Blue Roses Garden > アキの話 > 第七話 ボーイ・ミーツ・ボーイ

ボーイ・ミーツ・ボーイ

 ふと、目が覚めた。何気なく目をあける。真正面にリカちゃんの顔があった。 リカちゃんの目も開いていて、ボクの顔をまっすぐ見ていた。

「……起こしちゃった?」

「ううん、大丈夫。さっきからおきてたから大丈夫よ」

「……もしかして、ボクまた泣いてた?」

「泣いてはいなかったけど、胸にしがみついてた」

「……ごめんね」

「謝らなくていいのよ」

 リカちゃんがボクの頭をかき抱く。 ボクはリカちゃんの胸に顔をうずめながら、最初にあったときのことを思い出していた。

● ● ●

 四月の夜風はまだまだ冷たい。 夜風に吹かれたスカートがゆれるたびに、ボクの心臓が跳ね上がる。

 女の子の格好で外に出るのは初めて。 誰かに気がつかれていないだろうか? お巡りさんに呼び止められたらどうしよう? いっぱいいっぱいになりながら、駅前の噴水に向かって歩く。

『大丈夫、電車に乗ってここまでこれたんだから』

『びくびくすると余計変になるから、もっと堂々と』

 自分に言い聞かせながら、何とか噴水の前にたどり着いた。 がくがくしている足を休ませるために、噴水のふちに腰掛ける。

「ねえ君、今暇かい?」

 深呼吸をした直後に、男の人に声をかけられた。 二十代後半ぐらいのサラリーマン風の二人連れだった。

「え、あの、ボ、えっと、わたし……」

「暇なら俺たちとお茶でもどう?」

 二人はボクの前に立っていて、後ろを噴水にふさがれているボクには逃げ場がない。 ボクの頭の中はパニック状態で、どうやって断るかどころか、何も考えることができなかった。 一人がなれなれしく右腕をつかんでくる。

「おまたせー」

 突然女の人の声が割り込んでくる。

「さ、いきましょ」

 ボクの左手首が細い手につかまれた。そのまま引っ張られて立ち上がらされる。

「ごめんなさいね、わたしたちこの後の予定があるの」

 男の人たちがあっけに取られている隙に、ボクは腕を引っ張られて歩き出した。

「あ、あの」

「駄目よ、ああいうのははっきり断らないと」

 ボクを引っ張っている人が振り向いた。にっこり微笑む。

 長い、綺麗な黒髪。真っ白な肌。大きな黒い目。

 すごい美人だと思った。

 急に自分が恥ずかしくなった。男のくせに女の子の格好をして歩き回って、 ナンパされかけておろおろして、挙句にこんな綺麗な人に迷惑をかけて助けてもらって。

「あの、ごめんなさい、ありがとうございます、それじゃ私これで」

「あん、まって」

「え?」

「……キミ、オトコノコじゃない?」

 心臓が止まるかと思った。足ががくがくと震え出す。

 やっぱり一目でわかっちゃうんだ。 きっと周りの人たちもみんなわかってて、変な奴と思ってるんだ。 そう思ったら、足が一歩も動かせなくなった。

 ここから逃げ出したいのに。

 でも、うちに帰ろうにも、もう一度電車に乗らなきゃいけない。 そう気がついたら、絶望にも似た感覚が押し寄せてきた。

「あっ、大丈夫よ、普通の人ならわからないわ」

 女の人が、少し慌てたように囁いてきた。でもボクのパニックは収まらない。

「あ、でも、ボク、えっと」

 自分でも何を言っているのかわからない。思考停止しているボクを、 女の人も少し慌てたように引っ張っていく。引かれるままにボクは小さな公園に入った。 ベンチに座らされると足の力が抜けてしまう。もうこのまま立てないんじゃないかと思った。

● ● ●

 目の前でベンチに座り込んでいる男の子を、正直どうしたらいいのかわからない。 パニック状態だから落ち着かせないといけないと思って、 とりあえず人目のないところまで連れて来たのだけれども、 この先どうしたらいいのだろう。

 困った私は、反射的に自分でも思っていなかった行動をとった。

 男の子の頭を両腕で抱え込み、胸の間に押し付ける。

 落ち着いてくれることをひたすら願いながら、私は彼を抱き続けた。

● ● ●

 女の人の胸にぎゅっと抱かれて、心臓の音を聞かされる。 暖かい体温と、かすかな香水の香り。 それらに包まれて、ボクのパニックが嘘のように引いていく。

 少し落ち着いたボクは、女の人の胸から顔を離した。 見上げると、こっちを見下ろしていた顔と視線が正面からぶつかり合った。

「……あの」

「あ、ごめんなさい」

 ボクの頭を抱え込んでいた腕が解かれる。

「あの、ありがとうございます……」

「少し、落ち着いたかしら?」

「はい……」

「お名前聞いてもいいかしら?」

「あっ、はい。晶(アキラ)っていいます」

「私はリカ。……あなたのこと、アキちゃんって呼んでいいかしら?」

「え……?」

「女の子がアキラじゃ変でしょう?」

「でも、ボク……」

「大丈夫、あなたはどう見ても女の子よ。私が判ったのは、ちょっと特別なわけありなの」

 そういわれて、ボクは少し安心した。

「ねえアキちゃん、あなたこのあと予定ある?」

「いえ……」

「一晩付き合ってもらっていいかしら?」

「え?」

 慌てて視線を上げたボクは、そのとき初めてリカさんの後ろに見えているネオンサインに気がついた。 周りを見回すと、『ご休憩』や『ご宿泊』の料金を表示した看板だらけ……。 ホテル街の真っ只中だった。

「どう?」

 リカさんが重ねて問い掛けてくる。

「……はい」

 半ば押されるように、ボクはうなずいていた。

● ● ●

 アキちゃんを連れて、手近なホテルにチェックインする。 幸い待たされることなく部屋に入れた。 下手に待たされて、アキちゃんがまたパニックになったら困るところだった。

 室内の備品や調度を確認する。

 ベッド(これは当然ダブル)に、L字型のコーナーソファとテーブル。 冷蔵庫にテレビ。ユニットバスタイプのバスルーム。

 アキちゃんをソファに座らせ、冷蔵庫からジュースのパックを取り出す。 ジュースをグラスに注いで、私もアキちゃんの隣に座った。

「……びっくりさせるといけないから、先に話しておくわね」

「?」

「私も女じゃないの」

「……え?」

「わけありっていうのは、そういうことよ」

● ● ●

 何を言われているのか判らなかった。

 リカさんが女じゃない? それって男って事? あれ、でもさっき胸があったような?

 呆然としているボクに、リカさんが言葉を続けた。

「あなたは、どうして女の子の格好をしているの?」

「ボクは……」

「男としての自分に違和感があった。違う?」

「……はい」

「でも、その格好で外に出るのは今日がはじめて?」

「……はい」

「……やっぱりね」

 リカさんは少し言葉を切って何か考え込んでいる。 ボクは何を言っていいのかわからず、黙って続きを待った。

「ねえアキちゃん、あなたにね、私を抱いてほしいの」

「え?」

「女として抱かれる私をね、あなたに見てほしいのよ」

「……」

「もちろん、無理にとは言わないわ。 あなたがいやなら、今すぐチェックアウトしてお別れしましょう」

● ● ●

「あなたがいやなら、今すぐチェックアウトしてお別れしましょう」

 そこまで言うと、私は黙ってアキちゃんの返答を待った。 拒否をされてもしかたがない。でも、多分そうはならないという予感があった。

「……あの、ボク初めてなんで、よろしくお願いします」

 アキちゃんが緊張した声で言った。私は胸の奥で安堵の息を吐きながら笑顔を作る。

「うふふ、こちらこそ一晩よろしくね」

 年上の余裕を作りながら、私はアキちゃんに拒否感を抱かせないための手順を大急ぎで考え始めた。

● ● ●

 リカさんに手を取られてベッドの上に移動した。 リカさんは丁寧な手つきでボクの服を脱がせていく。 やがてボクは、一糸まとわぬ姿にされた。 リカさんは服を脱がない。

 ベッドの上に座り込むボクの頬を、リカさんの手がはさむ。 そうしてボク達はキスをした。唇を合わせるだけの、軽いキスだ。 でも実は、ボクにとってはファーストキスだ。 どう動いていいのかわからない。ボクはリカさんに全てを任せた。

「……アキちゃん、もしかして初めて?」

「はい」

「……そう」

 リカさんはもう一度唇を合わせると、今度は舌を入れてきた。 リカさんの舌が、ボクの口の中をなぞる。 相手は同性だと頭ではわかっているのに、拒否感はまったくなかった。 ボクも舌を出してみる。ボクの舌とリカさんの舌が絡み合った。

 舌を絡ませ合っている間に、ふと気がつくとリカさんの右手がボクのペニスを撫でていた。 まだ柔らかいボクのペニスをそっと握った手が、ゆっくりと上下している。 口とペニスから与えられる刺激に、ボクの頭はぼうっとなってきた。

 唇が離れると、ボクはリカさんにもたれかかってしまった。 上体に力が入らない。リカさんはボクをベッドに寝かせると、添い寝するように寝転んだ。 その間もリカさんの右手はボクのペニスをしごき続けている。 いつのまにかボクのペニスは、限界まで硬くなっていた。

● ● ●

 すっかり硬くなったアキちゃんのペニスから手を離す。 アキちゃんはすでに荒い息を吐いている。

 私はベッドの上に起き上がると、ブラウスを脱いで、ブラジャーも外した。 私の上半身がアキちゃんの視線にさらされる。

「触ってみて」

 カップサイズで行けばDカップのバストをアキちゃんの目の前にさらす。 アキちゃんの両手がおずおずと上がり、片方ずつバストに触れた。

「舐めてみる?」

 顔の上に伏せるようにして、右の乳首をアキちゃんの口の上にもっていく。 アキちゃんの舌が、私の乳首を捕らえた。

「んっ、そう、そうやって、転がすように、うんっ、気持ちいいよ」

 いつのまにかアキちゃんの両手が私の乳房をしっかりとつかみ、左右の乳首を交互に吸われていた。

「あっ、やんっ、駄目、それっ、気持ちいい!」

 胸から沸き起こる快感が下腹部に沈殿していく。このままでは胸だけでいってしまいそうになる。 私は少々強引にアキちゃんを振りほどいた。

「……あ、ごめんなさい」

 アキちゃんが謝る。いけないいけない、ちょっと乱暴だった。

「あら、謝らなくていいのよ。すごく気持ちよかったから」

 私はアキちゃんの足元のほうに移動しながら言った。

「今度は、私がアキちゃんを気持ちよくしてあげるわね」

● ● ●

「今度は、私がアキちゃんを気持ちよくしてあげるわね」

 そういうと、リカさんはボクのペニスをくわえ込んだ。

 ぱくりとくわえられた先端が、口の中で舐めまわされる。 かと思うと、リカさんは頭を激しく上下させて唇で竿の部分をしごいてくる。 十数度の往復運動の後、今度は裏側部分を舌で舐めまわしてくる。

 口唇愛撫にすっかり翻弄されたボクの耳に、リカさんの声が聞こえた。

「ねえアキちゃん、こっちを見て」

 いつのまにか全裸になっていたリカさんが、ボクの右足をまたぐ位置でひざ立ちになっていた。 その股間に、ボクの視線は釘付けになった。

 すっかり大きくなったペニス。女性にはありえないものだ。 その男の象徴が、リカさんの股間についている。 ほっそりしたウェストとまろやかな腰のライン、すんなり伸びた足。 それらはどう見ても女性にしか見えないのに、いきり立って先端から蜜をこぼすのは男にしかないはずのものだ。 そのアンバランスな、でも不思議に美しい光景に、ボクの視線は貼り付けられたようになってしまった。

● ● ●

 アキちゃんが私のペニスを凝視している。

 私はその表情を注意して観察してみたが、嫌悪や恐怖の色は窺えない。 驚き八割、好奇心二割っていうところかしら。

 今まで何度も男性に裸身をさらしてきたが、撮影のための事務的な視線か、そうでなければ情欲にまみれた視線ばかりだった。 アキちゃんの視線は私にとってとても新鮮だ。

「……気持ち悪くない?」

「そんなことないです。リカさん、とっても綺麗……」

「うふふ、ありがとう。でもアキちゃんの身体も綺麗よ」

 アキちゃんの身体は、まだ少年のそれだ。 性別は男性だが、『男』ではなく『男の子』の身体。 すべすべした肌とあいまって、中性的な雰囲気をたたえている。

「……」

「……ねえアキちゃん、身体の中に、他人を受け入れるのってどんな気持ちだと思う?」

「え……?」

 彼が『女性として生きる』という人生を選んだら、遅かれ早かれそれを体験することになる。

 私の初めては最悪だった。

 闇金融に借金を残して失踪した父。 数年前に離婚していた母を頼ることもできずに、私はそれを返済する羽目になった。

 何の特技もない子供にできることといえば、言われるままに身体を売るだけだった。 あてがわれた最初の客は初物食い趣味のサディストで、私が激痛に泣き叫ぶのを喜んでいた。

 その後は男娼として身体を売って借金を少しずつ返しながら、 価値を上げるために薬を飲んだり胸を入れたりした。 身体に引きずられたのか、今ではすっかり女性としての自意識も身についてしまった。

 アキちゃんがそこまでひどい目に会うとは思わないけど、 運が悪ければトラウマになるような経験をするかもしれない。 私はこの子にそんな経験をしてほしくはなかった。

● ● ●

「他人を受け入れるのってどんな気持ちだと思う?」

 リカさんの質問に、ボクは返答できなかった。

 その事を考えなかったといえば嘘になる。 でも周りにそんなことを聞ける相手がいるわけもなく、ただ想像するだけだった。

「私が見せてあげるから、よく見ててね……」

 リカさんはそういうと、ベッドのサイドテーブルからハンドバッグを引き寄せた。 バッグの中からスキンと何かの小瓶を取り出す。 リカさんが小瓶のふたを開けると、中にはとろりとした液体が入っていた。 リカさんはまずボクのペニスにスキンをかぶせ、次に液体を振り掛け、それを手のひらで塗り広げる。

 それからリカさんはボクの腰をまたぐ位置に移動した。 リカさんのお尻がボクのペニスの真上にくる。

「……いくわね」

 リカさんが腰をゆっくり落とす。まずボクのペニスの先端がリカさんのお尻に触れた。 リカさんがそのまま腰を落としていくと、ボクのペニスが熱い肉の中にどんどん飲み込まれていく。

 ついにボクのペニスがリカさんの中にすっかり飲み込まれてしまった。 先端が突き当たりのようになったところにぶつかっている。 根元あたりはきゅっと締め付けられ、そこまでがリカさんの中に入っていることがわかる。

 リカさんのペニスは限界までいきり立ち、先端からこぼれる雫が竿を伝ってボクのおなかまで滴っていた。

「っ、はあっ、はあ」

 リカさんが大きく息を吐いた。 見上げると、目を閉じたリカさんがはぁはぁと荒い呼吸をしていた。

「だ、大丈夫ですか?」

 リカさんの苦しそうな息遣いに不安になったボクは、思わず問い掛けてしまった。

● ● ●

「だ、大丈夫ですか?」

 アキちゃんが心配そうな声を出す。私の様子に不安を覚えたらしい。 しかし、私が息を荒げているのは何も苦しいわけではなかった。

 気持ちいいのだ。

 アキちゃんのペニスが私の中に入ってくるにつれ、すさまじい快感がアヌスから沸き起こった。 今までどんなペニスに犯されたときにも感じなかった快感だ。

 肉体的な快感なら、感じたことはある。 相手が快感にもだえる姿を見るのを好む客は何人もいて、そういう客は積極的に快感を与えてきた。 指でねちっこく責めてきたり、アヌスを貫きながらペニスをオナホールで責めたり、 おもちゃを入れてきたり。

 でも、今感じているのはそれらとは根本的に違っていた。 なんというか、アキちゃんのペニスが入ってくると、それだけで気持ちいいのだ。

 足りないところをぴったり埋めるパズルのピースのように。

 あるいは快感の引き出しを開く鍵のように。

 アキちゃんのペニスは、入っているだけで私に今まで感じたことのない快感を与えてくれる。 これに比べれば、今までに覚えたことのある快感などは全てが児戯に等しい。 肉体だけではなく、魂の底から感じるような充足感だった。

「んっ、だっ、大丈夫、よ」

「でも」

「ほんとに、大丈夫、気持ち、よすぎる、だけだから」

 何とか受け答えする。

「動く、わね」

 アキちゃんの顔の両わきに手をつき、腰を動かし始める。

 腰を持ち上げると、アキちゃんのペニスが腸壁をこすり上げる。 そうすると、剥き出しの神経を撫ぜられるような快感が沸き起こる。

 腰を落とすと、ペニスの先端が直腸の行き止まりをつつく。 そうすると、杭を打ち込まれたように快感が突き抜ける。

 とにかく何をしても気持ちいいのだ。 こんな快感を感じることができたなんて、自分の身体が信じられない。 私の体内のどこにこんな快感が眠っていたのだろう? 私はわれを忘れて激しく腰を振り続けた。

● ● ●

 リカさんがボクの腰にまたがって腰を振っている。

 すごく気持ちよさそう。

 そういうボクも、ペニスから伝わる快感に頭が沸騰しそうになってる。 リカさんのアヌスがボクのペニスをこすり上げるたびに強烈な快感が背筋を 駆け上がり、身体がのけぞりそうになる。自分でペニスをしごいての自慰とは 比べ物にならない快感だ。

 やがて、腰の奥、ペニスの裏側からむずむずと湧き上がってきたものがある。 精液が出口を求めて昇ってきてるんだ。むずむずはどんどん膨れ上がり、 ボクのペニスを裏側から圧迫する。

「リカさあんっ、ボク、もう駄目ですうっ!」

「私もっ、もうっ、駄目、一緒に、いきましょう!」

 リカさんはそういうと、腰をいっそう激しく振り始めた。さらに激しくなった 刺激に、ボクのペニスはあっさりと降伏した。

「あっ、でるっ、でちゃいますっ!」

「あっ、私も、イクッ!」

 ボクのペニスから精液が射出される。それはスキンにさえぎられ、リカさんの 中に入っていくことはなかったけれども。

 同時にリカさんが後ろにのけぞり、身体を震わせた。リカさんのペニスも精液を 吐き出す。でもそれは、ボクの射精とはなんだか様子が違っていた。勢いよく 射ち出されるのではなくて、こぼれるようにとろとろと溢れ出ている。精液が ゆっくりと吐き出され続ける間、リカさんはずっと身体をふるわせ続けていた。

 不思議な射精が終わると、リカさんがボクの上に倒れこんできた。ボクはそれを 慌てて受け止める。

「だ、大丈夫ですか!?」

「んっ、大丈夫よ、アキちゃんのおちんちん、気持ちよすぎ……」

 リカさんは目を閉じて荒い息をしながら、全身を小刻みに震わせていた。お尻も きゅっきゅっと痙攣し、ボクのペニスを締め上げてくる。その胸の奥からは、 全力疾走した直後みたいな動悸が聞こえていた。

 そのまま数分静かにしていると、やっとリカさんは動けるようになったみたいだ。

「はあっ、すごかった……」

 リカさんが身体を起こし、お尻からボクのペニスを引き抜いた。すでに柔らかく なっていたペニスがあっさり抜け落ちる。温かいアヌスの中から外界に放り出されて、 なんだか不安になりそうだ。もしかしたら生まれた直後の赤ちゃんってこんな気分 なのかな。

「ごめんなさい、汚れちゃったわね。今綺麗にするわね」

 リカさんはそういうと、ボクのおなかにこぼれた自分の精液をなめ取り始めた。 さらにペニスからスキンも外し、まとわりついたボクのそれもなめ取る。

「あっ、リカさん、そんなこと、駄目ですよ」

「どうして? アキちゃんのザーメン、とってもおいしいわよ」

 そういってボクのペニスを丸ごと口に含み、激しく吸い上げる。中に少しだけ 残っていた精液が吸い出され、ボクは身体の中身を吸い出される感覚に身を震わせた。

「あっ、やっ、それだめえっ!」

 なんともいえない快感に、ボクはもだえるしかできなかった。

● ● ●

 アキちゃんの中身を一滴残らず吸い上げる。全て吸い出し終わると、アキちゃんは 精根尽き果てたといった感じでベッドに伏せた。

「うふふ、気持ちよかった?」

「はい……」

「私もとっても気持ちよかったわ。あんなの初めて。アキちゃんのおちんちんはすごいのね」

「……そうなんでしょうか?」

「少なくとも私とは相性ばっちりよ」

「……ボク、ちょっと疲れちゃいました……」

「初めてだものね。ゆっくり寝るといいわ」

「はい……」

 私はアキちゃんに布団をかけてあげると、部屋の照明を落とした。光源がサイド テーブル上のランプと間接照明のフットライトだけになる。

 薄暗い部屋の中を冷蔵庫まで歩き、ミネラルウォーターを取り出す。冷たいそれを グラスに注ぎ、一口ずつゆっくりと口に含んだ。

 口の中がさっぱりしたところで室内を見回すと、私たちの服がベッドの脇に落ちている。 私はそれを拾い上げ、丁寧にたたんでソファの上においた。

 もう一度アキちゃんの様子を見てから、バスルームに向かう。髪を濡らさないように さっと汗だけ流すと、備え付けのバスローブを羽織った。ソファに座り、もう一度 ミネラルウォーターで身体を冷ます。身体がしっかり乾いたのを確認して、私も ベッドに入った。

 ベッドの中のアキちゃんは、まるで胎児のように丸くなっていた。この姿勢で 眠る人間には何か不安なことがあるのだという。アキちゃんには何の不安があるのだろう? 私は丸まって眠るアキちゃんの身体に腕を回しながら、ぼんやりとそんなことを考えた。

● ● ●

 ――夢。

 今見ている風景が、夢だって事がわかる。もう何度も見た夢だから。

 パパに手を引かれて、お兄ちゃんが去っていく。 僕はそれを追いかけるんだけど、いくら走っても追いつけない。 パパたちはゆっくり歩いているだけなのに、どんどん遠ざかっていく。 お兄ちゃんは時々こっちを振り返りながら何か言ってるけど、声は聞こえない。

 いつのまにかパパとお兄ちゃんの後ろ姿は豆粒みたいになり、溶けるように消え去った。 周りに誰もいない真っ白な景色の中を、僕は泣きながら走り続けた。

● ● ●

 アキちゃんが背中を丸めて泣いている。 いやな夢でも見ているのだろうか、はっきり聴き取れないけどうわ言もいっている。

「アキちゃん、アキちゃん!」

 私はアキちゃんの肩をつかんで揺さぶった。揺り起こされたアキちゃんはすぐに目を覚ます。

「……リカさん?」

「眠りながら泣くなんて、怖い夢でも見たのかしら?」

 私はあえて軽い声で言った。うなされ方を見れば怖い夢なんてものじゃないのは判るけれど、 深刻になってもいけないと思ったのだ。

「……ちょっと、いやな夢を見ただけです」

 アキちゃんはそういうと、寝返りをうって私に背中を向けようとした。 私はその肩を抑え、彼を捕まえる。

「? リカさん?」

 私はアキちゃんの頭に両手を回すと、そのまま胸の中に抱え込んだ。 下になった右手を後頭部までまわし、左手を背中に回す。

 そのまま背中を向けさせたら、アキちゃんが悪夢の中に沈んでいきそうな気がしたのだ。 アキちゃんをしっかりと抱え込み、離さないようにする。

 アキちゃんは最初少し居心地悪そうに身じろぎしていたが、やがて身動きを止めた。

 しばらくそのままでいると、私の胸の中でアキちゃんが静かに泣き始めた。 私にしがみつき、顔を胸に押し当てている。胸の間を熱い涙が流れる感触があった。

● ● ●

 リカさんの胸に抱かれていると、胸の中につかえていた固いものがだんだん 溶けていくような気がする。溶けたそれが、涙になって溢れてくる。 ボクはリカさんにぎゅっとしがみつくと、声を殺して泣いた。 リカさんの手がボクの背中を撫でてくれる。

 優しく撫でられながら、ボクはママの抱擁を思い出した。再婚してからの、 ボクの方を見てくれないママじゃない。前のパパとお兄ちゃんがいた時の優しいママだ。

 ボクは赤ん坊がママのおっぱいにしがみつくみたいに、リカさんの胸にしがみついて泣き続けた。

● ● ●

 私の胸にしがみついて泣き続けるアキちゃんの背中を撫で続ける。 やがてアキちゃんはそのまま再び眠りについた。 私は眠るアキちゃんをしっかりと抱きしめる。

 ――この子が悪い夢を見ませんように。

 ――この子に安らかな眠りがありますように。

 私は祈った。神様なんていやしないと思っていたけど、ほかに祈る相手もいなかったから、 私は生まれてはじめて心の底から神様にお願いした。

 お祈りが効いたのかはわからない。でもアキちゃんはその晩はもううなされることはなかった。

● ● ●

 再び目を覚ましたボクは、自分がどこにいるのかわからなかった。

 誰かの腕の中。温かい胸。一瞬、ママに抱かれているのかと思った。

 それから、昨夜の記憶がよみがえってくる。自分が誰に抱かれているのか思い出した。 さらにリカさんの昨夜の嬌態も思い出した。ボクにまたがって腰を振るリカさんの裸身や、 そのアヌスの気持ちよさや、絶頂して精液をこぼすリカさんの姿を思い返す。

 困ったことに、ボクのペニスが硬くなっていく。リカさんに両腕で抱きかかえられた上に 足まで絡ませられているので、硬くなったボクのペニスがリカさんのペニスをつつく形になる。 リカさんから離れようとしてみるんだけど、そうするとリカさんの腕に力がこもって離してくれない。 じっとしていると力が抜けていくんだけど、離れようと動くと逆に抱きしめられてしまうのだ。

 ボクは抱き枕状態から脱出しようと悪戦苦闘し続けた。

● ● ●

 ごそごそと動き回る感触に目が覚める。

 腕の中を見ると、アキちゃんがじたばたともがいていた。

「……おはようアキちゃん。あふ」

「あ! おはようございます、リカさん!」

 なんだか慌てているアキちゃんを解放し、私は伸びをした。 ヘッドボードの時計に目をやると、アナログの針は六時二十分をさしている。

 もう一眠り――と思ったところで腰にあたる硬いものに気がついた。

 アキちゃんが焦っていたのはこれね。

「元気ね、アキちゃん」

 アキちゃんは一瞬きょとんとしていたけれど、直後に言葉の意味を理解して真っ赤になる。

「……ごめんなさい……」

「あら、別に謝らなくていいわよ。若いなら当然じゃない。私だって――ほら」

 私は布団をめくり、アキちゃんの前に自分の股間をさらす。 私のペニスもすっかり固くなって、元気に天を仰いでいる。

● ● ●

 リカさんのペニスを見ていると、なんだか変な気分になってくる。

 昨夜リカさんは、ボクのペニスをおいしそうになめていた。 味わうようになめ、しゃぶり、最後にはまとわり付いた精液をすすっていた。 あれってどんな味がするんだろう。

「……ねえリカさん、おちんちんっておいしいの……?」

 聞いてしまってから、自分がとっても恥ずかしいことをいったのに気がついた。 全身の血液が頭に上ったような気がする。

「……そうねえ、相手次第かな。あ、アキちゃんのおちんちんはとってもおいしかったわよ」

 リカさんは平然と答えてくる。よかった。変な奴だとか思われなくて……。

「……舐めてみる?」

● ● ●

「……舐めてみる?」

 軽くに聞いてみる。

 アキちゃんがペニスに興味を持ったのは判った。変な罪悪感や後ろめたさを 感じさせないために、なんでもないことのように振舞う。 女の子なら逆かもしれないが、いきなりセックスをするよりは抵抗が少ないだろう。

「……いいんですか?」

「どうぞ」

 アキちゃんがおずおずと私のペニスに顔を寄せる。私のペニスを両手で持ち、 戸惑うように見つめている。

「……最初は、舌を出して舐めてみて」

 私はアキちゃんにアドバイスを送る。アキちゃんは一度こちらを見てうなずくと、 思い切り舌を出して私のペニスの先端に触れた。

● ● ●

「あんっ!」

 リカさんの悲鳴に、ボクは慌てて舌を引っ込めた。ペニスを両手で持ったまま、 リカさんの顔を見る。

「あっ、大丈夫、心配しないで」

「でも……」

「本当に大丈夫よ。ちょっと気持ちよすぎてびっくりしただけだから……」

 ボクはもう一度、そっとリカさんのペニスを舐めた。 舌先で亀頭部をキャンディーのように舐めあげる。 それから、昨夜のリカさんの動きを思い出しながら、あちこち舐めていく。 最初は舌が触れるたびに上がる悲鳴におっかなびっくりだったけど、 そのうち気にならなくなった。リカさんも慣れてきたのか、悲鳴というよりは うめき声をあげるだけになる。

 それよりも、ボクはペニスを舐めるのがだんだん気持ちよくなってくる自分に戸惑っていた。 ボクにペニスを舐められて悲鳴を上げているリカさんを見ていると、もっともっとこの悲鳴を あげさせたいという気分になる。そういうつもりで目の前のペニスを見ると、なんだか いとおしく見えてくる。大胆になったボクは、舌で舐めるだけじゃなくて口の中にリカさんの ペニスを丸ごと含んでみた。

● ● ●

 私のペニスが、アキちゃんのお口に丸ごとくわえ込まれた。ぎこちないながらも熱心な 舌の動きが、私のペニスを容赦なく責める。

 ――キモチイイ――

 私の頭はそれ以外のことを考えられない。

 アキちゃんに舐められ、しゃぶられると、途方もない快感が押し寄せる。 今までもペニスをしゃぶられたことなど何度もあったが、それとは比べ物にならない。 この子に舐められると、まるで剥き出しの神経を直接舐められているように気持ちいい。 ペニスが溶けて、アキちゃんに舐めとられているんじゃないかという気がしてくる。

 やがて慣れてきたせいか、頭の動きが少し戻ってくる。それでもオーバーヒート気味だったが。

 回転の落ちた頭でアキちゃんの動きを見ると、私が昨夜して見せたのと同じ動作をしている。 つまり見よう見まねでやっているだけということだ。もしもアキちゃんが独自のフェラチオ テクニックを身に付けて全力で私を責めてきたら、私はひとたまりも無くいってしまうだろう。 しかし今のつたない動きでも、このまま続ければ私を絶頂させるに十分だ。

「やあっ、アキちゃんっ、私もう駄目!」

 限界を感じてあげた悲鳴に、アキちゃんの動きがぴたりと止まる。 焦らそうとしているのか、それとも口内に出されるのを恐れたのかと思ったが、そうではなかった。

● ● ●

「やあっ、アキちゃんっ、私もう駄目!」

 リカさんが悲鳴のような声をあげた。それを聞いたボクは、自分でも信じられないような 事を考えた。

 ――モッタイナイ――

 出させちゃったら、そこで終わりになっちゃう。それよりも、もっとリカさんのペニスを 感じたい……。そう思った次の瞬間、ボクの口は勝手に言葉をつむいでいた。

「……いくのなら、ボクの中でお願い……」

● ● ●

「……いいの?」

「……はい」

 アキちゃんの思わぬ発言に、私の心臓は激しく打ち始める。

 ――イレタイ――

 ――コノコヲ、ワタシノペニスデ、ツラヌキタイ――

 あっという間に私の頭はその考えで占拠され、それ以外の選択肢など吹き飛んでしまった。

 だからといって、私は闇雲にアキちゃんにのしかかっていったりはしない。 初めての子にそんなことをしたら、下手をしたら一生の心の傷になってしまう。

 私のように。

 だから私は、可能な限り丁寧にアキちゃんを扱う。

 最初は口でだった。うつぶせにしたアキちゃんのアヌスをそっと舐める。 唾液をたっぷり乗せた舌で、最初は周辺から、次に肛門粘膜を、丁寧に丁寧に舐め上げる。 舌先で肛門を押し広げ、内部にも唾液を注ぎ込んだ。

 私はいったんアキちゃんから離れ、アナルローションのミニボトルを手に取った。 左掌に一すくい出し、右手の指先に掬い取る。

 最初は中指。指先を第一関節までもぐりこませてアキちゃんの反応を探る。 次に第二関節。アヌスが私の指をきつく食い締める。顔をうずめた枕を握るアキちゃんの手が、 力の入れすぎか真っ白になっている。背中も震え、極度の緊張状態なのがわかる。 私はいったん指を抜き去ると、アキちゃんを背後から抱きかかえた。

● ● ●

 お尻から圧迫感が消える。

 次は何をされるのかと思っていたら、リカさんに背中から抱きしめられた。

「緊張しないで……」

 リカさんはうつぶせのボクの背中に覆い被さると、背中に唇を這わせてきた。 首筋、肩口、背筋、肩甲骨、肋骨、腰骨、尾てい骨――そして再びアヌスへ。 同時に、再び指が入ってくる。緊張するボクのアヌスを、今度は同時にリカさんの舌が舐める。

 指が入ってくる。緊張したアヌスがぎゅっと締まる。舐められる。緊張が緩む。 指が入ってくる、緊張する、舐められる……。

 数回繰り返されて、リカさんの指がボクの中にすっぽりおさまった。 リカさんはそのままじっとしている。やがてなじんできたのか、ボクのアヌスから緊張が消える。 リカさんの指が抜きさられると、逆に喪失感が感じられた。 ひとつため息を吐いてから振り返る。

「大丈夫? 痛くない?」

「はい……」

「じゃあ、続きいくわね」

 リカさんはそういうと、今度は人差し指と中指の二本をボクのアヌスに押し当てた。 さっきよりきつい感触に、ボクのアヌスはまた緊張する。 それをまた、リカさんの舌が和らげる……。

● ● ●

 何とか二本の指がアキちゃんの中におさまった。そっとひねってみると、 ぎゅっと締め上げられる。あまり刺激を与えないほうがよさそうだ。私はアキちゃんの お尻がなじむまでじっと待った。

 やがて緊張がほぐれてきたのを感じると、中で指を曲げ伸ばししたり、 少しだけ前後させたりしてみる。そのたびにアキちゃんはうめき声をあげるが、 苦痛を感じている様子は無い。

「どう……?」

「……変な、感じっ、です」

 苦痛を感じているわけではないが快感を感じているわけでもない、というところか。 まあ当然だろう。いきなり快感を感じるなど、よほど素質のある人間だけだろうから。 とりあえず今は、挿入したときに痛みを感じさせない程度にほぐれていればいいのだ。

 アキちゃんの中をくすぐりながら、肛門の締め付け具合を観察する。 私の指を締め付ける力が、徐々に弱くなっていく。 背中やふとももの緊張も緩んでいる。

 そろそろ頃合だろうか。

 私はもう一度ローションのボトルを取ると、アキちゃんに差し込んだままの右手に中身をたらす。 二本の指を使って、アキちゃんの中にそれを塗りこんだ。ついで右手を抜き取ると、 手早くスキンを装着する。スキンの上からもローションをしっかり塗りつけた。

 アキちゃんのふとももにまたがる。背中に覆い被さり、先端をアヌスにあてがう。 ほぐれたアヌスに先端が半ばめり込んだとき、私はアキちゃんに言った。

「いくわよ」

● ● ●

「いくわよ」

 リカさんがそういった次の瞬間。

 ――メリッ

 そんな音がボクの中からした気がした。

 次の瞬間。

 焼け付く様な痛みが襲ってきた。

 痛いなんてものじゃない。処女喪失の瞬間の描写で「焼け火箸を押し付けられたような」 というのを読んだことがあるけど、まさにそんな感じだった。 やかんからポットにお湯を移そうとして手にかけちゃった時のことを思い出した。

「いっ、痛っ、つっ!」

 思わず声がもれる。リカさんの腰の動きが止まり、先端部分だけが侵入した状態で固定される。

「アキちゃん、力抜いて!」

 リカさんが言ってくるけど、ボクのアヌスはまったくボクの言うことを聞かない。 勝手に全力でリカさんのペニスを締め付けている。それがまた痛みを生み、 ボクは苦痛でまともに呼吸もできなかった。

「ぬ、抜いてっ、おっ、お願い、抜いてええっ!」

 何とかそれだけいったけれど、リカさんの返答はボクを絶望させるものだった。

「無理よ、この状態じゃ」

 リカさんがペニスを軽く引き戻す。先端部がボクのアヌスの裏側に引っかかった。 内臓を丸ごと引っ張り出されるようなショックがあった。 まるでアヌスの直径の何倍もの大きさが中で引っかかったみたいに感じる。 無理に抜こうとしたら、間違いなく裂けてしまうと思った。

 無理やり押し広げられる苦痛と、もう二度と抜けないんじゃないかという絶望感に、ボクはおののいた。

● ● ●

 アキちゃんが喉を締められているみたいな苦しそうな息をしている。

 私はじっと待つ。

 この状態はそう長くは続かない。少し待てば、再び緊張が緩んでくる。 アキちゃんのアヌスが、私のペニスになじむまでの辛抱だ。

 しばらくすると、アキちゃんの呼吸が落ち着いてきた。 といってもまだ荒い息なのだが、先ほどまでの絞め殺されているみたいなものではなく 全力疾走をした直後程度だ。アヌスの締め付けも緩んでいる。

 私は腰を押し進めた。ペニスが少し入るたびに、アキちゃんはうめき声をあげて身体を震わせる。 苦痛を長引かせないように、私は出来るだけ迅速に全てを奥まで押し込んだ。

 根元まで収まった状態で、私はじっと待った。

「リカさん……」

「……バージンブレイクね。おめでとう、なのかしら」

 冷静なふりをしながら、実のところ私は必死だった。

 ――キモチイイ――

 ペニスから先ほど舐められた以上の快感が湧き起こる。暴れだし、アキちゃんの中を 思うさま蹂躙しようとするペニスを、私は必死に押さえ込んでいた。

● ● ●

 ボクの中を占領するリカさんのペニス。時折ぴくぴくと震えている。 ほんの十数センチのはずなのに、まるで喉元まで来ているように感じられる。

 肉体から感じられるのは、痛み、違和感、圧迫感といったものだけだ。 はっきりいって快感なんかはちっとも感じられない。 これだけ見ると、昨夜のリカさんの乱れようは演技だったんじゃないかって思える。

 でも、身体から感じるそれらとは別のものが、ボクのもっと内側から感じられる。

 充足感? 満足感? 達成感?

 どういったらいいのかわからない。でも、ペニスを受け入れたことで今までとは違う 自分になった気がする。自分の本来の役割を果たしたような、こうなることが当然だったような。 そんな気がする。

 リカさんは動かない。きっとボクの身体がなじむのを待ってるんだと思う。 いつのまにか痛みは薄れ、違和感は相変わらずだけど、苦痛はだいぶ薄らいだ。

 改めてリカさんに注意を向ける。リカさんは荒い息を吐きながら、何かを我慢するように 時折身体を震わせていた。背中にあたる胸の奥で、心臓が激しく打っているのが伝わってくる。

「リカさん……?」

「……ごめんなさい、うごいても、いい?」

 苦しそうな、切れ切れの言葉で訊いてくる。

「……はい」

 ボクは、覚悟を決めて答えた。

● ● ●

「……はい」

 アキちゃんのその答えを聞いたとたん。

 私は腰を振り始めた。

 ペニスがつい先ほど処女を失ったばかりのアヌスをえぐり、腰がアキちゃんの尻たぶを打つ。

 ――キモチイイ――

 ――キモチイイ!――

 ――キモチイイ!!――

 頭の中が快感に占拠される。 枕にしがみついたアキちゃんを見て、私の中の冷静な部分が『もっと丁寧にやれ』と告げている。 しかしそれを圧倒的に上回る情欲が身体を支配し、ひたすら快感をむさぼらせる。

 乱暴にしたらアキちゃんが苦しいのはわかっているんだけど、コントロールが出来ない。 暴走する肉欲と快感に理性は圧倒され、私はひたすらアキちゃんの身体をむさぼり続けた。

● ● ●

 リカさんの動きが急に止まった。お尻に重量がかかり、リカさんが体をのけぞらせているのがわかる。 ペニスがいっそう深く打ち込まれ、中で痙攣している。

 『ああ、射精したんだな』というのがわかった。

 リカさんがボクの中で射精してる。そう思ったら、急に涙が出てきた。 でも、この涙は苦痛や悲しみの涙じゃない。

「ア、アキちゃん、ごめんなさい、痛かった?」

 リカさんが慌てた声をかけてくる。

「……ううん、違うんです。ボク、うれしくて……」

 ボクはそういうと、身体をひねって後ろを向いた。リカさんは数秒間ボクの顔を じっと見つめていたけど、突然顔を寄せてきてボクの唇を奪った。 ボクも積極的にキスを返し、ボク達は舌を絡めあった。

● ● ●

 しばらくベッドで身体を休めたあと、私たちはシャワーを浴びて身だしなみを整えた。 チェックアウトの時間はもうすぐだ。

 ホテルを出てしまえば、アキちゃんとはお別れ。最初から一晩だけの約束だったから。

 そんなことを考えて憂鬱になっていた私にアキちゃんが話し掛けてきた。

「あの……、リカさん……」

「ん? なあに、アキちゃん」

「あの、えっと、もしリカさんさえ良かったらなんですけど……」

 アキちゃんがうつむいてもじもじしながら言う。

「なにかしら?」

「……また、会ってもらえませんか?」

 アキちゃんは意を決したように顔を上げると、はっきりと言った。

 その言葉を聞いた瞬間、私の憂鬱は綺麗に吹き飛んだ。 アキちゃんが私を望んでくれた。 そう思うだけで、体を重ねたとき以上の昂揚感が私を包む。

 頭の上で天使がくるくる回りながらトランペットを吹いているような気がする。 文字通り、天にも昇る心地というやつだ。 舞い上がりそうな自分を抑えるため、私はとにかく何でもいいから言葉を発した。

「うふふ、いいわよ。お化粧の仕方とか、お洋服の選び方とか、たくさん教えてあげるわね」

「ありがとうございます、リカさん!」

「うーん、その『リカさん』はちょっとよそよそしいかしら。 『リカちゃん』って呼んでくれない?」

「え……、でもそれは……」

「嫌?」

「そんなことは無いです! リ、リカちゃん……」

 赤くなりながらアキちゃんが私の名前を呼ぶ。 呼ばれると、私の心臓がドキンとはねる。 私はアキちゃんを抱きしめると、もう一度キスをした。

● ● ●

「あんっ、アキちゃん、なに考え込んでるの?」

 下になったリカちゃんが言う。 回想から引き戻されたボクは、お尻でリカちゃんのペニスを締め上げながら答えた。 下からの突き上げに、ボクの返答は途切れ途切れになる。

「んっ、初めて、会った、時の、事っ!」

 それを聞いたリカちゃんは、わざとらしく片手を頬に当てながらため息をついた。

「ああ、あのウブなアキちゃんはどこに行っちゃったのかしら。 男の人を逆ナンパしまくるわ、初物食いはするわ、またがって自分から腰は振るわ、中出しされるの大好きだわ……」

 そんなことを言いながら、目は笑ってるし、空いている手はボクのペニスをしごいてるし。

「あっ、ひどおいっ、そもそも、リカちゃんがっ、ボクのバージン、とったくせにいっ」

 ボクはアヌスをぎゅっと締めると、円を描くように腰をグラインドさせた。

「あっ、それだめっ、出ちゃう!」

「んっ、いいよ、ボクの中に、全部出してっ!」

 リカちゃんのペニスの先端がボクの一番奥を打ち、その場所で精液を吐き出した。 お腹の奥にたたきつけられた熱い衝撃が、ボクを絶頂に押し上げる。

「あっ、いくっ、ボクもいっちゃうっ!」

 ボクのペニスの先端から、精液がとろとろと溢れ出した。精液が押し出されるたびに、 前立腺から快感が湧き起こる。十数秒の連続した絶頂の後、全身から脱力したボクは リカちゃんの上に倒れこんだ。お互いに脱力して動くことも出来ず、ボク達はその まま重なり合った。

 数分後、どうにか動けるようになったボク達はどちらからとも無くキスをする。

「リカちゃんのザーメン、おなかの中でタプタプいってる。これじゃボク妊娠しちゃうよ」

「うふふ。赤ちゃん出来ちゃったら、産んでくれる?」

「うん。そしたらボク、未婚のママだね」

「あら、そうなったらちゃんと結婚しましょうね」

「えーっと、じゃあ、出来ちゃった婚?」

「うふふ、そうなるかしら。ああ、アキちゃんのウェディングドレス、きっとすごく可愛いわ」

「リカちゃんはタキシード?」

「あら、勿論私もウェディングドレスよ?」

「えー?」

「あら、ご不満かしら?」

「……ううん、それもいいかも。両方新婦さんっていうのも、それはそれで……」

「……ところで、そろそろ抜かないの?」

「……もうちょっと……」

「アキちゃんのえっち。お尻が私のおちんちんの形になっちゃうわよ?」

「うんっ、いいよっ、ボクのお尻もリカちゃん専用にしてっ! その代わりリカちゃんの おちんちんもボク専用ね!」

 ボクはそういうと、リカちゃんの首にしがみついてもう一度キスをした。

―了―