僕の国、都市国家キシュが隣国アッカドとの戦争に敗れてから、月が一巡りした。
今僕はアッカドの兵士たちに囲まれて、アッカドの城門の前にいる。
この門をくぐれば、おそらく二度とアッカドの外には出られない。
僕の名はイスタラ、キシュの第一王子――だった者だ。今の僕は、キシュが二度とアッカドに逆らわないという保証のために差し出された人質に過ぎない。
和睦の条件として出された僕を差し出せというアッカドからの要求に、父上は悩みに悩みぬいた。母上は泣き崩れて床に伏し、弟は自分がアッカドを滅ぼしてやると息巻いた。
勿論、その要求を断ることなど出来るわけが無かった。キシュの軍はアッカド軍に完膚なきまでに叩き伏せられていたからだ。
そうして僕は、父上や母上、弟、そして家臣や民たちに見送られて、一人でキシュを後にした。アッカドからの要求では、身の回りの世話などもアッカドで手配するので、付き人もつけるなということだった。
こうしてただ一人、捕虜同然の身で僕はアッカドの市壁をくぐった。
奇妙なことに気がついたのは市内を行進してしばらく経ってからだった。
向かっている先が、王宮ではない。
勿論アッカドの市内の地理など分からなかったから、最初は単に道が折れ曲がっているせいかと思った。しかし、進むにつれてそうではない事が分かってきた。
ではどこに向かっているのかと道の先を見てみると、そこにあるのは神殿らしい建築物だった。
近づくにつれて、それが愛と戦争の女神の神殿である事が分かった。
キシュでは太陽神を主神として崇め、愛と戦争を司る女神はその娘の一人とされていた。しかしこのアッカドでは、かの女神こそが神々の女王とされているのだという。
なぜその女神の神殿に自分が連れて行かれようとしているのか、僕にはそれが分からなかった。
「ようこそいらっしゃいました」
涼やかな声が歓迎の言葉を述べる。僕たちを出迎えたのは、女神に仕える巫女の一団と見える女性たちだった。
いずれも見目麗しく、その肌からは香油と花の香りがした。おそらく――いや、確実に――彼女たちはこの神殿を訪れるものに春をひさぐ聖なる娼婦でもあるのだろう。
アッカドの将軍は深々と礼をし、巫女たちに僕を引き渡した。僕をここまで連れてきた兵の一団は去り、後には僕と三人の巫女たちが残る。
「女神の神殿へようこそ、イスタラ殿下。あなたのお名前は我らの女神にちなんだものなのですね?」
「……はい、父上は
「ふふっ、そのあなたがこの神殿にこられたというのも、きっと女神のお導きですわね。それではこちらへどうぞ」
両腕をとられ、神殿の奥へといざなわれる。不安に耐えながら足を運ぶ僕を、黄金の鎧兜に身を包んだ女神の像が見下ろしていた。
● ● ●
女神の神殿に連れてこられた僕は、まったく意外なことを言いつけられた。
勿論、敗戦国から人質として連れてこられた王族という身の上である以上、どんな無理難題を言われても仕方がないと思ってはいた。最悪の場合、命だけは保障された上で奴隷同然の扱いを受けることも覚悟していた。
しかし僕が命じられたのは、アッカドの守護神である愛と戦の女神の神殿での奉仕だった。
ただし、その務めの内容が普通ではなかった。
女性の服装をして、巫女の見習として神殿に入れというのだ。
勿論断ることが出来るはずもなく、僕は毎日巫女の服をまとい、顔に化粧を施して働いた。
朝早く起きて、朝の勤めをする。食事の支度を手伝い、位の高い巫女たちの食事の給仕をする。それから自分たちの食事を済ませ、掃除やさまざまな下働きをする。
最初は僕を辱めるのが目的なのかとも思ったが、周りの態度を見るとそんなわけではないようだった。
やがて僕は、巫女として勤めている男性が自分だけではないことを知った。いや、自分だけではないどころか、この神殿の巫女の半数以上が実は男性だった。
不思議なことに、その巫女(?)たちは、股間の逸物を別にすればまったく女性にしか見えない体をしていた。髭や体毛などは全然無いし、胸も個人差こそあれどいずれも女性らしいふくよかな物だった。
そうして月が一巡りするほどしてここでの生活にも慣れてきたある晩、自室に下がろうとした僕は大神官に呼び出された。
いろいろと悪い想像をしてしまい、恐る恐る参上した僕に言い渡されたのは、これから毎晩ある薬を飲むようにということだった。一日の勤めが終わったら、自室に下がる前にその薬を
安堵と不審が相半ばする心境で、僕は大神官の前から退出した。早速薬所に足を運び、要件を告げる。手渡されたのは、銀で出来た杯に満たされた水薬だった。つんと鼻をつく匂いのするそれを、息を止めて一気に飲み干す。口の中に残る匂いに閉口していると、口をすすぐようにと水を満たした杯を手渡された。
この薬が何なのかという問いに、薬所の長は『やがてわかる』とだけしか答えてくれなかった。
薬の正体が分かったのは、毎晩それを飲み続けて月の巡りの半分ほどの日が過ぎてからだった。
朝の沐浴の時間、ふと胸に違和感を感じた。触ってみると、筋肉の上にうっすらと脂肪の塊が出来ている。てっきり何かの病気かと慌てた僕は薬所に飛び込んだ。そこではじめて説明されたのが、この薬の薬効――すなわち男の体を女のものに作り変えてしまうというものだった。
最初に僕を襲ったのは絶望感。それから諦めの気持ちだった。
少しだけ疑問に感じたのは、こんなことをすれば僕の人質としての価値がなくなるのではないかということだった。
王位継承者を人質にするというのは、その国の王、つまりこの場合は父上が身罷られたときに玉座を継ぐものを手元において置くためであるはずだ。その時は、僕が王座を継ぐと同時に新しい人質――普通は僕の継嗣――を新たな人質として、キシュを服属させる。
しかし僕がこんな体になってしまっては、王位を継ぐことなど出来ない。無論隠し続けることは出来るだろうけれど、僕が長く姿を見せなくなればキシュでは僕が死んだものとみなして弟を立太子することもできる。つまり、アッカドはキシュに僕を切り捨てる口実を与えたようなものなのだ。
自分の体の変化には衝撃を受けたけれど、そう考えると故郷、そして家族にとっては悪いことでは無いような気もした。
どのみち僕が反抗的な態度をとれば、それを口実に今度こそキシュは滅ぼされる。王族は皆殺しにされ、市民は全て奴隷にされてしまうだろう。アッカドの軍隊は、それが出来るだけの力を持っている。
僕は衝撃から立ち直ると、静かにこの運命を受け入れる決心をした。
● ● ●
巫女としての身の上を受け入れた僕の生活に、一つの変化があった。
神聖娼婦となるための修行だ。
勿論僕の体に女陰は無いから、客人の男根を受け入れるのは後ろの穴でということになる。
そうした事の知識はあったけれど、まさか自分がそれをすることになるとは夢にもおもっていなかったから、最初は非常な抵抗感が有った。
「ほらイスタラ、お尻の力を抜いて」
「はい……」
寝台にうつぶせになり、お尻を先輩巫女――この人も本当は男性だ――に弄られる。一本の指が僕の中に侵入し、中をえぐる。あらかじめ綺麗にしてあるとはいえ、そんなところを弄繰り回されるのはとても恥ずかしい。
一つ刺激を受けるたびにお尻の筋肉が緊張し、肛門が指を締め上げる。しかしたっぷりと塗りこまれた油に助けられ、その指は僕の中に自由に出入りする。
やがて肛門が少しほぐれてくると、今度は二本の指が入ってくる。
一本のときは中をあちこち突付かれたり擦られたりするだけだったけれど、今度は中や入り口を押し広げられる動きが加わる。
排便を我慢しているときのような感覚を味わわされ、指が引き抜かれるたびに安堵の息を漏らす。
一息ついた直後に再び指を差し込まれ、中を押し広げられる。直前よりも強く、長く。やがて、引き抜かれるたびに、安堵感だけでなく快感を感じるようになる。
それを幾度も繰り返されるうちに、尻穴を弄られること自体に快感を感じるようになってくる。ついには指が引き抜かれると、安堵感ではなく物足りなさを感じてしまう。
「あ……」
「どうしました、イスタラ?」
「いえ……、なんでも……」
「うふふ、嘘はいけませんよ。もっとお尻を弄って欲しいのでしょう?」
「ち、ちがいます! そんなこと――」
「あら、でもあなたのここは正直なようですよ」
先輩巫女の手が僕の腰の下に潜り込み、僕の男根をつかんだ。すっかり固くなり先端から液をにじませるそれを、柔らかな手がしごく。その刺激に思わず体をよじると、寝台に押し付けられた胸の頂から甘い刺激が走った。
「あっ、ああっ……」
お尻にも再び指が潜り込み、中をかき回し始める。僕は腰をくねらせながら、胸を床布に押し付け摩擦した。胸と、男根と、お尻と。三箇所から押し寄せる快感が、僕の理性を削り取っていくようだった。
やがて限界を迎えた僕は、悲鳴を上げながら絶頂して子種を噴き出した。同時に尻穴が収縮し、中を責めていた指を締め付けた。
● ● ●
年に一度の大祭まであと月が一巡りするほどになったある日、僕は再び大神官に部屋に呼び出された。今度は何事だろうかと、僕は恐る恐る大神官の部屋に足を運んだ。
「イスタラ、貴女に大変良い御知らせです」
「はい、大神官様」
内心では吉報どころかとんでもない凶報なのではないかという気がしていたけれど、とりあえず素直に返答しておく。
「次回の大祭では、姫巫女と一緒に貴女に祭祀巫女を務めてもらいます。これは非常に名誉な事ですよ」
「え……? で、ですが、私はまだここに来て一年も経っていませんし、そんな大役を仰せ付かっても何をすればよいのか――」
「はい、其れは勿論分かっています。貴女がやらなければ成らないのは一つだけ、式次第の最後の女神様への捧げ物の儀式だけです。煩瑣なことは姫巫女と介添えに任せて、貴女はその指示に従っていれば大丈夫です」
姫巫女、とはこの神殿の全ての巫女たちの頂点に位置する、もっとも神聖にして高貴な巫女だ。僕もその姿を遠目に見たことは幾度か有るが、直接話をしたりしたことは無い。
「ですが――そ、それに私はまだ神殿の巫女としての義務を果たしていません。そのような私が姉巫女の方々を差し置いて……」
神殿巫女の義務とはすなわち、聖なる娼婦として神殿を訪れる人間に愛を分け与えること――平たく言ってしまえば春をひさぐ事だ。愛を分け与えられた者は感謝のしるしに喜捨をする。
これ自体はどこの神殿でも行われていることだが、この愛と戦争の女神の神殿が独特なのは、神聖娼婦を務める巫女の半数以上が実はあの薬で体を作りかえられた男だということだ。
神聖娼婦としての務めを負わない神官や下働きの女性ならともかく、巫女となるときちんと務めを果たしていなければ成らないはずだ。
「其れも問題は有りません。姫巫女以外で儀式に参加する者は、世俗の男の穢れを受けていない者が望ましいのですよ。今この神殿にいる巫女で其れに当てはまるのは貴女だけです」
「……はい。かしこまりました、大神官様」
どのみち、命令されれば僕はそれに逆らえない。僕が不興を買って罰を科せられてしまってはここにいる意味がなくなるからだ。それに、言われたこと自体は無体な要求でもなんでもないように思えた。
僕はそんなふうに考えながら、大神官に一礼した。
●
大祭の儀式に参加するための準備、と称して連れて行かれたのは地下にある部屋だった。
いくつもの灯明に照らし出された室内には、僕のほかに二人の巫女(どちらも元男性)と、年老いた男性神官がいた。
今、その老神官の指が僕のお尻の中に潜り込んでいる。
指先が僕の中を探り、男根の裏側にあるこりこりとした部分を圧迫する。そこを押されると、射精の瞬間のような快感が走り、僕の男根がびくんと跳ねる。
僕の反応を確認すると老神官は指を抜き、小刀で手元の木片を削ってゆく。時々再び僕のお尻に指を入れ、僕の中の寸法を指で測る。それに合わせて木片を削ってゆくと、だんだん出来上がってくるのは、軽く曲げた人差し指と親指で何かをつまんでいるような形の物体だった。
やがて老神官は小刀を置くと、その物体を最初は砂と荒布で、続いて
僕は衣の裾を捲り上げられ、左右から巫女に抑えられた格好でその一部始終を見届けさせられた。
それが出来上がると、再び僕のお尻の入り口に油が塗りこまれた。今度は何をされるのかと思って体を固くしていると、今出来上がったばかりの器具が僕のお尻に差し込まれた。丁寧に仕上げられて表面は滑らかで、何の抵抗も無く僕のお尻にそれは収まった。
「う……」
「どうですか、イスタラ? 苦しかったり痛い所はありませんか?」
「いえ、それは大丈夫です。でも……」
実際、痛かったり苦しかったりといったことは無かった。肛門を押し広げている部分の太さは指の一本分程度だったし、長さも大人の人差し指程度だったから奥が苦しいということも無かった。
代わりに感じるのは、なんとも形容しがたい不思議な感覚だった。
この器具――仮に『指』と呼ぼう――の先端は男根の裏側を圧迫し、外に出ている側の先端(人で言えば親指にあたる部分)は同じように睾丸の下の会陰部を圧迫している。
肛門に力が入ると『指』がそれにつれて動き、男根の裏側をこじる。逆に力を抜くと、親指部分が会陰部をくすぐるように動く。
どちらにしても落ち着かず、肛門に力が入ったり緩んだりを繰り返してしまうのだが、そうすると『指』が動き続けて僕に刺激を与え続けてしまうのだ。『指』の形や大きさはあまりにも僕のそこにぴったりで、どうしてもその責めから逃れることは出来なかった。
いつのまにか僕の呼吸は荒くなり、心臓は激しく打ち始めていた。男根は滾り、先端からは透明な液体が溢れ出している。思わずそれを扱こうとすると、両脇から伸びてきた腕が僕の手を押さえた。
「いけません、イスタラ。あなたは今から大祭の日まで、自らを慰めてはならないのです」
「そ、そんな……。このままじゃおかしくなっちゃいます!」
そんな会話を交わしているあいだにも、お尻から湧き上がる快感は強くなっていく一方だった。敏感になったそこから感じる快感に、肛門が勝手に収縮と弛緩を繰り返す。そのたびに『指』が僕の敏感な部分をえぐった。
両手首を背中でしっかりと結ばれ、両足も自由に動かせないように膝を曲げた形で束縛される。そのまま柔らかい寝台の上に寝かせられ、衣服を全て剥ぎ取られた。
両胸に何かべたべたした軟膏のようなものが塗られ、乳房全体に揉みこむようにして塗り広げられる。
しばらくすると、乳房全体が熱くなってくる。特に先端は、息を吹きかけられただけでも感じるような状態になっていた。
「それではイスタラ、今夜はこれでおやすみなさい」
二人の巫女と老神官が去ると、部屋には僕だけになった。
おやすみなさい、と言われても、こんな状態で眠ることなどできるはずが無かった。
お尻からは間断なく快感が湧き起こり、体をよじるたび、肛門が収縮弛緩するたびに新たな快感が昇ってくる。同時に乳房からは柔らかくもまれるような、そしてその先端からは甘くてじれったい快感が広がる。
僕はその晩一睡も出来ず、器具と薬によってもたらされた快感に溺れ続けた。
●
朝になると再び二人の巫女が部屋を訪れ、僕の世話をしてくれた。
手足の拘束は解かれなかったが、『指』が抜き取られ、汗にまみれた体がきれいに拭われる。やわらかく煮た穀物と温かい汁の食事を、匙で一救いずつ食べさせてもらう。
しかし、しばらくして落ち着くと、再び『指』による責めが再開された。胸にも昨日と同じ軟膏が塗られ、愛撫するような動きで擦り込まれる。そのようにして数日が過ぎた。
●
「イスタラ、いよいよ今夜は大祭の儀式ですよ」
朝、普段のように部屋にやってきた巫女がそう言って、僕のお尻から『指』を取り去った。
僕は久しぶりに手足を自由にされると、部屋から連れ出されて浴場へつれてゆかれた。手足の萎えた年寄りのように手助けをされながら、熱いお湯につかる。
ふと、胸に違和感を感じる。いや、正確に言うと先ほどから感じていたはずなのだが、ぼうっとしていた頭では良く分かっていなかったというのが正しい。お湯に浸かって体の緊張がほぐれてきたために、物を考える余裕が戻ってきたのだろう。
僕は違和感の正体を探るために自分の胸を見下ろす。そして、その正体は探るまでも無く分かった。
僕の乳房だった。
あの地下室に連れて行かれるまでは――薬の作用で大きくなっていたとはいえ――僕の乳房は片手に納まる程度のものだった。ところが、今見下ろしている乳房は、その数倍の大きさになっていた。お湯にぷかぷかと浮かぶそれに恐る恐る手を伸ばしてみると、片方をすくい上げるだけでも両手を合わせないとならないほどだった。
変わっていたのは大きさだけではなかった。手のひらの触れている部分から、なんともいえない気持ちよさが感じられる。軽く力を入れてみると、柔らかく変形した乳房全体からはっきりした快感の波紋が全身に広がった。
「あら、イスタラ。いけませんよ」
「う……、はい……」
儀式が終わるまで自分で慰めてはいけない、と言われていた事を僕は思い出す。
胸から手を離すと、僕は全身の力を抜いて熱いお湯に身をゆだねた。
●
薄衣をまとった僕は、黄金とさまざまな貴石で出来た装身具を身に付けさせられた。腕輪、足輪、首飾りに耳飾。身動き一つするたびにそれらはぶつかり合い、楽器のような音を立てる。
控えの間で待っているうちに大祭は最高潮を向かえ、いよいよ最後の儀式の時間が来た。
すでに日は落ちているけれど、たくさんの
やがて僕の出番が来る。僕の務め、それは純潔を女神への捧げ物にすること――つまり群集の面前で尻穴を姫巫女に犯される事だった。
普通の状態だったら、恥ずかしさに気が狂いそうになっていたかもしれない。耐え切れずに舌を噛んでいたかもしれない。だけどこのとき僕は、一週間のあいだ胸とお尻を責められ続け、そのあいだ一切自分で慰めることを許されず、たまったもののために発狂寸前だった。
介添の巫女二人に連れられて姫巫女の元へ向かう僕は、さながら生贄として運ばれる子羊だった。すでに運命は決まっているけれどもそれから逃げることは出来ない。姫巫女の逸物で貫かれ、大勢の前で果てることが決まってしまっているのだ。
姫巫女が介添人に衣を脱がされ、その裸身を晒す。同時に僕も衣を脱がされ、手足につけた装身具だけの姿になった。
見ると、姫巫女の逸物も天を指して立ち上がり、先端から蜜を溢れさせている。重たげにゆれる乳房の先端も固くとがり、姫巫女も僕と同じ状態であることを示している。
僕と姫巫女、それぞれに二人ずつついていた介添が、最後の儀式のための準備をする。二人は姫巫女の逸物に舌をはわせ、唾液で潤わせる。もう二人は僕のお尻にオリーブの油を塗りこみ、挿入に備えて揉み解す。
やがて準備が整うと、僕は四人にそれぞれ手足を押さえられる形で台上に伏せさせられた。羊ならばこの後小刀で喉を割かれるところだが、僕にとどめを刺すのは姫巫女の逸物だ。
そしてついにその時が来た。
僕の腰に両手が置かれる。その手は僕の腰を掴み、狙いを定める。肛門に熱い肉が触れる感触があり、直後にそれが僕の中にずぶずぶと押し入ってくる。すっかりほぐれていた僕の肛門はまったく逆らうことなく、それを受け止める。
「あっ、くっ、ああっ、うああっ……」
「んっ、はあっ、ふううっ……」
僕の声と姫巫女の声が重なる。
姫巫女のものが僕の中に入ってくるたびに、すさまじい快感がお尻から湧き起こる。予想していたような痛みや気持ちの悪さはまったく無く、お尻の穴を押し広げられることにも、中を擦り上げられることにも、そして奥を突付かれることにさえ、僕は快感しか感じなかった。
姫巫女も逸物から同様の快感を得ているようで、僕の肛門が反射的に彼女の逸物を締め付けてしまうと、そのたびにとろけた声があがっていた。
姫巫女が抽送をはじめると、その一突き毎に二人の声があがり、淫靡な合唱になった。ついに姫巫女が果てると、お尻の奥に叩きつけられた熱い衝撃に僕も絶頂し、二人の長々とした悲鳴があたりに響き渡った。待ちに待った射精は、体の中身が溶け出しているんじゃないかと思うほどのすさまじい快感だった。
しばらく絶頂の余韻に浸った後、姫巫女が僕から離れる。僕は両手両足を四人の巫女に抱えられ、股間をさらけ出す形で群集に晒された。僕の男根と尻穴からこぼれる精液が、僕と姫巫女の絶頂を証明する形になる。僕の純潔が確かに姫巫女に――姫巫女を介して女神に捧げられたことを知り、群集からひときわ大きな歓声があがった。
●
女神への捧げ物の役目を果たした僕は、しばらく体を休めた後に巫女の務めを果たし始めた。すなわち、神殿の務めを果たしながら、日に一人か時々二人程度、神聖娼婦として客人の相手を務めるのだ。
僕は女性の装いをすることにも、尻穴に男根を受け入れて男の精を注がれることにも、まったく抵抗を感じなくなっていた。それどころか、女性のように扱われ性的欲望の対象とされることに喜びすら感じていた。
一つにはこの体のことがある。丸みのついた体型といい膨らんだ胸といい、もはや家族にも、言われなければ僕が誰だか分からないのではないかと思う。まして顔に化粧を施してしまえばだ。
そして、あの儀式の時以来、僕の尻穴は男の物の味を覚えてしまった。じっくりほぐしたそこに肉棒を受け入れるのは、何にも変えがたい快楽だった。
時々誰にも抱かれなかった日には、寂しさを紛らわすために『指』を使った。僕のお尻の構造に合わせて作られたそれは、必ずの絶頂を約束してくれた。
そうやって日々をすごしていると、それ以前の生活が夢か幻だったのではないかと言う気がしてくる。僕は本当は最初からこの神殿の神聖娼婦で、都市国家キシュの第一王子だったなどと言うのは何かの間違いだったのではないか……。そんな気さえするのだった。
● ● ●
アッカドの軍隊が、都市国家ウルクの軍を打ち破った。凱旋してくる軍勢が通りを行進するのが神殿からも見渡せた。
その日の夜、僕たち巫女に特別な勤めが言い渡された。今回の戦で最も手柄を立てた部隊の所へ赴き、女神の祝福を与えてくること、と言うのがその内容だった。
要するにお手柄のご褒美に神聖娼婦全員で一晩お相手をする、と言うことなのだけれど、何しろあちらのほうが人数が多い上にいまだに戦の興奮冷め遣らぬ態なので大変だった。
およそ巫女一人に兵士が3人から4人ということになった。僕も3人の相手をしたのだけれど、ほとんどの時間口とお尻を男根でふさがれっぱなしで、最後にはお尻に二本の男根を無理やりねじ込まれた。
口とお尻から注ぎ込まれた精液と顔や体に降りかけられた精液の量を合わせると、手桶に一杯分ぐらいにはなったんじゃないかと思う。
一晩中兵士たちの相手を務め、夜が明ける頃にはへとへとに疲れていた。だけどその夜に味わった快楽は僕の心に深く刻み込まれていた。
自分よりはるかに屈強な男たちに強引に唇を奪われ、乳房を弄ばれ、男根を咥えさせられる。お尻を犯され、精液を飲まされる。嫌だと言っても無理やり押さえつけられ、お尻と口を犯される。顔も体も精液まみれにされ、ぬるぬるになった乳房や手のひらを男根を扱くのに使われる。最後には力が入らなくなり、人形のようになった体を好き勝手に弄ばれる。
全ての体験が僕の心と体を快楽で犯し、魂の奥底にまで刻み込まれたようだった。
●
僕が神殿に来て何年か経ったある年、キシュがアッカドに滅ぼされた。
どうして再び争いになったのかはよく分からない。朝貢要求が厳しくなりすぎたとかいう話ではあったけれど。
遠征軍が帰還した日の夜、僕たちは再び女神の祝福を授けに最も功績を上げた部隊の宿舎を訪れた。僕は四人の兵士を相手にし、一晩中魂が燃え尽きそうな快楽を味わった。
数日後、遠征軍を率いた将軍が神殿奴隷とするための捕虜を連れてきた。その一人の顔を見て僕は驚いた。
弟だった。
父上は討ち死に、母上は毒をあおって自害したと聞いていたから、てっきり弟も死んだものと思っていたけれど、どうやらそうではなかったらしい。
弟のほうでは僕を見ても誰だかわからないらしい。まあこれは当然だと思う。
僕は弟を見ながら、女神に感謝を捧げていた。
肉親を生かしておいてくれたことに。
そしてここにつれてきてくれたことに。
弟にどういうふうにして女の悦びを教えてあげようか、男に犯される悦びを覚えたら弟は自分に感謝してくれるだろうかと考えながら、僕は女神への感謝の祈りを暗誦した。
―了―