……ぱんつはいてない。 ブラジャーを外すと、あれ? 胸が??

「ユキちゃん、その胸は?」

 ユキちゃんが恥ずかしそうに両手で胸を隠す。しかしどう見てもAカップぐらいあるような?? ボクの疑問にユカ様が答える。

「ああそれね。サプリメント剤の副作用」

「副作用って、大丈夫なんですか?」

「美容サプリだから」

 そういえばそういう副作用が出ることがあるって聞いたことあるけど……。 ユキちゃんのお肌が前よりもすべすべな気がするのも、サプリメントの効果かな?

「アキは何か飲んでないの?」

「いえ、ボクは何も……」

「……それでその肌なの。あなた女の敵ね」

 とかなんとか言っているうちにユキちゃんが全部脱ぎ終わった。 でも一糸纏わぬ、というわけじゃなかった。 ユキちゃんのペニスの根元が、サテンのリボンできつく結ばれていた。

「さあユキ、筆おろしよ」

 ユカ様がユキちゃんに言う。ああ、そういうことか。

「アキ先輩、ごめんなさい、ごめんなさい……」

「ユキちゃん?」

「お姉さまのご命令には逆らえないんです、それに、もう、おちんちんが、我慢できない……」

 ユキちゃんが息を荒げながらリボンを解いた。そのままボクにのしかかってくる。

「ユ、ユキちゃん、逃げないから、これ外して!」

「駄目よユキ、そのまま犯しちゃいなさい」

 ユカ様がボクの台詞をさえぎる。 ユキちゃんは一瞬戸惑ったけど、結局そのままボクの足を持ち上げた。 タンスとユキちゃんにはさまれて屈曲位の姿勢になる。ちょっと苦しい。

「ごめんなさい、アキ先輩、ごめんなさい……」

 ユキちゃんのペニスの先端がボクのアヌスを捉えた。 大量の先走りが溢れていて、まるでローションをたらしたみたいになっている。

 うまく入らない。 ユキちゃんは腰を進めようとするんだけど、そのたびにつるりと滑ってしまう。 姿勢に無理があるので、角度が悪いみたいだ。

 何回目かに先端を当てなおしたときだ。 ユキちゃんのペニスが暴発した。

「あ」「!!」「……あらあら」

 ボクのお尻をつたって、ユキちゃんの精液がフローリングにこぼれる。 ユキちゃんはそれを呆然と見ていたけど、やがてぐすぐすと泣き出した。

「うっ、ひっく、ごめんなさい、アキ先 輩、ぐすっ、ごめんなさい」

 あらら、これはちょっと可哀相。 トラウマから性的不能にでもなっちゃったら大変。

「……ユカ様、逃げませんからこれ外してください」

 手錠を指差す。ユカ様は無言で両方の手錠を外してくれた。

 ボクはしゃくりあげているユキちゃんを立たせると、ベッドのほうに連れて行った。 ベッドに座らせて、その前にひざまずく。

「ぐすっ、アキ先輩、アキ先輩……」

「……ユキ、お姉ちゃんに任せて」

「え……」

 ボクはそのまま、ユキちゃんの萎えたペニスを口に含んだ。 ゆっくり丁寧に慰める。ユキちゃんのペニスはたちまち力を取り戻した。 そこでいったん口を離す。

「どう、ユキ?」

 両手でゆっくり扱きながら聞いてみた。

「気持ちいいです……」

「ん、じゃあ、横になって」

 ユキちゃんはベッドに横たわる。 ボクはユキちゃんの腰に跨る位置で膝立ちになると、ユキちゃんのペニスをアヌスに当てた。 後ろから手を回して、ずれないように押さえる。そのまま一気に腰を落とした。

「ひゃん!!」

 ユキちゃんが可愛らしい声を上げた。うーん、ほんと男の子の声には聞こえない。

「……ユキのおちんちん、全部入ってるよ。どう?」

 ボクは軽く腰をグラインドさせた。ユキちゃんのペニスがボクの中を一周する。

「あっ、それ、やめて、また出ちゃう!」

「いいのよ、ユキの全部、お姉ちゃんの中に出しても……」

 ボクは左手でユキちゃんの右手を取ると、掌を合わせて握り合った。 右手でユキちゃんのおっぱいをさする。掌で乳首をこすってみると、ユキちゃんの腰が跳ねた。

「ひんっ!」

「ユキったら胸も気持ちいいんだ、エッチな身体……」

 ボクはそういいながら、ユキちゃんの胸を弄んだ。同時に腰も使う。

「いや、お姉ちゃん、いじめないで」

「いじめてないよ、褒めてるんだよ。ユキの身体はとっても敏感なのね」

 ユキちゃんは左手で顔を隠した。日差しをさえぎるみたいに、掌を上に向けて両目を覆う。 ほっぺたが真っ赤になっているのが見えた。

 ボクは右手でユキちゃんの胸を刺激しながら、腰を激しく使った。 「の」の字を描くみたいに動かしたり、上下させたりする。

 二,三分ぐらいだろうか、とにかくそれほどしないうちに、ユキちゃんが再びはじけた。 ボクの体内に熱いしぶきを感じる。 さっき出したばかりのはずなのに、かなりの量のようだ。

「んっ、はあ。……ユキったら、すごい量。どのぐらい我慢してたの?」

「……一週間……」

「一週間? その間ずっと出してなかったの!?」

「うん……」

 さてはと思ってユカ様のほうを見ると、チェシャ猫みたいなニヤニヤ笑いでこっちを見てる。

「一週間分中に出される気分はどうだった? まあ半分だけだけど」

「……可哀相だとは思わなかったんですか?」

 ボクはユキちゃんの上からどきながら聞いてみた。

「我慢しておいて、一気に解放するのがいいのよ。男も女も同じね」

 ユカ様がユキちゃんを抱き起こしながら答える。

「ほらユキ、『アキお姉ちゃん』のお尻まんこはどうだった?」

「……とっても、気持ちよかった、です……」

 ユキちゃんが息も絶え絶えといった感じで答える。 ボクも聞いてみた。

「ねえユキちゃん、いまさらだけど、初めてがボクでよかったの?」

「……ユカお姉さまは、おちんちんは、絶対駄目だって……。 それにお姉ちゃんは、ユキの初めての人だし……」

 ユキちゃんの混乱気味の台詞を頭の中で整理する。 改めて自分がユキちゃんの前と後ろ両方の初めてを貰っちゃったことについて、いささか暗然となる。 こういうのは一生に一回だけなのに……。

「……ごめんね。面白半分に女装させたりしなければ……」

「!! そんなことないです! アキ先輩は悪くないです!」

 ユキちゃんがボクのほうに身を乗り出す。 しかし腰に力が入らないのか、バランスを崩してこちらに倒れこんできた。 ボクは反射的にユキちゃんの体を抱きとめた。 ユキちゃんがボクの胸に顔をうずめる体勢になる。

 ユキちゃんが顔を上げ、ボク達は顔を見合わせる。 思わずそのまま、じっと見詰め合ってしまった。

「はいはいあんたたちー、二人の世界作ってるんじゃないわよ」

 ユカ様の呆れたような声が、ボク達を引き戻した。

「お姉さま……」

 ユキちゃんがユカ様のほうを振り返る。 だけどまだ足腰に力が入らないのか、ボクにすがりついたままだ。

 ユカ様はボクからユキちゃんを引き離すとそのままベッドに横たえる。 それからこちらに振り向くと、ニヤリと笑って言った。

「ユキも女の子みたいだけど、あなたもとても男の子には見えないわね」

 ボクは何も言い返せない。 男に見えないって言われるのは嬉しいけど、この場合身の危険を感じてしまう。 貞操の危機って言うのはこういう感じなのかと思う。 まあボクは処女じゃない訳だけど……。

 ユカ様がさっきの手錠を拾い上げた。 再びボクの手首と足首がつながれ、自由に動けなくされる。 今度は何をするつもりなんだろう……。

「まず味見させてもらうわよ」

 ユカ様はボクを押し倒し、唇を重ねてきた。 舌がボクの口の中に侵入してくる。 ユカ様の舌がボクの舌に絡みつき、歯をなぞり、口蓋を舐め回す。 唾液が流し込まれ二人の舌がそれを攪拌する。 息が苦しくなったところでやっと唇が離れると、唾液の糸が伸びた。 垂れ落ちたそれがボクの顎から胸を濡らす。

 ユカ様は次にボクの胸を狙った。 酸素を求めて大きく上下する胸の先端、すっかり勃起した乳首がくわえられる。 右胸の先が唇にはさまれ、左胸の先端が指先につままれた。 タイミングを合わせた責めが、ボクの乳首から容赦なく快感を引き出す。

「くんっ、あっ、あんっ、あっ!」

「――っ、ぷはっ。あなた胸も敏感ね。 貧乳のほうが感度はいいって言うけど、男の子でも同じなのかしら?」

「やっ、知りま、せんっ」

 ユカ様が両乳首を指で責めながら聞いてくるけど、ボクはまともに返答できなかった。 乳首を捻られたり抓られたりするたびに、胸から快感が湧き起こる。 それに連動するように、腰の奥、ペニスの裏側あたりからもじりじりとした快感が湧き上がった。 ペニスは透明な液を吐き出し続け、ユキちゃんの精液に濡れたアヌスは収縮を繰り返す。

「ふーん、このままでも出ちゃいそうね。ユキ、リボンとって頂戴」

 ユキちゃんが先ほどまで自分のペニスを縛めていたリボンをユカ様に渡す。 ユカ様はそのリボンでボクのペニスの根元を縛った。

「これでよしっと。――さあ、どうかなー」

 胸への責めが再開した。両手で胸を揉みながら、舐めたり吸ったり噛んだりされる。 一つ刺激を与えられるたびに胸と腰から快感が湧き起こり、身体の中にたまっていく。

「やっ、もうっ、駄目っ、ゆるしてっ、ゆるしてえっ!」

「あはっ、もう駄目? 限界なの?」

 ユカ様は両手を休めずにボクを責め続ける。 蓄積し続ける快感に、ついにボクは限界を迎えた。

 ペニスが爆発し、たまりにたまった快感を精液の形で放出――出来なかった。 根元を縛るリボンが射精を押しとどめ、快感が身体の中に押し戻される。 普通なら射精と共に消えていく絶頂が体内で暴れ回り、ボクの全身を痙攣させた。

「――いったわね」

 身体をふるわせ続けるボクにユカ様が言う。

「おっぱいだけでいっちゃったのね」

 そう、ボクは胸への刺激だけで絶頂に達していた。 アヌスだけでの絶頂は何度も体験していたけど、胸だけというのは初めてだった。

「……気分はどう?」

「……とっても、きもち、よかったです……」

 全身を侵す絶頂の余波に震えながらボクは答えた。 いや、余波というのは正確じゃないかもしれない。 射精を押しとどめられたペニスの奥から、快感が湧き上がり続けているのだから。

「……おねがいです、これ、ほどいて……」

 身体の中にたまりっぱなしの快感は苦痛に変化しかけている。 ボクはそれを放出したくて、ユカ様にお願いした。

「ザーメン出したいの? 出したいのね? でも駄目よ」

「やああっ、おねがい、おねがいですっ、これっ、ださせて!」

「ふーん、じゃあ私の言うこと聞く?」

「ききますっ、なんでもききますからあっ!」

「――ユキを見て」

 言われたとおりユキちゃんを見る。 ユキちゃんは――ボクを見ながら自慰に耽っていた。

 膝立ちになって、右手でペニスを扱きながら、左手の中指と薬指をアヌスに突っ込んでいる。 先走りと精液の混ざった液でペニスのシャフトをしごき、 垂れ落ちたそれをローション代わりにして左手の指がアヌスを出入りしていた。

「ユキのチンポを、あなたの口で慰めてあげて頂戴」

 ユカ様がそういって再び手錠を外してくれた。 ボクは自由に動かない体をなんとか起こすと、四つん這いでユキちゃんに迫った。

「アキ先輩……」

 ユキちゃんが潤んだ瞳で見つめてくる。 ボクは何も言わずに、ユキちゃんのペニスを口に含んだ。

「くっ、あんっ、アキ先輩、アキ先輩!」

 ユキちゃんが悲鳴のような声を上げる。 ボクはそれにかまわず、技巧を総動員してユキちゃんのペニスを責めた。

 ユキちゃんの先走り液と精液、その混ざった匂いが口から鼻に抜ける。 舌に感じるその味は、苦いのとしょっぱいのとえぐいのと生臭いのをミックスしたような味だ。 でも今はそれがとっても美味しく感じられる。 ボクは半ばそれを味わうために、ユキちゃんのペニスに舌を這わせ続けた。

 さすがに二回も出しているせいか、なかなか射精する気配がない。 でもユキちゃんのペニスにご奉仕してると、頭がぼうっとしてくる。 腰の奥に凝り固まっていた快感が、全身に溶け出している感じだ。 なんだかペニスにご奉仕していること自体が気持ちよくなってくる。 頭がはっきりした状態のそれとは違い、自分がペニスに奉仕するための存在であること自体が気持ちいい。 他人が気持ちよくなっているのを見ることではなく、ペニスに奉仕すること自体が快感になっている。

 全身を満たす快感と口の中のペニス意外が消え去っていた意識の中に、新しい刺激が生まれた。 誰かの手がボクの腰をつかみ、アヌスに何かが押し当てられている。

『おちんちんがお尻に当たってる』『ユキちゃんのおちんちん美味しい』 『ユカ様がボクを犯そうとしてるんだ』『あのディルドーは太かったな』 『ザーメン飲ませて……』『ボクのお尻壊れちゃうかも……』

 まとまらない思考がバラバラと浮かぶ。 きれぎれの断片がつなぎ合わされる前に、後ろからの衝撃が全身を貫いた。

 太いディルドーがボクのアヌスを貫く。 肛門が押し開けられ、直腸が押し広げられ、先端が突き当たりに衝突する。 その全ての刺激がスローモーションみたいに感じ取れた。

 一拍おいて、お尻の中で快感が爆発した。 ディルドーが触っている範囲全体から快感が湧き起こる。 背筋に沿って駆け上がり頭の中で爆発する。 両足を駆け下り、つま先を反り返らせる。 そして、腰の中をつたってペニスにも。 緊縛されたペニスは快感を放出できず、行き場を失った絶頂が再びボクの体内を蹂躙した。

 全身の筋肉が溶けてしまったようになったボクは、ユキちゃんのペニスを吐き出してベッドに崩れ落ちた。 身体に力が入らない。 アヌスを貫くディルドーが、ピン止めするみたいにボクのお尻を固定している。

「あらあら、またいっちゃったのね」

 ユカ様の声が聞こえる。しかし言葉は耳に入っても、頭が意味を理解できなかった。 身体だけでなく、頭も溶けちゃったみたいだ。

 ユカ様がボクを抱き起こす。ユカ様の両足がボクの足の間に入った。 ベッドのヘッドボードに寄りかかって座るユカ様に、背中を預けて抱かれる格好になる。

 後ろからボクの胸を弄ばれる。 同時に腰を軽く揺さぶられ、ディルドーがアヌスを責める。 首筋を後ろから舐められ、耳たぶを甘噛された。 何をされてもそこから快感が湧き起こり、ボクはそのたびに身体を痙攣させた。

 暫くそうやって楽しんだ後、ユカ様がユキちゃんに命令する。

「ユキ、リボンをほどいてあげて」

 ユキちゃんが両手を伸ばし、ボクのペニスを縛り付けるリボンを解いた。 解放されたペニスが、精液をだらだらと零す。 普通なら一瞬の射精の快感が数十倍に引き延ばされ、ボクは再び全身を痙攣させた。

「……一滴も残さないように、吸い取ってあげて」

 ユキちゃんはボクのペニスを口に含み、猛烈な吸引をくわえる。 身体の中身を吸い出される刺激に、ボクのペニスは再び精を吐いた。 ユキちゃんはそれも残らず吸い上げて飲み干していく。 全ての精を吐き出したペニスが、力を失ってうなだれる。

 しばらく息を継いでいると、再びうつ伏せの姿勢にされた。 腕に力が入らないので、両腕の上に顔を伏せてお尻をあげた姿勢になる。 その状態で、ユカ様が腰を使い始めた。

 ディルドーがボクのお尻の中を往復する。 全身の感覚があいまいで、お尻の感覚だけが感じられた。 なんだか体全部が性器になって、肉穴だけが存在しているような気分になる。 自分がペニスに貫かれるためだけの存在になった気分だった。

「私のチンポで串刺しにされる気分はどう、アキ?」

「はい……とっても……いい……気持ち、です」

 身体の中を満たされる気分は最高だった。 全身を貫くペニスだけあれば、他は何もいらない気分だった。

「ねえアキ、私だけのものになる? そうしたら、いつでもこの快感をあげるわよ」

「ユカ様の……もの……?」

「そう、私だけの。他の誰にも抱かれては駄目。まあ、ユキはいいかしら。 でもそれ以外の男にも女にも抱かれては駄目。そのかわり、私があなたを愛してあげるわ。 いつでも、いつまでも」

 いつでも……、いつまでも……。

「絶対に捨てたりしない。一生私のものにしてあげる」

 ボクを、一生、捨てない……? お兄ちゃんや、パパみたいに、ボクをおいて行っちゃわない……?

「だから、私のものになりなさい」

 今までにボクを抱いたいろんな人の印象が頭をよぎった。 優しいおじ様やお兄さん、ボクがリードしたり、逆にリードされたり。 泣いちゃったボクを抱きしめて慰めてくれた人や、激しいセックスで悪夢を追い払ってくれた人もいたっけ。

 ユカ様のものになれば、もうボクを慰めてくれる人を探し回らなくてもすむの? 終わった後に罪悪感を感じなくてもいいの? ボクの全部をユカ様に任せちゃっていいの?

「どう、アキ?」

 ユカ様が問い掛けてくる。それは安らぎへの誘いのように聞こえた。

「……ボク、ユカ様の、ものに……」

 そこまで言った時。

『アキちゃん、大好きよ』

 とっても聞きなれた声が聞こえた気がした。

「ユカ様……の……もの……」

『またいつもの夢?』泣きながら目を覚ましたボクを抱きしめてくれた胸の感触を思い出した。

『アキちゃんの唇はプリンの味ね♪』苺のアイスの味のキスを思い出した。

『んっ、アキちゃん、気持ちいいわよう』そっと貫かれる感触を思い出した。

 一緒にお洋服を選んだ光景、つないで歩いた手の感触、二人で食べた大きなパフェの味、 噴水の前で待ち合わせした記憶、それらが一度に押し寄せる。

 お姫様カットの長い黒髪と、綺麗な大きな目が印象的な笑顔がボクに微笑みかける。

『アキちゃん、大好きよ』

 なぜか一番最後に出てきたリカちゃんの記憶が、ボクの意識をはっきりさせた。 小さな核から結晶が出来るみたいに、溶けていた意識がリカちゃんのイメージを起点に覚醒していった。

「……ごめんなさい、ボク、先輩だけのものにはなれません」

「……え?」

 ユカ先輩が驚いた声を上げる。

 ボクは力の入らない身体に鞭打って、お尻からディルドーを引き抜いた。 ユカ先輩は呆然としてそれを見ていた。 なんとか身体を起こして、ユカ先輩と目を合わせる。

「……誰なの?」

 ユカ先輩が質問してくる。

「ユキじゃないわね。あなたのステディは誰?」

「ユカ先輩の知らない人です。うちの学校の人間じゃありませんから」

 無言で見詰め合う。――睨み合うと言った方がいいかも知れない。 背後でユキちゃんがおろおろしているのが感じられた。

「……はあ、まあ仕方ないわね。そこで強引にっていうのは私の流儀じゃないし」

 ユカ先輩がため息をついて言う。

「……写真を盾に、迫ってくるんじゃないかと思いましたが」

「ああ、あれは嘘よ。そんなことしたら立派な脅迫じゃない。犯罪者になりたくはないわよ」

 ユカ先輩が気抜けした感じで言った。同時にボクのほうも緊張が解ける。

「あ〜あ、水泳部の後輩たちはこのやり方で百%落ちたのに。 やっぱり男の子は違うのかしらね」

 多分それは違うと思う。うまく言えないけど……。 言葉で説明できる自信が無かったので、ボクは黙っていた。

「ねえ、あなたのステディって女? それとも男?」

「……ええっと、そのどっちでもないっていうか、両方っていうか……」

「……もしかしてあなたやユキとおんなじ?」

「……はい」

「ふーん、私の魅力は生物学的男性に劣るわけだ……」

 ユカ先輩は何やらショックを受けた様子。 ……フォローしといたほうがいいかな。

「あっ、でも、リカちゃんは大抵の女の子より女の子らしいんですよ。 だから別にそんなに落ち込まなくても……」

 そこまで言った所で背中をつつかれた。 振り向くとユキちゃんが困った顔をしていた。

「アキ先輩、それフォローになってないです……」

 ユカ先輩のほうに振り向くと、ずどーんと落ち込んでいる。

「え? ユカ先輩……?」

「……ふっ、ふふっ、ふっふっふ」

 その地獄の底から聞こえてくるような含み笑いはなんですか、ユカ先輩。

「アキ、そいつと会わせなさい」

「え? え?」

「呼び出すのでもデートに割り込ませるのでもいいから、そいつと一遍会わせなさい」

「え、えええっ?」

「いいわねっ!」

「はっ、はいっ!」

 あああ、押されてはいって言っちゃった。

『大丈夫かな』『大変な事にならないと良いけど』『ユカ先輩は何する気なんだろう』

 頭の中をいろんな思考が飛び交う。 頭ぐるぐるになってるボクと、また含み笑いをしてる先輩と、困り顔のユキちゃん。 三人の姿をいつのまにか傾いた夕日が真っ赤に照らしていた。

―了―


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