シャワーからの冷水が肌をつたって流れ落ちていく。
システムからの警告音は相変わらず私の頭の中で響いている。
事の前、人間ならば熱いシャワーを浴びるのが普通だろうけど、警報と
期待、不安、そういったデータで回路が過熱気味の私にとっては冷たい
方が都合がよい。
「あ、でも……」
……抱きしめられた時に冷たい、と思われるのは嫌だな、そう思って
最後に温度を上げて一浴びした。
「……お待たせしました」
「あ、ああ」
大きなダブルベッドの中、彼はシーツをかぶって待っていた。
「で、ドライバの構築支援ってどうやればいいんだ?」
「えっと……私のいうとおりに……その……ここを……いじったり……」
「やっぱそうだよなあ。……ふと思ったんだが」
「何ですか?」
「今までそれ、一人で出来なかったの?」
あ、それ聞きますか……。もういやぁ……。
「え……と」
「やっぱ恥ずかしかったの?」
−声紋認識。マスターからの質問回答要請−
ああ……やっぱり……。はいはい、わかりましたよぉ……。
こんな恥ずかしい事言いたくないけど、逆らってシステムに無感情に並び立てられる
よりましだわ……。今度のメンテの時に最低限の拒否権くらいは設定してもらおう……。
「……プロテクトかかってるんです」
「プロテクト?」
「私、自分で……その、いじったりできないようなプロテクトがされてるんです」
「そうなの?何で?」
「……自分の体の機能がまだ良くわかってないころの話ですけど……。下着脱いだときに
こすれてしまって……あ、気持ちいい、なんだろうこれ、っていじってみたら……」
「……そのまま止まらなくなったとか?」
「……う、はぃ……。バッテリーがあがるまで……。……わ、笑わないでください!
だからちゃんと設定しないといけないんですから!」 

「悪かった、悪かったよ。んで、まずはどうする?」
「あ……はい」

あ……マスターの結構大きいな……。
私にも「性欲」はある。もちろん人間の本能のように子孫を残すためのもの
ではなく、人間らしさを演出するための疑似本能にすぎないけれど私自身に
とっては本物と変わらない。
そのプログラムが私を「興奮」させている。
そんな中、ドライバ作成モードに移行。とたんに警告音が鳴りやんだ。
ほっと一息。
そして、ベッドの上に横になって股を開いて……股の間を指さす。
「ここ……触ってください」
「触るだけでいいの?」
「ん……とりあえずはどうやるかはお任せしますから、そっと、そっとですよ!お願いします」
「解ったよ」
「……いきなり本番突っ込んだりしたらそのまま全開で締め付けてつぶしちゃいますよ」
「……ちゃんとやります」

「あ……」
マスターの指がゆっくりと私の女性器をなぞっている。センサーからの入力が快楽
中枢にながれこむ。
きもちいい……。
さっきの暴力的な信号とも、暴走しかけながら自分自身で性器を壊しそうになった時とも
違う、穏やかな感覚に私は身を任せていた。
−潤滑液突出量レベル設定−
うっとりしかかった私を目覚めさせるように文字が視界に文字が浮かんだ。
ああ……もう。まあこのためにやってるんだからしかたないけど……。
「お……濡れてきた」
「愛液の設定をしました。……これくらいでおかしくないですか?」
「ん、もうちょっと出た方がいいかな……お、いい感じ」
彼は私の愛液を舌ですくって舐め上げる。敏感なセンサーはそれに
応えて入力値を上げていった。
−クリトリス勃起設定−
あ……あはぁ……もう……たたせちゃおう……。視線をウィンドウに送って入力。
すると、クリトリスが固くなったのが自分でも解った……。
「ひゃぁぁあ!」
高レベルの快楽入力が押さえきれず、音声デバイスが勝手に嬌声をあげる。
「歯たてちゃ……いやぁ」
「いや、急に勃つもんだから。そんなに気持ちよかった?」
「はいぃ……。もっとぉ……」 

「そかそか、よしよし」
そう言うと彼は私の乳首にしゃぶりつく。
「あ、そっちはまだ……」
ダメぇ。制御できない……。バシャッ。
「うわ、びっくりした」
乳液バルブが全開になって、私の乳首から勢い良く乳液が発射される。
「大丈夫?」
「は、はい……。後でこっちは設定します……。今は……そのまま続けて……」
「よっしゃ。……気分はどう?」
「さいこう……です……」
それを聞いた彼は笑うと、まだ乳液を垂れ流す私の乳首をまた強く吸い始める。
あ……舌の感覚と吸い上げられる刺激が……。さらに開いた手は再び股間の愛撫
を始める。
まともに認識できたのはそのあたりまでだった。
あ……データが……ぜんぶ、快楽中枢へのでーたがぁ……。あ、あ、あ、処理が……
しょりできない……。きもちよくて……きのうていし……しそう……。
「あはぁ!あ、あ、あ、あ、気持ちいいぃ!マスターぁ!マスターぁ!もっとぉ!」
なに言ってるのか……良くわからない……作りかけのデバイスドライバが……かってに
動いてるみたい……。
−快楽信号、オーバーフロー。感覚データシャットダウン−
あ……目がみえない……、音も……よくきこえない……。でも彼が……あったかい
手が……私を……。

次の瞬間、クリトリスのセンサーから今まで以上の出力が送信されて。

私は果てた。

−システムチェックOK。再起動開始。冷却システム全力稼働開始−
「ふう……はぁ……はぁ……」
肺の部分にあたるラジエーターが必死で回路の熱を下げていく。
「おーい、大丈夫か」
「あ……はい」
目が覚めるとマスターの顔が視界いっぱいに映し出された。
「イった?」
……単刀直入だなあ……。
人間で言ったら「絶頂に達してそのまま気絶」だから間違ってないけど……。
「はい……。そうです……。今ので大体刺激に対するデータ収集ができました。
ちょっと敏感すぎたかもしれませんけど、これで私が意識する事なく性器の
作動ができます」
「んじゃ……さっそく」
「……なにするんですか」
「いやあ、やっぱりこういうのはお互い気持ちよくならないとなあ」
すでにマスター自身はそそり勃っている。
……まあ、頼もうとしてた事ではあるんだけど……。
「……それはまだ、です」
「まだって?」
「まだ収集してないデータがあります。膣圧の調整、です」
「それって……」
「そうです。入れて……ください」
「だったらやるのと変わらないじゃないか」
「いいえ、私は今度は快楽中枢への入力をカットします。で、マスターは
奥までいれたらそのまま、動かさずにじっとしててください」
「……何だかなあ」
「これは私のためのデータじゃないんですよ。どうやったらマスターが気持ちよく
なれるか、そのためなんですから」
「はいはい、わかったわかった。……なんかそんなにおっぴろげられてもなあ。
ムードがどうこう言ってたのは……」
「……いいから早くいれてください」 

「はいはい、んじゃいくよ……ってなんか……その……緩くない?」
「入れやすいように開けてるんです!」
−男性器受け入れ完了。膣圧調整開始−
通常の皮膚部の数倍の感度をもつ性感帯用センサーがマスター自身のデータ
を正確に伝えてくる。……あれ?
「マスター……」
「ん……何?」
「さっきの時より柔らかい……」
「……しょうがないだろうが……」
「はーい、それじゃいきますね」
収縮開始。
「う、うわっ!」
「どですか?」
「さ、さっきのと全然違う!すげ……うっ!おわっ!」
マスターの心拍数アップ。カウパー線液分泌量増加。
とりあえずは良さそう。次は少し真ん中を締め上げるように調整してみよう。
「お、お、お、そっちも!」
そうやって私はマスターからのフィードバックを測定しながら、彼の特に感じやすい
部位を見つけだす。しかし数分がたつと彼が根を上げはじめた。
「……も、もうダメだ……。出る……」
「えーと、もうちょっとなんですけど……。もう少しでマスター用のベストパターン
が出来ますよ」
「も、もう十分すぎるくらい……後は……そのうち……調整してやるから……
出させて……」
「解りました。いいですよ。そのまま出しちゃって」
「そ、そか……っ!」
次の瞬間、私の下腹部に熱い液体が放出された。 

−デバイスドライバ作成データ収集率94%。ドライバ作成可能−
「……OKです。とりあえずのドライバ作成が可能になりました」
「そ、そうか……」
「……?どうしました?」
「あ、ああ……凄かった……。いやもう……まいった……」
それは人間以上の性器を持っているんだから当然の事だ。
……でも、私の体でマスターが気持ちよくなってくれた事は嬉しい。
「あ、ありがとうございます。それじゃ私、これからドライバ作成モード
に入りますから少し待っててください。作業時間予定は10分35秒です。
その間、内部モードに入りますから」
「解った。……で、終わったら」
「そしたらテストしましょう。動作確認」
「俺、もう今日2ラウンドやっちゃったんだよなあ」
「……マスター、私とちゃんとしたくないんですか?私はマスターのを
締めてあげればそれでいいんですね……。どうせ私なんてただのダッチ
ワイフですとも。ええ、いいんです。マスターさえ良ければ私なんて。
触っただけでイっちゃう淫乱ロボですもの。私なんてオナニーして壊れ
ちゃうのがお似合いですね。欲求不満でCPUが焼き切れるのが先かも
しれませんね……」
「……ごめんなさい、3ラウンド目、ちゃんとやらせていただきます」
「はい、よろしい。んじゃ外部機能は停止しますから……もう同じ事
しないでくださいよ」
「……そんなもったいないこと、もうしません」
「……そですか」
−内部モードに移行、デバイスドライバ作成開始− 

−システム再起動。女性器デバイスドライバ組み込み完了。
セクサロイドモード起動可能−
再起動が終わると、股間の機関が自分の一部としてはっきりと感じられるのが
解った。
「お、目が覚めたか」
「あ、はい。システムチェックOKです。んじゃ、早速お願いします」
「……元気だなあ。ま、いいや」
呆れたようにいいながら、股間に手を伸ばしてくる。
あ……。動いてる……。
今までは意識しないと動作しなかった女性器が、それ自身が意志を
持つようにひくひくと動き始めた。
「どう?異常ない?」
「はい。順調です……あ……」
「よしよし、濡れてきたね」
「……ふぅ……マスター……舌、気持ちいい……。おっぱい、触って……」
「いいのか?調整してないんじゃなかったの?」
「バルブロックしたから、乳液はでませんけど……。そっちの感覚ドライバは
出来てますから……」
「よし、んじゃ……」
マスターの手がこりこりと私の乳首をもてあそぶ。
続いて、やさしく乳房全体が揉まれていく。
と、そのあたりで快楽中枢からいままでにない感覚が私のCPUに送り込まれた。 

こ、これって……。
「あ……あ、あ、あ、ああっ!あふっ!」
「どうした?もうイっちゃった?」
「違う、違うの、マスターぁ!マスターの、マスターのが欲しいです!
入れてください……。我慢、できないよぉ……」
「あ、そういう事か……」
「ご、ごめんなさい。まだこういう感覚の移行が変みたいです。そのうち調整
しますから……今は……」
「よしよし。じゃ、いくよ」
そう言って私の頭をなでてくれる。
そして、マスターは私の性器に彼自身の先をそっと付き当てた。
「あの……そっとお願いしますね……。実質的には私、これが最初
なんですから……」
「解ってるよ。んじゃ……」
ずぶっ。
「はいっ!……は……あ、あ、ああああああああっ!」
センサーが彼の鼓動を伝えてくる。
ドライバによって変換された入力は熱い奔流となって私の全身の回路
を駆けめぐった。 

「マスターぁ……すごぉい……」
「そ、そっちも……さっきより良くなってる……。よ、よし。動くぜ……」
「あ、はい……はぁっ!あは、あは、あはぁ、あん!」
ずちゅずちゅと音をたてながら私の性器は強烈な信号を送ってくる。
それにつれて、私の意志と関係なく膣壁は締め付けを繰り返していた。
「う、く、おわ……。……ッ!うわ……俺、もう……人間じゃ……満足
できないかも……」
「あ……ふうぅ……嬉しい……私だけ……抱いてください……。あ、はぁう!
だ、ダメ!い、いく!いっちゃう!」
その時は突然やってきた。やはりまだ調整がうまくいっていないのか、急に
快楽中枢への信号が増大し始めた。
「ひゃあぁぁあああああああ!だ、ダメ!壊れる!ひっ!はぁああ!」
膨大なデータが回路に流れ込む。もう私のCPUは「快感」を感じる事以外何も機能
していない。しかし性器のドライバはその制御をそれ自身のサブCPUに切り替えて、
私の意志とは無関係に最後の一撃を彼に加えていく。
「うわあああああ!で、出る、でるぅ!」
彼の絶叫と同時に私の模造子宮は今日3度目の、そして私自身にとっては初めての精液
を受け取った。 

「あ、ああああ……熱いのが……おなかの中にぃ……はぁああああ……素敵です……。
マスターぁ……大好き……ダッチワイフでも……構いません……ずっと……そばに
いさせてください……」
「……そんな事いうなよ……。……俺の恋人だろ?」
「マスターぁ……嬉しい……」
涙を流す私の唇を、マスターがふさぐ……。
あ、幸せ……。ああ……マスターの……凄かったなぁ……。
−性的興奮値、危険値突破。感情安定の為、セクサロイドモード強制起動−
「あ、あれ?」
「?どうした?」
「マスターぁ……ごめんなさい……もう一回入れてくださいぃ……」
「え?」
「興奮しすぎて……セクサロイドモードに入っちゃった……。我慢できないよぉ……」
「あ、あのなぁ……。もう勃たないぞ……」
「え、ええ!ど、どうしよう!ちょっとくらい柔らかくても我慢するから早く!」
「指じゃダメ?」
「いやっ!ちゃんと中に出してくれなきゃやっ!」
−性器ドライバよりの入力要求増大−
「あ、あ、あはぁ!早く、はやくぅ!壊れちゃいそうですぅ! 

数時間後。
「あ……も……バッテリーが……きれちゃいますぅ……。じゅうでんをぉ……」
「お前……激しすぎ……」 

数日後。
私は眠っている博士を見ながら、花瓶の水を取り替えていた。
「……あいつはどうだったかね?」
「あ、起きてらっしゃったんですか」
「ああ、女にはしてもらったのかい?」
にやにやと笑いながら聞いてくる。私はうつむいて顔を赤らめながら
こくん、と一つ頷いた。
「そうか……。それじゃそこの棚を開けてみてくれ」
指さした先には分厚いファイルとディスクの束が入っていた。
「これは……私の……」
「そうだ、お前のメンテナンスマニュアルから設計図、回路図まで全てそこに
入っている。それをあいつに渡してくれ。そうすれば……私がいなくても、お前の
メンテや修理を任せられる」
「……博士」
「そんな顔をするな。そうそうすぐに死ぬつもりもない。しかしな、あいつもお前も
私の可愛い子供のようなものだ。……幸せに、末永く暮らして欲しいと思うのは親心
じゃないか?」
「……ありがとうございます。私、わたし……マスターも博士も……大好きです……」
「ああ、私もお前が大好きだよ。……ところで、ちゃんと気持ちは良くなれたかい?
不満があれば快楽中枢回路をもっと強烈なやつに改造してやるぞ?」
「……は、博士っ!……いえ……とっても気持ちよかったです……」

おしまい。

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・安藤 理美亜
天才ロボット工学者、堤 雅臣の作ったスーパーアンドロイド。
外見設定年齢20前後。スタイルは一言で「巨乳」。
これは乳房が潤滑液等のタンクになっているせいもあり(半分は
雅臣のシュミ)。
生まれてから数ヶ月は麗羅の所で一般常識他の教育をされていた。
その後、智宏を「マスター」に設定される。
動力源はバッテリー。1時間充電で24時間動作可能。ただし通常時の場合。
「興奮しながら激しい運動」とかを行うとあっというまに切れたりする事がある。
前作後、事の最中に機能停止して抜けなくなった事あり。それ以降、必ず充電を
確認してからするように、きつく申し渡されている。
パワーは成人男性の数倍は軽く出せるが、普段はセーブしている。
ちなみに「安藤」は「アンドロイドだから」と雅臣が十秒くらいで考えたシロモノ。
偽造戸籍あり。

・堤 智宏
理美亜のマスター。
工学部在籍中。現在、雅臣から理美亜のメンテナンス他指導を受けている最中。
メンテ失敗して壊しちゃったり、間違った回路いじって気持ちよくさせちゃったり
の毎日。

・堤 雅臣
智宏の祖父。天才工学者。とりあえず体調が回復した後、自分は麗羅に面倒を
みさせて若い二人をニヤニヤと見守っているスケベなじーさま。
麗羅や理美亜の変なオプションを作っているとかいないとか。
ちなみに麗羅のデバイスドライバ作成協力者は雅臣。

・安藤 麗羅
雅臣の作ったアンドロイド一号。教育された後、自立して生活している。
理美亜よりも長身。やっぱり巨乳。
性格は理美亜よりちょっとキツめ。ただし妹の事はとても可愛がっている。
理美亜がオナニーして暴走したのは麗羅の家で。
麗羅からドライバコピーすることも出来たが、あえてそうはしなかった。

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