「さ、いくわよ、アキ」
「お、お手柔らかにお願いしますね、ユカ先輩」
「お姉さまかユカ様とお呼びなさいっていつも言ってるでしょ!」
「うわ、もうお姉さまモード!?」
アキちゃんがユカに引きずられて行ってしまった。 SM道具満載の専用プレイルームにアキちゃんが引きずり込まれるのを、私とユキちゃんは廊下で見送った。
「……ええと、私たちも部屋に入りましょうか?」
「そ、そうですね」
先日のアルバイトで、ボーナスと言うかおまけとして頂いたラブホテルの無料宿泊券。 相談した結果、ユカとユキちゃんがそれぞれアキちゃんとすごす日に使う事になった。 今日はユカがアキちゃんと一日過ごす日というわけだ。
……アキちゃんがおもちゃにされる日、といったほうが正確な気もするが。
私とユキちゃんも、折角だから同じホテルに宿泊する事にした。 普段だと利用しづらい料金の高い部屋も使えるので、どうせならと一番高級な部屋を取る事にした。
部屋に入ると、ユキちゃんが興味深そうにあちこち見回す。 確かに調度品や内装が明らかに安い部屋とは一ランク違う。 どうやら料金分の価値はあるようだ。
「リカさん見て見て、ベッドもおっきくてふかふかー」
ユキちゃんがベッドの上で転げ回っている。 始めて外泊する子供みたいな喜び方に、私も笑いを誘われた。
「ユキちゃんユキちゃん、スカートまくれてるわよ」
「え?」
今日のユキちゃんはブラウスにミニスカート、膝上のニーハイソックスとセーターという格好だ。 その格好でベッドの上を転げ回ったものだから、スカートがまくれあがって白と水色の縞々がむき出しになっている。
「や、やだ!」
ユキちゃんはベッドの上で慌てて女の子すわりになると、スカートの裾を抑えた。
「ユキちゃんったら、始めて外泊する子供みたいね」
「も、もう。リカさんの意地悪」
「うふふ、ごめんなさい」
おしゃべりをしながら、私は上着を脱いでワードローブのハンガーにかけた。
バーカウンターのギャレーの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、冷たいそれをグラスに注ぐ。 一口飲んで、ユキちゃんの方を振り返った。
「ユキちゃんも、何か飲む?」
「なにがあります?」
「ん〜、ほとんどお酒ねえ。あ、カクテル用のジュースならあるわよ」
ユキちゃんがそばに来て、私の後ろから冷蔵庫の中を覗きこむ。
「あ、これがいいです」
ユキちゃんが指差したのは、低アルコールのスパークリングワインだった。 しかし低アルコールとはいっても、これは立派なお酒である。
「ユキちゃん、これお酒よ? 大丈夫?」
「平気です! リカさんもどうですか?」
……まあ、これならいくらなんでも平気だろう。
「じゃあ折角だから、乾杯しましょうか」
新しいグラスを二つ用意し、紅く泡立つ液体を注ぐ。 念のため、量は少なめにしておいた。
「なにに乾杯しましょうか?」
「そうねえ、じゃあアキちゃんが無事に生きて戻ってこれる事を祈って」
「あはは、それいいですね。じゃ、アキ先輩が無事生還出来ますように!」
かちん。
グラスをそっと合わせ、スパークリングワインを口に含む。 フルーティな香りと甘味が口に広がり、炭酸の刺激がその後を追う。 喉を滑り落ちていくと、アルコールの熱が喉とおなかの中に感じられた。
「結構おいしいわね、これ。……ユキちゃん?」
同意を求めようとしてユキちゃんを見ると――ユキちゃんは真っ赤になっていた。
「ユ、ユキちゃん!? 大丈夫!?」
「えへへ、りかさあん」
ユキちゃんの体がスツールの上でぐらぐらとゆれている。 右手のグラスの中身はほとんど減っていない。 おそらく一口か二口しか飲んでいないはずなのだが。
私は慌ててグラスを置かせると、ユキちゃんをベッドの方に引っ張っていった。
「なにするんですかぁ、まだのんでるのにぃ」
「ユキちゃん、飲みすぎよ! また後で、ね?」
「のみすぎてないですぅ! ゆきはまだよっぱらってないれすよぉ」
酔っ払いの『酔ってない』は当てにならない、と言うが……。
「ゆきはぁ、よっぱらってぇ、ないれぇ、すぅ……くぅ、すやすや」
ベッドに横たえた途端、ユキちゃんは眠りに落ちてしまった。
「ユキちゃんユキちゃん、寝るんなら服脱いで!」
慌てていうと、ユキちゃんがむくりと起き上がった。 そのまま、のそのそと服を脱ぐ。
ブラウスから靴下まで全て脱いで全裸になると、再びベッドに倒れ込んだ。
「おやすみなさいー……くぅ、すやすや」
あっけにとられている私を尻目に、ユキちゃんは再び寝息を立て始めた。
私は苦笑しながら毛布をかけてあげると、ユキちゃんが脱ぎ散らかした服をたたんだ。 たたんだ服をきれいにまとめて、ユキちゃんのベルトポーチと一緒にソファの上に置いておく。
ユキちゃんは寝ちゃったし、これからどうしようかと考え、備え付けのバスルームの事に気がついた。 覗いてみると、大きな浴槽といろいろな入浴剤が用意されている。 私は早速お湯張りをスタートさせた。
数分で入浴可能な状態になった浴槽に、フローラルの入浴剤を放り込む。 シャワーを浴びてから、花の香りのお湯に身を沈めた。 全身からしみこむ熱と鼻腔をくすぐる香りが、私の体を解きほぐす。 わたしは気の済むまで熱いお風呂につかって、心身ともにリラックスした。
お風呂を出てバスローブに体を包み、ミネラルウォーターで水分を補給する。 体が十分に乾いているのを確認すると、私もベッドにもぐりこんだ。 ベッドの脇のリモコンを操作して部屋の照明を暗くし、眠りにつこうとしたときだった。
「……リカさん、いい匂い……」
ユキちゃんが、背中を向けたまま声をかけてくる。
「あら、ごめんなさい。おこしちゃった?」
「ううん、さっきからおきてました」
「そう……」
「……」
「……眠れない?」
なんとなく沈黙が居心地悪くて、私はユキちゃんに話し掛けた。
それは間を持たせるため程度のつもりだったのだが、
「……アキ先輩は」
ユキちゃんは
「ユキの事を」
独り言のように
「どういうふうに思ってるんでしょう……?」
言葉を継いだ。
「……とっても、大事にしてるわよ」
私には、このようにしか言えなかった。 これがユキちゃんの望む答えじゃないのは判っている。 はぐらかしている様な物なのも判っている。 それでも、私にはこうしか言えなかったのだ。
「……でも、それは後輩として、じゃなきゃ妹としてですよね」
「……」
「判ってます、アキ先輩の一番はリカさんですものね」
「……」
「……ぐすっ」
薄暗い闇の中で、ユキちゃんが声を抑えて泣いているのが判る。 私にはその問題を根本から解決してあげる事は出来ない。 だからせめて、今だけでも慰めてあげようと思う。
「……ユキちゃん、いらっしゃい」
毛布を持ち上げ、私とユキちゃんの間に空間を作る。 ユキちゃんの白い背中が見えた。 ユキちゃんはこちらに向かって寝返りを打つと、ごそごそと這い寄って来る。
私はユキちゃんの頭を抱え込むと、乳房の先にその口を押し当てさせた。 ユキちゃんは私の乳首を咥え、ちゅっちゅっという音を立てながら吸い始める。 下になった左手でユキちゃんの頭を支え、右手で毛布越しに背中を撫で続けた。
● ● ●
どのくらいそうしていただろうか、いつのまにかユキちゃんの動きが変わっていた。
乳首を吸うだけでなく、舌で転がしたり前歯で甘噛みしたりしている。 右手で私の乳房をゆっくりと揉みながら、左手は私のわき腹をまさぐっている。 左足は私の両足の間に割り込み、太ももが前後に動きながら私の股間を刺激している。
少しずつ、ほんの少しずつ、ユキちゃんの動きは変化していた。 私に甘えるものから、私を責めるものに。
「リカさん、おっぱい吸われて、気持ちよくなっちゃったんですか……?」
ユキちゃんがいたずらっぽい口調でいう。
「んっ、そんなこと、無い、わよ……」
私の反論は弱々しい。まったく事実に即していないのだから仕方が無いが。
「うそ。だって……」
ユキちゃんの左手が私のペニスを握り締める。 先端からこぼれる蜜が、ユキちゃんの手のひらで湿った音を立てた。 同時に左足が私の股間を強くこすり上げた。
「うあっ!」
急な刺激に全身が大きくびくんと震える。 腕に力が入り、ユキちゃんを強く抱きしめる事になった。
「リカさんのおちんちん、こんなに硬くなって、こんなに濡れてますよ……」
ユキちゃんがサディスティックに言葉で虐めてくる。 こういうところを見ると、やっぱりユカの弟なんだなあって思う。 アキちゃんとユカの前ではひたすらMでネコなんだけど、ユキちゃんの中には間違い無くSの部分がある。
「リカさんて、エッチ……」
ユキちゃんがSっ気を見せるのは、私の知る限り、私の前だけだ。
「……このエッチな体で、お姉ちゃんを誘惑してるんですね……」
ユキちゃんが『お姉ちゃん』といっているのは実の姉のユカの事ではなく、アキちゃんのことだ。
「や、やだ、やめて、ユキちゃん……」
「……なにがいやなんですか?」
ユキちゃんの手が私のペニスをしごく。言葉の間にも、反対の手と口は私の胸を責め続ける。
「あ、わかった」
ユキちゃんが胸からはなれる。
「手じゃいやって事なんですね」
ユキちゃんが毛布の中にもぐりこむ。
「リカさんったらほんとにエッチなんだから」
ユキちゃんが、私のペニスにむしゃぶりついた。
「んっ、んんっ!」
ユキちゃんの唇が、舌が、ほっぺたの内側が、喉奥が、私のペニスを責めたてる。
「あっ、それっ、きもちいいっ!」
「っ、ぷはっ、やっぱりエッチ。 このエッチなおちんちんで(ぺろり)、お姉ちゃんのお尻に(くちゅっ)、ザーメンたくさん(ちゅぷっ)、そそぎこんでるんですね(かぷっ)」
ユキちゃんが私を責めたてる。心と体の両方から。
ユキちゃんはほんとうにアキちゃんを愛してる。きっと心のそこから。 でも、アキちゃんは私を選んでくれた。今では私と同棲をしている。
ユキちゃんの中には、きっと黒いもやもやがたまっている。 それは、少しずつ少しずつ、大きくなっているはずだ。
アキちゃんと会った後、お別れするたびに。
そして、私を見るたびに。
私と二人だけのときに見せるSっ気は、たぶんガス抜きだ。 破裂する前に、爆発する前に、圧力を下げるための。 だから私は、ユキちゃんの責めを甘受する。 ユキちゃんが思いっきり鬱憤を晴らせるように、マゾヒスティックに振舞う。 ユキちゃんのサディズムを煽るように。
覚え込まされた時には嫌悪感しか抱かなかったテクニックがこんなところで役に立つとは、人生なにが幸いするか判らないものだ。
「いや、いや、ユキちゃんやめて」
「リカさんのおちんちんは(ちゅうっ)、もっともっとって(ちゅっ)、いってますよー(ちゅううっ)」
「ひあっ!」
ユキちゃんの指が、私のアヌスを撫でる。
指先が入り口をえぐっているのが感じられる。
敏感になった体は否応なしに男根を求め、入り口はひくついてユキちゃんの指を飲み込もうとする。
「うわー、お尻もエッチですねー。パクパクして、ユキの指を飲み込もうとしてますよ」
ユキちゃんが毛布の中を移動する。 二人掛けの毛布に出来た人間大のふくらみが移動するさまが、外からはっきりと見て取れる。
ユキちゃんは私をうつぶせにすると、尻たぶに両手をかけて押し開いた。 毛布の中は真っ暗だろうが、もし明るかったら私のアヌスが丸見えになっていることだろう。
「このエッチなお尻で、お姉ちゃんのおちんちんを咥え込んでるんですね……」
アヌスに、生暖かい刺激が感じられた。
ユキちゃんの舌だ。
「くぅっ、ユキちゃん、それ、だめ、はあっ、おねがい、くうん、やめて」
「んっ、なにが(ぺろっ)、駄目なんですか(ぴちゃっ)、リカさんのお尻は(ぐちゅっ)、すっごくうれしそうですよ(ぺろぺろ)」
その後は、ユキちゃんは言葉を発さずにひたすら私のアヌスを責め続けた。 私も喘ぎ声だけを上げ続ける。
唐突に、ユキちゃんが私のお尻から離れた。 そのまま毛布を跳ね上げて起き上がる。
「……?」
「リカさあん、ユキのおちんちん、こんなになっちゃいました」
上半身をひねって、私の脚の上に座り込むユキちゃんを見る。
白くて細い体の中心から、かわいらしいペニスが立ち上がっていた。
「リカさんの、エッチな体のせいなんですから、責任とって下さい……」
「……私のハンドバッグに、ローションの小瓶が入ってるから、とってきて……」
ユキちゃんが私のハンドバッグを持ってくる。 私はアナルローションの小瓶を取り出すと、自分のアヌスにそれを注ぎ込んだ。
両手を後ろに回し、尻たぶを割り開く。
「来て……」
ユキちゃんはなにもいわずに私にのしかかると、そのペニスを私の中に捻じ込んでくる。 アキちゃんより一回り小さいペニスが私の中におさまった。
ユキちゃんのペニスは小さい。 すでに二年近く女性ホルモン剤を飲み続けている体は、肌や顔立ちだけでなく体格にも影響が出ている。 骨格はまだそれほど顕著ではないが、胸は膨らんでいるし、ペニスには萎縮の傾向が見える。 それでも、きちんと勃起もするし性器としても機能しているが。
そのペニスで私のアヌスを背後からえぐりながら、ユキちゃんはかわいらしい喘ぎ声を上げている。 声だけ聞いていると、どちらが挿入されているほうか判らない。
「あっ、あんっ、リカさん、ユキ、もう駄目です、もう、いっちゃいます!」
「んっ、いいわよ、くんっ、ユキちゃんのザーメン、私の中に、だしてっ!」
次の瞬間。ユキちゃんのペニスが爆発した。びくびくと震えながら、私の胎内に熱い液をばら撒く。
「あっ、ああっ、ああっ!」
「うあっ、あっ、中にいっ」
ユキちゃんが私の背に覆い被さるように倒れる。 小さな胸が上下するのを感じながら、私も荒い息を吐いた。
● ● ●
そのまま数分が経過しただろうか、ユキちゃんがポツリと声を出した。
「ごめんなさい……」
「……謝らなくて、いいのよ」
ユキちゃんが背後からはなれる。 私も体をおこそうとすると、アヌスから精液とローションが垂れそうになった。 ティッシュペーパーでそれを抑える。
「……お風呂もう一度入るけど、ユキちゃんも一緒に入ろう?」
「え、でも……」
「そう汗みずくじゃあ、どっちみちシャワーを浴びないと駄目よ。だから、ね?」
「……はい!」
ユキちゃんと一緒にバスルームに向かう。 追い炊きでさっきのお湯を温めている間に、シャワーを使ってお互いの汗やら何やらを洗い流した。
「いい匂い……。さっきのリカさんの匂いはこれだったんですね」
「うーん、自分だとよく判らないんだけど。そんなにいい匂い?」
「はい! じゃあ今度はリカさんがユキの匂いをかいでみてください!」
「うふふ、お風呂出てからね。今はゆっくり温まりましょう」
「はい」
暖まったお湯からは再びフローラルの芳香が立ち上っている。 私とユキちゃんはそのお湯に浸かり、激しいセックスで酷使した体を癒した。
風呂からあがって体を乾かしながら水分を補給する。 私はミネラルウォーター、ユキちゃんはオレンジジュースを口にした。 十分に水気が取れたのを確認してバスローブを脱ぎ、ベッドに入って二人で毛布に包まる。
「……あの、リカさん」
「なあに?」
「おっぱい、いいですか……?」
私は無言でユキちゃんを抱き寄せる。ユキちゃんは再び乳首に吸いついた。 ユキちゃんから立ちのぼる、体臭と花の香りの混ざった匂いを楽しみながら、私はユキちゃんが眠りにつくまでその髪を撫で続けた。
―了―
*** Night Cap *** リリ ・▽・) 「寝酒にもう一杯……」 川;・ヮ・ノ 「ちょっ、駄目駄目!」 リリ ・▽・) 「え〜? 一杯だけ……」 川;・ヮ・ノ 「明日の朝二日酔いになっても知らないわよ」 *** Next Morning *** リリ;・ω・) 「お、おはよー」ヨレヨレヨタヨタ リリ ・▽・) 「あ、生還おめでとうございます!」 川 ・ヮ・ノ 「無事を祈っての乾杯が効いたのかしら?」 川O゚ー゚) 「何の話よ?」ツヤツヤテカテカ リリ ・▽・) 「えへへ」 川 ・ヮ・ノ 「うふふ」 リリ ・ω・) 川 ゚ー゚) 「???」