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PROJECT ANGEL 2
- Angel's memories -

 黒いバーサーカーの放ったビームが私の最後のビットを破壊しました。バーサーカーは私の搭乗するアサルトアーマーに肉薄し、そのビームサーベルで私を貫こうとします。死を覚悟したその時、隊長の機体が私とバーサーカーの間に割り込みました。私を貫くはずだったサーベルが、隊長の機体に突き刺さっているのがはっきりと見えました。

「隊長!」

『……カナミ、生きろよ』

 隊長機は熱核反応の炎とともに消滅し、バーサーカーを道連れにしました。僚機を全て失い、私は呆然としながら宇宙に漂いました。

『……スコードロン、応答せよ。繰り返す、こちら《サラトガ》、ファルコン・スコードロン、応答せよ』

 誰かが呼んでいる、と思ったら、それは私の所属する第16パトロール艦隊の軽空母、《サラトガ》からの通信でした。

「……こちらファルコン(フォー)。敵勢力殲滅。損害3。生存は自分のみ」

「《サラトガ》了解。ファルコン4は帰投されたし。オーバー」

「……ファルコン4了解。オーバー」

 何とか母艦の方位を割り出し、私はウルフハウンドをそちらに向けました。加速が終了すると、着艦までは慣性飛行での巡航です。

 するべきことが無くなると、同僚を全て失った悲しみが私に襲い掛かってきました。

 つい先ほどまで生きて笑っていた仲間たちが、ほんの12時間前には肌を重ねた彼らが、もう宇宙のどこにもいません。一年前に私が生まれたとき以来ずっと一緒にいた人たちと、もう二度と会うことが出来ないのです。

 母艦へと向かうウルフハウンドのコクピットの中で、私は声を殺して泣きました。

 私は戦闘用人工ニュータイプクローン、通称《エンジェル》、シリアルナンバー0096、個体名《カナミ》。戦うため、そして男の人に愛されるために生み出された、天使の模造品です。

 ――二十二世紀。

 太陽系内の諸惑星にその手を伸ばした人類は、初めて自分たち以外の敵と遭遇した。

 外宇宙から飛来し、金星に落下した隕石。それは単なる珪素や鉄、あるいは炭素の塊ではなかった。

 《バーサーカー》――己が死するまで戦う狂戦士の名を冠せられた無人戦闘機械群。人類の外に起源をもつそれは、人類にとっての天敵。そして金星に落ちたのは、その種子だった。

 金星の厚い雲の下で繁殖するバーサーカーを殲滅するために当初太陽系連合中央政府が選んだ手段は、軌道上からの核爆撃だった。しかし輸送艦からばら撒かれた核の雨は、金星地表からの迎撃によって無効化された。

 次に選ばれた手段は、超大型のビーム衛星砲――金星にちなんで《イシュタル》と命名された――による対地掃射だった。しかしその建造中にバーサーカー達は金星地表での拡散を遂げており、いくら大型でも、所詮点での攻撃しかできないビーム砲撃では駆逐不能になっていた。

 人類が《イシュタル》の建造に躍起になっている間に、バーサーカーは数を増やすだけではなく、質の面でも進歩を遂げていた。

 きわめて隠蔽性の高いステルス外装。そして明らかに対アサルトアーマー戦闘を意識したと見える強力な戦闘個体。

 《イシュタル》の建造に資材、人員を集中投入していたため、宇宙軍における新型アサルトアーマーの導入や艦隊戦力の整備は遅れ気味だった。そもそも宇宙軍の建軍目的は時間稼ぎであり、《イシュタル》プランが成功すればそれで用済みのはずだったため、戦力の殆どは第三次世界大戦時に製造されたモスボール兵器からなっていた。

 戦艦主体の二個艦隊と空母主体の二個艦隊。わずか四つの戦闘艦隊と雑多な小規模パトロール部隊だけが、宇宙軍の全戦力だった。

 ステルス機能によって神出鬼没の戦闘個体、通称《アスラ》タイプにパトロール艦ではまったく歯が立たず、一時は太陽系内の全ての航路から船が消える事態となった。

 物流の停止とそれに伴う生産活動の麻痺。わずか三ヶ月で、一部の物資で配給制を実施せざるを得ないほど人類は追い詰められた。

 この危機を救ったのは、宇宙軍内部で進められていた戦闘用の強化クローンとその専用戦闘システムの開発計画、《PROJECT ANGEL》だった。

 デザインベビーに用いられるDNA改変技術を応用して設計されたとされる完全人工DNAと、同じくゼロから作られる合成卵子から生まれた『人の腹から産まれたのではない者』。これに急速圧縮学習で基礎記憶・知識を詰め込んで造られる、人類を守るための完全人工生命体。《エンジェル》の出現に、人々は驚いた

 当初はこれに異議を唱えようとしていた人権団体やその後援を受けた連合議会議員達も、《エンジェル》がDNA、卵子ともに完全人工合成で、誰の権利も一切侵害していないと説明されてしぶしぶながらも沈黙した。あるいは、《エンジェル》達に資金力もなければ投票権も無く、金にも議席にもならないこともその理由の一部ではあったろう。

 こうして《エンジェル》の生産と配備は進み、同時に戦闘艦隊の増強も行われた。簡易型の軽空母と、制式化された新型アサルトアーマー・ウルフハウンドの量産によって、ようやく民間航路の護衛が充実する。

 《エンジェル》と《エンジェル》専用型ウルフハウンド、通称ホワイトウルフの配備によって、アサルトアーマー部隊の戦力も強化された。ホワイトウルフに搭載されたサイコミュリンクシステムによって強固に情報連結された四機のウルフハウンドは、旧式のハウンドドッグ四機の小隊の実に5倍の戦闘評価値を叩き出す。

 やがて《エンジェル》の存在は当然のこととなり、それに違和感を覚える人間はいなくなった。誰もが《エンジェル》は完全に人工の存在であり、人型をした兵器に過ぎないのだと信じた。真実を知る者達――《エンジェル》達、《エンジェル》とともに戦う者達、そして《プロト・エンジェル》とその近しい者達以外は。

 こうしてかろうじて五分と言える所まで取り返しつつ、しかしその先は見えないと言うのが、現在の人類の状況だった。

 《エンジェル》に頼ってかろうじて不安定な状況を維持しつつ、しかし打開の目処は立たない。バーサーカーを何とかする方法が見つかるのが先か、それとも負担に耐えかねて人類が自滅するのが先か。

 人類全体が、先の見えない無謀な度胸試し(チキンレース)に参加しているのだった。

 私一人を残して全滅したファルコン・スコードロンは、部隊としての登録を抹消されました。人間が全て戦死してしまっては、《エンジェル》である私だけが残っても、書類上は備品だけが残っているのと同じです。ですからこの処置は、ある意味当然と言える物でした。

 同僚を全て失い半ば自失状態になっていた私に、転属命令が言い渡されました。転属先は、第二航空艦隊第三戦隊旗艦《天城》所属第901実験戦闘団。通称《マーモット部隊》と呼ばれる、兵器・装備の実験開発部隊でした。

 新たに編成されるパトロール部隊に配備にならず、人員を使い捨てにすると言う噂のある『実験動物(マーモット)』部隊に転属させられることに、私は軽いショックと絶望感を覚えました。先の戦闘の後のカウンセリングで、私は軽度の戦場恐怖症(シェルショック)に陥っていると判定されました。だから、まともに戦えなくなった《エンジェル》の廃棄先として実験動物として使い捨てにすることが選ばれた――そう思ったからです。

 《天城》からの迎えの連絡艇(ランチ)に乗り込むとき、私を見送ってくれたのはファルコン・スコードロンの整備部隊一同でした。ハッチが閉まり連絡艇が発進すると、私は生まれてから今までに見知ってきた人たちと、完全に切り離されました。

 心細さと先行きへの不安、そして周りに誰も知った人がいないことから来る不快な――これが『寂しい』と言う気持ちなのでしょうか――気分に耐えながら、私は宇宙(そら)を見つめました。

 やがて見えてきた《天城》は、少し珍しい形をした(ふね)でした。

 細長い戦艦型の艦体の左右に飛行甲板(フライトデッキ)格納庫(ハンガー)がくっついている様な、あるいは空母を左右に割ってその間に戦艦を挟み込んだ様な。《天城》はそんな形の艦でした。

 やがて連絡艇は《天城》の艦載艇格納庫に収容され、私はそのデッキに降り立ちました。

「《天城》へようこそ、カナミ少尉」

 私を出迎えてくれたのは、黒髪をアップにまとめた女性士官でした。柔らかい笑顔を見ると、なんだかそれだけで気持ちが落ち着いてくるような気がします。つい先ほどまで感じていた不安感が、少し消えたような気がしました。

「カナミ特務少尉、ただいま着任しました。ええと、大尉殿」

「ごめんなさい、名乗っていなかったわね。私は山崎ケイ大尉。第901実験戦闘団第二実験小隊の小隊長です。これからしばらく、あなたの身柄を預かります」

「はい、大尉殿」

「あら、そんなに固くならないでね。ここはそんなに大所帯じゃないから」

「はあ……」

「じゃあ、みんなに挨拶に行きましょう。まずブリッジからね」

 私は山崎大尉に案内されて、《天城》の艦内を挨拶して回りました。

 ブリッジ(《天城》の指揮所は空母式の『アイランド』ではなく、『ブリッジ』と呼称されていました)では艦長のグレッグ大佐と副長のマークスマン中佐に。飛行指揮所では艦載飛行隊司令のケネス少佐に。最後にハンガーにまわって、これから自分が所属することになる第二小隊の面々に――と思ったら、なんと第二小隊は隊長の山崎大尉以外には私しかアサルトアーマー搭乗員がいないのでした。

「狐につままれたみたいな顔をしてるわね」

「はあ……」

「じゃあ後はあなたの住む所ね。こっちよ」

 山崎大尉が居住区画に案内してくれます。《サラトガ》の搭乗員用居住区画の四人部屋と同じようなものを想像していた私は、その部屋に驚かされました。

 大部屋を二つつなげて造られたその部屋は、ソファにリビングテーブル、遮光・遮音フィールドを備えた大きなベッド、偏光ガラスで仕切られた浴室まで備えた、小さな家を一部屋に押し込んだと言えるような物だったからです。そしてその部屋には、明らかな生活のにおいがありました。

「ここは……?」

「ここは私と夫の、まあ言ってみれば家かしら。私も夫も、この船から離れられないから」

「ご結婚されていたんですか?」

「ええ。夫は今夜はラボのほうに泊まりこみだから、明日帰ってきてから紹介するわね」

「ええと、それじゃあ私の宿舎は……」

「ここよ。あなたには、当面ここで私たちと一緒に暮らしてもらいます。勤務は私と同じ時間割で基本的に八時間配置。だから24時間一緒よ」

「はい、大尉殿」

「あ、勤務時間以外は『大尉殿』は止めてくれる? 私と夫もそうしてるから」

「あ、はい。ええと、山崎さん」

「それもちょっと……。一緒に住むんだし、名前で呼んでもらえないかしら?」

「はい、ケイ、さん」

「はい、よろしい」

 山崎大尉が――ケイさんがにっこりと笑いかけてくれました。その笑顔を見ると、私の中でまた一つ、重い物が溶け消えたような気がしました。

 その日の夜、私はケイさんと同じベッドで眠りにつきました。ふわふわと柔らかく、三回寝返りをうっても落ちそうに無い大きなベッドに寝るのは、アトランティックステーションの民間宿泊施設にファルコン・スコードロンのみんなと宿泊したとき以来でした。

 一つ驚かされたのは、ケイさんが私と同じ《エンジェル》だったということです。何気なくシリアルナンバーを聞いてみて、私はまた驚かされました。ケイさんには、シリアルナンバーが無いと言うのです。量産前の試作体であろうと、管理番号はあるはず。そう思ってさらに質問する私を、ケイさんは笑顔ではぐらかしました。

「もうしばらくしたら、教えてあげる」

 そう言われると、あまりしつこく聞くのも躊躇われます。私はそれ以上その件については質問せず、おとなしく眠りに付きました。

 ふと目が覚めたのは、就寝してから二時間ほどたった時でした。

 最初は一瞬自分がどこで寝ているのか分からず、それからここがケイさんの家のベッドなのだと思い出し、さらに自分がどうしてここにいるのかも思い出します。

 ファルコン・スコードロンのみんなが死んでしまった事、そして隊長が私をかばってくれた事を思い出すと、自然と涙が溢れてきました。ケイさんを起こしてしまわないように、私はケイさんに背を向けて声を殺しました。でも、どうしてもしゃくりあげてしまうのは押さえ切れませんでした。

 突然、ケイさんが私を背中から抱きしめました。

「ケ、ケイさん?」

 びっくりする私をひっくり返してその胸に抱きながら、ケイさんは穏やかな声で言いました。

「あのね、カナミ、無理しなくて良いのよ」

 柔らかく抱きしめられて優しい声で許され――私は涙が枯れるまで、泣き疲れてとうとう眠ってしまうまで、思う存分に泣きました。赤ん坊が母親の胸にすがりつくようにケイさんの胸にすがり付き、乳房に顔をうずめて泣き続けました。そんな私をケイさんはやさしく抱きしめ、ずっと頭をなで続けてくれました。

● ● ●

 翌日早速、私は試験機に搭乗することになりました。

 私が乗るように指定された機体は、B1型ウルフハウンド、通称ホワイトウルフと呼ばれている機種です。

 それに対してケイさんの、いえ、山崎大尉の機体は、ウルフハウンドの改造型ではあるのですが、外観が少し異なっていました。

 一番の違いは、背中のメインスラスターの両脇についているビットコンテナです。ホワイトウルフの物が片側三機、合計で六機のビットを搭載しているのに対して、山崎大尉の機体は片側五機、合計で十機ものビットを搭載しています。また、そのビットの形状も、ホワイトウルフに搭載されている物とは形状が違う物が二機混じっています。

 本体側にも、頭部のアンテナの形状に違いがありました。ホワイトウルフにはビット用に二本、サイコミュリンク用に一本の大型アンテナがあるのですが、山崎大尉の機体には合計七本のアンテナがあり、それがまるで王冠の様に見えました。

 テストの内容は、新型サイコミュリンクの試作品の試験でした。従来のサイコミュリンクが、ホワイトウルフ一機をハブにして小隊内での情報連結を行う物であるのに対して、この新型サイコミュリンクは、各小隊のサイコミュリンク親機をゲートウェイにして中隊規模での情報連結を実現するというものです。

 今はまだ親機同士のリンクが可能になったばかりと言うことで、山崎大尉と私の二人だけでの実機試験でした。

 二時間ほどかけたテストが終わり、私たちは《天城》の右舷デッキに着艦しました。機体をハンガーに戻し、私と山崎大尉はパイロットピット脇のシャワールームに向かいます。

 シャワーのお湯が胸に当たってそこから甘い刺激が起こるのが感じられたとき、私は自分が発情しかけていることに気がつきました。

 性欲が溜まりやすく、あまり我慢をすると理性の箍が外れやすいのは《エンジェル》の特徴の一つです。どの《エンジェル》も、所属する小隊の仲間に抱いてもらうことでそれを発散し、発情の副作用を回避しています。しかしここしばらく誰にも抱かれていなかった私は、そのリミットをそろそろ越えかけているのでした。

「あの、山崎大尉……」

「ん? どうしたの?」

「あの、ええっと……」

「……ああ、なるほど。ねえ、カナミ少尉、あと五〜六時間、我慢できないかしら?」

「はい、それぐらいならなんとか」

「じゃあ悪いんだけど、今夜まで我慢してちょうだいね」

「はい」

 そうして私はその後数時間を、おちんちんとお尻の疼きに悶々としながら過ごすことになりました。

 考えてみると、あの日、ファルコン・スコードロンが全滅した日の前日以来、私は男の人に抱かれることも、自慰行為で発散することもありませんでした。それなのに発情して困ったことになったりしなかったのは、精神に受けたショックでそれどころでは無かったためでしょう。

 それが今またこうして体の疼きを感じるという事は、私の精神がバランスを取り戻しつつあるという事なのだと思います。あるいは昨晩、あれ以来始めて思いっきり泣いたのが良かったのかもしれません。

 お尻とおちんちんの疼きには困らされながらも、私は山崎大尉にそっと感謝をしました。

「ただいま」

 ケイさんの『家』に、ケイさんの夫だという人が帰ってきました。

「おかえりなさい」

 出迎えたケイさんがその人と抱き合い、情熱的なキスをしました。

 ケイさんの『夫』は、見かけは二十才前ぐらいの、女の人でした。

 ケイさんは《エンジェル》ですからおちんちんがあります。ですから女性をパートナーにすること自体は不思議な話ではないと思うのですが、でもそれならどうしてケイさんの方が夫ではないのでしょうか?

「カナミ、彼は昂、私の夫よ。901の技術主任で、技術少佐なの」

「始めまして、カナミ。しばらくよろしく」

「は、はい、よろしくお願いします、少佐殿」

「ああ、非直の時間はそんなに堅苦しくしないで良いですよ。僕のことも名前で呼んでください」

「はい、昂さん」

 山崎昂技術少佐――昂さんは、見かけは私やケイさんより背の低い、華奢な体の女の子でした。ただしその胸だけは、私たちをはるかに上回っています。私もケイさんもカップサイズはCなのですが、昂さんの胸はFからひょっとするとGぐらいありそうなサイズです。

 お互いの紹介が終わると、私たちは少し早めの夕食にしました。

 ケイさんの家のフードレプリケーターは、艦内食堂に設置されている物と同じような大型です。大皿料理や鍋料理も丸ごと生成できますし、味も汎用の物で生成した物より一段上になります。そのレプリケーターを使って、ケイさんは料理をいくつかとシャンパンを作りました。

「ノンアルコールだけど、味は保証付よ」

 料理をリビングテーブルに並べ、シャンパンをグラスに注ぎながらケイさんは言います。

「それじゃ改めて、《天城》へようこそ、カナミ」

 料理がどうもパーティーメニューばかりだと思ったら、本当にパーティーだったようです。昨日は昂さんが帰ってこられなかったので、一日延ばしたという事のようです。

 楽しい食事が終わって後片付け――といっても食器類をレプリケーターの分解投入口に投入するだけです――が済むと、二人は私をお風呂に誘いました。

 ケイさんの家のバスルームは、お湯を張った浴槽を備えた日本式です。バスパーティションだけではなく浴槽も可変偏光ガラス製で、その気になれば室内のどこからでも入浴中の姿を丸見えに出来るというものでした。

 裸になった昂さんの姿を見て、私の先ほどの疑問が解消されました。

 なんと、昂さんの股間におちんちんがあります。つまり、昂さんも、私やケイさんと同じ《エンジェル》ということなのでしょうか。

「あ、あれ? 昂さんも、エンジェル……?」

「ああ、僕とケイは違いますよ。エンジェルと同じDNA設計だけど、これは後天的なDNA書き換えの結果。ケイのDNAは全てのエンジェルの基礎になってるから、その意味ではケイはエンジェルと同じですけどね」

「そうなんで――え、ええ?」

 昂さんがさらっと《エンジェル》の誕生の秘密を暴露しました。

 《エンジェル》のDNAは、公式にはゼロからの完全合成ということになっています。しかし実際には誰かのDNAのコピーを改変した物だというのは、宇宙軍の内部では公然の秘密でした。ただしそれが誰であるのかまでは、様々な憶測がささやかれるのみでこれと言った定説はありません。

「僕のほうは実験段階のものですけどね」

 お風呂に入りながら、二人がいろいろな経緯を説明してくれます。

 二人がであったのは五年前、ケイさんが21歳、昂さんが14歳の時。当時極秘だった《PROJECT ANGEL》に基いて、ケイさんがDNA改変の被験体になったこと。昂さんがその前段階のテストを自分の体で行っていたこと。最初の《アスラ》タイプと遭遇して、ケイさんが死にかけたこと。昂さんが成長するにつれて、胸がどんどん大きくなって困ったこと。二年前に第901実験戦闘団が専用母艦に乗り組みになったのを機に、ケイさんが戸籍変更して正式に結婚したこと。

 私はお尻とおちんちんの疼きも忘れて、二人の話に聞き入りました。

「昂ったらほんとうに自分の事に無頓着で、ほうっておいたら危なっかしくてしょうがなくて。だからもう、ずっと一緒にいることにしたの」

「いやだなあ。それじゃ僕がまるで子供みたいじゃないですか」

「あら、48時間徹夜して、お風呂に沈みそうになってたのは誰でしたっけ」

「う、あの時は、ハウンドドッグの調整を緊急に終わらせなくちゃいけなかったからで――」

 二人の話を聞いて、私の胸に不思議な気持ちが湧き起こりました。

 今まで私は、自分たち《エンジェル》を完全な作り物だと思っていました。合成DNAと合成卵子から作られる、生きた機械なのだと。でも、今私の目の前には、私のDNAのモデルになった人と、私のDNAのデザインを手がけた人がいます。普通の親子の関係とは違いますが――私たち《エンジェル》が、けして誰ともつながらない『物』ではなく、人間とつながった『者』なのだという事です。

「じゃ、じゃあお二人は、私たち(エンジェル)のお母さんですね」

「あら、じゃあ4〜5歳しか違わない子供が出来ちゃったわけね」

「そんなこと言ったら、僕なんか子供のほうが年上ですよ」

 浴槽に浸かりながらの何気ないやり取りの一つ一つが、私の胸を暖かくしてくれました。

 お風呂から出て体と髪を乾かし、さてベッドへ、という時に、ケイさんがレプリケーターの前に立ちます。何を作るつもりなのかと思って覗いてみると――。

カテゴリ:衣料品 > ナイトウェア
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 透明だったり面積極小だったりでぜんぜん体を隠す役に立たない、それでいてレースやフリルで派手に飾られた――いわゆるセクシーナイトウェアの一覧が表示されていました。

「カナミ、これなんかどう?」

 ケイさんがその一つを選び、ホロプロジェクターでフルサイズの立体画像を投影します。マネキンに着せられた形でゆっくり回転するそれは、短いベビードールとTバックショーツ、ガーターストッキングのセットでした。色は赤で、全体が殆ど透き通っています。乳首もおちんちんも、丸見え間違い無しでした。

「え、あの、良いんじゃないかと思います……」

 なんと答えていいか分からず、私はとりあえず当り障りのない答えを返しました。

「そう――じゃあ、はい」

 生成されたそれをケイさんは私に手渡してきました。

「え――わ、私が着るんですか?」

「そうよ。今、良いって言ったわよね?」

「う、はい……」

 私は諦めてそれを受け取ると、まずストッキングから足を通しました。着てみると案の定、まったく体が隠れていません。特におちんちんはショーツに収まらず、はみ出した頭を露出させています。

「うふふ、可愛いわよ」

 ベッドの脇の鏡の前に私を立たせ、肩に手を乗せて後ろから覗き込むようにしてケイさんが言います。私は赤くなってもじもじしながら、ベビードールの裾を弄りました。

 三人でベッドにあがると、昂さんがベッドサイドのコンソールを操作しました。ベッドの真上の発光パネルがモニター表示に切り替わり、ベッドの上の光景をそのまま映し出します。どうやら横になったまま映画を見たり環境映像を流すためのモニターに、映像通話用カメラの映像をそのまま映し出しているようです。

 ディスプレイの中では、私と同じデザインの白と黒のランジェリーをまとったケイさんと昂さんにはさまれて、赤いランジェリー姿の私がベッドに横たわっています。これからされることを想像して、私のおちんちんがはしたなく震えるのが見えました。

 ケイさんの手がベビードールの上から私の胸をまさぐります。固くなった乳首が布にこすれる感触に、私の体がびくりと震えます。昂さんは私のおちんちんを柔らかくマッサージしています。さらに左右から首筋や耳を吸われたり舐められたり、私は両手を泳がせながら、それらの刺激に耐えます。

「あ、ふあぁっ……」

「くすっ、可愛い喘ぎかたね」

 ケイさんの手がベビードールの中に潜り込んできます。乳首を直接指にはさまれ、軽くつねるようにして転がされます。一方の昂さんの手もショーツの中に潜り込み、掌で睾丸を包み込んで転がしながら指先で会陰をぐりぐりと圧迫してきます。優しい、それでいて意地悪な焦らし責めに、私は身もだえしました。

「カナミは、おちんちんしゃぶられた事あるかしら?」

「いえ……」

 ファルコン・スコードロンのみんなに抱かれたときは、私がみんなのおちんちんを咥えたことはありますが、私のほうが咥えられるという事はありませんでした。

「そう……」

 ケイさんはそういうと、私の穿いているショーツのサイドの結び目を解きました。完全に露出したおちんちんの先端が、ケイさんの唇に触れられます。

 ちゅっ、と音がして、私のおちんちんに電撃のような刺激が走りました。

「ひゃん!」

 扱かれたり、指で弄ばれたりという事は経験していましたが、このような刺激は初めてです。ちょっともどかしい、だけど強烈な刺激に、私は思わず腰を引きました。

 横になって逃げる私のおちんちんを、ケイさんの唇が追いかけてきます。さらに後退しようとした私のお尻が、昂さんの腰にぶつかります。退路を絶たれた私のおちんちんは、たやすくケイさんにつかまってしまいました。

 ケイさんの唇が私のおちんちんの先端を飲み込み、舌でつつくようにして責めて来ます。同時に背後からは昂さんの手が私の胸をもみしだき、その唇がうなじに吸い付きます。前後からの責めに、私はなすすべもなく弄ばれます。

「あっ、ふあっ、んっ……」

 おちんちんがぴくぴくと震え、自分が限界に達しかけていることがわかります。このままではケイさんの口に出してしまいます。それはまずいと思った私は、ケイさんに言いました。

「ケ、ケイさん、もう、出ちゃいますっ……!」

 ちゅぽん、と言う音がして、ケイさんの唇が私のおちんちんから離れました。亀頭の周囲をこすり上げられる刺激に、私は危うく達してしまいそうになりました。

「……カナミは、おちんちん誰かに入れた事ある?」

「え? いえ……」

 《エンジェル》は慰安施設などには出入りできませんから、私は女性を相手にしたことはありません。《エンジェル》同士で体を重ねると言うことは時々あるようですが、私はその経験もありませんでした。

「そう。じゃあカナミは童貞なのね」

「はい……」

 そう答えた私の腰の上に、ケイさんが跨ってきます。ケイさんが腰の右サイドの結び目を解くと、ショーツが左足に沿って滑り落ちました。

 私の目の前に、ケイさんの固く立ち上がったおちんちんがあります。その先端からは蜜が溢れ、ケイさんも興奮していることを示しています。そして私のおちんちんのすぐ先には、ケイさんのアヌスがあります。

「カナミの童貞、ママが貰うわね」

 ケイさんはそう言うと、私のおちんちんの上に腰を下ろしました。おちんちんが熱くて柔らかい穴にずぶずぶと飲み込まれていく初めての刺激に、私は声も上げられませんでした。

「ふう……」

 私のおちんちんを全て飲み込むと、ケイさんは軽く息を吐きました。それから、ゆっくりと腰を使い、私のおちんちんをお尻で責め始めます。

「あっ、ふあっ、あんっ」

 私は一息ごとに喘ぎながら、ケイさんの成すがままに責められました。同時に昂さんにも体のあちこちを撫で擦られ、私は再びあっという間に絶頂まで押し上げられました。

「やっ、ケイさん、お母さん、お母さんの中に出ちゃう、精液でちゃいますっ!」

「んっ、いいのよ、あっ、ママの中に、ふあっ、カナミの精液、いっぱい出して!」

 その言葉を聞いた瞬間、私の我慢は限界に達しました。

 おちんちんが爆発し、先端から熱い液を噴き出します。後ろから突かれながらの絶頂とは違う初めての快感に、私の頭は真っ白になりました。

 途切れていた意識が戻り、私は自分が少しの間失神していたことを理解します。

 すぐ傍から聞こえる悲鳴とも嬌声とも付かない声にそちらを見、私は声を出せずにその光景を見守ることになりました。

 私が意識を取り戻したのと同じベッドの上で、うつ伏せになったケイさんが後ろから昂さんに挿入されています。昂さんがお尻を一突きするごとにケイさんは喘ぎ、同時に言葉での責めに許しを哀願しています。

「ケイ、あなたのお尻、カナミの精液で、ぐちゃぐちゃですよ。娘にこんなにされて、よがり狂って、恥ずかしく、ないんですか?」

「あんっ、ごめんなさい、んっ、おちんちん好きの、あっ、淫乱なお尻、なんですっ!」

「まったく、このだらしない、穴が、誰の物か、しっかり躾け直してあげないと、駄目なようですね」

「私のお尻、ケツマンコは、昂のものです! 昂の精液、注ぎ込んで、ください!」

「いい、返事です。じゃあ僕の精液で、しっかり種付けしてあげますね!」

「はっ、はいっ、精液くださっ、あっ、ふあぁっ!」

 昂さんが一際深く挿入するとともにケイさんが長々と声を上げ、お尻の奥に受けた熱い刺激に絶頂したことが分かります。

 勤務時間中、特にアサルトアーマーに搭乗するときの凛々しい姿と、家での優しいお母さんかお姉さんみたいな姿。先ほど私を責めた時のちょっとサディスティックな姿と、つい今のまるで雌奴隷のような姿。

 ケイさんの様々な姿に、私はどれが本当のケイさんなのだろうかと考えてしまいます。

「……あ、カナミ、気がつきましたか?」

 ケイさんから離れた昂さんが、私が意識を取り戻していることに気がつきます。

「はい……」

「あ、あら。どこから見てた?」

「え、ええっと、昂さんの『恥ずかしくないんですか』のあたりから……」

 ケイさんの頬を染めながらの質問に、私も頬を熱くしながら答えます。

「恥ずかしいところ、見られちゃったわね」

「そ、そんなことないですよ。ケイさんとっても、ええっと、綺麗でした」

 言ってしまってから、これはまずかったかなと思いました。でも、ケイさんはまんざらでもない様子でした。

「あら、そう? うふふ……」

 嬉しそうに笑うケイさんに、私は、ケイさんは本当に昂さんの事好きなんだなあ、と思いました。

「カナミの方はどうですか? その様子ではまだ発散し切れていないようですが」

 昂さんの言葉に、私は自分のおちんちんが固く立ち上がっていることに気がつきました。おちんちんの先端には透明な蜜が溢れ、お尻の奥からは熱い疼きが感じられます。

「あ、あの……」

「その分ではまだまだのようですね」

「はい……」

「ケイ、今度はあなたが挿入してあげてください」

「はい。いい、カナミ?」

「はい、お願いします、ケイさん……」

 私はうつ伏せの姿勢になると、膝を立ててお尻を上げました。恥ずかしい部分を晒した格好で、私は挿入をねだります。

「カナミの、お、おちんちん大好きなケツマンコに、ケイさんのおちんちんで、たくさん種付けしてください……」

 私はつい先ほど見たケイさんの痴態を思い出しながら、そのときの台詞を真似たおねだりをしてみました。

 私たち《エンジェル》にとって、アヌスは排泄器官であると同時に男の人を迎え入れるための大事な性器でもあります。その二重の意味で恥ずかしいところを晒しながらはしたないおねだりをするという行為に、恥ずかしさと同時に今まで感じたことのない興奮が感じられます。

 私がおねだりをした次の瞬間、ケイさんのおちんちんが私の中に入ってきました。

 先端を潜り込ませた後、ケイさんはおちんちんをゆっくりと一寸刻みで推し進めてきます。少しずつ体内を埋めていかれる感触に、背筋がぞくぞくします。

 今まではいつも、挿入されるときには一気に一番奥まで貫き通されていました。ですからこうやってゆっくりと体の中に入ってこられる感覚を味わうのは初めてです。貫かれる瞬間を引き伸ばして味わわされる感覚に、今にも腰が抜けてへたり込んでしまいそうになります。とうとうケイさんのおちんちんが根元まで入り込んだ時には、私は長々と息を吐きました。

 しばらくじっとしていたケイさんが、ゆっくりと腰を動かし始めました。

 おちんちんが引き抜かれていくと、それにつれて私のお尻の中も引きずり出されていくようで、肛門からぞくぞくとした快感が湧き起こります。挿し込まれて来る時には、お尻の中が押し広げられる圧迫感と、最後にお腹の奥底をぐっと押される圧力が感じられます。

 やがてケイさんの動きが少しずつ速くなってくると、全部の快感が連なって押し寄せてくるようになります。私は途切れなくお尻から送り込まれる快感に翻弄され、シーツをぎゅっと掴んで耐える事しか出来ませんでした。

「カナミの、お尻は、本当におちんちんが、好きなのね」

「はいっ、カナミのお尻はぁ、おちんちん咥えて、ザーメン注ぎ込まれるのがっ、大好きですぅ!」

 先ほど昂さんがしていたように、ケイさんが私を言葉で責めます。丁寧な言葉づかいで罵られると、背筋にまたもぞくぞくとしたものが走ります。言葉で虐められ、罵られるというのがこれほど気持ち良い物だったとは、私はまったく知りませんでした。

「あら、中に出されるのも、好きなのね。じゃあ、どうすればいいか、分かるわよね?」

「んっ、お願いです、ケイさんの熱いザーメン、カナミのエッチなお尻に、いっぱい注ぎこんでくださぁい!」

「よく出来ました、じゃあ、ご褒美を上げるわね!」

 その次の瞬間、ケイさんのおちんちんが、私の一番奥の場所に子種を解き放ちました。久しぶりの中に出される感触に、私はひとたまりもなく絶頂しました。全身がぶるぶると震え、鷲掴みにしたシーツに顔をこすりつけて私はそれに耐えます。自分のおちんちんからも再び精を放ちながら、私は二度目の絶頂を迎えました。

 ケイさんが汚れたシーツをディスポーザーで処理し、新しいシーツをレプリケーターで生成しています。昂さんはフードレプリケーターで冷たい紅茶を用意しています。

 腰の抜けてしまった私は、ソファの上でクッションに寄りかかってそれを見ていました。

「すみません、ケイさん……」

「あら、気にしないで。私もちょっとやりすぎちゃったから」

 そう言ってにっこり笑うケイさんの笑顔は、先ほどのベッドの上とは違う、お姉さんかお母さんの顔でした。

「はい、カナミ」

「あ、ありがとうございます」

 昂さんが私の頼んだアイスティーを手渡してくれます。お礼を言ってそれを受け取ると、私は早速グラスに口をつけました。喉を滑り落ちる冷たい感触が、火照った体にとても爽快でした。

「明日も実験があるから、あまり夜更かしは出来ません。それを飲んじゃったら、もう寝ますよ」

「はい……」

 実験、という言葉に、私は自分が今いる場所を思い出しました。

 私は壊れてしまった《エンジェル》。実験動物(マーモット)としての価値しかもう自分にはないのだと、そう思うと、転属を告げられたときの暗い気持ちがよみがえってきました。

「カナミ? どうかしましたか?」

 その気持ちが顔に出ていたのでしょうか、昂さんが私の顔を覗き込むようにして尋ねてきます。

「いえ、なんでも……」

「そうですか。でもあまり落ち込んでいては実戦部隊への復帰が遅くなりますよ。無理に明るく振舞う必要はありませんが、気持ちは強く持ってください」

「え……?」

「どうしました?」

「実戦部隊への復帰って……、だって私は戦場恐怖症で……、だから廃棄されて……」

「ああ。あなたは勘違いしていますね」

 その昂さんの言葉を、ケイさんが引き継ぎます。

「カナミ、あなたがここに預けられてきたのは、その心の傷を癒すためよ。決して捨てられてきたわけじゃないのよ」

「サラトガの司令はきちんと説明しなかったようですね。カナミ、今までに僕たちに預けられたエンジェルはあなただけではありません。通常のカウンセリングでは対処できない心的外傷を負ったエンジェルを癒すのが、僕たちの任務の一つなんですよ」

 昂さんのその言葉に、私は昨日ケイさんに言われた言葉を思い出しました。『私も夫もこの船を離れられないから』という言葉の意味が、やっと理解できます。

「それじゃあ……、私は捨てられたわけじゃ……」

「もちろん違いますよ。エンジェルには人権も法的権利もありませんが、だからといって使い捨てにされるようなことはありません」

 昂さんの言葉に、私の胸のうちに抱えていた重石のような物がすっと溶け去るように消えていきました。

「あらあら、そんなに泣かないで。かわいい顔が台無しよ」

 ケイさんの言葉に、私は自分がぽろぽろと涙をこぼしていたことに気付きます。

「昨日の夜といい、カナミは泣き虫さんね」

「昨日? 何があったんですか?」

「カナミったら、ベッドで私の胸に顔をうずめて――」

「やっ、やだ、ケイさん、言わないでください」

「まあまあ、隠さないでくださいよ」

 笑いながら昨日のことを話そうとするケイさんを、私も笑いながら制止します。他愛の無い会話のひとつひとつが、私の心を軽くしてくれます。涙を拭くのも忘れて、私は笑いました。

● ● ●

 私が901に転属になって《天城》に来てから、一週間が経過しました。

 毎日同じ内容ばかりだった実験に、今日は目新しい試験項目が追加されました。私とケイさんがテストしていた新型サイコミュリンクの量産向け試作品が製造され、第一小隊のホワイトウルフに搭載されたそれとのリンクテストが行われることになったのです。

 私の搭乗する第二小隊二号機のサイコミュリンクが標準型の子機として再プログラムされ、テストの準備が進められます。

 テストの当日、ブリーフィングを第一小隊と一緒に受けました。説明をする昂さん――山崎技術少佐を、パイロット六名が注視します。

「――以上で説明を終わります。何か質問は?」

 誰からも質問は無く、ブリーフィングは終了しました。この後は、艦の中央部、連絡通路で左右のハンガーデッキを結んだその中央にあるブリーフィングルームから、第一小隊の面々は左舷側の第一ハンガーへ、ケイさん――山崎大尉と私は右舷側の第二ハンガーへ移動することになります。

 ブリーフィングルームを出て、左右に延びる通路に足を運ぼうとしたそのときでした。

「ああ、お嬢ちゃん、カナミ、だったっけ」

「はい?」

 第一小隊の小隊長、ベアトリス中尉が私を呼び止めました。振り向いた私のすぐ目の前に、ベアトリス中尉の顔があります。思わず一歩下がる私に、ベアトリス中尉が迫ってきました。

「あ、あの、中尉……?」

「……うーん、なかなか」

「……は?」

 困惑する私に、ベアトリス中尉がにやりという感じで笑いかけてきます。

「今晩暇? 私とちょっと付き合わない?」

「は? え、ええっと?」

 唐突な台詞に、私は反応が追いつきません。

「こらこら、こんなところで悪い癖を出さないの」

 混乱している私の後ろから、山崎大尉がベアトリス中尉をたしなめました。

「それに、後ろを見たほうがいいわよ」

「え?」

 振り向いたベアトリス中尉が固まるのが、後姿からも分かりました。一体何事、と思い中尉の肩越しに覗き込むと、そこにいたのは第一小隊に所属する《エンジェル》でした。

 第一小隊の《エンジェル》、アリスはコーカソイド形の容姿を持った子です。日系の外観設計になっている私と違い、白い肌と青い瞳、少しくすんだ金色の髪という典型的なゲルマン/ノルディック系の容姿ですが、身長だけは私と同じ程度の少し小柄な物でした。

 そのアリスが、上目遣いでベアトリス中尉をにらんでいます。最初は単に怒っているのかと思いましたが、その目尻にはうっすらと涙が滲んでいました。

「……お姉さま」

「あ、いや、アリス、これはね、そうそう、スキンシップ、スキンシップなのよ。ほら、同じ艦に乗る仲間なのに、最初に挨拶しただけじゃない? だから、こう――」

「……どうぞお姉さまのご自由になさってください。私は知りません」

「あ、ちょ、アリス、待ちなさい、ちょっと待って!」

 アリスがきびすを返し、連絡通路を早足で行ってしまいます。その後を、ベアトリス中尉が慌てて追いかけていきました。

 第一小隊の残り二人と山崎大尉が苦笑をかわしながら肩をすくめます。彼らと別れてハンガーに向かいながら、私は今の出来事について山崎大尉に質問しました。

「ああ、あの子も悪い子じゃないんだけど、女癖が悪くてね。女性でもエンジェルでも手当たり次第に今の調子で口説こうとするんだけど」

「は、はあ」

「でもアリスはベアトリスに本気でね、その度にさっきみたいな事になるわけ。いつか後ろからアリスに撃たれるんじゃないかしら」

 山崎大尉が笑いながら物騒なことを言います。

 第二ハンガーに向かって歩きながら、私は『なんだかなあ』と内心少しあきれていました。

 新型サイコミュリンクのテストは無事に終わりましたが、結果は散々な物でした。特に問題だったのが小隊間のデータリンクで、パイロット間通信のノイズが酷く、殆ど音声通信を使った場合と変わらない程度の情報伝達率しか達成できないありさまでした。デブリーフィングでは山崎技術少佐が頭を抱え、実用化にはまだまだだというような愚痴をこぼしました。

 その日の非直時間、艦隊標準時の夜ですが、ケイさんと昂さんが二人とも遅くなるということで、私は一人で艦内食堂で食事をとりました。《天城》に来てからずっとケイさんと一緒だったせいか、一人での食事がなんだかとても味気ないものに感じられました。

 使い終わった食器をディスポーザーに放り込みながら、寝るまでの時間をどう過ごそうか考えます。ゆっくりお風呂に入ろうかな、と考えて、そういえば居住区画のバスルームを一度も使ったことが無いことに気がつきました。

 ケイさんたちの部屋には備え付けのバスがあるのですが、さすがにサウナまでは付いていません。浴槽のサイズもそれほど大きな物ではないので、お湯の中で思いっきり手足を伸ばすというわけにも行きません。久しぶりにサウナで汗を流そうかな、と考えた私は、バスルームに足を運びました。

 バスルームには、私のほかには誰もいませんでした。

 技術班は今日のテストの結果の解析に総がかり、整備班はまだ機体の整備作業中とあって、今のんびりお風呂に入る余裕があるのは搭乗員だけです。901には搭乗員は六名しかおらず、その一人であるケイさんは昂さんと一緒にラボのため、残るは私と第一小隊の四名のみです。私だけしか居ないのもむしろ当然かもしれません。

 私はまずシャワーを浴びてさっぱりしてから、四つあるサウナの一つに入りました。

 木で出来たベンチに座ってぼんやりしながら汗をかいていると、誰かがバスルームに入ってくる物音が扉越しに聞こえてきました。第一小隊の誰かかな、と思っていると、突然サウナルームの扉が開かれます。

「……はぁい」

「ベアトリス中尉? 中尉もお風呂、に、……」

 私の台詞が不自然に途切れます。中尉の股間を見て驚いたせいでした。

 なんと中尉の股間にもおちんちんがあります。

「あ、あれ、中尉、女性じゃ……?」

「ううん、私は違うよ。シーメールって、聞いたこと無い?」

 そう言われて、私は中尉が女性のはずが無いことに今更ながら気がつきました。

 第三次世界大戦までは女性のパイロットや整備兵も普通の存在でしたが、女性人権団体の抗議活動によって今では女性軍人は補給管理などのデスクワークや技術部門などに限定されています。乱暴な男性軍人と一緒の勤務場所だとセクシャルハラスメントやレイプなどの問題が起きるから、というのがその抗議内容だったと記憶しています。

 そういうわけですから、いくら901が実験開発部隊だといっても女性が搭乗員になっているはずがありません。アサルトアーマーの搭乗員養成コースには最初から女性が入れないようになっているため、軍人であっても女性が操縦技術を身につける機会が無いからです。

「そんなことより……」

「な、なんでしょうか……?」

 中尉は私の隣に座ると、こちらに向かって身を乗り出してきます。その妖しい視線と、腰にのせたタオルを大きく持ち上げているふくらみに、私は危機感を覚えずに入られません。

「あなた、可愛いわね」

 そういいながら、中尉は私をベンチに押し倒します。ああやっぱり、と、私は内心で嘆息しました。

「ちゅ、中尉……」

「いやん、勤務時間外はベアトリスって呼んで。私もあなたのことカナミって呼ぶから」

「じゃ、じゃあベアトリスさん、こんなことして、アリスに知られたら……」

「いやあねえ、スキンシップよ、スキンシップ」

 中尉の顔がじりじりと近づき、もはや私との距離はほんの数センチです。

「それとも、カナミは私のこと嫌い?」

 中尉が私の胸に手を乗せながら囁きます。

「いえ、そんなことはありませんけど……」

「じゃあいいじゃない……」

 そう言った直後、中尉は私の唇に自分の唇を重ねてきました。

 そのキスは唇だけを合わせるものではなく、中尉の舌は私の唇を割って口内に侵入してきます。中尉は私の舌を舐りながら、唾液もどんどん流し込んできます。二人の唾液が撹拌された液体で、私の口の中はいっぱいになりました。

 やがて中尉が私から離れるときには、二人の間を唾液の糸が繋ぎました。呆然と見上げる私に中尉は言いました。

「……飲んで」

 私は口の溜まった二人の唾液の混合液を、喉をごくりと鳴らして飲み込みました。まるでそれが興奮剤か何かであったかのように、私の体が熱くなります。

「ふふっ、美味しかった?」

 私の胸をゆるゆると揉みながら中尉が言います。私は短く答えるのが精一杯でした。

「はい……」

あなたたち(エンジェル)って、いったん火がついちゃうと我慢できないのよね。今はどうかしら? 我慢できそう?」

 中尉の言うとおり、私の体は今のキス責めですっかり火が入ってしまっています。全身が熱っぽく、頭はぼうっとなり、おちんちんとお尻からはもどかしい疼きが感じられます。

「うう、ベアトリスさん、卑怯です……」

「卑怯で結構だもーん。それでカナミはどうなのかなあ?」

 なんだか悔しいし、今日の出撃前に見たアリスの泣きそうな顔はちらつくしで、私は出来ることなら中尉を拒否したい気持ちでした。しかし私の体はその気持ちに従おうとはせず、愛撫と挿入を求めています。肉の疼きに押し負けた理性は、あっさり白旗を揚げました。

「お、おっぱい……」

「んー? おっぱいがどうしたのかしらぁ?」

 先ほどから私の胸をもんでいた中尉の手は、今は乳首をつまんで転がしています。ソフトなその刺激に私の乳首は限界まで固くなり、つままれたり弾かれたりするたびに甘い刺激を発していました。

「私のおっぱい、もっと弄ってください……」

「あらぁ、カナミはおっぱい弄られるのが好きなのね」

 中尉の両手が私の両胸にかかり、巧みな責めが開始されます。乳房全体から乳首に至るまで、甘い攻撃が私の胸を責め続け、私の理性は見る見る削り取られていきました。

「あっ、あんっ、んんっ、ふあっ……」

 サウナのベンチに横たわったまま、私はもはや淫らな悲鳴を上げることしか出来ません。体をびくびくと震わせながら、中尉のなすがままに責められます。

「可愛く鳴くわねぇ。それじゃあこっちを弄ったらどうなるのかしらぁ」

 その台詞とともに中尉の片手が胸から離れ、もう片方も動きを止めます。私が一息ついた直後、今度はおちんちんに中尉の手が触れました。

「ひゃんっ!」

 勃起しきり、先端から溢れた液でタオルを汚していたおちんちんが、そのタオルごと掴まれます。タオルごしに柔らかく扱かれて、私のおちんちんはすぐにでも爆発してしまいそうでした。

「やっ、やめて、でちゃう、でちゃいますっ!」

「あら大変。みんなで使うサウナを汚しちゃ駄目よねぇ」

 中尉はそう言うと、私のおちんちんから手を放しました。

「だから……」

 次の瞬間、中尉は私の腰からタオルをむしりとり、その下にあったおちんちんを口に含みました。

「ふあっ!」

 じゅぶじゅぶ、もごもご、ずるずるっ……。

 サウナルームに淫靡な物音が響き、一つ音がするごとに私のおちんちんに刺激が走ります。深いストロークで竿をし唇で扱かれ、先端を舌先でつつかれ、強烈な吸引を受け……。

 あっという間に限界まで押し上げられ、私のおちんちんはなすすべもなく爆発してしまいます。

「あっ、あんっ、ふああっ!」

 私の出した物を、中尉がごくごくと飲み込んでいます。先ほどは私が中尉の唾液をたっぷり飲まされたわけですが、今度はそれ以上の量を私が中尉に飲ませたわけです。

「ふう、ご馳走様。美味しいザーメンだったわよぉ」

 私の股間から顔を上げながら中尉が言いました。

「でも……」

 床に膝をついていた中尉が立ち上がります。自然と私の視界に、中尉の勃起しきったおちんちんが入りました。

「私はまだなのよねぇ……」

 中尉のおちんちんは、私よりふた周りは大きいものでした。ケイさんや昂さんよりも、そしてファルコン・スコードロンの隊員たちの誰よりも大きく、今までポルノビデオの中でしか見たことが無いようなサイズです。

「お口でしてくれるぅ? それとも……」

 私の視線はそのおちんちんに釘付けです。こんなのを入れられたらどうなっちゃうんだろう――頭はそればかりを考えています。

「お尻のほうがいいかしらぁ?」

 私は一つ生唾を飲み込むと、ベンチの上で寝返りを打ちました。

「わ、私の、ケツマンコに……」

 私は片手を後ろに回し、人差し指と中指でお尻を開いてひくひくと震える肛門粘膜をさらします。

「ベアトリスさんのおちんちん、ください……」

「そう、そっちがいいのねぇ……」

 中尉が私の上に背後から覆い被さります。お尻に熱い物が触れる感触があり、私は次の瞬間を期待して胸を高鳴らせました。

「ひぎっ!」

 ずぶり、と中尉のおちんちんに一気に貫かれた瞬間、私は今まで出したことも無い奇妙な悲鳴を上げてしまいました。

 中尉のおちんちんのあまりの太さに、私のお尻は今にも引き裂かれそうです。そして、尻たぶに腰が当たっている感触は無いのに、中のほうは一番奥の突き当りまで圧迫されています。つまり、私のお尻の奥行きでは中尉のおちんちんの全長を収めきる事が出来ないと言う事です。

「あ、あ、ああ……」

 圧迫感というか中から無理やり押し広げられる感覚に、私はまともに声を上げることも出来ません。あとちょっとでも圧力が高まったら破裂してしまいそうで、私は恐怖にも似た感情を覚えました。

「んっ、カナミのお尻、きつきつで凄くいいわぁ……」

「はっ、はあっ、ベアトリスさん、はっ、う、動かないで……」

 中尉が少し身じろぎをするたびに、私のお尻に今にも限界を超えそうな力がかかります。私は震える声で動かないように哀願するだけで精一杯でした。

 しかししばらくそうやってじっとしていると、お尻の方がおちんちんの太さに馴染んできたのか、あまり苦痛は感じなくなってきます。そうなると、後に感じられるのは快感だけです。お尻が受ける刺激が強い分、その快感も大きな物です。

「はっ、はあ、んっ、はぁっ……」

 やがて私の息遣いの変化を感じ取ったのか、中尉がおちんちんを引き抜く方向に動かします。

「んあっ!」

 亀頭が肛門の裏側に接するところまで行くと、今度は押し込む方向です。

「ひぐっ!」

 抜き差しのたびに、私は今まで上げたことの無い悲鳴を上げさせられます。昔の戦争で捕虜というものになった時にされたという、拷問というものを受けたらこんな感じなのではないかと私は思いました。

「はあっ、んくっ、ひっ、あんっ、あっ、ああっ、あっ、ふあっ……」

「ふふっ、カナミ、声がだんだん色っぽくなってきたわよぉ……」

 中尉の言うとおり、私の上げる声は徐々に悲鳴から嬌声に変化していきます。苦痛が減っていくにつれて快感が大きくなり、やがてはお尻から受ける刺激全てが快感として感じられるようになりました。

「ふふ、いいわよいいわよぉ。かわいい子が私のおちんちんで鳴いてるのって、とってもぞくぞくしちゃうわぁ」

「あっ、ふあい、ああんっ、中尉の、んっ、おちんちん、ひんっ、すごく、はあっ、気持ちいい、ひっ、ですっ……」

 お尻をおちんちんで一突きされるごとに喘ぎながら、私は中尉の言葉に答えました。

 お尻から送り込まれて――というよりも叩き込まれて――くる快感に翻弄され、私は自分の感じているのが苦痛なのか快楽なのかもわからなくなってきました。いえ、もしかしたらそれは、苦痛を通り越した快楽、あるいは快楽過ぎて苦痛になっていたのかもしれません。

「カナミ、あなたの中に、出してもいい?」

「はっ、はい、ベアトリスさんの、んっ、ザーメン、私の中に、ひんっ、全部下さぁい……」

「んっ、それじゃあ、遠慮なくいくわね!」

 中尉がそういった次の瞬間、私の奥の奥で熱い爆発が感じられました。ぎっしりと押し広げられていた直腸が、注ぎ込まれる液体でさらに押し広げられているような気がします。放出しながらびくびくと震えるおちんちんの動きを私のお尻は細大漏らさず感じ取り、その全てを脳に伝えてきます。もはや苦痛だか快楽だか分からないその強烈な刺激に、私は自分の意識がホワイトアウトしていくのを感じました。

 腰が抜けて立てない私を、中尉が横抱きに抱えてシャワーまで運んでくれます。いわゆるお姫様抱っこという奴です。一Gの標準重力をまったく苦にせず私を運ぶその力強さは、さすが鍛え抜かれた軍人という頼もしさを感じさせます。

 シャワーで改めて体を流してからお湯に浸かると、私はなんだかほっとしてしまいました。中尉とのセックスが気持ち良く無かったという訳では無いのですが、あまりにも刺激が強すぎました。

 別に暴力を使われたわけでもないですが、なんだか強引にねじ伏せられて犯されたようでちょっと割り切れない物が残ります。

「むぅ……」

「あらどうしたの? そんなふくれっ面してぇ」

「ご自分の胸に手を当てて考えてみてはどうですか?」

「え? うーん……。気持ち良くしてあげ足りなかったかしらぁ?」

「ちがいます!」

 笑いながら言う中尉は、もちろん全て分かって言っているのでしょう。

 私のほうも、別に本当に気分を害しているわけではありません。中尉がどんな人物かは大体分かりましたし、理解してしまえば別に立腹するようなことでもないからです。

 しかしあまりに一方的に弄ばれたようでちょっと悔しかったので、少し怒ったポーズを取らずにはいられないのでした。

 一息ついたらお湯から上がり、体を乾かして艦内服を身につけます。私の足腰はいまだに脱力しており、どうもよたよたとした足取りになってしまいます。

「あはは、ごめんねぇ。送っていくわよ。山崎大尉たちの家よね?」

「はい。責任とって下さいね」

「ごめんごめ……」

 先に立って更衣室から踏み出したベアトリス中尉の台詞が、不自然に途切れます。後ろから見ても、中尉が硬直しているのが分かります。

 私は既視感(デジャブ)を覚えながら、中尉の肩口から前を覗きました。

「……お姉さま」

 そこに居たのは、私の予想通りの人物でした。青い瞳に涙が盛り上がり、今にも溢れそうになっているのがはっきりと見えます。

「あ、あら、アリスもお風呂かしらぁ?」

 中尉が何気ない風を装ってアリスに声をかけますが、その声には引きつった響きがあります。おそらくは冷や汗の一つもかいているのでしょう。

「お姉さまの――馬鹿あっ!」

 アリスは艦内通路に響き渡る声で怒鳴ると、きびすを返して駆けていってしまいました。

「ちょっ、アリスっ、待って! ごめんカナミ! 一人で帰って!」

 振り向いて私にそう言うと、ベアトリス中尉はアリスを追いかけて走り出します。

「ちょっ、ちょっと中尉!」

 私の声を無視して、中尉はアリスを追って走り去ってしまいました。再び『なんだかなあ』と思って溜息をつきながら、私はここからどうやって帰ったものかと頭を悩ませました。

● ● ●

「先日の試験の結果の解析が終わりました」

 昂さんが私たちにそう告げたのは、私がサウナでベアトリス中尉に抱かれた翌日のことでした。少佐の個人ラボに集められたケネス司令と第一小隊の面々、私とケイさんは、昂さんの説明に聞き入ります。

「かいつまんで説明しますと、小隊間通信のノイズの原因は、アリス少尉とカナミ少尉、あなたたちの間の相性問題です」

「は? アリス少尉と私、ですか?」

 私は最初、昂さんのその説明の意味が良く分かりませんでした。親機によって直結されているケイさんと相性問題がある、というのなら素直に納得できたのですが。

「はい。簡単に言うとアリス少尉があなたを拒んでいるために、親機に直結しているアリス少尉の拒絶思考がノイズになって情報回線に乗ってしまっているという事です」

 そう説明されて、私は思わずアリスの顔を見てしまいました。

 私の視線に気付いたアリスは、私をひとにらみすると顔をそむけます。その仕草に、私はアリスがいまだにベアトリス中尉と私のことに立腹していることを理解しました。

「というわけで、今日からしばらく、ベアトリス中尉、アリス少尉、山崎大尉、カナミ少尉の四名には共同生活をしてもらいます」

「……は?」

「一緒に寝起きをして、協調心を養ってください。小隊長二人は保護者兼監督責任者です」

 こうして私たち四人の、四人部屋での共同生活が始まったのでした。

 《天城》の艦載機格納庫には四個小隊分の搭載容量があり、搭乗員用居住区も正規の四個小隊分の居住容積があります。すなわち、四機×四個小隊×二クルー分の合計32人分です。

 しかし901には現在稼動機が六機しかなく、登場配置に専任搭乗員制を取っているため搭乗員も六人しか居ません。このため、ハンガーの半分は機材倉庫代わりに使われ、居住区もラボや実験施設のスペースで半分が埋め尽くされています。

 それでも、宇宙艦としては贅沢なことに未使用の気密スペースがかなり余っています。私たち四人のために用意されたのは、そうした部屋の一つでした。

 壁面収納式のベッドが四つと簡易リビングセット、私物用ロッカーとデスクという構成は、《サラトガ》の搭乗員居住区画の小隊用居室と同じ物です。

 これからしばらくこの部屋で共同生活をして、私とアリスの協調性問題の変化とサイコミュリンクへの影響の相関関係を計測する、というのが私たちの新しい任務でした。

 初日の試験は、私とアリスの二人だけで親機同士での接続を行うというものでした。つまり、私とケイさんの二人で行っていた試験と同じ内容です。

 この試験の結果が散々だったことで、私にも昂さんの説明が納得できました。

 ケイさんと同じ試験を行ったときと違い、私とアリスの間ではまともな情報連結が成立しません。そして直結したことでよりはっきりと伝わるようになったノイズからは、アリスの私に対する拒絶の意思がはっきりと伝わります。これを何とかしないといけないのかと思うと、私は前途の多難さに軽いめまいを覚えてしまいました。

 その日の夜、ケイさんが私たち全員を一緒のお風呂に誘います。

「やっぱり親睦を深めるっていったらこれよねぇ」

 浴槽に浸かったベアトリス中尉ののんびりした声がバスルームにこだましました。

 中尉の隣にはアリスがぴったりと張り付き、私と中尉の接近を防いでいます。絶対防衛線を守る守備兵のような雰囲気に、私は少々気圧されてしまいました。

「ねえアリス、そんなにくっつかれると、ちょっと動きにくいんだけどぉ……」

「お姉さまはしっかり固定しておかないとふらふら流れて行っちゃいますから」

「私は風船か何かかしらぁ……」

 アリスの声音は、さながら炎を封じ込めた氷柱といった迫力です。

 このときバスルームでは私たちのほかに数人の整備兵や技官が入浴していたのですが、誰も浴槽に近寄ってこようとしません。みんなシャワーだけを浴びるとそそくさと退出していってしまいました。

「これは周りの迷惑かしら」

 ケイさんが苦笑します。笑える話ではないと思いましたが、迷惑であるということ自体には私も同意せざるを得ませんでした。

 結局お風呂を少し早めに切り上げて、私たちは居室に戻りました。消灯時間まではまだ二時間ほどあります。

 こういった自由時間には、普通は本を読んだりビデオを見たり、進級試験のための勉強をしたり、あるいは手紙を読んだり書いたりといった事をするものです。

 しかし……。

「ねえアリス、いいでしょぉ?」

「お姉さま、見られてます……」

 ベアトリス中尉が、私とケイさんの見ている前でアリスをベッドの押し倒しています。

 その手が優しくアリスの乳房を撫で擦り、アンダーシャツの上から尖った乳首を指の腹で転がしているのが見えます。

「いいじゃなぁい。私が本当に好きなのはアリスだけって事を、たっぷり教えてあげるのよぉ」

「そんな事言ってごまかそうとしたって――」

 アリスの台詞を、ベアトリス中尉のキスがさえぎりました。密着した唇の中でもごもごと動きがあり、ベアトリス中尉の舌がアリスの口腔内を責めている様子がうかがえます。その様子に私は、先日のサウナでのキスを思い出してしまいました。

「ぷあっ。じゃあこう考えたらぁ? アリスがどんなに私のことを好きか、きっちり見せ付けてあげるのよぉ」

「んっ、ごくっ――ふぁい、お姉さまぁ……」

 口の中にたまった物を飲み干したアリスが、中尉の言葉にとろけてしまった声で答えます。先ほどまでの尖った雰囲気はかけらも見えない甘えた声音に、私は少々面食らってしまいました。二人はそんな私とケイさんを無視して、再びディープキスをして唾液を交換します。

 キスで唇を責めながら、中尉の手はアリスのアンダーシャツの下に潜り込んでいきます。私より控えめな(多分カップサイズで言うとBぐらいの)アリスの乳房を柔らかく揉みながら、乳首を指先で突付いているようです。

 アリスの両腕は中尉の首と背に回され、しっかりと掴まえています。片足も中尉の足に絡みつかせているその様子は、何がなんでも逃げられないように必死にしがみついているという風情でした。

 一方中尉は、アリスの口を口で、胸を手で責めながら、さらにおちんちんをも自分のおちんちんで責めています。二人の固くなったおちんちんが、アンダーウェア越しにこすりあわされ、先端から溢れた液が透明な染みを作り、二人の下着を汚していました。

「んっ、お姉さっ、ぷあっ、お姉さま、んむっ、お姉さまぁっ……」

 全身を責められながらアリスがベアトリス中尉を呼び続けます。その様子には、なにか単なる恋愛感情以上のものがあるように私には感じられました。

「ふふっ、アリスのおちんちん、すっごく固くなってるわぁ」

「お姉さまの、んっ、おちんちんも、はんっ、凄く固くて、熱いです……」

「だって、大好きなアリスとこうやって抱き合ってるんだもの」

「それ、本当、ですか……?」

「本当よぉ。私のおちんちん、アリスに種付けしたくてしたくて、どうしようもなくなってるのよぉ」

 ベアトリス中尉はアリスの胸から手を放すと、アリスの片手を掴んで自分のショーツの中に導きました。

「ほぉら、分かるでしょぉ。私のおちんちんが、どんなになってるかぁ……」

「す、凄く熱くて硬くて、先走りがたくさん……」

「アリスとセックスしたくて、こんなになっちゃったのよぉ」

「でも、お姉さま、昨日あの子と……」

「カナミとはちょっとした遊び、私が本当に好きなのはアリスだけよぉ」

「本当? 本当にお姉さまは私のこと、好きでいてくれるんですか?」

「本当の本当、絶対の本当よぉ」

 ベアトリス中尉がアリスの目をじっと見ながら言います。

「お姉さま、嬉しいです……」

 アリスが目尻から涙を溢れさせながら言いました。アリスは泣き笑いをしながら、ベアトリス中尉に抱きついています。

「どうぞ、お姉さま……」

 うつ伏せに姿勢を変えたアリスが、お尻を上げてショーツをおろしながら言いました。

「私のお尻、お姉さまのおちんちんでお好きなだけ犯してください……」

「いい子ねぇ、アリス……」

 ベアトリス中尉がアリスの背後からのしかかりながら、耳元に囁いています。中尉の大きなおちんちんの先端がお尻の入り口に押し当てられると、アリスのおちんちんがびくんと跳ねるのが見えました。

「あっ、あっ、あんっ!」

 ベアトリス中尉のおちんちんがずぶずぶとアリスの中に入っていきます。一息ごとに嬌声を上げながら、アリスのお尻がそれを迎え入れました。

「お姉さま、お姉さま、お姉さまぁっ!」

 中尉の太いおちんちんに貫かれて、しかしアリスの声には苦痛の気配は微塵もありません。その声から聞き取れるのは、純粋な喜びの感情だけでした。

「んっ、アリスのここ、とっても熱くて、私のを、締め付けてくるわぁ」

「お姉さまのおちんちん、気持ちいいです、気持ちよすぎて私のお尻、溶けちゃいそうですっ!」

「うふふ、嬉しい事言ってくれるわねぇ。じゃあもっともっと気持ち良くしてあげないとねぇ」

 ベアトリス中尉はそう言うと、ゆっくりと腰を使い始めました。

「あっ、ふあ、はあっ……」

 おちんちんがお尻から抜け出てゆくのにあわせて、アリスが空気の抜けるような声を上げます。

「あ、あっ、あぁっ……」

 おちんちんが押し入っていくと、今度は押し潰されているような喘ぎ声です。

 一往復毎に徐々に中尉の腰の動きが速くなり、やがて激しい往復動作になります。その一突き事にアリスは悶え、甘い悲鳴を上げていました。

「あっ、お姉様っ、ふあっ、私もう、ひんっ、もう駄目っ、あんっ、いっちゃい、ひあっ、いっちゃいますっ、んくっ、いっちゃいますっ!」

「んっ、私ももう、限界よ、一緒に、ね、アリス」

「はいっ、お姉様っ、ふあっ、一緒、にっ……!」

 アリスがそういった次の瞬間、奥まで挿入していたベアトリス中尉の腰の動きが止まりました。次の瞬間二人の腰がびくん、びくんと震え、同時に絶頂に達していることが分かります。

 はあはあと荒い息をつきながらしばらくじっとしていた二人ですが、やがてベアトリス中尉がアリスの背中にのしかかるようにして顔を寄せます。アリスも体をひねると、中尉の唇を自らの唇で受け止めました。

 後背位で挿入したまま、ふたりは口付けをかわしつづけます。その口付けは先ほどのように快楽をむさぼる激しい物ではなく、ただ、お互いの存在を確かめ合うための物のようでした。

「……アリスは、どうしてあんなに中尉のことを?」

 私は隣のベッドのケイさんに尋ねかけました。

 対角配置で四つあるベッドのうち一つに、アリスと中尉は一緒に横になっています。私とケイさんはそのベッドとは反対側の壁沿いにある二つのベッドを使用しています。アリスたちを起こさないように、私たちは声をひそめました。

「アリスもね、あなたと同じでトラウマ回復のために預けられてきたの」

「はい」

「アリスのトラウマっていうのはあなたと違ってね、戦闘ストレス起因のものじゃなくて、対人ストレス性だったのよ」

「対人性、ですか?」

「ええ。アリスが配備になった小隊に人間至上主義者がいて、クローン人間なんか認めない、って言ってね。もちろん軍はそんな言い分を認めなくて一緒の任務につくことになったわけだけど」

「はい……」

「当然サイコミュリンクのリンク率はめちゃくちゃ。それでまたトラブルになって、アリスはとうとう対人コミュニケーション障害に陥っちゃったの」

「……」

「その時私は第一小隊長で、ベアトリス中尉は二番機だったんだけど、預けられてきたアリスを、まあ最初は軽い気持ちで、口説き落としてベッドインしたんだけど」

「……まさか」

「そう。アリスがベアトリスに本気になっちゃってね。これはもう、一般部隊に配属は無理ってことになって、アリスは901に正式に配属ってことになったのよ」

「いいんでしょうか……」

「まあ、ちょうどその頃いろいろ立て込んでて、小隊をもうひとつ増設しようかって話になってたから、ちょうどいいかなってことで、私が小隊長で第二小隊を立ち上げたのよ。といってもあなたが来るまでは、私だけだったんだけどね」

 ケイさんの説明で、私はいろいろなことを納得しました。

 アリスが私に敵意を向けるのも、いわば無意識の防衛行動の一種なのでしょう。そう理解すると、彼女に感じていた戸惑いも消えます。

「……ベアトリス中尉のほうは、どうなんでしょう? 私も口説かれたんですが……」

「あの子のあれは病気だからねえ。ただ、それとは別にアリスの事は大事にはしてるわよ。しょっちゅう怒らせてはいるけどね」

 確かに先ほどの二人の様子を見ていると、先日サウナで私を抱いた時とアリスに対する時とでは、ベアトリス中尉の態度は違っています。私相手のときはあくまで遊びといった雰囲気でしたが、アリスを相手にするときにはそれとは違う真摯な雰囲気が感じられました。

「さ、明日も実験よ。あなたももう寝なさい」

「はい。おやすみなさい、ケイさん」

「はい、おやすみ」

 目を閉じて眠ろうとしながらも、私はアリスとベアトリス中尉のことを考えるのを止められませんでした。

 私は今まで、特定の誰かを愛したということはありません。私たち《エンジェル》は不特定多数の男性を相手にする物だと思っていたので、そもそもそういうことを考えたことがなかったからです。

 でも、もしも私たちにも誰かを愛するということが許されるなら……。

 ケイさんと昂さんの愛し合う姿や、先ほどのアリスとベアトリス中尉の姿を思い出すと、誰かを愛するということがとても素敵なことに思えてきます。浮気性に困らされながらもベアトリス中尉のことを愛することが出来るアリスに、私は羨望の念を禁じえませんでした。

● ● ●

 本日の実験の内容は昨日と同じ、すなわち、私とアリスの機体を親機、ケイさんとベアトリス中尉の機体を子機としたリンクテストです。

 昨日のテストでは、私とアリスがまともにリンクできなかったためにリンクネットワーク間の接続が成立しなかったのですが、今日は一転して良好なリンクが確立されています。昨日の不調が嘘のようにテストはスムーズに進み、今日のメニューは想定の時間内に完全に消化されることになりました。

「〜〜〜♪」

 《天城》へ帰艦中、どこからか聞こえてくるメロディーが耳に入り、私は首をかしげると全ての音声通信ラインをチェックしました。

「アリス、聞こえてるわよぉ」

 ベアトリス中尉の声が小隊内通信回線から聞こえます。その言葉に、私は鼻歌を歌っていたのがアリスだったと気づきました。

 帰艦後のデブリーフィングでは昂さんが、昨日とは違う意味で頭を抱えています。

「メンタルの影響がこうも大きいとは……。これは現在の小隊リンク以上にデリケートな運用になるかもしれませんね」

 デブリーフィング終了後、ケイさんとベアトリス中尉が会議のために呼び出され、私とアリスは休息待機を言い渡されました。

「長引きそうだから、食事は二人でお願いね。消灯時間になったら夜更かししないで寝るのよ」

「二人とも、喧嘩なんかしないで仲良くねぇ」

「はい」

「はい、お母様、お姉様」

 留守番をする子供への注意の様な事をケイさんとベアトリス中尉は私たちに言います。私は一応素直に返事をしつつも、『喧嘩の原因はベアトリスさんのせいなんじゃ……』と内心思ってしまうのを抑え切れませんでした。

 夕食を食べ終わった私とアリスは、二人で連れ立ってお風呂に入りました。シャワーを浴びて浴槽に浸かろうとする私を、アリスが遠慮がちに呼び止めます。

「ねえ、カナミ、一緒にサウナ、どうかな」

「え? うん、いいよ」

 アリスから私を誘ってくれたことに、私は内心嬉しくなります。私たちは姉妹(兄弟?)のようなものですから、やはり仲良く出来るのは嬉しい物です。

 私は生まれてからずっと《サラトガ》に乗り組みでした。《サラトガ》は護衛用軽空母なので、乗り組んでいる艦載機部隊は一個小隊四機、予備クルー無しの四人だけです。ですから自分以外の《エンジェル》とこんなに長く一緒に居るのは初めての経験でした。初めて一緒に過ごす姉妹と仲良くしたいと思うのは、当然の気持ちだと思います。

 アリスの後を追ってサウナルームに入りながら、私はどこかうきうきした気分でした。

 サウナルームの中では、ベンチに並んで座って汗をかきながら、私はちらちらとアリスのほうを見ました。

 血行が促進されてピンクに染まった肌が汗に濡れて艶かしいつやを帯びています。頭に巻いたタオルからこぼれた金髪が首筋や肩に張り付き、それがなんだかとても色っぽく見えます。控えめな乳房を飾る乳首は綺麗な桜色で、健康的な色気を放っているようです。

 不意にアリスが私と目を合わせます。盗み見をしていたのが見つかったのかと思い、私の心臓が跳ね上がりました。

「ねえ、カナミ」

「え、なっ、何、アリス?」

 私の反応に、アリスがきょとんとした表情を返します。

「?――あのね、私、あなたに謝りたいと思って」

「え?」

 アリスが綺麗な青い瞳で私を見つめながら言葉を続けます。

「あのね、あなたとお姉さまのこと……」

「あ、うん、ごめんなさい……」

「ううん、謝らないで。あなたが悪いんじゃないって分かってるから……」

 ベアトリス中尉の方が私に手を出してきた事を理解していること、そしてそれが毎度のことであることなどを、アリスは私に告げました。

「それで、ああやって怒ると、お姉さまがその後私に優しくしてくれるから……」

 それを聞いて私は、なんだか真面目に心配していたのが損をしたような気になりました。早い話が、仲直りすることを前提にした痴話喧嘩と言う訳です。

「心配させちゃって、本当にごめんなさい」

 アリスはぺこりと頭を下げました。上目遣いで、心配そうに私の顔色をうかがっています。

「あ、いやいや、ぜんぜん気にしてないから、アリスも気にしないで」

「ほんと? ありがとう!」

 私の言葉に、アリスが満面の笑みを浮かべます。

「優しいのね。カナミ、大好き!」

 大好き、と言われて――私の心臓はまたも大きく跳ねました。動悸はなかなか治まらず、私の耳には自分の心臓の音が響きます。

「……? どうしたの?」

「え? あ、ううん、なんでもないよ!」

「そう? あ、もしかしてのぼせた?」

 アリスは私に体を寄せ、下から見上げるようにして私の顔を覗き込みます。青い瞳を覗き返しながら、私は心臓の音がどんどん大きくなっていくのを感じていました。

「あ……。カナミ、これ……」

 アリスが何かに気付きます。アリスの視線を追って私も視線を落とし――自分のおちんちんがすっかりかたくなって立ち上がっていることに、私は今更ながら気がつきました。

「カナミ、もしかしてそろそろ……?」

「あ、うん……」

 前回のセックスからまだ二日しかたっていませんが、昨晩のアリスとベアトリス中尉の行為を見たせいか、私の性的欲求は早くも危険水位まで蓄積されていたようです。

「……ね、ねえ、カナミは、エンジェル同士でした事ってある?」

「……ううん、無い。ケイさんとだけ……」

「私も、お母様としか経験無いんだけど――カナミ、私でいい?」

「え? い、いいの?」

「うん……。カナミが私でよければ……」

 そわそわと見つめあったり視線をそらしたりする私たちの頬が真っ赤なのは、決してサウナのせいだけではありませんでした。

 私たちは連れ立ってサウナを出ると、汗を洗い流すのもそこそこに部屋に戻りました。繋いだ手からは、アリスの体温が伝わってきました。

「カナミのおっぱい、綺麗だね……」

 全裸でベッドに横たわる私の胸を見てアリスが言いました。じっと見られて羞恥心を煽られた私は、両手で抱えるようにして胸を隠して視線をそらします。

「やだ、あんまり見ないで……」

「どうして? 恥ずかしがらなくてもいいのに」

 アリスの手が私の腕を掴み、そっと乳房から引き剥がします。乳房とその先端で固く尖る頂を見られて、私の鼓動は先ほどとは違う理由で早くなりました。

「なんだか美味しそう……」

 ぺろり、とアリスが私の乳首を舐めます。両手をベッドに押さえつけられた私には、それを回避する術はありませんでした。

「はあっ……」

 アリスの舌が触れた部分から、電撃のような刺激が感じられます。敏感な胸の先端から広がったそれが、神経を伝わって全身に伝わっていきました。

「うふふ……」

 ぺちゃぺちゃと濡れた音を立てて、アリスの舌は私の胸を執拗に責めたてます。絶え間ない刺激に、私は胸だけで絶頂してしまいそうでした。

「アリス、どこで、こんなの……」

「お姉さまが時々してくれるの。とっても気持ちいいから、カナミも気持ち良くなってくれるかなって……」

 そう言われて、私はサウナルームでのベアトリス中尉とのキスの事を思い出しました。口を使った責めは、中尉の得意技なのかもしれません。

「あ、カナミのおちんちん、こんなになってる……」

 いつのまにかアリスは私の手を放し、その顔を私の腰に寄せていました。

「すごい、こんなに溢れてる……」

 アリスの指先が先端をくすぐり、溢れ出している透明な液体を弄びます。先端から拡がって腰を襲う刺激に、私は腰を振るようにして耐えました。

「やっ、アリス、そんなにしたら出ちゃう……」

「あら、カナミったら、早いのね」

 アリスの言葉に顔が熱くなるのと同時に、ぞくぞくとした快感が湧き起こるのが感じられます。先日ケイさんに言葉で責められて時にも思ったのですが、もしかしたら私には被虐趣味でもあるのかもしれません。

「んっ、ごめんなさい……」

「うふふ、カナミのおちんちんはこれを我慢できるかしら……」

 ぺろり。

 アリスは楽しそうに笑うと、私のおちんちんに舌を這わせてきました。

「ひゃあんっ!」

 指とは違う、熱くて柔らかくて、ねっとりと湿ってちょっとざらついた感触――その刺激に私は、悲鳴とも嬌声とも付かない声を上げました。

「やっ、お願いアリス、もう少しそっとっ!」

「……うふふっ」

 ぺろぺろ、ちゅっ、くちゅっ……。

 アリスは私の懇願を無視して、いえ、むしろそれ故にか、私のおちんちんを激しく責めたてます。しかしその刺激は、私の限界を見切っているのか、絶頂をぎりぎりで回避し続ける絶妙な物でした。

「あっ、ふあっ、あんっ、ああっ……」

「……ぷあっ。どうしたの、カナミ、そんな声だして」

 手足を拘束されているわけでもないのに、私は抵抗も出来ずにアリスにいいように嬲られます。しかしその責めは甘美な快感であり、逃げようという気などまったく起こさせない物です。そして、いいように体を弄ばれているという状況自体が、私に未知の快感を与えてくれます。

「お、おねがい、もうやめて……」

「あら、私の口じゃ気持ち良くなかった? 残念、じゃあもう今夜は止めにしましょうか」

「ち、ちがっ――」

「えー? なにがちがうのかしら? はっきり言ってくれないと分からないよ」

「……お、おちんちん、いかせてください……」

「……うふふ、カナミったら本当にえっちなんだから」

 アリスはにこやかに笑いながら私を罵倒します。

「ねえカナミ、私のお口と、お尻と、どっちでいきたい……?」

「……お尻に……」

「えー? 聞こえない。もっと大きい声でお願い」

「お、お尻で、いかせて下さい!」

「ふーん、カナミは私のお尻に精液注ぎ込みたいんだ? そのはしたないおちんちんで、私のお尻を犯したいのね」

 アリスの台詞に、私は返答することが出来ませんでした。指摘された内容のあまりの恥ずかしさに、頭のてっぺんまで血が上ったように感じられます。

「いいよ……」

 アリスはベッドに上がると私の腰をまたぎ、お尻の入り口に私のおちんちんの先端をあてがいました。後はそのまま腰を落とせば、私のおちんちんがアリスを刺し貫くという体勢です。

「私のお尻で、カナミの精液搾り取ってあげるね……」

 次の瞬間、アリスは一気に腰を落としておちんちんをお尻に飲み込みました。

「んっ、はあっ、カナミのおちんちん、すごく熱い……」

「アリスの中も、熱くて、私のおちんちん、溶けちゃいそう……」

 私の上に座り込んで、アリスはとても気持ちよさそうに喘いでいます。快感が押さえ切れないのか、腰が軽くうねるように動いているのがおちんちんを通じて伝わってきます。

 一方私のほうはといえば、焦らしに焦らされたおちんちんがアリスを突き上げようとするのを押さえ込もうと必死でした。もしちょっとでも気を抜いたら、腰が勝手に跳ね上がってしまいそうでした。

「じゃあ、動くね……」

「あっ、ちょっと待って!」

 私の制止を無視してアリスが腰を使い始めます。熱い肉でおちんちんをこすり上げられる感触に、私は腰に電気でも流されたような快感を感じました。

 私は他人の中に挿入するという体験はまだ二度目です。今まで唯一の体験は、先日ケイさんを相手に初めてを失ったときでした。

 今アリスのお尻に挿入して感じている感覚は、先日のそれとはまた違う物でした。

 私の上に跨って、私のものをくわえ込んでアリスが腰を振っています。そのおちんちんはぴんと立ち上がり、先端から透明な粘液を溢れさせています。目を閉じてうつぶせた顔は真っ赤に上気し、体を貫く快感に溺れています。

 その姿を見て自分が貫かれている時もきっとこんななのだろうと思うと、恥ずかしさがこみ上げてきます。と同時に、今アリスが感じているであろう快感が想像され、もっともっと私のおちんちんで気持ち良くなって欲しいという気持ちも沸き起こります。

 その気持ちに突き動かされ、私は右手でアリスのおちんちんをそっと握りました。

「ひゃんっ!?」

 アリスの腰が動きを止め、私の腰の上に座り込みます。私はアリスのおちんちんを緩やかにしごきながら、親指の腹で先端を撫でるようにマッサージします。

「あんっ、カナミっ、ちょっと待ってっ!」

「駄ぁ目。さっき私が待ってって言った時、待ってくれなかったでしょ」

 私は口と同時に手も動かし、喋りながらもアリスのおちんちんの先端を緩やかに責めます。

 アリスの腰がびくびくと震え、それに同期するようにお尻がぎゅっと締まります。腰の動きに連れて私のおちんちんも内壁のあちこちにあたり、その度に違う快感がお互いにもたらされます。

 そうやってしばらくして、私は不思議なことに気がつきました。

「あれ……?」

「んっ、どうしたの、カナミ……?」

 私の手の動きが途絶えたためか、少し余裕を取り戻したアリスが尋ねます。

「え、うん、なんだか、お尻のほうにも入れられてるみたいな……」

「……あ、もしかして、カナミは知らないんだね。あのね――」

 そう言って、アリスは丁寧に説明してくれます。

 私たちエンジェルは深層意識のレベルで記憶を共有しています。通常共有されているのは知識記憶のレベルなので、特定の個人の個人的な経験などは分かりませんが、誰かが学習し、身に付けた知識は連想・想起トリガーさえあれば取り出すことが出来ます。この記憶プールのためにエンジェルは全員連合の主要共通言語は会話読解出来ますし、戦闘の記憶も共有しているので誰かが遭遇した新型バーサーカーに即座に対応できたりもします。

 そしてここからは私が知らなかったことなのですが、ごく近く――といっても物理的な距離ではなく、お互いの存在認知において――で強くお互いのことを感じた場合に、きわめて表層に近いレベルでの知覚・認識共有が発生することがあると言うのです。

「――だからね、今私とあなたは、お互いに感じることも考えることもつながってるの」

 そう言って、アリスは自分の乳首を軽くつねりあげました。

「ふあっ!?」

 それと同時に、私の胸にも甘い刺激が走ります。

「分かった?」

「うん……」

 改めてアリスのことを強く意識してみると、おぼろげながらその思考が読み取れます。もっともその八割方はおちんちんとお尻からの快感に占められていましたが――これは今の私も同じ事でした。私もアリスも、残り二割だけの理性で会話をしている状態です。

 再びアリスが腰を使い始めると、今度ははっきりと挿入されている感覚が伝わってきました。私のおちんちんをアリスがどう感じているかがわかります。その感覚を頼りに、私は微妙に腰をずらしてアリスの一番感じる部分を刺激するようにしてみました。

「あっ、ふあぁ……」

 アリスがとろけた吐息を漏らします。その快感が感覚共有を通じてフィードバックされ、私にもお尻の中をつつかれる快感がもたらされます。

 それから後は、感覚のフィードバックループによる快感の無限増幅でした。

 アリスのお尻が私のおちんちんを締め付け、その快感がアリスにフィードバックすると痙攣したお尻が再び私のおちんちんを締め付け……。アリスがお尻で感じている快感が私にフィードバックすると私のおちんちんがびくんと跳ね上がり、それがアリスに伝わると再びアリスのお尻が快感に震えるという具合です。

 さらにはお互いの胸やうなじ、耳たぶやわきの下を舐めたり指先でなぞったりするたびに、同時に悲鳴を上げながら快感にのたうつという有様です。

 そうやって一体どのくらいの時間がたったのか、とうとう私のおちんちんが限界を迎えます。

「「はっ、あんっ、ふあっ!」」

 二人同時に絶頂を迎え、私はアリスの中に自分の精を解き放ちました。同時にアリスも射精し、私とアリスは射精の快感を二重に味わいます。さらには体内に熱い精液を注がれる感覚も同時に味わい、私は挿入する方とされる方、両方の絶頂を同時に体験することになりました。

 あまりに強烈な快感の刺激を受けたせいか、眠りに落ちる瞬間のように意識が薄れていくのが感じられます。頭の片隅で『あ、これはまずいかも』と考えつつも、私の意識は倒れてくるアリスを抱きとめた直後にブラックアウトしてしまいました。

「――ス、カナミ!」

 ゆさゆさと揺さぶられ、意識がゆっくりと覚醒していきます。なんだか重いな、というのが、覚醒した直後に考えたことでした。

「あ、ケイさん、おはようござい――」

 起床の挨拶を言おうとして――全て言い終わらないうちに私は現在の状況を把握しました。

「まだ朝じゃないわよ。分かってると思うけど」

「はい……」

 ケイさんの言葉に答える私の声は、蚊の鳴くような小さな物でした。

 私は全裸でベッドに仰向けに横たわり、その上には同じく全裸のアリスがうつ伏せで覆い被さっています。おちんちんはアリスのお尻からは抜け落ちていますが、まだ乾いていない精液の感触がはっきりと感じられます。

 私たちが何をしていたのかは、まったくもって一目瞭然でした。

「うふふっ、仲良しさんで、結構なことねぇ」

 ベアトリス中尉が、ちょっと人の悪そうな笑いを浮かべながらいいます。

「あの、すみません、中尉」

「え、なにがぁ?」

「中尉とアリスは、恋人同士なんですよね? それなのに……」

「ああ、べつに気にしなくても。謝るようなことじゃないでしょぉ」

「はぁ……」

「それよりあなたたち、お風呂に入ってくるべきよぉ」

 アリスを抱き起こしながらベアトリス中尉は言いました。たしかに言われてみると、私とアリスの体は汗と精液でどろどろです。

「う、せっかくお風呂入ったのに……」

「もう一度お風呂に入るべきね」

「す、すみません……」

 ケイさんにくすくすと笑いながら言われ、私は小さくなりながら謝りました。

「せっかくだから、みんなでお風呂にしましょうかぁ」

「いいわね」

 アリスを揺さぶって起こしながらベアトリス中尉が提案し、ケイさんもそれに賛同します。それを見ながら私は、家族ってきっとこんな感じなんだろうな、と考えました。

● ● ●

 私が第901実験戦闘団に配属になって《天城》に来てから一月が経過しました。

 今日の私たちの任務は、第二航空艦隊所属の第三航空戦隊を相手にしてのアグレッサー演習です。

 901は装備開発のための技術試験を主な任務としていますが、時々このような実戦形式の訓練での相手役も務めます。同型機ばかりの実戦配置部隊と違って各機体ごとに極端な性能差のある901は、同じく個体差の大きいバーサーカー役の仮想敵機(アグレッサー)として最適なのだそうです。

 演習はスケジュールどおりに進み、ベアトリス中尉たちの第一小隊が損害無しで《グラーフ・ツェッペリン》所属の一個中隊を撃破しました。

「うわー、凄いですね……」

『ふふん、見直してくれていいのよぉ』

『こらこら、調子に乗らないの。カナミ、次は私たちの番よ』

「はい、大尉」

 演習宙域が整頓され、私たちの相手になる中隊が警戒防御隊形を組みます。演習内容は、防御隊形の中心に位置する防衛目標兼用の観測ドローンに攻撃を命中させて撃破判定を得れば私たちの勝ち、私たちを撃退すれば防御側の勝ち、というものです。

 相手は完全な一個中隊――三個小隊十二機――に対してこちらは私と山崎大尉の二機だけ。いくら相手を全滅させる必要は無いと言っても、さすがにこれは無理だろうと私は思いました。演習の目的は防御側の防衛行動訓練ですから、勝敗条件はおまけ程度の物だろうと私は最初思っていたのでした。

 ところが――。

「六! カナミ!」

「はい!」

 六機目を撃墜した大尉がすかさずライフルから次弾を放ち、ウルフハウンドを追い込みます。既にビームシールド機能停止の判定を受けていたそのウルフハウンドは、必死の機動でその射撃をかわしました。しかし姿勢の崩れた機体は僚機の支援可能範囲から外れた位置に飛び出してしまい、私はそこに向かってライフルを発砲しました。

「七! 次っ!」

「はいっ!」

 私と大尉の間のコミュニケーションはもっぱらサイコミュリンクに拠っており、音声は殆ど本能的に声が出ているに過ぎません。そして大尉からもたらされる状況認知と行動指示は極めて的確で、まだビットを一機も使っていないと言うのに既に防御側の戦力は半減状態でした。

 それから200秒後、交戦開始から数えておよそ400秒後には、防御側十二機は全て撃墜され防衛目標も破壊されていました。

『グラーフ・ツェッペリンよりデルタ、エコー、エクス全機。状況終了、繰り返す、状況終了。全機クルーズフォーメーションにて帰投されたし』

 管制をおこなっていた《グラーフ・ツェッペリン》のフライトコントロールから通信が入り、演習の終了が告げられます。各中隊が中隊単位で巡航編隊を組み、各々の母艦に帰投しました。

 演習完了から48時間後、《グラーフ・ツェッペリン》と護衛艦が宙域を離脱していき、第一戦隊と分離した《天城》は再び独航艦となりました。

 翌日、私は山崎少佐のラボに呼び出されました。

「カナミ少尉、あなたの心理分析の結果が出ました。結論から言いますと、あなたの戦場恐怖症は既に解消されています」

「はい」

 山崎少佐が私に診断結果を告げました。すでに自覚症状のなくなっていた私は、その診断に『ああ、やっぱり』と納得をしました。

「しばらく予後観察をしますが、再発症の兆候が無いようなら実戦部隊に復帰ということになります」

「はい。その場合、私はどこに配属されるのでしょうか?」

「おそらく現在編成中の新しい航路護衛部隊になると思います。航路護衛の拡充要請が頻繁で、現在護衛部隊を増員していますからね」

「了解しました」

 戦場恐怖症が治ったと聞いても、不思議なことにあまり嬉しい気持ちは湧いてきませんでした。それよりも感じたのは、やがて訪れるケイさんやアリスとの別れを惜しむ気持ちです。

 始めて会った『お母さん』、そして『姉妹』の存在は、私にとってとても大きな物になっていたようです。

 その日の夜――つまり非番時間ですが――は、ケイさんが指揮官会議に出席のために『家』には私と昂さんだけでした。こういう日はラボに泊り込んでしまうことが多い昂さんが家にいるのは珍しいことです。

「ケイさんが居ないのに昂さんが帰ってくるなんて珍しいですね」

「いやだなあ、僕だって実験も無いのにラボに入り浸ったりしませんよ」

「ふふっ、すみません」

 夕飯の後、二人で部屋のお風呂に入ります。

 浴槽のお湯に浸かると、昂さんの乳房はお湯にぷかりと浮きます。乳房は体積の殆どが脂肪で出来ていますからこれは不思議ではないのですが、私は思わず自分の乳房と見比べてしまわずにはいられませんでした。

「どうしました、カナミ?」

「あ、いえ……。あの、私たちエンジェルの胸って、どのくらいの大きさまであるんでしょう?」

「え? そうですね、確か、Aから上はDカップまでだったと記憶していますが。あまり大きいと、いくらスーツで押さえつけても高G機動時に大変なことになりますからね」

「う、そうですよね……」

 きちんとした理由があるとはいえ――やはり胸のサイズにこうも大きな違いがあると、DNA設計者である昂さんをちょっとだけ恨んでしまいます。

「それに大きいといろいろ大変なんですよ。肩こりの原因にはなりますし、いろいろと機器操作の邪魔ですし」

「はあ……」

「あ、でもいいこともありますね」

「それは?」

「時々ケイのペニスをはさんでしごいてあげるんですが、これは大きいほうが動作にいろいろと余裕がありますよ」

「……は?」

「ええと、いわゆる『パイズリ』という奴ですよ。ポルノビデオで見たのでちょっと試してみたのですが」

「は、はあ……」

 昂さんは両手で乳房をはさむように持ち上げ、左右から押し付けるようにして見せます。確かに、その間におちんちんをはさまれたらとても気持ちよさそうです。

 私も自分の乳房で同じ事をしてみようとしましたが――左右をあわせて深さ数センチの谷間を作るだけで精一杯でした。昂さんの胸に出来ているそれはおちんちんを完全に埋没させて余りある深さですが、私の胸の谷間ではなんとか挟み込むだけで限界といった感じです。

「なんでしたら、カナミも体験してみますか?」

「え、ええと……」

 昂さんは躊躇する私の手をとり、胸の間に導きました。私の手が昂さんの乳房にはさまれ、左右から圧迫され、柔らかく摩擦されます。ふわふわと柔らかく、それでいてしっかりとした質量の刺激は、もしこれがおちんちんだったら一瞬でも耐えられないのではないか、と思わせる物でした。

「どうします?」

「はい、お願いします……」

 にこやかに笑いながら問い掛ける昂さんに、情欲に負けた私は真っ赤になりながらお願いをしました。《エンジェル》である私は結局のところ、エッチな誘惑にはどうしても抗えないのでした。

 ちゅっ、くちゅっ、じゅぷっ、ずずっ……。

「あっ、んんっ、ふあっ……」

 淫らな水音が私の耳を打ちます。その音に合わせておちんちんから昇ってくる刺激に、私の背筋はぞくぞくと震えました。

「ふうっ、このくらい固くなれば充分ですね」

 昂さんが私の股間から顔を離して言いました。その言葉どおり、私のおちんちんはすっかり固くなって立ち上がっています。昂さんの唾液にまみれて妖しく濡れ光るそれは、快楽の余韻にひくひくと震えていました。

「じゃあカナミ、僕のおなかを跨ぐようにしてください」

 昂さんがベッドに仰向けになりながら言います。私はそのお腹を跨ぐと、昂さんの頭の両脇に腕をついて胸の谷間に自分のおちんちんを置きました。

 昂さんが自分のおっぱいを両手で寄せ、私のおちんちんを左右からはさみこみます。熱くて柔らかい肉におちんちんを包み込まれ、私はその気持ちよさに深くため息をつきました。

「どうです、カナミ」

「あっ、とっても、ふうっ、気持ちいいですっ……!」

 左右から圧迫されたかと思うと上下に摩擦され、乳房に包まれながら先端を舐められ――先ほどまでのフェラチオで既にすっかり昂ぶっていた私のおちんちんは、今にも爆発してしまいそうでした。

「はあっ、もう駄目っ、出ちゃう、出ちゃいますっ!」

 私がそう言った瞬間、昂さんが私のおちんちんをその口にくわえ込みました。その刺激がとどめとなり、私は雄の液体を解き放ってしまいます。

「あっ、ふあっ、あっ……、ふああっ!」

 昂さんは私のおちんちんが吐き出したそれを全て飲み込んでくれます。のみならず、射精が収まると、強烈な吸引で中に残った分まで吸い出しました。おちんちんの中身を強引に吸い出される快感に、私の腰はびくびくと震えます。

 絶頂の揺り戻しが収まると、私は昂さんの隣に横たわるように体を倒しました。はあはあと荒い呼吸をしながら、何とか目を開いて昂さんを見ます。

「どうでした、カナミ?」

「はっ、はい、とっても気持ちよかったです……」

「ふふっ、それは良かった。ですが――」

 そう言って昂さんは体を起こすと、その股間を私に見せ付けました。

「今度は僕のほうがこの状態なんです」

 昂さんのおちんちんは、先ほどの私の物のように、限界まで固くなって立ち上がっていました。剥き出しの先端からこぼれる透明な液体は、昂さんの男の部分が興奮していることを示しています。

「カナミのお尻で、慰めてくれませんか……?」

 雄の象徴を見せ付けられて、今度は私の中の雌の部分が反応しました。お尻の奥に疼きが起こり、肉棒で突かれる事を求めているのが分かります。

 私は両腕を膝の下に回して足を抱え上げ、お尻を両手で拡げて言いました。

「は、はい、どうぞカナミのここを、お母様のおちんちんでお好きなだけ犯してください……」

 私は淫らな言葉で昂さんを誘いました。何故か昂さんのことを『お母様』と呼びながら、私はその『お母様』に淫らな行為をねだる言葉にぞくぞくとした快感を感じていました。

「ありがとう、カナミ。素直な子は好きですよ」

 昂さんが私のお尻におちんちんを当てがいながら言います。

 次の瞬間、昂さんのおちんちんが私のお尻をこじ開けて侵入を開始しました。

 ゆっくりと少しずつ肛門を押し広げながら、じわじわと昂さんのおちんちんが入ってきます。徐々に増大していく圧力に、私は深呼吸をしながら耐えました。

 やがて一番太い部分が潜り抜けてしまうと、そこから後はスムーズです。私の一番奥まで占領されてしまうのに、ほんの少ししかかかりませんでした。

「はあっ……」

 深く溜息をつくと、その弾みにお尻から快感が湧き起こります。さらにおちんちんの付け根あたりからくすぐったいようなもやもやした快感が生まれ、それが骨盤全体で共鳴しているような気がします。

 昂さんのおちんちんがゆっくりと引き抜かれていくと、肛門と直腸に感じる摩擦が新しい快感を生み、それが電気のように私の背骨を伝わります。ずるずると引き抜かれていくおちんちんの動きにあわせて、私はびくんと痙攣しました。

 やがてもう後ちょっとで抜けてしまう、というところまで後退した昂さんのおちんちんが、次の瞬間一気に一番奥までつきこまれました。

「あんっ!」

 奥を叩かれて私は抑えきれずに声を上げ、背筋をのけぞらせました。自分のおちんちんからも何か液体が少し漏れ出たのが感じられます。

 それから私は昂さんのおちんちんで好き放題に責められ、はしたなく鳴かされ続けました。

 私が限界に到達して再び果てそうになると、昂さんは動きをゆっくりにしたり時には完全に止めて私をクールダウンさせます。私の快感のゲージが臨界値より少し下に下がると昂さんは再び私を責め始めます。あと少しで臨界を突破しそうになると、昂さんは再び動きを止めます。

 点火出来ずに快感というエネルギーを注ぎ込まれ続けて、私は自爆寸前の熱核反応炉のようになってしまいました。

「おかっ、お母様、も、もう、許して、許してください、わたし、死んじゃう、死んじゃいます……」

 昂さんにお尻を突き上げられ、おちんちんからは液体をとろとろと溢れさせながら、私は必死で哀願しました。あと少しこのまま責め続けられたら、快感に脳が焼き切れて死んでしまうのではないかと思いました。

 私の言葉に、いっそう抽送を激しくしながら昂さんは答えました。

「ふふっ、限界ですか、カナミ? それじゃあ僕の精液、しっかり受け取ってくださいね」

「はいっ、お母様のザーメン、カナミのお尻まんこに、あんっ、全部注ぎ込んで、ください!」

 私がそういった次の瞬間、私のお尻の一番奥で、昂さんのおちんちんが爆発したのが感じられました。

 お腹の奥に熱い熱い液体が注ぎ込まれ、それがじわじわと染み込んでいくように感じられます。同時に私のおちんちんも再び爆発していました。

 腰から背筋を駆け上った快感が頭の中で爆発し、至近距離で爆発があったときのように頭蓋が揺さぶられたような気がします。快感に飲み込まれて意識を失う寸前、私はもう一人の『お母様』も、ケイさんもきっといつもこんな風に責められてるんだろうなとぼんやり考えていました。

「……」

「……」

 ひどく遠い場所から会話が聞こえてきます。二人の人間が言葉を交わしているということはわかりますが、会話内容までははっきり聞き取れず何の話をしているのかは分かりません。

 目を開いてみると急速に意識がはっきりし、自分が一人でベッドに横たわっていることがわかります。あたりは薄暗く、ベッドの遮光フィールドがオンになっているようです。

 あたりを見回すと、ソファに腰をおろしたケイさんと昂さんが壁面ディスプレイに表示された宙域図と何かのデータを見ながら話し合っています。二人には特に声をひそめている様子は無く、声が遠いのはベッドの遮音フィールドがオンになっているからのようでした。

 私は体を起こすと枕もとのコンソールに手を伸ばして遮光フィールドと遮音フィールドを切りました。

「あら、目が覚めた?」

 私が起きたのにケイさんが気がつきます。

「体の調子は大丈夫? 昂ったら見かけによらず絶倫なんだから」

「あ、はい……」

 そう答えながらベッドから降りようとして――私はまたもや腰が抜けているのに気がつきました。

「あ、あれ……」

「あらあら。まったく昂ったらこんなになるまでするなんて」

「いやだなあ、失神癖と腰が抜けやすいのはケイの特性の遺伝ですよ」

 苦笑しながらケイさんが言い、それに対して昂さんが唇を尖らせます。そういえばアリスも似たようなことになっていましたが、もしかして《エンジェル》は全員が絶頂すると失神したり腰が抜けたりする癖を持っているのでしょうか?

「カナミ、今日の会議であなたの今後にも少し関係のあることが通達されたわ。そのことを伝えるわね」

「はい」

 ケイさんが真面目な顔になって言います。私も態度を改めると(と言ってもベッドの上にへたり込んだままですが)、真面目な声で応答します。

「火星近傍のヘリウム・エクスプレス回収ステーション付近で、未確認の航宙型バーサーカーが目撃されました。第二航空艦隊はこれの確認、および撃破ないし捕獲作戦を実行します。第三戦隊――つまり本艦ね――もこれに合流、データの収集行動をおこないます。それに伴い、当該オペレーションの実行中、あなたの身柄は本艦所属のままとなります」

「はい」

 ヘリウム・エクスプレスというのは、木星にあるヘリウム3採取プラントで木星大気から収集された核融合燃料用ヘリウム3を内惑星に送る無人タンカー群の呼称です。タンカーといっても殆どただの耐圧タンクに過ぎないものをマスドライバーでホーマン軌道上に射出しているだけの物ですから、襲撃されたりすればひとたまりもありません。

 火星近傍と言うことは火星コロニーで補給される艦船用燃料ペレット原料でしょうから、これが滞れば火星社会や、火星で採掘されるレアメタルに依存している地球にも影響が出るでしょう。

「相手の詳細が分からないし、まず見つけるところからやらないといけないから、作戦期間は未定なの。だからあなたには、もう当分ここにいてもらうことになるわね」

「はい、了解しました」

 ケイさんにそう答えながら、私は心の隅で少しだけそのことを喜んでいました。

 無論事態が深刻な物である可能性や、下手をすれば社会や経済に重大な影響を及ぼしかねない物であることは充分に理解していました。それでも――もうしばらくここにいられると思うと、ケイさんや昂さんやアリスたちと一緒にいられると思うと、そのことだけは嬉しく思えるのでした。

● ● ●

 体をシートに押し付けるGとともにカタパルトに押し出され、私のホワイトウルフが《天城》を離れました。少し加速して先行していた山崎大尉の機体に追いつき、バディ・フォーメーションを組みます。

「……見つかるでしょうか」

「なんとも言えないわね……」

 沈黙の重さに耐えられず、私は隊内通信回線で山崎大尉に話し掛けました。

 新型バーサーカーの捜索が始まって既に三週間が経過し、成果は無く時間だけが悪戯に過ぎていきます。ヘリウム・エクスプレス・タンカーの被害はすでに四群に及んでおり、喪失したヘリウム3の量は数百万トンに及んでいました。

 既に火星社会にはパニックの兆候が見られ、各種燃料・エネルギー資源の買い溜めや売り惜しみがあちこちで起きています。火星で消費するエネルギーの殆どは軌道太陽光発電所でまかなわれている以上、多少ヘリウムが欠乏したところで直接の影響は無いはずなのですが、やはり一度パニック心理に陥ってしまうと冷静ではいられなくなるのでしょう。

 結局今回の軌道先行哨戒にも成果は無く、空しく三時間を浪費しただけに終わりました。

 《天城》に帰投後、山崎大尉が旗艦《グラーフ・ツェッペリン》での作戦会議に招集されました。その会議には山崎技術少佐にグレッグ艦長、ケネス飛行隊司令も招集されており、なにやら大掛かりな作戦の準備の気配が感じられます。

「それじゃあカナミ、戻ってくるのは明日になるから、今夜は一人で寝てね」

「はい、ケイさん」

 連絡艇に乗り込むケイさんと昂さんを見送って、私は小さく手を振りました。

 『家』に戻り、冷たいコーヒーで一服します。手狭ではないにしてもそれほど広いわけでもないこの家ですが、やはり一人きりだとがらんとして感じられます。部屋の真ん中におかれたソファに座ってアイスコーヒーを啜りながら、私は小さく溜息をつきました。

 今まで時間を持て余すということが無かった私は、個人的な趣味というものをもっていません。どうやって時間を潰そうかと考えながら部屋を見回すと、VRリンカーのヘッドセットが目にとまりました。そういえばこんな物もあったなあ、と思いながら私はそれを手にとります。

 ケイさんたちには『家』にあるものは好きに使ってかまわないと言われていましたから、私はAVモニターを起動すると、家のライブラリにダウンロードされているソフトの一覧を表示してみました。VRソフトもいくつかあったのでその一覧を見てみます。私はその中から適当なソフトを選ぶと、VR再生ソフトに読み込んで再生デバイスにVRヘッドセットを指定しました。

 作品タイトルは「False Maiden 〜Victoria〜」。作品解説のテキストには「兄に対して禁断の恋愛感情を抱いた主人公は、身分を捨てて某屋敷のメイドになり〜」云々と書いてあります。時代物の恋愛ドラマでしょうか? VRでそういうものを体験するのは初めてなので、少しわくわくします。

 再生スタンバイの表示を確認したら、ソファに腰をおろしてクッションに寄りかかり、ヘッドセットをかぶります。ソフトの再生を開始すると最初に製作会社や配給元のロゴマークやテーマ音楽が流れ、次に注意事項の表示がされてから本編のデータ再生が始まりました。私は体の力を抜くと、五感に流れ込んでくる主人公の感覚データに身を任せました。

 「False Maiden」本編の再生が完了し、私はVRからリターンしました。視聴覚データのみのエンドクレジットを見ながら、私は今体験したばかりの作品の内容を思い返しました。

 「False Maiden」の内容は私が想像していたような歴史ロマンス物ではなく、いわゆるポルノ作品でした。しかも主人公がシーメールという、いわばマニア向けの作品です。ストーリーのほうは作品解説通りの物ではありましたが……。私は主人公ヴィクトリアの体験を思い返しながら、先日ケイさんと昂さん、アリスとベアトリス中尉に感じたうらやましい気持ちを再び感じていました。

 兄に懸想し、名前や身分どころか性別すら捨てて一度だけベッドをともにした弟。もちろんそれはフィクションなのですが、そこまで人を愛するということに対する憧れ、そしてそれを現実にしているケイさんたちへの羨ましさが私の胸の中でくすぶります。

 私は《エンジェル》ですから、バーサーカーとの戦いが続く限りアサルトアーマーに乗り続けなければなりませんし、求められれば男たちに体を任せなければなりません。そもそも私たちはそういう目的のために作られた人工生命体だからです。

 それでも、もし私を本当に愛してくれる人が出来たら、そして私もその人を愛することが出来たら……。

 私は想像上の恋人と日々を過ごす自分を想像しようとしてみました。けれども、私にはどうしてもそれを上手く想像することが出来ませんでした。

 私は一年と少し前に生まれて以来、殆どの時間を宇宙戦闘艦とアサルトアーマーのコクピットで過ごしてきました。それ以外は、わずかにアトランティックステーションを始めとする軍港か共用港の立ち入り許可範囲を歩いたことがあるだけで、地球は無論他の惑星や衛星にすら降りた事はありません。当然のことながら、軍艦の上以外の生活など娯楽フィルムの類でしか知りません。圧縮学習で詰め込まれた知識としての『平和な生活』は知っていますが、それは私自身の経験記憶ではありませんでした。

 想像の中の私と『彼』は、早くも夜のベッドの上でした。私自身の経験として知っている『男との愛し合い方』はベッドで体を重ねることだけですから、他に想像出来る事が無いのです。

 ベッドの上で抱き合ってキスを交わす所まで想像して――私は我に返りました。

 気分が冷めてしまうと、一気に空しい気持ちになってしまいます。こんな想像をしたって、私に相思相愛の恋人が出来るわけじゃないのに。自分にそう言い聞かせながら、私はソファから腰を上げました。

 氷の溶けた水だけが入ったグラスをディスポーザーで処理すると、私は服を脱いでバスユニットに向かいました。シャワーだけさっと浴びて体をさっぱりさせ、浴槽には浸からずに体を乾かして、そのままベッドに直行します。

 『家』の照明を落としてふわふわのファーブランケットに包まり、いい夢が見られるといいなあ、と思いながら私は目を閉じました。

 ベッドのヘッドボードのスピーカーから鳥の鳴き声を模したアラーム音が聞こえ始めました。既に目覚めていた私は、タッチパネルのアラーム停止のスイッチに触れてアラームを止めます。ベッドの上で体を起こし、私は大きく伸びをしました。

 ケイさんたちが《グラーフ・ツェッペリン》での会議から帰ってくるまで、私は48時間の休息待機を命じられています。ですから今日はまる一日の非番でした。

 何をして過ごそうかと考えて、私はとりあえずどうにかしなければならない問題があることに気がつきました。ブランケットを持ち上げて、裸の股間を見てみます。そこにあったのは、限界までかたくなって天を衝いている私のおちんちんです。

 昨晩寝る前にポルノVRなど体験したせいか、それとも単に溜まってきただけなのか、とにかくこれを何とかしないといけません。

 お風呂で自慰でもしてシャワーで流してしまおうか、などと考えながら視線をさまよわせていた私の目に、サイドテーブルに置いてあった携帯端末が目に入りました。個人宛メッセージの着信を示すインジケーターの点滅に一体誰からだろうと思いながら、私は端末を手に取り個人用メールボックスの着信を確認しました。

 未読メッセージは一件、送信者は昂さんです。件名は無く、本文も非常に簡潔な物でした。

『そろそろ必要になっている頃だと思います。これを使ってください。』

 メッセージには一個のファイルが添付されていました。データタイプはレプリケーター用のオブジェクトデータでサイズはあまり大きくはなく、ファイル名は『file1.rep』となっていてそれだけでは中身が分かりません。

 私はそのファイルをプレビュー表示してみました。ビューアの画面に表示されたのは――男の人の男根を模した自慰用の玩具、いわゆるバイブレーターでした。

「……」

 私はどう反応していいのか分からず、携帯端末を覗き込んだまま固まってしまいました。もちろん、私がそろそろ『発散』しないといけない状況になっているであろうことを見越した昂さんが差し入れをしてくれた、ということは分かるのですが……。こういったものを、私用通信も許可されているとはいえ、軍のネットワーク経由でやり取りしてもいいものなのでしょうか?

 そんなことを考えながら、しかし私の視線はそのバイブレーターのプレビュー画像に釘付けでした。亀頭部の膨らみとくびれにそれが肛門をくぐりぬけるときの拡張感を想像し、竿部分につけられた凹凸にそれが肛門粘膜をごりごりとこすり上げる感触を想像し、最後にそれが直腸を埋め尽くしたときの満足感と少し被虐的な被征服感、そして玩具で恥ずかしい部分を慰めることの羞恥と開放感を想像してしまいます。

 私はほんの少しだけ迷った後に、プレビューアのメニューから『このオブジェクトを生成』のコマンドを実行しました。

 アヌスに差し込んだ中指をゆっくりと抜き差ししながら回転し、締め付ける筋肉を解していきます。こすり上げるたびに粘膜から快感が湧き起こり、私はベッドに横たわった体を震わせました。

 やがてすっかりほぐれたアヌスが、もっと太い物を欲しがります。私は右手をお尻から引き抜くと、目の前に転がるバイブレーターをつかみました。

 そのバイブレーターの大きさはほぼ一般的な成人男性のペニスと同じですが、亀頭の傘は大きく張り出し、竿部分には大きな凹凸、その下には回転するパールがあり、男性器の形をした性的玩具なのだということを無言で主張しています。私は少しゴム臭いそれを口に含み、入念に唾液をまぶしました。生身のそれにするように舌を這わせ、口の中に溜めた唾液を満遍なくなすりつけていきます。

 充分に潤ったそれの先端を、私はアヌスに当てます。亀頭がわずかにめり込み、ひくついた肛門がそれを自ら咥え込もうとするようでした。私はバイブレーターの先端で肛門をぐりぐりとこじり、自分を焦らしてみます。私のお尻は私の意志に関係なく動き、まるでかってにバイブレーターを飲み込もうとするようでした。

 焦らすたびにお尻からじれったい快感が湧き起こり、背筋がぞくぞくします。同時に腰の奥に感じる熱が強まり、その熱がアルコール飲料を摂取したときのように全身にまわっていきます。

 じれったい快感を十分に愉しんだ後、私はバイブレーターをゆっくりと自分の中に押し込んでいきました。ずぶずぶとそれが私のお尻を犯し、そこから湧き上がる快感におちんちんがびくびくと震えます。ついにその先端が私の内奥を突いた時、私は無意識に止めていた息を大きく吐き出しました。

「――っ、はあっ、はあ……」

 肛門がひくひくと震え、腰も勝手に動いてバイブレーターの感触をむさぼろうとします。その度におちんちんも震え、先端から透明な蜜を溢れさせています。

 挿入してみると、そのバイブレーターは大きさといい長さといい、私のお尻にぴったりでした。

 細すぎて物足りないと言うことは無く、かといって太すぎて苦しいと言うことも無く、先端が奥まで届いた状態でちょうどパール部が肛門にかかり、動かせば敏感な粘膜と内奥を同時に掻き回してくれるでしょう。

 私はバイブレーターの根元に付いたスイッチを震える指で押し込みました。

「ひっ、ふあっ、んっ……」

 小型のパワーパックから供給された電力がモーターに供給され、バイブレーターの先端とパールが回転を始めます。内奥をえぐられると同時に敏感な肛門粘膜をこすり上げられ、私は思わず悲鳴を上げてしまいました。しかしその悲鳴もすぐに喜悦の喘ぎに変わっていきます。

 私はベッドの上で横になって丸くなりながら、太ももにはさまれた両手を使ってバイブレーターをゆっくりと抜き差ししました。微妙に当たり所が変わるたびにお尻から新鮮な快感がもたらされ、私は体を震わせます。おちんちんの先端からは、失禁でもしているのではないかというぐらいの蜜がこぼれています。

 数分もすると――もしかするとほんの数十秒だったかもしれません――私の頭は快感でオーバーロードし、もはやバイブレーターを抜き差ししてお尻で快感をむさぼる以外のことを考えることは出来なくなっていました。

「――っ!」

 そうやってどれぐらいの時間がたったでしょうか、唐突に頭の奥でスパークが起き、私は全身を痙攣させて絶頂に達しました。おちんちんからは精液が噴き出し、お尻はバイブレーターを噛み締めて最後の快楽をむさぼります。

 数十秒続いた絶頂が去ると体から力が抜け、私はぐったりとベッドに身を預けました。中途半端に抜け落ちたバイブレーターの亀頭部分が肛門に引っかかり、いまだに続く回転がそこから快感を送り込んできます。脱力した身体に機械的に送り込まれ続ける快感に、私はびくびくと悶え続けながら、ケイさんたち早く帰ってこないかなあ、と考えていました。

● ● ●

 新型バーサーカー母艦を捜索・撃滅するための第二航空艦隊による乾坤一擲の作戦、『アルゴス・アイ』が発動されました。

 敵母艦の予想存在範囲をカバーするように円形に展開した全ての《エンジェル》搭乗のアサルトアーマーを試作型サイコミュリンクで情報連結し、ケイさんが情報ハブとなって巨大なサイコミュリンクネットワークを形成、幾何級数的に拡大された《エンジェル》の感応力を使って敵のアクティブステルスによる隠蔽を打ち破ろうという作戦です。

 第二航空艦隊のアサルトアーマー戦力を全力出撃させる作戦ですから、失敗した場合搭乗員の休養や機体整備のローテーションが大きく狂ってしまい、しばらくは通常の索敵哨戒を行うことが出来なくなります。その意味で、失敗は許されない作戦でした。

『さあ、いくわよカナミ少尉』

「はい、大尉」

 《天城》の右舷カタパルトから、ケイさん――山崎大尉のホワイトウルフ改と、それに続いて私のホワイトウルフが射出されます。先行して展開していた第一小隊の後ろにつけるように、私たちはバディフォーメーションをとりました。

 やがて所定の配置に付くと、山崎大尉がサイコミュリンクのマスターユニットを起動しました。連動して私の機体のサイコミュリンク子機が自動的に接続します。

 その次の瞬間、私は膨大な情報が流れ込んでくるのを感じてパニックに陥りかけました。18個小隊がカバーする直径およそ二光秒の範囲の情報が一気に押し寄せます。同時にリンクネットワークに所属している《エンジェル》たちの思考が、ぼんやりとですが伝わってきます。

 未知の敵新型に不安を抱いている者、バーサーカーへの敵愾心を抱いている者、人類への脅威を排除するんだと張り切っている者、etc、etc……。中にはバーサーカーそっちのけで、『お母様』とまたご一緒できて嬉しい、等と考えている者までいます。

 周り中から感じる『姉妹』たちの存在が私の心を落ち着け、急速に平常心を取り戻させてくれました。

 数秒の後、私は気を取り直すと宇宙空間の気配を探ることに集中しました。まばらにごく小さな微小隕石が存在する他は、虚空そのものといっていい空間しか感じられません。直径二光秒の陣形を維持したまま、私たちは無言で惑星間軌道を進みます。

 それがおきたのは作戦開始からおよそ90分後のことでした。

 基準平面から見て上方45度、距離およそ9,000kmの位置に不審な気配、というか何か『穴』のようなものが感じられます。宇宙空間のそのあたりだけ、まるで空間そのものが欠落しているかのような……。

 第一小隊が加速し、その位置へ向かいます。アリスの誘導に従って移動する第一小隊の位置を《天城》がレーダートラッキングで追尾しているのが戦術ディスプレイに表示されていました。

『ポイントまで推定200km』

 アリスの緊張した声がオープンチャンネルから聞こえ、私は固唾を飲みました。

 《天城》の主砲――406mmプラズマカノン連装三基六門――がアリス機のFCSにリンクして照準します。私は戦術ディスプレイの友軍射撃カウントダウンに目をやりながら、サイコミュリンクに意識を集中しました。

 カウントゼロと同時に、背後から強烈なエネルギーの塊が亜光速で接近してくるのが感じられます。六発のプラズマの固まりが私たちの上方を通り過ぎ、数秒後には目標ポイントも通り過ぎました。

 外れたかな――と思った次の瞬間、目標ポイントにはっきりとした気配が出現しました。その直後、レーダーディスプレイ上に敵味方不明(アンノウン)を表すマーカーが現れ、数秒後に敵性機体を示すマーカーに切り替わります。

『出たわねぇ。第一小隊、行くわよぉ!』

 ベアトリス中尉の掛け声と同時に、対艦ミサイルランチャーから発射されたミサイルがバーサーカー艦に襲い掛かります。

『カナミ、私たちも行くわよ!』

「はい、大尉!」

 山崎大尉を追って、私は機体を加速させました。

 数分後に第一小隊と合流した私が目にしたのは、それまでのバーサーカー母艦とはまったく違う艦でした。

 今までのバーサーカー宇宙艦がでこぼこした鈍い銀色の外装だったのに対して、この艦は漆黒の滑らかな外装に覆われています。大小の火器も外部に露出しておらず、全て引き込み式のようでした。今までの艦がジャンクを溶接してアルミホイルでくるんだような印象だったのに対して、この艦の印象は巨大なミサイルといったところです。

 私たちが到着したとき外装の一部にはすでに破孔があいており、その周辺の火器が沈黙して対空火網に穴が出来ていました。

『第一小隊、状況は?』

『ちょぉっとまずいかも。対艦兵装を使い切っちゃったんだけど、まだご覧の通りですわぁ』

『了解、第一小隊は下がって。カナミ少尉、対艦ランチャー充填開始。私が時間を稼ぐわ』

「了解!」

 私は敵艦から少しはなれた位置で機体を静止させると、ライフルの代わりに抱えてきた対艦ビームランチャーへのエネルギー充填を開始しました。このランチャーはアサルトアーマーが携帯できるサイズにしては破格の威力を持っていますが、機体の反応炉の出力に対してエネルギーの消費が大きいために連射が効かないという難点がありました。発射準備に入ると、ランチャーのコンデンサーへのエネルギー蓄積が終わるまで私の機体は殆ど無防備な状態になってしまいます。

 敵艦からある程度は離れているとはいえ、対空火器の有効範囲内で無防備な姿を晒すのはやはり怖いものでした。しかし私は山崎大尉の言葉を信じて、ランチャーの発射用意に集中しました。

 第一小隊の四機がわたしの機体の前に集まり、ビームシールドを敵艦にむけて壁を作ります。と同時に山崎大尉が単機で敵艦に接近し、牽制攻撃で注意を引き付けました。

 このとき初めて、私は山崎大尉がビットを使うのを目にしました。

 十基のビット――キャノンタイプ八基、シールドタイプ二基――が乱れ飛び、敵艦の対空火器を端から潰していきます。こちらに向けて飛んでくる砲撃は全てシールドビットが防ぎ、私の機体はおろか第一小隊のところまでも届きません。山崎大尉自身の方へ向かう砲撃は機体のシールドを使うまでも無くすべてが難なく回避されています。まるで無重力ダンスのような山崎大尉の機体の動きに、私は思わず見とれてしまいました。

 しかしアサルトアーマーのライフルとビットからの砲撃では、敵艦になかなか致命的な打撃を与えられません。黒いステルス外装の下には対ビーム装甲があるらしく、被弾痕からは銀色の装甲が見えています。

 Pi……,Pi……,Pi,Pi,PiPiPiPi……。

 ランチャーへのエネルギー充填が完了し、信号音(オーラルトーン)が発射を促す連続音に変わりました。私が退避を促すまでも無く、山崎大尉と第一小隊が私の機体と敵艦を結ぶ線上から退避します。

『カナミ少尉、撃ちなさい!』

「はいっ!」

 対空火器を殆ど潰された敵艦が、主砲を使おうというのか艦首をこちらに向けようとします。私は満身創痍の敵艦に向かって、対艦ランチャーからの一撃を放ちました。

● ● ●

「いよいよ明日にはお別れね……」

「はい……」

 いよいよ明日は私が《天城》、そして第901実験戦闘団から離れ、新編成の護衛群へと異動する日です。ケイさんたちといられるのも今日限り――そう考えるとどうしてもしんみりとした雰囲気になってしまいます。

 『アルゴス・アイ』作戦終了から既に24時間。私たちは48時間の休息待機期間中でした。

「カナミ、最後に何かしたいことは有りませんか? 僕たちに出来ることでしたらなんでもしますよ」

 昂さんの言葉に、私はもう一度だけ、二人に甘えたいと思いました。

「あの、最後にもう一度だけ、お二人に抱いていただいてもいいでしょうか……」

「ええ、もちろん。ですがそんなことで良いんですか?」

「はい。最後に、思い出を下さい……」

 私はもう一度、『お母様』達にお願いをしました――。

「んっ……、はぁ……、ふあっ、んくっ……」

 首筋に舌を這わせながら、ケイさんの手が私の胸を優しくもみしだきます。逆の乳首を昂さんの舌がそっと転がし、甘い刺激を絶え間なく送り込んできます。昂さんの手は私のおちんちんをそっと撫で続け、骨盤がとろけそうな気持ちよさに私の腰がうねります。

 左右から甘く優しく責められて、私はあまりの気持ちよさに身も心もすっかりとろけていました。

「んっ、カナミのおちんちん、すっかり固くなっているわね。カナミはどうしたいのかしら?」

 ケイさんが耳元で囁きます。

「お、おちんちん、お母様の中に、入れたいです……」

「そう――いいわよ、いらっしゃい」

 ケイさんはベッドの上に仰向けになると、自らの手でお尻を開いて私を誘いました。桃色の肛門粘膜がローションに妖しく濡れ光りひくひくと蠢いている光景は、アヌス自体がペニスを求める生き物であるかのようでした。私は誘われるままにケイさんにのしかかると、透明な液を零し続けるペニスをその穴にあてがいました。

 ずぶり、と私のペニスがケイさんのアヌスを貫きます。ずぶずぶと押し込んでいくと、ケイさんのアヌスは私のペニスを柔らかく包み込みながらどこまでも飲み込んでいきます。熱い肉に包まれて、私はすぐにでも爆発してしまいそうでした。

「っ、あっ、はあっ……」

 ペニスをケイさんの一番奥まで押し込むと、私は熱い息を吐きました。私はケイさんの上に身体を伏せ、その身体の熱さと柔らかさを堪能します。ケイさんに両腕で抱きしめられると、私の心は安らぎと安心感に満たされました。

「ふふっ、カナミは本当に甘えん坊さんなんですね」

 ケイさんに抱きしめられて頬擦りする私に、昂さんの言葉がかけられました。それと同時に、私のアヌスに指が入ってくるのが感じられます。一本だけ入ってきた指が私のペニスの裏側、前立腺をお尻側からくすぐります。

「あっ、お母様っ、そこ、気持ちいいです……」

「そうですか、それは良かった」

 昂さんの指が私のお尻の中を掻き回し、気持ち良くなれる部分を刺激してくれます。入り口の粘膜をこすり上げられ、直腸内壁をあちこちくすぐられ、前立腺を圧迫されました。その度に私のペニスは痙攣し、腰がうねります。その動きにつれてペニスはケイさんのお尻の中をこすりあげ、そちらからも快感が押し寄せました。

「んっ、カナミのおちんちんが、私の中で暴れてるわ……」

「お尻の方もとても気持ちよさそうですね」

 ペニスを挿入したままアヌスを責められて、私は快感に悶えました。肛門が痙攣するように収縮し、昂さんの指を締め付けます。

「お、お母様、もっと、太いのを……」

 じれったい快感に焦れた私ははしたなくペニスをねだりました。それを聞いた昂さんが私の後ろにまわって腰を掴みます。

「いきますよ」

 ずぶり、と今度は私が貫かれます。

「あっ……、んっ……」

 お母様達に前後からはさまれてペニスを締め付けられながらアヌスを貫かれ、肉体的な快感と精神的な多幸感に私は心身ともに溺れました。

 昂さんが後ろから私を突くと、お尻で発生した快感が背筋を駆け上がって脳天を直撃します。その度に肛門と直腸が痙攣し、くわえ込んだペニスをむさぼります。

 そして押された弾みにペニスがケイさんのアヌスを突き、そちらから湧き起こった快感が腰の中で炸裂します。ケイさんのアヌスを味わう私のペニスは、あまりの熱さに溶解してしまいそうです。

 快感のあまり脱力した私は、ケイさんの上に倒れこみました。おそらく既に腰は抜け、立てといわれても立ち上がることは出来ない状態だと思います。

「んっ、あっ、ふあっ、んんっ、はあっ、んっ……」

 やがて昂さんの動きが変化し、直線的に奥まで突いてくるのではなく、私の中を満遍なく掻き回すような少しゆっくりとしたストロークになります。新しい部分を突かれる度に、新鮮な刺激に私は喘ぎました。

「ふあっ! そこっ、すごいいっ!」

 突然強烈な快感の爆発があり、私はのけぞって悲鳴を上げました。

「んっ、ここですか? このあたりかな?」

「あんっ! そこっ、だめえっ!」

 昂さんのペニスが私のアヌスの中の一点、先ほど直撃された弱点を集中攻撃してきます。自分でも知らなかった弱点を責められて、私は悲鳴を上げました。

「あら、カナミは自分の気持ちのいい所知らなかったのかしら?」

「はっ、はいっ、んくっ、こんな凄いの、はじめて、ですっ!」

「良かったですね。じゃあしっかり記憶しておいてくださいね」

 お母様に抱かれて半ばその胸に顔をうずめながら、ペニスはお母様の中に挿入して絞り上げられ、同時に後ろからもお母様のペニスに貫かれて体内のもっとも気持ちのいいところを責めてもらう――快感と幸福感の奔流に、私の精神は焼き切れる寸前でした。

 そうやってどれぐらいの時間が経過したのか――わずか数秒にも数時間にも感じられました――、ついに限界に至った私は断末魔の悲鳴を上げました。

「だめっ、もうだめっ、いくっ、いっちゃいます、いっちゃいますっ!」

 それを聞いてか、昂さんの責めはいっそう激しくなり、私に止めを刺そうとするかのようです。

「あっ、いくっ、いくっ、あっ、ふああっ!」

 アヌスが痙攣して昂さんのペニスをぎゅっと締め付けます。同時にペニスがびくびくと震えながらケイさんの中に精液を解き放ちます。腰の底と頭の中心ではじけた快感が全身を駆け巡り、私の体を震わせました。

 私の絶頂を感じ取った昂さんも私の中に熱い物を放ちます。それが一番敏感な部分を打ったような気がして、私はもう一度体を震わせました。

 絶頂のピークが過ぎ去ると、入れ替わるように凄まじい疲労感が襲い掛かってきました。高G耐久訓練の後の様な脱力感に、自然とまぶたが下がっていきます。

「ゆっくりお休みなさい、カナミ」

 ケイさんが私の頭を撫でながら優しい声でそう言ってくれます。ケイさんと昂さんが私を愛しんでくれている気持ちが伝わり、私に安心感と幸福感を与えてくれました。たぶん、両親と一緒に眠る赤ん坊というのはこんな気持ちなのでしょう。

 二人の暖かさに包まれながら、私は目を閉じました。

● ● ●

「それではお母様、お世話になりました」

「カナミ、向こうでも元気でね」

 《天城》の発着デッキ、連絡艇のハッチの前で私はケイさんに頭を下げました。

 私たちのやり取りは、私がはじめて《天城》にきたときのような軍人同士の会話ではなく、別れを惜しむ家族の物でした。

 見送りに来てくれたのはケイさんと昂さんだけではなく、アリスとベアトリス中尉もいました。

「カナミ、頑張ってね」

「ありがとう、アリス。アリスもこの先苦労するだろうけど頑張ってね」

「それはどういう意味でなのかしらぁ……」

 ベアトリス中尉がぼやき、私とアリスは顔を見合わせてくすくすと笑いました。

 やがて連絡艇の発進時刻が訪れ、私は皆と分かれて連絡艇に乗り込みます。この艦に来るために《サラトガ》で連絡艇に乗り込んだ時には、私には憂鬱と軽い絶望感しかありませんでした。しかし今回はまったく逆の気分です。

 《天城》を離れた連絡艇は、《天城》と並走していた軽空母の着艦デッキに向かいました。

 護衛空母《レキシントン》。以前に私が乗艦していた《サラトガ》と同型の、第23パトロール部隊の旗艦空母です。《天城》よりずっと小さい艦ですが、これが今日からの私の家です。

 《レキシントン》のデッキに降り立った私を、艦載機部隊の搭乗員が出迎えてくれました。

「カナミ特務少尉、ただいま着任しました」

「《レキシントン》へようこそ、カナミ少尉。歓迎する」

 敬礼する私に、小隊長の中尉が答礼します。その姿に私は、《サラトガ》で始めてファルコン・スコードロンのメンバーとあったときのことを思い出しました。

 隊長が私に小隊のほかのメンバーを紹介してくれます。小隊の三人目は、搭乗員養成コースを出たばかりのまだ少年といっていい少尉でした。私がにっこりと微笑んで挨拶をすると、彼は顔を赤くしてしどろもどろの受け答えをします。

 《サラトガ》での日々の記憶、ファルコン・スコードロンのみんなの記憶、《天城》で過ごしたケイさんや昂さん、アリスやベアトリス中尉との記憶――様々な記憶がふっと思い出されます。これらの記憶に、今度はこの艦での生活の記憶が付け加えられることになるわけです。どんな記憶になるのか――私はそれが良いものである事を予感していました。

―了―