パシャッ!
シャッターの音と共に、フラッシュの閃光が走る。
「いいよいいよー。次、そのまま肘をついて」
カメラマンの指示に従って、床に両肘をつく。 両膝をつき、お尻をカメラのほうに突き出した姿勢になる。 白いビキニのボトムからは、尻肉が半分くらいはみ出している。
「うん、いいよ。こっち向いて、笑って笑って」
左の肩越しに振り返り、笑顔を作ってカメラに視線を送る。 本音を言えば、笑いたくなんか無い。 でも、これが私のアルバイト。 成人向けエロ雑誌のグラビアモデルが。
パシャッ! パシャッ!
再び私の媚態が再びカメラに収められた。 雑誌のページ上では、私は身体を武器に男に媚を売る女に過ぎない。 たとえ本当の私とは違っていても。
「じゃあ今度は、仰向けに寝転がって」
指示されたとおりに姿勢を変える。 胸が重力に従って形を変えた。 少しつぶれた饅頭のような形をさらけ出す。
「両手でおっぱい抱くようにして」
両腕で乳房をすくい上げ、谷間を強調する。作り物の乳房でも、見かけは本物と変わらない。 腋の下の手術跡もファンデーションで隠してあるし、このポーズなら見えないはずだ。
「いいよいいよー」
パシャッ! パシャッ! パシャッ!
作り物の乳房を晒し、作り笑いを浮かべた私がフィルムに納められてゆく。 早く終わりにして欲しい。でも、これで終わりじゃない。本番はこの後なのだ。
さらに数十枚の写真がとられ、グラビア用の撮影は終わった。 来月の月末に発売の雑誌のグラビアとして使われるのだそうだ。
しかしグラビア誌は本当の商品ではない。 この出版社は各種男性向け雑誌のほかに、ビデオ、DVDなどの映像媒体や、 会員制有料WEBサイトの運営も行っている。 雑誌は言うなれば店売り広告に過ぎない。 そしてその商品の中には、いわゆる裏ビデオ、裏DVDも含まれている。 これから行われるのは、そのための素材取りというわけだ。
スタジオの扉が開き、数人の男たちが入ってくる。 三台のビデオカメラが私を取り囲むように設置され、 それとは別にポータブルカメラを持ったスタッフが一人、撮影の準備をする。 撮影スタッフとは別に、ビキニパンツのマッチョが一人、ブリーフのデブが一人、 男優として配置についた。 そのほかにも小道具がいくつか持ち込まれる。
撮影の準備はすぐに整った。 ここから後はビデオ撮影がメイン、スチル撮影はパッケージやWEBサイト用の素材撮りだけだ。 ……つまり、私の仕事が媚を売ることから犯されることに変わったというわけだ。
「さあてリカちゃん、まずはそのパンツを脱ぎ脱ぎしてな」
デブが言う。 私は内心の嫌悪感をこらえながら笑みを作り、 立ち上がるとビキニのボトムをゆっくりと脱ぎ去った。 右手で胸を、左手で股間を隠す。
「ほらほら、隠しちゃ駄目や。リカちゃんのアソコ、わしらに見せてな」
私は再び床に座り込み、両足を開いた。 肌色の前張りで隠された股間があらわになる。
「や、その不粋なもんも剥がして」
ポータブルカメラが寄って来て、私の股間をアップで写す。 私は前張りの端をつまむと、ゆっくりと剥がしていった。
まずペニスが解放され、次に体内に押し込んでいた睾丸が解放された。 数時間ぶりに体内から解放された睾丸が、なんだかほっとしている様な気がする。 もちろん気のせいだろうけど。
「さ、それじゃこれを入れるで。お尻こっちに向けてな」
デブが液体の充填されたエネマシリンジを手に取りながら言う。 その下卑た笑いに、再び嫌悪感が湧き起こる。
私は年下の友人、アキちゃんのことを考えて気を紛らわせた。 彼女(彼?)がいるから、私はこの汚辱感に耐えられる。 明後日にはまた彼女と一晩を過ごす予定だ。 そのためにも、今は我慢だ。
四つん這いの姿勢になり、尻をデブに向ける。 ポータブルカメラが私のアヌスを写しているのが感じられる。 その穴に向かって、デブが無造作にシリンジを突っ込んだ。
「あっ、くっ」
「ヒヒッ、いい声出すなあ。入れただけで気持ちいいんか?」
この馬鹿は、嬌声と苦鳴の区別もつかないのか。 しかし私は何も言わない。 彼らの機嫌を損ねられる立場ではないのだ。
「ほれ、こっち見てみ」
首を捻じ曲げ、後ろを振り向く。 デブがシリンジのピストンをゆっくり押し込んでいた。 私の中に、冷たい液体が注入されてくる。
「くっ、んん」
液体が半分ほど注入されたあたりで、思わず声が出た。 最初は冷たかったそれが、直腸内に灼熱感を与えはじめたのだ。
「お、ちょっと速すぎたかな。ちょいと戻したろか」
デブがシリンジのピストンを引く。 私の直腸内から液が吸い上げられ、下腹部の圧迫感がわずかに弱まった。
「はっ、はあっ」
大きく息をつく。吐ききった瞬間。液が再び注入された。
「あっ、ああっ!」
「ハハッ、どうや、特製媚薬入りローションはきくやろ」
その後、注入されては吸い出されることを数回繰り返された後、 600ccのローションが私の中に注入された。
「ようきいとるみたいやな。チンポもオッパイもびんびんやで」
言われて胸を見ると、乳首が勃起して小指の先ほどになっている。 双丘の間から見えるペニスもはちきれそうになり、先端からすでに液を漏らしている。
こんな薬にひとたまりも無く昂ぶらされる自分の身体に、惨めさを覚える。 アキちゃんと身体を重ねるときとは違う、気分の高揚を覚えない身体だけの興奮だ。 それでも私の身体は熱く火照り、すでに腰は力が入らなくなっている。 胸とペニスの先端は神経を剥き出しにされたようになり、空気の動きまで感じ取れそうだ。
腕から力が抜け、上半身が床に落ちる。 胸が押しつぶされ、その刺激がまた私の力を奪った。
「こっちはどうや」
デブが私のアヌスに指を突っ込む。 ローションにまみれた肉穴は、容易にその指を受け入れた。 指が私の中をかき回す。
「こりゃあわしの指なんぞじゃあ物足りないって感じやな。 ほんなら、これをくれたろか」
もう一度後ろを振り向く。 デブが持ち出したのは、アクリルガラス製の透明ディルドーだった。 ヴァギナ用ではなく、アヌス責め用のものだ。 ただし、太さは普通のヴァギナ用のものに匹敵する。 先端はペニスをかたどった形ではなく、先細りの先端に球体がくっついた形になっている。 ボディは末広がりの円柱だが、途中にいくつものイボがついている。 末端部は平らに広がり、そのまま床に置いても安定するようになっていた。
「いや、そんなの、入らない……」
「なに言ってるんや。リカちゃんのケツ穴はパクパクいってほしがっとるで」
それは事実だった。 先端を押し当てられた私のアヌスは、ローションを愛液のように垂れ流しながら痙攣していた。
「ほうれ、しっかり味わいや」
透明ディルドーが私の中に侵入する。 まず先端の球が中に入る。 括約筋が反射的に収縮して、くびれている部分をしっかりくわえ込んだ。
「おっ、くわえ込みおった。そうかそうか、そんなに離したくないんか」
デブが勝手なことをいいながら、透明ディルドーを一寸刻みに押し込んできた。 少し入れては止める。 イボが一つ肛門を越えるたびに止める。 途中、先端を使って前立腺をつつく。 再び一寸刻みに押し込む。 敏感になった私の直腸は、それら全ての動きを感じ取っていた。
硬いアクリルガラスのディルドーは私のアヌスを容赦なく押し広げている。 生身の肉棒ともゴムやシリコーンのディルドーとも違う硬さが、 私の肉を容赦なく責めたてる。 一方的に責められる屈辱感に自然と涙がこぼれた。
「おうおう、泣くほど気持ちいいんかい。それならもっと丁寧にやってやらんとなあ」
先端が直腸の行き止まりに突き当たるころには、私の息はすっかり荒くなっていた。 しかしまだ終わりではない。 デブがディルドーをぐりぐりと回転させながら言う。
「ひひ、さあ本番やで」
ディルドーがもう一段押し込まれた。 先端が直腸と大腸の境目を越える。
「くあっ!」
体の奥にある肉の環が、ディルドーの先端の段差をくわえ込んだ。 デブがディルドーから手を放すが先端を固定されたディルドーは抜け落ちない。
「よっし、もうこれで抜けないで。さ、リカちゃんの身体ん中、のぞかせてもらうで」
デブが懐中電灯を手に取りながら言った。 カメラが私の後ろに回り、ディルドーの底から私の体内を覗き込む。
もしアキちゃんが、お金のためにこんな姿を晒す私を見たらどう思うだろう。 軽蔑するだろうか? それとも呆れるだろうか? 多分そんなことは無い。アキちゃんならば、そんな事はどうでもいいと言ってくれる筈だ。
そんなことを考えながら、体の中を覗き込まれる屈辱に耐える。
「おう、綺麗なピンク色や」「ひひ、直腸がピクピクしてるで」「お、先まで見えるな」
デブの声を必死に耳から追い出す。アキちゃんの声が聞きたい。 『リカちゃん大好き』『リカちゃん綺麗!』『リカちゃん、もっと、もっとお!』 アキちゃんの声を記憶の底から拾い集め、耳から入る音を脳から遮断した。
そんな私の気など知りもせず、デブが言う。
「さあてリカちゃんや、お手々を使わないでズコズコしてみよか」
正直これをやりたくは無い。自分が惨めでたまらなくなるから。 とはいっても、私に撮影の段取りをどうこうする権限など無い。 それでも一瞬躊躇した。
「ほれ、はやくしや」
パシン!
デブに尻を叩かれた。あきらめるしかない。
私は排便するときのように下半身に力を入れていきんだ。 直腸が収縮し、ディルドーを押し出す。 しかし先端を体内でくわえ込んでいる以上、完全に排出することは出来ない。 力を抜くとディルドーが体内に引き込まれる。
いきむ。力を抜く。いきむ。力を抜く。いきむ。力を抜く。
ディルドーが私のアヌスを出入りし、直腸と肛門をこすり上げる。 肉の快感が容赦なく押し寄せる。 前立腺が押され、ペニスが透明な液を滴らせた。
他人に突かれるのでも、自分の手でつきこむのでも、跨って腰を振るのですらなく、 尻だけを使って快楽をむさぼる姿。 はたからどう見えるかを想像して、惨めさに涙がまた一滴こぼれた。
「ほおお、泣くほど気持ちいいんか」
デブがまた勝手なことを言う。違うと大声で言ってやりたかった。 もちろんそんなことをすれば撮影が台無しだ。私に出来るはずが無い。
「リカちゃんを見てたらわしもたまらんようになってきたで。おくちでたのむわ」
肩をつかまれて上体を持ち上げられる。 目の前に、だらりとぶら下がる肉の筒があった。 一瞬それがなんだか分からなかった。もちろん、デブのペニスだ。 頭がそれを理解すると同時に、強烈な嫌悪感が湧き起こる。
「ほれ、はよう」
デブがペニスを唇に押し付ける。 腐肉を押し付けられたような気がした。 私は内心を押し隠し、デブのペニスを口に含む。
まずい。吐き気がする。食い千切って吐き捨てたい。 アキちゃんのペニスに口づけするときにはそのままずっとしゃぶっていたいと思うけど、 今は一秒でも口に入れていたくない。 それでも私は技巧の限りを尽くしてデブのペニスに奉仕する。 唇、舌、頬の内側、喉奥まで使って快感を与え続けていく。
機械的に奉仕を続けながら、頭では別のことを考える。
『早く終われ』『アキちゃんとキスしたい』 『アキちゃんがこいつのペニスと間接キスになっちゃう』 『そのまえに歯磨きしなきゃ。消毒薬でうがいもしなくちゃ』
デブのペニスはあっという間に硬くなり、私の口に全体がおさまりきらなくなった。 頭を両手でつかまれ、乱暴に口を犯される。
「お尻がお留守やな。ほれ、そっちもかわいがったれや」
私の後ろに筋肉男が回りこみ、アヌスに挿さったままだったディルドーを引き抜いた。 結腸、直腸内壁、肛門に連続した刺激がくわえられ、背筋を電撃が駆け上った。
「んん、んんんっ!」
自由にならない口で悲鳴をあげる。
「おおう、そないに責めんといてや。出てしまうで」
首を横に振ろうとした瞬間、背後からペニスをつきこまれた。 首を横に振ろうとした動きと悲鳴を上げようとする喉の動きがあいまって、 デブのペニスにさらに刺激を与える。
筋肉男のペニスは完全には挿入されておらず、先端が前立腺を突いていた。 浅いストロークで前立腺を責め続ける。 無理に圧迫された前立腺から精液が押し出され、ペニスの先端から零れ落ちる。 いわゆるミルキング(ミルク絞り)だ。
「ははっ、上下からつつかれて、ミルク零すほど気持ちいいんか!」
違う。無理やり搾り出されてるだけ。気持ちよくなんか無い。
声にならない声で抗議するが、もちろんデブにも筋肉男にも伝わらない。 床に伏せるようにしたカメラマンが、ポータブルカメラで私のペニスの先端を写す。 触られもせずに精液を垂れ流すペニスの映像は、ビデオの売りになるだろう。 写されている方は快感など感じていないのだが、 二本のペニスで口と尻を犯されながら精液を垂れ流す姿は、 はたから見れば犯されて喜ぶ淫乱以外の何物でもない。
アキちゃんとのセックスはぜんぜん違う。 抱き合うだけで身体が暖かくなる。 キスすると身体の芯まで熱くなる。 ペニスをくわえられると、腰がとろけそうになる。 ペニスをくわえると、いつまでも味わっていたくなる。 中に入れると、ありったけを注ぎ込みたくなる。 中に入れられると、体内全部をアキちゃんの精液で満たしてほしくなる。 終わったあとにベッドで抱き合ってると、そのまま一つに溶け合いたくなる。
今は、二人の男に対する嫌悪感と屈辱感、こんな姿を撮影される悲しさ、恥ずかしさを必死でこらえてる。 でもどんなに嫌でも、アキちゃんのために我慢出来る。
『大学に入ったら一人暮らしをするって言ってるのを、私と一緒に住まないかって誘うんだから』 『ホルモン始めようかなっていってるのを、援助してあげるんだから』 『私も今の服飾専門学校を卒業したら、将来小さくても自分のお店を持つんだから』 『それでアキちゃんと一緒にずっとお洋服屋さんをやっていくんだから』
我慢する理由を必死に並べ立て、全身を襲う悪寒に耐えた。 身体の芯にたまる寒さを、アキちゃんの笑顔を思い浮かべてこらえる。
「さあて、そろそろいくで」
デブの言葉に、身体が緊張する。 これから汚されるという宣言に、死刑執行を言い渡された囚人はこんな気分なんじゃないかと思う。 別に命を失うわけではないし、すでに何度も汚されているというのに、毎回こんな埒も無いことを考える。
デブと筋肉男の動きが速くなり、犬みたいな獣じみた息づかいになった。 私は目をつぶり、そのときに備える。
「うおっ、おおっ、おっ」
デブが大声を上げながら私の口に放った。 一瞬遅れて筋肉男が根元まで突きこみ、直腸内に放つ。 最奥部に叩きつけられたショックで、私のペニスも射精した。
デブとの精液を飲み込まないように喉奥を舌で塞ぐが、代わりに舌にもろに精液を撃ちつけられた。 口からペニスが抜かれると、全ての精液を吐き出す。
「おう、もったいない。リカちゃんはいっつも零すなあ。飲まなああかんで」
飲めるわけが無い。死んでも嫌だ。もちろんそんな事は言葉にはしないが。
アヌスからも筋肉男のペニスが引き抜かれる。 私はしゃがみこんだ姿勢になると、和式便器で排便するようにいきんだ。 アヌスから精液が零れ落ちる。さらに指を突っ込み、掻き出せるだけ掻き出す。
口と尻穴から精液を垂れ流す私の姿をカメラが捉えている。 スチルカメラもフラッシュを連発して撮影している。
撮影されながら、この姿を見てもアキちゃんは私を嫌わないでくれるかな、と考えていた。 もしアキちゃんに嫌われたら……。嫌だ。考えたくない。
「はーい、おつかれー。撮影終わりねー」
撮影監督の声を聞きながら、私はアキちゃんのことだけを考え続けていた。
―了―