Blue Roses Garden > アキの話 > 第五話 リカ vs ユカ

リカ vs ユカ

 皆さんこんにちは、アキです。アキは引き続き大ピンチです。 誰か助けてください〜。

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 八時五十一分着の電車で目的地の駅に降りた。改札を通ると駅前広場の噴水が見える。 初秋の少し冷たい風が吹き抜け、落ち葉が何枚か飛ばされていった。 スカートをロングにしてきて正解だったかな。

 リカちゃんはいつものように先に来てボクを待ってくれていた。 ボクに気がついたリカちゃんが、立ち上がってこちらに向かって歩き出す。 ボクに向かって微笑みかけた笑顔が、途中で不審げな表情になった。

 ボクの右を歩いてるユカ先輩が、ボクの右腕を抱いている。 ちなみに左腕にはユキちゃんが抱きついている。 要するにボクは山瀬姉弟に両腕をとられているのだ。

「……こんばんは、アキちゃん」

「こ、こんばんは、リカちゃん」

「こちらのお二人は?」

 ボクが答えるより早く、ユカ先輩が口を開いた。

「はじめまして、アキの『恋人』の山瀬祐香です」

「ちょっ、ユカ先輩!」

 ユカ先輩は『恋人』の部分に思いっきりアクセントをつけていった。 リカちゃんの表情がこわばる。

「え〜、アキ先輩の恋人はユキですよう」

「ユキちゃん!」

 反対側からユキちゃんも小声で言う。リカちゃんの表情が引きつってきた。

「……アキちゃん、どういうことなのか、説明してもらえるかしら?」

 リカちゃんがボクに説明を求めてきた。うわ、声にすごい迫力が。

「えーっと、話せば長いことなんで、とりあえず、何処か落ち着ける場所に……」

 周りを見回しながら言ってみる。周囲の視線が痛い。 (見かけは)女の子が四人でどう見ても修羅場の雰囲気となれば、興味を引くのも仕方が無いのだけれど。

「……そうね、とりあえずお茶にしましょうか」

 リカちゃんは先に立って駅前の喫茶店のほうに歩き出す。 こっちを見てくれないのは、やっぱり怒っちゃったのかなあ。 ボクは相変わらず両腕を押さえられたまま、リカちゃんを追って歩き出した。 ユキちゃんが左腕にギュッとしがみつく。ユカ先輩が「ふっ」と鼻で笑うのが聞こえた。

● ● ●

 何? あの子達は何なの? アキちゃんの『恋人』? 突然どういうこと?

 突然の出来事に、思考がまとまらない。

 いつものように改札口の前でアキちゃんを待っていたら、アキちゃんが両手を女の子に取られて現れた。

 向かって左側のパンツルックの子はアキちゃんより少し背が高い。 ショートの髪は乱雑に脱色したような茶色になっている。 肌は良く焼けていて、いかにも健康的な感じだ。 身ごなしがきびきびしていて、何かスポーツをやっているようだ。

 右側の子は対照的にアキちゃんより一回り小さい。 こちらの子も髪が茶色だけど、どうも地毛のようだ。 瞳も濃い茶色なので、どうやらもともと少し色素が薄いらしい。 真っ白な肌が白いワンピースドレスとよく似合っていて、ちょっとお人形さんみたいな雰囲気をかもし出している。

 左側の子は美人、右側の子は可愛らしいという感じ。 タイプは違うけど、どちらもアキちゃんととてもお似合いに見える。 内心の動揺を押し隠しながらアキちゃんに問い掛けてみたら、背の高い子が答えた。

「はじめまして、アキの『恋人』の山瀬祐香です」

 ……え? なに? 『恋人』ってどういうこと?

「え〜、アキ先輩の恋人はユキですよう」

 背の低いほうの子も声を上げた。……こっちも?

 アキちゃんに説明を求める。声が震えないように、一言ずつ力を入れて発音した。 とりあえず落ち着いて話せるところでということになり、私たちは駅前の喫茶店にむかって移動する。

 アキちゃんの方を見るのが怖い。 アキちゃんは私が嫌いになったの? やっぱり本当の女の子がいいの? 頭の中をそればかりが渦巻いている。 私は後ろを振り向けず、前だけを見て歩いた。

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 ふーん、あれがアキのステディかあ。どう見ても女ねえ。 いわれなきゃ実は男だとは分からないわ。

 リカって子の第一印象はそんな感じだ。 あれならアキが言った「そこらの女の子よりも女らしい」っていうのも頷ける。 私よりよっぽど女らしいかも。

 私は先制パンチをかましてみることにした。

「はじめまして、アキの『恋人』の山瀬祐香です」

 『恋人』を思い切り強調する。リカの表情がこわばった。 へえ、そういう反応まで女らしいのね。

「え〜、アキ先輩の恋人はユキですよう」

 ユキまでそんなことを言い出す。今までは『後輩』か『妹』だったのに。 リカを見て、アキを取り返されるんじゃないかとでも思ったのかしら。

 顔を引きつらせているリカをアキがなだめている。 とりあえず喫茶店にでも入ることになったのだが、リカはこちらを見ずに先を進んでいく。 怒っているのか、それともこちらを見るのが怖いのか。 どうやら先制攻撃は思わぬ効果をあげたようだ。

 アキの腕を取って歩きながら、思わず苦笑してしまうのを押さえられなかった。

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 綺麗な人。それがリカさんの第一印象でした。 白い肌と長い黒髪、綺麗な黒い目のコントラストが、日本人形を連想させます。 たぶんアキ先輩ととってもお似合い。

 リカさんがアキ先輩にユキ達のことを聞いています。 お姉さまがアキ先輩より先に答えました。

「はじめまして、アキの『恋人』の山瀬祐香です」

 リカさんの表情がこわばります。 それを見ただけで、この人がアキ先輩を大好きなのが分かりました。 アキ先輩が慌ててお姉さまを制止します。 アキ先輩もリカさんをとても大事に思っているようです。

 アキ先輩の一番がリカさんだというのが分かったとたん、ユキの中に不安が湧き起こりました。 ユカお姉さまはユキを大事にしてくれるけど、それは所詮ペットとして。 アキ先輩はユキに女装を教えてくれて、ファーストキスも童貞も処女も奪ってくれた人。 でもアキ先輩の一番がリカさんなら、ユキは結局いらない子?

 アキ先輩を放したくない、そう思ったとたん、ユキの口から勝手に言葉が出ていました。

「え〜、アキ先輩の恋人はユキですよう」

 アキ先輩がユキを制止します。でもユキはじっとリカさんの目を見つめつづけました。

 結局、喫茶店に移動して落ち着いてお話をすることになりました。 リカさんが先に立って歩き、アキ先輩が少し慌てて追いかけます。 アキ先輩がユキをおいて行っちゃうような気がして、ユキはアキ先輩の腕にぎゅっとしがみつきました。

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 喫茶店に入って席につこうとしたんだけど、ユカ先輩とユキちゃんが手を放してくれない。 仕方が無いのでコーナー席にした。必然的にボクが一番奥になり、脱出不能の状態になってしまった。 リカちゃんはユキちゃんの側の通路よりの場所に座る。

 コーヒーや紅茶と、お茶請けにスコーンを一皿注文した。 ウェイトレスさんの興味津々の視線が痛い……。

 一息ついたところで、リカちゃんが口火を切った。

「改めて聞くけど、こちらのお二人は?」

 今度はユカ先輩もユキちゃんも口をはさんでこない。 ボクはユキちゃんに女装を教えたときの顛末や、その後ユカ先輩に呼び出された時のことを順を追って話した。 どうしてもひそひそ声になってしまうので、周りから見たらさぞ怪しげだったろう。

 一通り話し終わると、リカちゃんがユカ先輩に向かって聞いた。

「あなたさっき、アキちゃんの『恋人』って仰いましたね。今のアキちゃんの話だと、身体を許すつもりは無いみたいですけど?」

「少なくともあなたよりはふさわしいと思ってるわよ。『同性同士』よりはね」

「……それを決めるのはアキちゃんよ」

 ユカ先輩はそれには答えずに、チェシャ猫みたいな笑いで応じた。 リカちゃんはユカ先輩から目をそらすと、今度はユキちゃんに目を向ける。 ユキちゃんはボクの左腕にしがみつき、リカちゃんを睨み返す。 でもその目は潤み、泣きだす寸前といった風情だ。

「……はぁ」

 リカちゃんがため息をつく。そしてボクに視線を向けると、ずばりと聞いてきた。

「それで、アキちゃんはどうなの?」

「ボクの恋人はリカちゃんだけだよ」

 ボクは間髪をいれずに答えた。 リカちゃんは何を言われたか分からない、といった感じで数瞬静止していた。 それから真っ赤になったかと思うと、急に俯いてもぞもぞしだした。 かと思ったら急に涙を零し、両手の甲で拭い始めた。

「リ、リカちゃん?」

 ボクは慌ててリカちゃんのほうに身を乗り出そうとする。 腰を浮かそうとしたら、左腕を引っ張られた。 ボクの左腕にしがみついたユキちゃんが、こちらも涙をボロボロ零しながらボクの顔を見ている。

「ユキちゃん? ど、どうしたの?」

「アキ先輩、ユキの事捨てないで!」

 ユキちゃんがボクの胸にすがって泣き出した。ボクは慌ててユキちゃんを抱きしめる。 リカちゃんはあっけに取られてユキちゃんを見ていた。 なんとかユキちゃんが落ち着くのに10分以上かかった。 店内にはボクたち以外に五〜六人いたんだけど、その人たちと店員さんの視線が痛かった……。

 ボク達は喫茶店を出るとホテル街の方に向かった。 ボクとリカちゃんは最初からお泊まりの予定だったんだけど、ユカ先輩とユキちゃんもくっついてきた形だ。 いつもは使わない、クイーンズダブルの部屋を取った。

 ソファに落ち着くと、しがみついて離れないユキちゃんをなんとかなだめる。 ボクの腕を放してくれない。ボクはユキちゃんに優しく話し掛けた。

「ユキちゃん落ち着いて。ボクはユキちゃんのこと捨てたりとかしないよ。だから泣かないで、ね?」

「うっ、ぐすっ、ごめんなさい、アキ先輩」

 ユキちゃんをなだめながら、赤ちゃんをあやすのってこんな感じかなあ、と思った。

● ● ●

 ユキちゃんって子がアキちゃんにしがみついて泣いている。 この子にとっては、アキちゃんが一番なんだなあっていうのが分かった。

「ねえ、ユキちゃんっていったかしら、あなた、アキちゃんのこと好き?」

 ユキちゃんがアキちゃんにしがみついたまま肯く。

「……私もアキちゃんのこと好きよ。私にとって一番ね」

 ユキちゃんがこっちを見る。

「でも、アキちゃんのことあなたから取ったりしないわ。安心して」

「……ごめんなさい……」

 ユキちゃんが蚊の鳴くような声で言った。

 私は、アキちゃんにすがり付いているユキちゃんを後ろから抱きしめた。 腕を大きく回して、アキちゃんごと抱きしめる。 しばらくそうしていると、アキちゃんと私に挟まれているユキちゃんの全身から力が抜けていくのが分かった。

● ● ●

 アキ先輩とリカさんが、二人でユキを抱きしめてくれます。 とってもあったかい。昔ママに抱かれていたときを思い出しました。 身体から緊張が抜けて、一緒にさっきの不安感も流れ落ちていくみたいな気がします。

 誰かの手がユキの頭をなでてくれました。リカお姉さまです。 お姉さまの方を見ると、なんだか複雑な表情をしています。

「……お姉さま」

「ごめんね、ユキ。あなたを私の一番にしてあげられなくて」

 それは仕方がないことです。お化粧しても、女の子の服を着ても、結局ユキは男ですから。 真性レズビアンのお姉さまにとっては、何人かいるネコの一人に過ぎません。 まして血の繋がりがあっては……。

 うまく言葉に出来なかったので、首を横に振るだけにしました。 お姉さまはユキの頭をなで続けてくれました。

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 ユキちゃんが落ち着くと、ボクとリカちゃんはユキちゃんから離れた。 しかしこの後どうしよう。 最初の予定では今日はリカちゃんと二人きりで一晩過ごす予定だったんだけど……。

 リカちゃんも戸惑ってる。 ユカ先輩とユキちゃんを見ると、ユキちゃんは困ったようにボクたちの顔を見比べている。 ユカ先輩はというと、いつものチェシャ猫じみたニヤニヤ笑いを浮かべている。

 ……どうもあれが出ると、その後が大変な気が……。

「ユカ先輩、この後どうするんですか」

「あら、こんなホテルにいてすることが他にあるのかしら?」

「……勝手なことを言わないで! 大体今日は私とアキちゃんの二人きりの予定だったのよ!」

 うわ、リカちゃんが爆発した。まあさっきあんなに挑発されたんだからわからなくも無いけど。

「ふふん。アキはねえ、このあいだ私に責められて、服従一歩手前までいったのよ。 もう一回やれば今度こそ屈服させる自信があるわ!」

 あー、エスカレートさせないで下さい、ユカ先輩。 うわー、なんだか二人の間に強烈なスパークが見えるような……。

「……アキ先輩がお姉さまのペットになっちゃえば、この先ずっと……」

 ちょっ、ユキちゃんまで火に油を注がないで!

「……アキちゃん、それほんと?」

 リカちゃんがボクに聞いてくる。こ、答えづらい……。

「え、えーっとね、落とされかけたのは本当だけどね」

「ほらね、もう一度やれば確実に落ちるわよ」

 うわ、ユカ先輩、台詞を遮らないで下さい。 げ、リカちゃんの握りこぶしがぶるぶる震えてるー。

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 前回アキが落ちかけたのは本当だけど、結局はこのリカって子のせいで落ちなかった。 条件は変わってないから、何回やっても駄目だろう。むしろ耐性がついてしまっているともいえる。

 それでもこうやってこの二人をいじってみるのは、純粋に興味深いからだ。

「ほらね、もう一度やれば確実に落ちるわよ」

 リカに向かって言い放つ。

「や、やってみなければ判らないでしょう。どうせ無駄だと思うけど!」

 お、乗ってきたかな。もう一押ししてみる。

「ふふっ、いいのかしら。あなたの居ない所で落としちゃうかもしれないわよ?」

「それなら今ここでやってみれば! まあもし落とされちゃっても私が取り返すけどね!」

 よーし引っかかった。さあてどうなるかしら。

● ● ●

 アキ先輩とユキが割り込めずにいる間に、お姉さまとリカさんが勝負することになってしまいました。 アキ先輩を賭けて。

 ああ、もしお姉さまが勝てば、同じお姉さまのペットとして一緒にいられる。 もしリカさんが勝ったら……。そのときはユキもリカさんの物にしてもらおうかな。 ペットでも下僕でも奴隷でもいいや。アキ先輩といられれば……。

 アキ先輩がなんだか怯えたように二人を見ています。 震えているアキ先輩っていうのもなんだか新鮮。 ユキのアナルバージン奪っていったときも、童貞を奪っていったときも、余裕綽々っていう感じだったのに。 思わずアキ先輩を抱きしめてしまうと、アキ先輩が抱きつき返してきました。 あん、幸せ……。

● ● ●

 ちょっ、えっ、なに?

 何やら一瞬で賭けが成立してしまった。 賭けられているのはボクの身柄、勝負の方法はどっちがボクを落とすか。 あのー、ボクの意見とかは? 選択の自由は、基本的人権は〜?

 二人の間の空間に雷雲でも立ち込めていそうな緊張感がみなぎる。 思わず身震いしてしまうボクを、ユキちゃんが抱きしめた。 反射的に抱き返したので、二人で抱き合う形になる。

「じゃあ、私から先でいいかしら?」

「どうぞ!」

 ユカ先輩が先攻に決まったみたい。

「さて、それじゃあ行くわよ。ア・キ・ちゃん」

「やっ、ユカ先輩ちょっと待って!」

「『お姉さま』か『ユカ様』とお呼びなさい」

 うわ、既にお姉さまモード。こうなるとボクやユキちゃんのいうことなんか聞かないからなあ。

「ほら、さっさとベッドに行きなさい。ユキ、あなたも」

「はい、お姉さま」

 ああ、ユキちゃんも既にネコモード……。孤立無援、ボク絶体絶命のピンチ!

 ベッドに追い上げられたボクは二人がかりで裸に剥かれた。 ショーツから靴下まで完全に剥かれる。脱がされた服はユキちゃんが綺麗に畳んでソファに置いた。 ボクを完全にひん剥くと、二人も服を脱ぎ始める。

 ユキちゃんが服を畳んでいる間に、ユカ様はバッグからストラップとディルドーを取り出した。 あ、ディルドーがこの前のと違う。 色が毒々しい紫で、亀頭部がやけに大きくて、全体に突起が生えてて、底の部分にイソギンチャクの触手みたいなのが。

「なんですかそれー!」

 思わず慌てた声が出る。

「ああ、せっかくだから手持ちの中で一番凄いのをもってきてみたのよ」

「これ凄いんですよう。きっとアキ先輩も気に入ります」

 ユカ先輩が平然と言い放ち、ユキちゃんがとろんとした声で付け足した。 ってユカ先輩、これユキちゃんに使ったんですか。

「ほらほら、観念しなさい」

 ボクの背後に回ったユカ先輩は、ボクの首に両腕を回して抱きついてきた。 耳元に寄せた唇から囁く。そのまま耳たぶを軽く噛まれた。 ユキちゃんもボクに抱きついてキスをしてくる。 お薬の副作用で膨らみ始めている胸がボクの胸に押し付けられ、乳首同士がこすりあわされた。

「……クスッ、アキ先輩はユキよりペチャパイですね〜」

 あう、ユキちゃんひどいよー。

「ユキ、『アキお姉ちゃん』のおっぱい吸ってあげて」

「はい、お姉さま」

 ユカ先輩の指示に従ってユキちゃんはボクの左乳首に吸い付いた。 唇と舌が複雑に動いてボクを攻める。

「やっ、ユキちゃん、こんなのどこで」

「ユキったらおっぱい大好きなのよ。一生懸命練習してたんだから」

 胸から伝わる甘い刺激が、ボクの下半身から力を奪う。 腰から力が抜け、ボクはユカ先輩に寄りかかることになった。 思わずユキちゃんを押しのけようとすると、両手首をユカ先輩につかまれた。

「駄目よー、せっかくユキが一生懸命なんだから」

「やだっ、ユカ様、放して!」

 そう言ってもユカ先輩はボクの腕を自由にはしてくれない。 女子水泳部で鍛えているだけあって、はっきり言ってボクより力が強い。 ボクは両腕を拘束されたまま、ユキちゃんの乳首攻めにもだえ続けた。

 ユキちゃんはボクの胸を交互に口に含んだり、かと思うと指先でつまんだり上から押しつぶしたり、とにかく片時も休まず刺激を与えてきた。 胸から与えられる刺激だけで、ボクのペニスは硬くいきり立っている。 先走りの液が一雫、竿をつたって零れ落ちた。

「まだ駄目よー。ユキ、リボンとって」

「はい、お姉さま」

 ユキちゃんがユカ先輩のバッグからサテンの幅広リボンを取り出す。 それを見たボクは、この前の射精封じ責めを思い出して悲鳴をあげた。

「やっ、いやあっ! ユカ様、あれはやめて、ユキちゃん願い!!」

「駄目。ほらユキ、さっさと縛って」

「はい、お姉さま。――大丈夫よう、お姉ちゃん。 これで縛ってたくさん我慢してから出すと、とっても気持ちいいんだからあ」

 ユキちゃんが手際よくボクのペニスの根元を縛り上げた。 なんだかユキちゃんの性格が変わってるー!?

「ユキ、手錠もとって頂戴」

 ユキちゃんが今度は皮手錠を取り出す。ユカ先輩バッグになにを詰め込んできてるんですか。

 ユカ先輩がボクの両手を吊り上げ、ユキちゃんが手錠を填めた。 両手を拘束されたボクの背後から、ユカ先輩が離れる。 ベッドに仰向けになったボクの上に、ユキちゃんが覆い被さってきた。 噛み付くようにキスをしてくる。 両胸は乳首をこすりつけられ、さらに勃起したペニス同士をこすりあわされる。 二人の先走り液でたちまちおなかがべとべとになった。

「ユキ、アキのお尻の準備をしてあげて」

 ユキちゃんがボクをうつ伏せにする。背中に後ろ向きに跨って、アヌスをマッサージし始めた。 ユカ先輩からローションのボトルを受け取ると、ボクの中にたっぷり注ぎ込む。

「さて、それじゃ行くわよー」

 ユカ先輩のほうを見ると、ディルドーにローションを振りかけているところだった。 凶悪なディルドーが、ローションに濡れて軟体動物みたいな光沢を放っている。 はっきりいってちょっとグロい!

「やっ、やだ、やめて、お願いユカ様!」

「だーめ」

 ユカ先輩はボクの哀願を一蹴すると、背後からのしかかってきた。

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「やっ、やだ、やめて、お願いユカ様!」

「だーめ」

 アキお姉ちゃんの背中にユカお姉さまが覆い被さります。 ユキはアキお姉ちゃんお背中からどいて、両手首の上に跨りました。 この位置だと、アキお姉ちゃんの表情が良く見えます。

 ユカお姉さまのおちんちんがアキお姉ちゃんのお尻を捕らえ、先っぽがアヌスにめり込みます。 ユカお姉さまは亀頭部がアヌスを最大限まで押し開いたところで腰を止めました。

「いっ、いたっ、ユカ様、やめてっ!」

「ふふっ、どう? アキが嫌がるから全部入れるのは勘弁してあげたわよ?」

「いやっ、いやあっ、お尻壊れちゃう!」

 アキお姉ちゃんが涙を流しながら首を振ります。 でも両手はユキに押さえられ、肩をユカお姉さまに押さえられていて自由に動くことができません。 それに下手に動くとアヌスに痛みが走るはずです。 アキお姉ちゃんはもう逃げられないのです。

 苦痛に喘ぎ、涙を流すアキお姉ちゃんを見ていると、ユキの鼓動がどんどん激しくなってきました。 顔が火照り、呼吸も荒くなっていきます。 おちんちんがどんどん硬くなり、際限なく先走りが溢れてきます。

 ユカお姉さまがアキお姉ちゃんをさらにいじめます。 ディルドーの先をちょっとだけ進めたり、逆に引き戻したり。 いっぱいに押し広げられたアヌスを、雁首の一番太い部分が出たり入ったりしています。 アキお姉ちゃんはそのたびに悲鳴を上げて哀願しました。

「いやあ、もう、やだあ、それ、やめてぇ……」

 アキお姉ちゃんがとうとう息も絶え絶えになってしまいました。

「ああ、もう、アキはわがままねえ。仕方ないから入れてあげるわ」

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「ああ、もう、アキはわがままねえ。仕方ないから入れてあげるわ」

 私は腰を進め、ディルドーをアキの中に沈めていった。 先ず亀頭部を完全に潜り込ませる。 そのまま侵入はせず、雁首の返し部分についた突起で肛門の裏側をくすぐってやる。 軽く引き戻したり、腰を回してやったりして入り口直後を責める。 ユキはこの部分はあまり敏感じゃないんだけど、アキはどうかしら?

「んっ、くうん」

 感じてはいるけど、それほどでもないみたいね。 私はディルドーを少しずつ沈めて行きながら、内部をつつきまわして反応を探った。 半分あたりまで進んだとき、劇的な反応があった。

「! ああっ、そこっ、いやあっ、あんっ!!」

 背中側の一点をこすると、アキの声が激しくなる。慎重に位置を探り、反応が最も激しいポイントをマークする。 亀頭部で圧迫してやると、まるで女の子のGスポットを責めたときみたいな反応が帰ってきた。

 このままいかせちゃうのもいいんだけど、それでは少しつまらない。 私はディルドーを引き抜く直前まで後退させた。 アキの身体から力が抜けるのを見計らって、背中側に圧力をかけながら一気に突きこむ。

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 ボクのお尻の中をつつきまわしていたディルドーが、抜ける直前の位置までバックした。 亀頭の裏側が入り口の裏側に当たっているのが感じられる。

 これで終わり? と思って身体の緊張が解けた瞬間、一気に奥まで刺し貫かれた。

 亀頭部がボクの中を押し広げながら、特に背中側を圧迫しながら前進してくる。 同時に竿部分についた突起が肛門をこすり上げる。 途中で亀頭部がボクの一番感じる部分を直撃する。 そのまま前進した先端部が、ボクの直腸の最深部に衝突した。

 ボク自身のおなかとベッドに挟まれたペニスに、ユカ先輩の重量も加わる。 アヌスとペニス、両方から伝わる刺激にボクはついに絶頂させられた。 しかしその絶頂はペニスの根元を縛るリボンに押さえ込まれ、外に放出することが出来ない。 腰の奥から快感が湧きあがり続け、ボクの頭の中が真っ白になる。 目の奥で火花が飛び散り、悲鳴のようなよがり声のような、自分でも良くわからない声を上げ続けた。

 しばらくそのままでいると、快感の爆発が収まってきた。 全身が脱力したボクをユカ先輩が抱き起こす。 ボクはベッドの上に座ったユカ先輩によりかかる姿勢になった。 両足がユカ先輩の足に割られ、ユキちゃんに股間部を全て晒す形になる。

「ユキ、アキのおっぱいを吸ってあげて頂戴」

「はい、お姉さま」

 ユキちゃんが再びボクの胸を攻め、ユカ先輩が腰を動かし始めた。 同時にユキちゃんの手がボクのペニスをこすり上げ、ユカ先輩が後ろから耳や首筋を舐め上げる。 全身の感じる部分をいくつも同時に攻められ、そのたびに腰の奥の快感が膨れ上がる。 一つ刺激を受けるたびに、ボクは声を上げていた。

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 ユキがアキお姉ちゃんのおっぱいを吸ってあげると、その度にお姉ちゃんが声をあげます。 おちんちんを握ってこすってあげると、おちんちんがピクピクしながら先走りを零します。 同時にユカお姉さまがお尻と首筋を責めます。

 アキお姉ちゃんはすっかり快感に翻弄され、気持ちいいこと意外は何もわからなくなっているはずです。 そこを狙ったように、ユカお姉さまがアキお姉ちゃんの耳元で囁きます。

「どう、アキ。とっても気持ちいいでしょう?」

 アキお姉ちゃんは何も答えません。答えようにも、今はまともに思考も出来ないはずです。

「ユキと一緒に私のものになれば、ずっとこの快感をあげるわよ」

 ユキもアキお姉ちゃんのおっぱいから口を離し、ユカお姉さまの言葉に続けました。

「おねえちゃあん、一緒にお姉さまのペットになろうよう。 そうしたらユキ、お姉ちゃんのためになんでもするよう」

 そういってからアキお姉ちゃんの前にしゃがみこみ、お姉ちゃんのおちんちんを口に含みました。 お姉ちゃん自身が教えてくれたやり方でおしゃぶりします。

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 あらあらユキったら積極的ね。

 私はユキが離れて空いた乳首を両手で責め、首筋を強く吸い上げた。 アキの首筋にキスマークが残る。 出来れば全身をキスマークだらけにしてやりたいところだ。

 名残惜しいが唇を離し、アキの耳元に口を寄せた。

「ほら、どうするの、アキ?」

 回答はわかっているが、一応聞いてみる。 まあもしもここで落ちたとしても、リカにあっさり取り返されるだろうが。

「……ごめんなさい……、ユカ先輩……、ユキちゃん……。 ボクの、恋人は、リカちゃん、だけ……」

 アキがこちらを見ずにいう。視線を追うと、リカと見詰め合っている。

 まあ当然だろう。前回はリカがいないところで二人がかりで攻めても駄目だったのだ。 本人が目の前にいて落ちるわけが無い。

 ふとユキの方に目をやると、泣きそうな顔でアキの顔を見つめている。

「……ユキ、もう終わりよ。ほどいてあげて頂戴」

「で、でも、お姉さま」

 あら、ユキが私に逆らうなんて。そんなにアキがあきらめ難いのかしら。

「ユキ。命令よ」

「……はい、お姉さま……」

 ユキがしぶしぶといった調子で私の命令に従う。

 アキのペニスをくわえると、根元を縛るリボンを解いた。 喉が動いている。アキの精液を飲み干しているのだろう。 そんなことまでは命令していなかったというのに。 よほどアキが諦めきれないらしい。

 全身脱力しているアキをベッドに寝かせると、ディルドーを引き抜いた。 ぽっかり開いたアヌスから、ローションがだらだらと垂れ落ちる。 レイプされて身も心も蹂躙され尽くしたといった風情だ。

 私がアキから離れると、リカが飛びついて来てアキを抱き起こした。

● ● ●

 ユカ先輩とユキちゃんの二人がかりの全身責めに、ボクの頭は沸騰したようになっている。 快感の情報だけでオーバーフローして、ほかのことをまともに考えられなくなっているって感じだ。 そこにユカ先輩とユキちゃんの言葉が飛び込んでくる。

「ユキと一緒に私のものになれば、ずっとこの快感をあげるわよ」

「おねえちゃあん、一緒にお姉さまのペットになろうよう。 そうしたらユキ、お姉ちゃんのためになんでもするよう」

 ボクは無意識のうちに、リカちゃんの方に顔を向けた。 リカちゃんが真っ直ぐボクを見つめ返す。 その顔を見ただけで、ボクの思考力の一部がよみがえった。

「ほら、どうするの、アキ?」

 ユカ先輩が再び問い掛けてくる。でも、ボクの答えはもう決まっている。

「……ごめんなさい……、ユカ先輩……、ユキちゃん……。 ボクの、恋人は、リカちゃん、だけ……」

 自由にならない肺と声帯を操って、なんとか言葉を搾り出した。

「……ユキ、もう終わりよ。ほどいてあげて頂戴」

「で、でも、お姉さま」

「ユキ。命令よ」

「……はい、お姉さま……」

 ユカ先輩とユキちゃんの会話を、半分飛んだ意識で捕らえる。 ユキちゃんがボクのペニスをくわえる感触や、精液をすすり上げられる快感も何処か夢うつつだ。 アヌスからディルドーが引き抜かれると、ボクの意識は完全にブラックアウトした。

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 アキちゃんが二人から解放され、ベッドに寝かされた。 私はアキちゃんに飛びつくと、可能な限り丁寧に抱き起こした。

 荒い息をして、全身から汗を流している。放っておいたら脱水症状でも起こしそうだ。 ユカって子を睨みつけるが、素知らぬ振りで冷蔵庫から出したスポーツドリンクなど飲んでいる。 私はユキちゃんのほうを向くと、スポーツドリンクをとって来るようにいった。

 ユキちゃんがペットボトルを取ってくると、私はそれを口に含んだ。 アキちゃんと唇を合わせると、少しずつ流し込んでいく。 アキちゃんは気を失ったまま、それを飲み込んでいった。

 それを数回繰り返すと、アキちゃんが目を開いた。身体の方はまだ自由にならないようだ。 ペットボトルを口に当てようとすると、アキちゃんは首を横に振った。 私は再び口移しでスポーツドリンクを飲ませていく。 アキちゃんはむさぼるようにそれを飲み干した。 そのままアキちゃんを抱いたままの姿勢でいる。

「リカちゃん……」

 しばらくすると、アキちゃんが口を開いた。

「なあに、アキちゃん」

 私は可能な限り優しい声をかける。

「……ボク、お尻が痛いの……」

 アキちゃんを横にさせて両足の間を覗き込む。 ディルドーで乱暴に攻められた肛門粘膜が赤く腫れていた。 ペニスの根元にも跡が残っている。 私はユカとユキちゃんのほうを睨んだ。 ユキちゃんは怯えたように身をすくめたが、ユカはニヤニヤ笑いを返すだけだった。

 気に入らない。何なの、あの女。アキちゃんが壊れちゃったらどうするつもりなの。 あんなの絶対アキちゃんにふさわしくないわ。

 私はうつ伏せにしたアキちゃんの両足の間にうずくまった。 腰の下に枕を入れて高さを確保すると、アキちゃんの肛門をそっと舐め上げる。 舌にたっぷりと唾液を乗せて、赤く腫れた粘膜を丁寧に舐め上げていった。 ひと舐めするごとに、アキちゃんが悩ましいうめき声をあげる。 その声を楽しみながら、私は痛めつけられたアキちゃんの第二の性器を癒していった。

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 リカちゃんがボクのお尻を舐めている。 壊れたかと思うほど乱暴に責められたアヌスから、ひと舐めごとに痛みが消えていくような気がする。 やがて痛みに変わって、柔らかい快感が湧き起こってくる。 さっきの快感を直火で炙られていたようなものだとすると、とろ火で煮込まれているようなものだ。 全身が煮込まれたシチューの中のお肉みたいに柔らかくなっていく。

 数分もたつと痛みはすっかり無くなり、快感だけを感じるようになっていた。 リカちゃんはまだ一心にボクのアヌスを舐め続けている。 思わず腰がもぞもぞと動いてしまい、リカちゃんが口を離した。

「アキちゃん、痛かった?」

「……ううん、もう痛みは大丈夫。それより、来て……」

 ボクはお尻を両手で割ると、リカちゃんにアヌスを晒して見せた。

「大丈夫?」

「うん。だから、リカちゃんのおちんちんボクに頂戴」

 リカちゃんは服を脱ぎ捨てると、無言でペニスをボクのアヌスにあてがった。 既に柔らかくほぐれていたボクのアヌスは、リカちゃんのペニスをするりと飲み込んだ。 リカちゃんのペニスがボクの中を満たし、満たされる満足感がボクの全身を包み込んだ。

 リカちゃんはそのままボクを背後から抱きしめた。 ボクは中と外の両方からリカちゃんに満たされて、深い充足感を味わう。 とろ火の快感が全身にじわじわと広がり、ボクを煮溶かしていった。 いっそこのまま、リカちゃんと一つに溶けちゃいたいと思った。

● ● ●

 アキ先輩とリカさんが一つになっています。 リカさんのおちんちんがアキ先輩を貫いた後、二人はほとんど動いていません。 それなのにアキ先輩の顔は快感でとろけきっています。 リカさんも、アキ先輩を抱きしめて満足しきった顔をしています。

 それを見てユキは理解しました。あの二人の間にユキの割り込む隙間はありません。 身体の相性がどうこうではなく、あの二人の存在自体が最高の相性を備えているのでしょう。 それが判って、ユキは無性に悲しくなりました。

 アキ先輩が欲しい。ユキだけを見てほしい。ユキだけを抱いて、ユキだけを愛して欲しい。

 でもそれはかないません。アキ先輩の一番はリカさん以外にはありえません。 それが判ってしまいました。二人を見るユキの目から、涙が零れ落ちていきました。

● ● ●

 ユキちゃんが私たちを見て泣いている。ううん、私たち、じゃない。アキちゃんを、だ。 さっきの様子をみている限りあの子はリカに支配されきってるみたいだったけど、 それとは別に好きなのはアキちゃんみたいだ。 ユカもアキちゃんにご執心みたいだし、本当にこの子はもう。 そのアキちゃんはというと、私の腕の中で両目を閉じてとろけきった表情を晒している。 もう、アキちゃんたら。あなたのせいで泣いている子が目の前にいるのよ?

 私はなんだかちょっと腹が立ってきた。アキちゃん、あなたは理解してるの? あなたを取り合って私たちは、けんかしたり、泣いたりしてるのよ?

 もちろんそれは勝手な言い分だ。アキちゃんは分かっていて弄んでいるわけじゃない。 話を聞く限り、ユキちゃんの件もユカの件も偶々だ。 それでも、アキちゃんがユキちゃんを目覚めさせたのでなければ、 あの姉弟は私たちとはかかわりの無いところで生きていただろう。

 それなのに、今ユキちゃんは涙を流し、私とユカは睨みあいを続けている。 これは百%全部がそうとは言わないけど、少なくとも一部はアキちゃんの責任じゃないかしら。 少なくとも、ユキちゃんに関しては責任をとるべきじゃないかしら。

「ねえアキちゃん」

「……なあにい、リカちゃあん……」

 アキちゃんがとろけ切った声を出す。目は閉じたままだ。

「あの子を見て」

 私はユキちゃんを指差した。

● ● ●

「あの子を見て」

 リカちゃんに言われて、ボクはリカちゃんが指差す方を見た。

 ……ユキちゃん? 何を泣いてるの? ボクはユキちゃんの涙の意味が理解できなかった。 リアクションに困って動けないボクの背後からリカちゃんが離れる。

「ユキちゃん、いらっしゃい」

 ベッドに横座りしたリカちゃんがユキちゃんに手招きする。 ユカ先輩がユキちゃんの背中を一押しした。 おずおずとベッドに上がってきたユキちゃんが、ボクたちの前にぺたんと座り込む。

「……ユキちゃん、どうして泣いてるの?」

 ボクの問いかけに、ユキちゃんは答えてくれない。 代わりに答えたのはリカちゃんだった。

「アキちゃんたらひどい子。アキちゃんのせいで泣いてるのに、その言い方は無いんじゃないの」

「え、どうして、ボク、ユキちゃんをいじめたりしてないよ」

「……ばか、鈍感、にぶちん」

 リカちゃんに怒られちゃった。

「ねえユキちゃん、あなたもはっきり言わないと、この鈍感さんには伝わらないわよ」

 リカちゃんがユキちゃんに促す。なんだかボク、ひどい言われようのような。

「……アキ先輩、好きです」

「……え、うん、ボクもユキちゃんのこと好きだよ」

 こつん。頭に拳骨が落ちてきた。

「そういうことじゃないでしょ」

 後ろを振り向くとリカちゃんが怖い顔でこちらをにらんでる。 なに、なんで? 何で怒ってるの?

「ユキちゃん、もっとはっきり言わないと、アキちゃんには伝わらないわよ。 もっとはっきりした言葉で、あなたの伝えたいことを言いなさい」

 リカちゃんが強い調子でユキちゃんに言う。 ボクはユキちゃんのほうに向き直った。

「……アキ先輩、好きです、愛してます。ずっと一緒に居たいです。 ユキだけを見て、ユキだけを抱いて、ユキだけを愛してください!!」

 ユキちゃんはそう言うと、まだ横になっているボクの背に抱きついた。 背中にユキちゃんの涙を感じる。ボクはその告白を呆然と聞いていた。

「……だって、ユキちゃんの好きな人は、ユカ先輩だったんじゃ……」

 そこまで言ってから、ボクは自分が勘違いをしていたことに気がついた。 ユカ先輩とユキちゃんの関係は、あくまで姉弟関係の延長だ。 タチとネコだったり、ご主人様とメイドだったりするのも、全てはその範囲内。 ネコモードのときに何でも言いなりになっているのを見て誤解していたけど、 それと恋愛感情は別なのだ。

 自分が今までユキちゃんにひどいことをしていたことを理解して、ボクは愕然となった。 なんて言葉をかけていいかわからない。なにを言っても気休めにしかならないからだ。 リカちゃんやユカ先輩に助けてもらうわけにもいかなかった。 この問題はボクとユキちゃんだけしか解決出来ない。

 ボクは必死になって考え続けた。だけど解決策が思い浮かばない。それは当然だろう。 ボクがリカちゃんを捨てない限り、ユキちゃんから見れば問題の解決にならない。 だけどそんなことはボクには出来ない。だったらユキちゃんにボクをあきらめさせる? そんなことが自由に出来るようなら、世の中に痴情のもつれなどは存在しなくなるだろう。

 何も言えないボクと、その背中にすがって泣くユキちゃんに、リカちゃんが言葉をかけた。

「ねえアキちゃん、ユキちゃんのこと、好き?」

「……好き、だけど、それは……」

 それは友達や家族に対する好きと同じだ。ユキちゃんが望んでいるものとは違う。

「じゃあ、嫌い?」

「そんなことない!」

「ユキちゃんは、今すぐアキちゃんが自分を愛してくれないと嫌?」

 ユキちゃんが首を横に振るのが感じられる。

「結論はね、すぐには出せないと思うの。 アキちゃんはユキちゃんを嫌いになったりはしないわ。 だから、ゆっくりと考えましょう」

 ユキちゃんが肯く。ボクが身体を起こすと、ユキちゃんが背中から離れた。

「ねえリカちゃん、お願いがあるんだけど」

「なあに?」

「ユキちゃんを、ボクにするみたいにぎゅうってしてあげてくれない?」

「いいわよ」

 ボクは戸惑っているユキちゃんの肩を押して、リカちゃんのほうに押しやる。 リカちゃんはユキちゃんを胸に抱くと、頭を乳房に挟んで抱え込むようにした。 右手を後頭部に、左手を背中に廻す。 ユキちゃんははじめ居心地悪そうに身じろぎしていたけれど、 やがてリカちゃんに身体を預けてリラックスした。

● ● ●

「ユキちゃんを、ボクにするみたいにぎゅうってしてあげてくれない?」

「いいわよ」

 アキ先輩がユキをリカさんのほうに押しやりました。 リカさんがユキを抱きしめます。 ユキの頭がリカさんのおっぱいの間に抱え込まれました。 最初はちょっと戸惑ってしまいました。 でも、リカさんの鼓動の音を聞いていると、だんだんリラックスしてきます。 柔らかいおっぱいに包まれて心臓の音を聞いてると、凄く気持ちが落ち着いてきます。 思わずリカさんにしがみついて、心臓の上に耳をギュッと押し当ててしまいました。

● ● ●

 ユキちゃんを胸に抱き、その頭を押し付ける。 所詮は作り物の乳房だけど、その下の心臓は本物だ。 鼓動を聞かせながら、柔らかい髪をそっと撫で続ける。

「……あら」

 やけにおとなしいと思ったら、眠ってしまっている。 今日はいろいろあったし、泣き疲れたのかもしれない。 起こさないように、そっとベッドに横たえた。

「ありがとう」

 小声で礼を言われる。 いつのまにかベッドサイドに来ていたユカだった。 私は先ほどからの疑問を彼女にぶつけてみた。

「あなたはユキちゃんの実の姉なんでしょう? どうして面倒を見てあげないの?」

 沈黙が落ちる。ユカは何か考え込んでいるようだ。 私は答えを急かさずに、ユカの返事を待った。

「……私が男嫌いっていうのは、さっきアキが話したわよね」

「ええ」

「あれは嘘よ。本当は私、男が怖いの」

「どういうことなんですか」

 アキちゃんが問う。確かに一見男性恐怖症には見えない。でも私はピンときた。 さっきのアキちゃんへの乱暴な責めや過剰なドミナンスは、恐怖感の裏返しだったんだ。

「何かあったのね?」

 私の問いかけに、再び黙り込むユカ。先ほどより長い沈黙が続いた。

「……うちが母子家庭だって言うのも、話したわよね」

「ええ」

「父が親権剥奪された原因っていうのはね、未成年の親族への性的暴行なの」

「……」

 私とアキちゃんは口をはさまない。ユカの半ば独白じみた発言を黙って聞く。

「母は一応私と弟――祐樹を引き取ったわけだけど、あの男よりも私の方に原因があると思ってるみたいでね。 私たちの面倒なんかろくにみやしなかったわ」

「祐樹君の面倒をほとんど先輩がみたっていうのは、そういうことだったんですか」

「そうよ」

 そうやって語るユカの雰囲気は、さっきとはぜんぜん違っている。 どうやら普段から強気の自分を演出する仮面をかぶっているらしい。 それが判ると、彼女にもっていた敵意が急速に小さくなっていった。

 私は思わず、ユカを抱き寄せてしまった。 先ほどユキちゃんにしてあげたのと同じように、胸の中に抱きかかえる。 私より体格がいいので、どちらかというと私が彼女の頭に抱きついているようにも見えるが。

● ● ●

 唐突に、リカが私の頭を抱え込んだ。 身体が反射的に逃げ出そうとするのだが、しっかりと抱え込まれていて抜け出せない。

 二つの乳房に挟まれて、子供みたいに頭をなでられる。 こいつは本当は男なのに。この胸だって作り物なのに。 それなのに、私は母親に抱かれているみたいな安心感を覚えている。

 唐突に理解した。母性というやつは、女だから誰でも持っているというものじゃない。 現にうちの母親は、私と祐樹を棄てたも同然だ。 逆に、リカは生物学的には男だけど、母性本能を持っている。

 それを理解すると、私は全身から力を抜いた。 正座しているリカの胸にすがりつくような体勢になる。 私の方が若干背が高いので、ちょっとばかり様にならない構図ではあるのだが。

 そうやって髪の毛や背中を撫でられるにまかせていると、私の中で何かが溶けていった。 私の奥深くに突き刺さっていた、冷たく硬い何かが消えていく。

● ● ●

 ユカ先輩がリカちゃんに抱きしめられている。 ボクはそれを見ながら、リカちゃんの抱擁は威力抜群だなあ、と思った。 あのおっぱいに挟まれてぎゅうってされると、不安感やら何やらが全部溶けて消えちゃう。

 しばらくして、ユカ先輩がリカちゃんから離れた。

「ありがとう」

「……どういたしまして」

 二人の間は、出会った直後のとげとげした雰囲気からは考えられない柔らかい空気になっている。 ボクはひとまずピンチを脱したと思った。

「……ところでアキの所有権についてなんだけど」

 ユカ先輩が言い出した。……ぜんぜん脱していませんでした。

「その件については決着したと思ったけど?」

 リカちゃんの声に刺がこもる。

「あなたが二分の一、私とユキが四分の一ずつってところでどうかしら」

 あのー、ボクの自己所有権は? 基本的人権は??

「……勝手なことをいわないで!」

「うーん、じゃあ三分の二と六分の一ずつ」

 ユカ先輩、そういう問題じゃないと思います。

 二人の言い争いを聞きながら、ボクはユキちゃんと同じ毛布に包まった。 ユキちゃんがむにゃむにゃ言いながら抱きついてくる。 それを抱き返しながら、ボクはあの二人は明日の朝まで言い合いを続けるんじゃなかろうかと思った。

―了―