キリン♀女装美少年ハンターの受難

〜モンハンの世界がもう少しリアリティーに満ちていたら〜

「糞っ、これじゃ今年の食料の配給がどうにもならねぇ。
 今までこんなことはなかったってのによぉ!」
夕暮れの酒場の中、カウンター席で大声でクダを巻く男の声があたりに響き渡る。
草原の真ん中にある小さな村。人口は多いとは言えず、正式な名もないこの村でも、
食事時の酒場の客の入りは少なくはなく、それなりの活気と喧騒に包まれていた。
「ちょっとちょっと。そんな大声出しちゃ周りの人に迷惑でしょ?
 何か悩みがあるなら僕に言ってごらんよ」
鈴を転がすような快活な声が、酔った男の背後からかけられる。
その言葉に背後を振り返り、声をかけてきた相手の姿を認めた酔客は、
酒臭い息を吐きながら手をひらひらと振り、憎まれ口を叩いた。
「なんだ、エミルか。 お前、未成年の癖に酒場浸りか? 将来が心配だぜ、全く」
「僕はそんな不良少年じゃありませーん。
 たまたま酒場の前を通りかかったら、おじさんの大声が聞こえてきたんだよ。
 で、何事かと思って覗いてみたってワケ」
酔った男の軽口をこちらもまた軽妙な口ぶりでかわす、まだ年の頃15、6といった感じの人物。
臍や太股、二の腕などを露出し女性的な魅力を強調する服装といい、
その白い柔らかそうな素肌や可愛らしい容貌といい、どう見ても少女にしか見えないが、
その口ぶりから察するに、どうやら少女ではなくれっきとした男子であるようであった。
「お前、またその服勝手に持ち出して、まぁたハンターの真似事でもしてんのか?
 黙ってれば可愛いんだから、ちったぁおしとやかにしやがれってんだ」
酔った男はまたしても憎まれ口を叩くが、決して心から相手を憎く思っているわけではなく、
その言葉の裏にはエミルに対する愛情や心遣いが隠されているのがその表情から汲み取れる。
そんな男の心情を知ってか知らずか、むくれたような表情を見せつつ、エミルは胸を張って言い放つ。
「真似事ぉ!? ひどいなぁ。 しかもまた女の子扱いして。 その言い草はないんじゃない?
 正義を守り悪を挫く、村を守る勇者! この僕、モンスターハンターにさ」

――モンスターハンター。
そう。 エミルは決して、故なくしてこのような服装をしているわけではないのであった。
それは、この村の開祖であったハンターが着ていた物であると古くから伝えられ、
村の宝として、その中心部にある祠の中で代々祀られていた、由緒正しい狩人用衣装なのである。
とはいえ、それは女性用であるらしく、ご覧の様に肌を大きく露出し身体の線を強調するデザインであり、
とても成人男性が憚りなく着られるようなシロモノではなかった。
ゆえに、現在では狩人といえばむくつけき男達ばかりであるこの村において、
並みの女性よりも美しい容貌と女性的なスタイルを持った美少年であるエミルが
ハンターを目指して修行を重ねるにあたり、自然とその衣装を独占することとなったのである。
外見的には違和感なくよく似合っているとはいえ、年頃の少年が女性用衣装を着るということは
普通なら少なからず抵抗があるところであろうが、その容姿に違わず
女性的な性格も持ち合わせたエミルは、村人達に「可愛い」と褒めそやされるのも
それはそれで嬉しいらしく、狩猟の日以外でもその衣装を祠から拝借しては、
着用して楽しむという始末であった。
その容貌に加え、健気さと愛くるしさを兼ね備えた性格もあり、エミルは村の人気者として
一種のマスコット的扱いを受ける、村人全員に愛される存在であったのである。
そして今日も今日とて、酒場でクダを巻く男の前に現れ悩みを打ち明けてみろと持ちかけたエミルは
ちゃっかりと件の衣装を着込んでいたのであった。

「それらしいのはいないな…… その行商の人の勘違いだったんじゃないの?」
ただ一人、草原の真ん中で辺りを見回しながら、誰に言うともなくエミルは呟く。
村全体の物資の管理を担当していた村役場の男(あの酔客だ)に酒場で聞かされた話というのは、
「この村に食料や日用品を供給する行商隊が巨大な獣に襲われ、荷馬車ごと荷物をことごとく破壊された」
というものであった。
今まで、小型モンスターとの小競り合いなどはあったものの、全体的には平和な村であっただけに、
俄かには信じがたい話ではあったが、もし真実であるなら、ハンターとして村の危機を見過ごすことはできない。
と同時に、隊商の大人たちが総がかりでも敵わなかったという猛獣を自分が狩猟すれば、
自分を村一番のハンターとして誰もが認めるだろう、という下心も少しはあったのであるが。
とはいえ、その現場であるという草原を昼間中捜索しても、
今のところそのような大型の猛獣らしきものは見当たらない様子であった。
「今日のところは出直して、また明日、探そーかなっと」
出発したときは東の空を昇ってくる最中であった太陽も、今ははや西に傾きかけ、
待ちぼうけを食らったと拍子抜けしたエミルが帰り支度を始めようとした、そのときであった。

「ん? あれ、何だろ……?」
視界の片隅にふと過ぎった、羽ばたきながら空を飛ぶ、鳥にしては大きすぎる影。
逆光になって姿の判別がよくできないその影を、エミルはよく見ようと目を細めた。
それは段々と大きくなり、こちらに近づいてくるようであった。
「何あれ、あんなでかいものが空、飛べるの……?」
少年がそう疑問を漏らした、次の瞬間。
猛スピードで近づいてきた巨大な影が日の光を一瞬翳り、大きな羽音と、
思わず顔を覆ってしまうほどの風圧とともに、何か大きなものがエミルの眼前に降り立った。
今までに見たこともない巨大な獣。
着地の姿勢から身を起こすと、エミルの身長の数倍にもなる高みに位置するその生物の頭部から、
まるで至近距離に落雷でもあったかのような轟音が発せられ、彼の心胆を凍てつかせる。
そのあまりの迫力に圧倒され、少年の思考は停止し、傍らの地面に置いていた愛用の片手剣を
拾い上げて構えることすら忘れ、ただただ呆然と眼前の光景を見つめるのみであった。
(こんな、こんなものが、いる……なんて……?)
エミルは思い起こす。
狡猾な知能を持ち集団で家畜を襲う、人間ほどもある肉食の鳥竜。
雪山の上から時折人里まで降りてきて、食料を盗み、人に危害を加える大型の類人猿のような牙獣。
それらに対し、村を守らんと果敢に戦い、天賦の才と称えられた剣術を駆使し、
自分はそのどれもに打ち勝ってきた。
人間の可能性は限りなく、勇気を持って立ち向かえばどのような敵も打ち倒せると信じていた。
そんな少年の自負と確信は、今この瞬間、目の前に降り立った巨大な獣のたった一声の咆哮により、
まるで突風を前にしたタンポポの綿毛のように、呆気なく散り散りに吹き飛んでいった。
「な、何、これ……」
そう口では問うてみたものの、生物としての本能か、少年の身体は既に悟っているようだった。
初めて相対する目の前の存在が、たとえどのような逞しい肉体や天賦の才に恵まれていようと、
たとえ何十年という厳しい鍛錬を積もうと、人間の身では万に一つも勝ち目のある相手ではないということを。
背筋は縮み上がり、足は竦み、体に抑えようのない震えが走ると同時に、股間に暖かい液体の感触が溢れる。
恐怖で緩んだ尿道が緩み、可憐な衣装の下履きの内側に無様にも尿を撒き散らし、失禁を続ける美少年。
その眼前に迫る巨大な獣――
全身を赤みがかった鱗と甲殻に覆われ、長く伸びた首の先端にある頭部から炎の混じった吐息を漏らし、
背に生えた巨大な翼で空を駆ける飛竜リオレウスは、そんなエミルを一瞥すると、
おもむろにその口を開きつつ、無造作とも思える仕草で大きく首を横に振った。

「……え?」
その行為が何を意味するのか即座には解らず、呆気に取られて眺めていたエミルだったが、
ゆっくりとこちらに向き直るリオレウスの閉じられた口に、見覚えのある物体が引っかかっているのに気づく。
それを見やりながら、少年は自問する。 あれは何だろう?
よく観察してみる。 それは細長く、肌色で、先端のほうには掌と、五本の指があり、―――
「――――!!??」
背筋に悪寒が走り、弾かれるようにエミルは己の右腕に目を向ける。
しかしそこには、二の腕の中ほど辺りから切断され断面から鮮血を吹き零す、右腕の残滓が存在するのみであった。
目の前の恐るべき獣は、その巨大な顎を振るい、たった一口、噛み付いた。
ただそれだけで、いとも簡単に自分の右腕を根元から千切り飛ばしていったのだ。
遅れて襲ってきた激痛は、まだ年端も行かぬ少年に、その残酷な事実をこれでもかと突きつける。
「ぎっ…… ぎゃあああああああぁぁぁぁぁっっ!!」
切断面に間断なく襲い来る、焼けた火箸を何本も突き刺されたような痛みと、右腕の喪失を実感したショックで、
少年はその可憐な容姿に似つかわしくない獣のような叫び声を、恥も外聞もなく喉から搾り出す。
(どうして? なんで、こんなことに……)
苦痛と絶望の叫びを上げながら心の中で自問しつつ、エミルは思い出していた。
幼い頃から、母親の寝物語や、村の老人達に聞かされた、怪物を狩る者(モンスターハンター)たちの英雄譚を。
溢れる闘志を燃やしつつ強大な飛竜に立ち向かい、何度倒されようと屈することなく立ち上がり、
立ち並ぶ爪牙の致命の一撃から華麗に身を躱し、最後にはどのような巨大な敵ですら打ち倒す。
子供心にも荒唐無稽な御伽噺であると思いつつも、純粋な少年の心は煌びやかで勇壮な物語に奮い立ち、
自分もいつかそんな英雄になれると、心のどこかで信じていたのであった。
しかし、今。
伝説の中では英雄の引き立て役に過ぎぬ「モンスター」というものが実際はどのような存在であるのか。
人間という種族がいかに非力でちっぽけな存在であるのか。
そして、人間社会の倫理や道徳など一切通用しない弱肉強食の野生の世界で、
弱者が一度でも強者に倒されるということはすなわち「確実な死」を意味するのだということ。
それらの残酷な現実が次々と少年の眼前に立ち塞がり、彼の心を、
その内に存在していた村を守る狩人としての矜持を、英雄への憧れを、未来への希望を、
何もかもを無残にもへし折り、叩き壊し、跡形もなく粉砕していく。

少し後退して距離をとったリオレウスが、
未だその牙に引っかかった、つい先ほどまではエミルの右腕であったもの、
今では主の体から離れ、二度とその意思どおり動くこともないただの肉塊に過ぎぬものを
邪魔そうに首を振って弾き飛ばす、その一部始終をエミルは見つめていた。
「僕の手…… はは。 あんなにボロボロになって捨てられちゃった。
 これじゃ、これから先、もう剣を振ることなんてできないな……」
顔面を蒼白にしつつ、呆けたように呟くエミル。
その行為が終われば、リオレウスは次には確実にエミル自身を屠りにやって来る。
そのことは誰が見ても明白であるにもかかわらず、少年剣士の両足は凍り付いたように動かない。

彼は見てしまったのだ。
まるで無関係な仕草、一見すれば油断ゆえの行為と見えるような挙動のうちにも
リオレウスの鋭い眼光が、常にエミルの一挙手一投足を睨めつけていることを。
常に相手の攻撃に対応できる最適の間合いを保ちつつ、隙あらば確実に必殺の一撃を叩き込む。
目の前の飛竜は、人間のように高度な思考能力や論理的な戦略構築などに頼らなくとも、
ただ本能のみでそのような芸当ができるであろうことをエミルは悟っていた。
逃走はおろか、もし半歩でも退くような素振りを見せたなら、それを絶好の隙と見、
すぐさま一撃の下に息の根を止めんと跳びかかってくることだろう。
弱肉強食の世界で上位捕食者として君臨する「空の王」。
そのあまりにも強大な存在に対し、非力な人間ができることと言えば、
――近づかぬこと。でなければ、ただただ餌となること。
そのことをエミルが思い知ったのは、このあまりに遅きに失したと言わざるを得ない状況でであった。
だが、彼に英雄譚を語った村の大人達を責めることはできない。
開祖が村を築いてより百数十年の間、この近辺に大型のモンスターが姿を現すことなどついぞなく、
ハンターズギルドや古龍観測局といった、民間にモンスターの情報を流すことのできる組織も
この地方に支部を置く必要はないと判断して進出してこなかったからである。
村の大人や老人達もまた、少年剣士と同じく、
伝説の英雄譚の中でしかモンスターというものを知らなかったのであった。

右腕の切断面からの出血で低下した体力と、溢れ出る涙とで霞んだエミルの視界に、
一向に動こうとせぬ相手に痺れを切らしたかのようにゆっくりと歩み寄ってくる飛竜の姿が映る。
自分に死をもたらすであろう相手の姿が段々と大きくなりつつ眼前に迫りくる様を眺めながら、
しかしエミルはおおよそ場違いとも思える感覚を味わっていた。
股間が熱く滾っているのである。
少女のような外見に似合わず、並みの成人男性を凌ぐサイズを誇る彼の陰茎は激しく勃起し、
可憐な衣装の前を天に向かって突き上げる勢いで硬直し、大きな膨らみを形作っている。
迫り来る死を目前に、最期に自らの遺伝子を残そうとする、
生物の牡としての本能による肉体の反応であった。
自らの肉体のその場違いな変化にエミルが気づいたのは、
勃起しきった肉茎の剥き出しの亀頭が布地と擦れ合い、
脊髄を尻側から脳天に向かって激しく駆け抜ける性感の電流が貫いた時であった。
目前に迫る生命の危機に際し、一刻も早く、できるだけ大量の精液を
睾丸から搾り出さんと、少年の脳は最大級の性的快感を自らの肉体に伝える。
「お゛オ゛ッ…… ほオォ……ッ」
未だ女を知らず、性的な経験としては自らの右手による自慰しか知らぬ美少年に、
かつて経験したどんな自慰よりも大きな快感の波が襲いかかり、
思わず理性のカケラも感じられない浅ましいあえぎ声を漏らさせた。

先ほどまで己の死という人間が味わいうる最大級の恐怖に肉体が弛緩し、
体中の穴という穴が緩みきっていたところに、今度は不意打ちの空前絶後の性的快楽
という衝撃を浴びせられ、エミルは反射的に腰を引いて前屈みの無様なポーズを取りつつ
目を裏返らせて白目を剥き、緩みきった鼻の穴からは鼻水を垂れ流し、
母音の「お」の形に尖らせた唇からはピンと立った舌を突き出し涎をダラダラと溢れさせた。
混乱した思考から発せられる「なぜこんな時に?」という疑問はしかし、
性欲を満たすことに積極的な思春期の少年の肉体の疼きを止めることはできない。
目前に近づく死を認識し恐怖する理性での思考とは裏腹に下半身は勝手に空腰を使い、
少しでも勃起したペニスと擦れ合う物を求めようとする浅ましい動きを始めていた。
恐怖に竦む両の足、浅ましく快楽を貪ろうとする腰と秘部が言うことを聞かぬこの状況では
とてもではないが逃走などできるはずもなく、己の生存が絶望的であることをエミルは悟った。
もっとも、逃走を試みたところで、翼を持ち空を駆ける飛竜にとっては、傷ついた少年を捕まえることなど
逃げ去る蟻に人間の足で追いつく程度の容易いことであっただろうが。
背筋に氷柱を突っ込まれたような恐怖と絶望、絶え間なく肉体から送られる甘美な性的快感。
これらは少年の心の内に最後に残った、現実に立ち向かおうとするなけなしの希望と気力を
根こそぎ奪い取っていくには充分であった。
思考と肉体、その両方が抵抗を諦め、エミルはその場にがっくりと膝をつく。
その股間の膨らみは未だ力を失わず天に向けて雄々しくそそり勃ち、
相変わらず白目を剥いて目、鼻、口からいろいろな液体を垂れ流した無様な表情であることを見れば
彼の肉体が性欲を貪ることに夢中であることは一目瞭然であった。
「お゛オォ…… お゛……ほ……♪」
体全体を細かに震わせながら悦楽に蕩けきった喘ぎ声を漏らすエミル。
目の前の獲物にもはや抵抗や逃走の意志がないことを感じ取ったのであろう。
リオレウスはその巨大な顎をゆっくりと開き、エミルに覆いかぶせていった。
先刻までその目に灯っていた、油断なく相手の敵意を見極めんとする鋭い眼光はすでになく、
それは勝利を確信しきった、狩猟済みの動かぬ獲物に対する「捕食行動」そのものであった。
鋭い牙が隙間なく並んだ顎が大きく開かれ、エミルの上半身を挟み込んでいく。
アプトノスのがっしりした骨格や、アプケロスの堅牢な甲羅をも難なく粉砕する力を持った大顎である。
それが全力を以って閉じられれば、その間に挟まれたこの華奢な人間の少年の肉体など
あっけなく寸断されてしまうであろうことは火を見るよりも明らかであった。
リオレウスの口から漏れ出る吐息の獣臭を間近で嗅ぎ、
上半身を挟み込んでくる大顎から生えた牙の先端が背中と胸の両方にゆっくりと触れてくるのを感じ、
それらの全てが自らの逃れられぬ死を意味するものだと実感した時、エミルは射精した。

「おほオオオォォォーーーーーーーーーーッッ!!」
キーンとした快感が脊髄から全身を駆け抜け、美少年は四肢を突っ張らせ体中を痙攣させながら
眉根を寄せ白目を剥き、涙と鼻水と涎でベトベトになった顔をさらに歪ませつつ、
舌をピンと突き出したままの唇から獣の絶頂の咆哮を上げる。
女性用の、布地の面積の少ない下履きでは、射精時の膨張で一層体積を増したエミルの巨根を
覆い隠すことはできず、下履きの上端から弾け飛ぶように零れ出た、充血して膨らみきった亀頭が
パックリと尿道口を開き、勢いよく白濁液を撒き散らす。
恐怖や、失血による体力の低下も、傷の痛みと、
彼の人生最後となるであろう激しい性的絶頂に遮られ意識を失うまでには至らず、
エミルは明瞭な意識を保ったまま、リオレウスの牙が胴体に食い込む感触と
硬直した陰茎が激しい快感を伴いながら精液を吐き出す感覚を同時に味わっていた。
研ぎ澄まされた刃物のような鋭い牙が、容易く皮膚を裂き脂肪層にまで潜り込んでくれば、
それに呼応するかのように、美少年の股間に焼けた鉄のように熱く硬く屹立した肉棒が打ち震え、
睾丸と尿道を収縮させながら、生命の源となるべき白濁の粘液を、ただ中空へと空しく撃ち出していく。
女が男のペニスをヴァギナに受け入れ絶頂を極めるかのように、
エミルは火竜の牙を体内に受け入れ絶頂し、誰にも触れられぬ男根を震わせ射精する。
実際にはほんの十数秒の間の出来事なのだろうが、脳内麻薬に浸され高速回転する意識にとっては
永劫にも等しいその時間の中、人間の感じ得る最大限の恐怖と快楽――
死と生命の営みという両極端の感覚を味あわされた、まだ幼さを残す弱冠16歳の少年の精神は
あっけなく粉々に砕け散っていった。
自我の認識が散り散りとなり、意識が闇に飲み込まれていく中、エミルはリオレウスの咆哮を聞いた。
それはなぜか苦痛と怒りの入り混じった響きのようにも思えたが、
自分というものが消えかかった少年にとってはそんなことはもはやどうでもよかった。
「オォ…… イ……イグ……ゥッ……♪」
絶頂の終わり際に来る大波がエミルの身体を突き上げ、彼の激しく脈動し続ける肉茎の先端から
精液の最後の一雫が滴るのと同時に、その目に灯る正気の光の最後の一かけらもまた、
跡形もなく消え失せていったのであった。


開拓地の草原の真ん中に、右腕を失い全身傷だらけになって倒れていたエミルの姿を、
村の捜索隊が発見したのはそれから数時間後のことであった。
彼の着ていたと思われる衣装は何故か焼け焦げたように炭化して崩れ去り、全裸に近い姿であったと言う。
今にも死にそうな重傷にもかかわらず快楽の只中にいるような蕩けた表情で喘ぎを漏らし、
腹から胸にかけて覗いた、かつては女性も羨むほど白く美しく瑞々しかった柔肌は、
今はリオレウスの牙につけられた無数の噛み傷とそこから流れ出した血、
それに加えて自らが発射した白濁液とに隙間なく覆い尽くされ見る影もない。
見る者を惹きつけてやまない優美な曲線を描いていた柳腰は絶えず前後に揺すられ、
露になった裸の股間にひと時も萎えることなく勃起したままの男根を屹立させ、
その先端から透明な粘液をとめどなく溢れさせ続けるエミルの様子を目の当たりにし、
村人たちはその悲惨な姿に一様に目を背けざるを得なかった。
だが、一歩間違えばそうなっていたであろう更に最悪の事態、
すなわちリオレウスの胃袋にエミルが収まるという結果に至らなかった理由を、
エミル本人も含めその場にいた誰もが知る由はなかった。
村に代々伝わり、エミルが着用していた、村を興した英雄である女性狩人が着用していた衣装は
伝説の幻獣「キリン」の皮を編んで作られたものであること。
その衣装は外敵に対し電気による防護壁を作り、着用する者を守護する機能があること。
そしてその衣装が、布地を噛み裂かれるという事態に至り、
着用者の深刻な危機を悟って自らを炭化するほどの強烈な電撃を発し、
口内を灼かれたリオレウスが痛みと驚愕により逃げ去り、着用者であるエミルが九死に一生を得たということも。

エミルが救助されてから数年の歳月が流れ、身体の傷はすっかり癒えても、
利発で快活な少年であった彼の魂が心の内に戻って来てはいないことは誰の目にも明らかであった。
毎日裸に近い格好で出歩き、以前の知り合いに会っても意味ある会話をすることもない。
行き会う者が思わずハッとして振り返るほど淫蕩な表情を浮かべながら村の中を徘徊する。
下履きを着用することもなく露出された股間から覗く陰茎は四六時中勃起したままであるが、
決して自分で慰めるようなそぶりを見せることはなかった。
――精を放つことなく勃起するままに放っておけば、いずれ陽根は腐り落ちてしまう。
エミルを見守る村人たちの間で誰からともなくそんな言葉が囁かれ始めた。
そして、村の男達はエミルの身体を案じるためと言いつつ、代わる代わる彼を犯すようになった。
善意から始めた者も中にはいただろうが、猛り勃った肉棒を扱かれ、悶えながら白濁液を噴出し
絶頂を極める美少年の、女ですら敵わぬ淫靡さに満ちた姿に当てられた男達は、
みな一様に自らの一物をも怒張させ、エミルの肉体に己の煮えたぎる欲望を放出していった。
そうして男を受け入れることを覚えたエミルは、自ら進んで、自分を犯してくれる牡を夜毎に漁るようになる。
彼の女性的な美貌は、あれから数年が経ち少年と呼ばれる年齢にそろそろ別れを告げようか
という頃になっても衰えることなく、却って妖艶な色気をも発するようにすらなっていた。
そんな彼が夜な夜なその扇情的な肢体を晒し歩き、行き交う者を男と見るや、好色そうな微笑を浮かべて
たちまちのうちに擦り寄り、残った左手で相手の股間を摩り、頬を擦りつけ、衣類の上から舌を這わせる様を
目の当たりにして自制心を働かせる男は少なかった。

毎晩のように男に媚を振り撒いてはその体の下に組み敷かれ、怒張した一物を菊門に捩じ込まれ、
直腸の奥深くに欲望の白濁液を受け入れては、自らも乱れ、射精し、満足げな喘ぎを漏らすエミル。
数年前、火竜の牙を体内に受け入れ絶頂を極めたときの快楽を再び追い求めようとしているのだろうか?
昼も夜もなく快楽に蕩け崩れた表情を晒し、それ以外の顔を忘れてしまったかのような彼に、
かつてこの村の人気者であった、
勇ましい衣装と武具に身を包んだ勝気で健気な少年狩人の面影を見る者はもはや誰もいなかった。

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