Blue Roses Garden > マグナハウス > 第二話 夜の結婚式

夜の結婚式

 某繁華街のはずれにあるショーパブ・マグナハウス。 ここで今宵、ささやかな結婚式が行われる。 決して公にはおこなえない、その結婚式の内容とは――。

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 マグナハウスのステージに、教会のものを模した祭壇がしつらえられている。 祭壇の前には兎頭の司祭が立ち、新郎と新婦を待っている。 フロアの照明は落とされ、壁際の間接照明だけが足元を照らしていた。 フロアの配置が少し変更され、まっすぐにステージに向かう道が作られていた。

「ご来場の皆様、本日はご足労誠にありがとうございます」

 司祭服の兎がフロアに向かって語りかける。

「皆様もご存知の当店ホステス藤原茉莉香が、このたび当店をご贔屓いただいていた太田敬一様と専属愛人契約を結び、当店を退職する運びとなりました。 手続き上はあくまで愛人契約ですが、両名は深い愛情に結ばれて生涯を共にしたいと願っております。 しかしながら、なにぶんにも藤原の戸籍上の性別は男性ですので、残念ながら公に結婚式などを催すことは出来ません」

 フロアのあちこちで不満げなささやきが聞こえる。 嘆かわしいことだ、と言わんばかりに頭を振る者もいる。 皆、世間や公的機関、教会の無理解を嘆いているのだ。

「そこで、ささやかながらこの場を使いまして、皆様と共に両名を祝福せんと願う次第であります」

 兎の言葉に、フロアから拍手が上がる。

「それでは新郎と新婦の入場です」

 ウェディングマーチが鳴り響くと同時に、スポットライトが点灯する。 照らし出されたウェディングロードを、真っ白なタキシードとドレスに身を包んだカップルがゆっくりと進んだ。 新婦のかぶるヴェールの裾を、二人のバニーボーイがささげ持つ。

「それではこれより、太田敬一、藤原茉莉香両名の結婚式を執り行います」

 兎が言うと、フロアから拍手が巻き起こる。 客もホステスもアシスタントたちも、全員がこのカップルを祝福しているのだ。

「太田敬一、貴方は健やかなる時も病める時も、常にこの女を愛すると誓いますか?」

「誓います!」

 新婦が力強く、いささか力強すぎる宣誓をする。 フロアのあちこちから笑い声が上がる。

「藤原茉莉香、貴女は健やかなる時も病める時も、常にこの男を愛すると誓いますか?」

「……誓います」

 頬を赤らめ、恥ずかしげに宣誓する新婦の姿に、再びなごやかな笑い声が起こった。

「それでは両名、指輪の交換を」

 つつがなく指輪の交換、誓いのキスが終わり、万雷の拍手が両者を祝福した。

「さてそれでは、ここから後は二人の時間です。邪魔者は退散すると致しましょう」

 兎はそう言うと、ステージの袖から下がる。 入れ替わりにアシスタントたちがステージに上がり、 祭壇を片付けると替わりにダブルサイズのベッドを運び込んだ。 キャスターの転がるゴロゴロという音が響く。 ステージ中央にベッドを置くと、キャスターのロックがかけられる。 ベッドがしっかり固定されたのを確認すると、アシスタントたちもステージから下がった。

 新郎と新婦がベッドに腰掛ける。 ウェディングドレスのまま、ヴェールを上げただけの茉莉香が敬一に話し掛けた。

「あの、いまさらだけど本当によかったの……?」

「僕たちの初夜の事かい?」

 茉莉香は恥ずかしげに肯く。 店を借りて式をおこなう代わりに、ステージ上で二人の初夜を披露する事になっているのだ。

「僕が本気で茉莉香ちゃんを愛していることを、みんなに知ってもらいたいんだ。 茉莉香ちゃんは嫌なのかい?」

「……ううん。私も、私が貴方に全てを捧げることを、みんなに知ってもらいたいです」

 見詰め合う二人に、もはや言葉は必要なかった。 敬一が茉莉香の背中に両手を回すと、茉莉香も敬一の首に手を回して抱きつく。 二人は熱い口付けを交わした。互いの口をむさぼり、唾液を交換し合う。 お互いに見えているのは相手だけ、もはやステージもフロアも二人の意識からは消失していた。

 茉莉香と敬一の唇が離れる。茉莉香はいったん敬一から離れると、ヴェールとティアラを外す。 敬一に背を向けて座りなおすと、首をひねって敬一の方を見る。

「脱がせてください……」

 敬一は黙ってドレスの背中に手を伸ばすと、ドレスの背中のホックを外していく。 全てのホックが外されると、茉莉香がもう一度立ち上がった。 ドレスがするりと落ち、足元にわだかまる。

 全て白でそろえられたブライダルランジェリーが表に晒された。 総シルクのビスチェとコルセットが胴を覆い、豊かな胸と細いウェストが強調されている。 同じくシルクのロンググローブとストッキングが手足を包む。 そして茉莉香の大事なところを隠すショーツは、総レースのフェミニンなデザイン。 しかし今その可愛らしいショーツは、敏感な部分を保護する、という大事な役目をまったく果たしていなかった。 屹立したペニスが、ショーツから完全にはみ出して頭を覗かせていたからである。

「……興奮しているのかい?」

 敬一の問いに、茉莉香は局部を両手で隠すしぐさで答える。

「恥ずかしいです。見ないで、敬一さん……」

「恥ずかしがらなくていいよ。だって僕もこのとおりなんだから」

 敬一はベッドに座ったまま、ズボンのジッパーを下ろした。 トランクスの中から自分のペニスを取り出す。 それはすでに興奮し、硬く屹立していた。

「ああ……」

 敬一のペニスを目にした茉莉香は、うっとりとした表情でその前にひざまずいた。

「私のせいでこんなになってしまって……、ごめんなさい……」

 シルクのグローブに覆われた両手で、硬いペニスを包み込む。 その手をゆっくりと上下させると、敬一が快楽のうめきを上げた。

 茉莉香はためらうことなく目前のペニスを口に含んだ。 鮮やかなルージュに染められた唇が、肉の棒を飲み込んでいく。 一度根元近くまで飲み込むと、ゆったりとしたリズムでストロークする。 茉莉香の頭部が上下する動きにあわせて、敬一がうめきを上げた。

 そのまま片手でコルセットのストラップを緩め、ビスチェごと脱ぎ捨てる。 茉莉香の豊かな胸が開放され、ぶるんとゆれた。 胸で敬一のペニスを挟み込むと、先端を唇で愛撫し、竿を乳房でしごき上げる。

「……茉莉香ちゃん」

 敬一は茉莉香を押しとどめると、ペニスから口を離させた。 茉莉香は上を向くと、不満げな視線を敬一に向ける。

 敬一は黙って服を脱ぐ。全裸になるとベッドに横たわり、茉莉香を手招きした。 茉莉香はショーツを脱ぎ捨てると、敬一の股間に自分の顔、自分の股間に敬一の顔がくるように敬一におおいかぶさった。 再び茉莉香の口唇奉仕が始まると、敬一も茉莉香のペニスをくわえる。 しばらくの間、二人が互いのものを舐め、しゃぶり、吸い上げる音だけが続いた。

 茉莉香は顔を上げると、敬一のほうに向き直った。敬一も茉莉香のペニスを開放し、茉莉香を見返す。

「敬一さん、私、もう」

「……わかった」

 今度は茉莉香がベッドに横たわり、その両足の間に敬一が割って入る姿勢をとる。

「いくよ、茉莉香ちゃん……」

「はい……」

 敬一のペニスが、茉莉香のアヌスを捕らえる。敬一が腰を進めるたびに、茉莉香の嬌声が上がる。 やがて敬一のペニスが茉莉香の最奥まで侵入を果たした。 茉莉香が両腕で、敬一の背中にしがみつく。 二人はそのまま深いキスを交わした。舌が互いの唇を割って入り、あふれた唾液が茉莉香ののどを濡らす。

 唇を離すと、敬一は腰を動かし始めた。いきり立ったペニスが茉莉香のアヌスを出入りし、 そのたびに茉莉香は甘い悲鳴をあげる。 時には入り口近くで浅い往復運動を、時には最奥まで一気に突く深い一撃を、 円を描いたかと思うと真っ直ぐストレートな一撃を……。 敬一はもてる全てのテクニックで茉莉香を攻め立てた。

 同時に両手は茉莉香の胸を攻めるのを忘れない。 乳房全体を軟らかく愛撫したかと思うと、硬くしこった乳首を二本の指で挟み込む。 乳首同士をこすり合わせたかとおもうと、乳房を押しつぶすように揉む。 茉莉香の弱点である胸を、徹底的に攻め続けた。

「敬一さんっ、わたしっ、もう、駄目、駄目です!」

「ぼくも、だよ、茉莉香、ちゃん」

「お願いです、最後は、一緒にっ!」

 そして二人は同時に果てた。敬一の腰の動きが止まり、茉莉香の両足が敬一の腰を締め上げる。 敬一のペニスが精液を茉莉香の中に撃ち込み、茉莉香のペニスは自分の腹に精液をぶちまけた。

 先に絶頂から覚めたのは敬一だった。自らのペニスを茉莉香の中からゆっくりと引き抜く。 まだ動けない茉莉香におおいかぶさると、優しく口付けをした。 茉莉香も口付けを返すと、両手で敬一の首に抱きつく。

 突然、万雷の拍手が巻き起こる。 自分たちの居る場所を思い出した敬一と茉莉香は、赤くなりながらフロアを見渡した。 フロアに居る全ての人間が、客もホステスも、アシスタントもバーテンダーも二人に拍手を送っている。 二人はフロアに向かって、深く頭を下げた。

「いやいやいや、お若いお二人の美しい愛の営みに、皆様感銘を受けられたようですね」

 いつのまにかステージに上がっていた兎が、マイクをもって話している。

「さて此処で、当店よりお二人に、御結婚祝のプレゼントが御座います」

 兎はベッドのそばによると、敬一に向かって語りかけた。

「いかがでしょう、受け取って頂けますでしょうか?」

「え、あ、はい……」

 打ち合わせに無い展開に、敬一が戸惑いながら答える。 敬一から見えない位置で、茉莉香は笑いをかみ殺していた。

「それでは、こちらをどうぞ」

 兎が指を鳴らすと、バニーボーイがトレイをささげ持って現れた。 銀のトレイの上に何やら載っている。 差し出されたトレイから、敬一は載せられていた物を取り上げた。

「――えーと、これは……?」

 それは、直径3センチほどのプラスチックのリングとディルドーをストラップでつないだようなものだった。 レズビアンの女性がつかうストラップオン・ディルドーのようにも見えるが、 ディルドーの位置が下より過ぎるしリングの用途がわからない。 さらにストラップの固定金具にやけにごつい錠がついているのも意味不明だ。

「これはですね、いわゆるところの貞操帯のようなもので御座います」

 見当がつかない、といった表情の敬一に、兎が解説をする。

「後ろのディルドー部分を差し込んだ状態で前のリングでペニスの根元を締め上げます。 そしてストラップを固定しますと、こちらの鍵で錠を外さない限り脱ぐことは出来なくなるわけです。 リングはいわゆるコックリングの機能を果たしますので、外さない限り射精する事はできなくなります。 ディルドー部分は太田様の物から型取りさせて頂いた物ですので、 これを入れている限り彼女のアヌスは常に太田様の物の形を覚えこまされるわけですね。 奥様がお出かけのときにこれをつけておけば、旦那様は安心、 奥様も愛する男性と常に一緒に居られるという、一石二鳥な逸品です」

「あ、いや、でも僕は彼女にそんなもの」

「それ、私がお願いしたんです」

 敬一の言葉を、茉莉香がさえぎった。

「敬一さんをびっくりさせたくて、秘密にしておいて貰ったんです」

「茉莉香ちゃん……」

「私の全部を、敬一さんに支配してもらいたいんです。駄目ですか?」

「……いいや、そんなことは無いよ。そこまで思っててくれたなんて、嬉しいよ……」

「だったらお願いします、敬一さんの手でつけて下さい……」

 茉莉香はベッドにあお向けになると、両足を開いて膝を抱えた。 アヌスから、先ほどの名残が滴り落ちる。

「こぼれないように、このまま……」

 ディルドーが茉莉香のアヌスに差し込まれる。 敬一の精液を潤滑剤に、抵抗無くするりと飲み込まれた。 次にコックリングでペニスを戒めると、ストラップをウェストで止めて錠をロックする。 兎が敬一に、鍵と小さなリモコンを渡した。

「ディルドーの先端と根元近くにはローターが組み込んでありまして、そのリモコンで操作出来る様になっています。 先端をうごかせば奥深くを、根元のほうを動かせば入り口近くを刺激出来るわけです」

 敬一は両方のスイッチをオンにしてみた。

「んっ、くふっ」

 内部からの刺激に茉莉香のペニスが立ち上がるが、 ちょうど彼女のサイズに合わせて調整されてコックリングが根元をぎちぎちと戒める。 たしかにこれなら、どんなに刺激されても射精する事は出来ないだろう。

 敬一はローターのスイッチを切ると、無言で茉莉香を抱きよせた。

「敬一さん……」

 二人は暫く見つめあうと、後は言葉もなくキスを交わした。 再び拍手が湧き起こり、愛し合う二人を祝福した。

―了―


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