スコープを覗く。
少女が一人、小型の電探を背負って辺りを見回している。
「敵発見。数一、ライザモデル。装備からして偵察兵と判断。指示求む。」
偵察兵は面倒だ。人形は特に。
こちらの位置をある程度掴んだ上での偵察か、破壊させて場所を割り出す囮か区別できない。
『近々ミラージュの侵攻が有るらしい。その下調べだろう。手早く撃ち抜いてやれ。』
やれやれ。簡易偵察なら、ラジコンで充分だろうに。
引き金を引く。
二桁行くか行かないかの小娘の頭が爆ぜ、金属や半導体を撒き散らして地面に倒れる。
ラジコンと同じ物を撒き散らして、人型をした物が倒れる。
何度撃ち抜いても慣れない、奇妙な違和感。
「頭を撃ち抜いた。後続無し。引き続き警戒する。」
『了解。後続が来たら連絡して下がれ。歩行戦車の部隊を送る。』
戦場の主力が人形と歩行戦車になっても、人間の歩兵は不要にならない。
人と同じ思考能力の人形は、歩兵十人分の働きをして歩兵千人分の金がかかる。
「…マスター。せめて、AIを避けるとかはできないんですか?」
…最も、ソレは戦場でと言った条件を付けた上でだが。
「ジャイロを撃っても下手すりゃ自爆するし、他の部位を撃っても止まるまでは時間がかかる。AIが一番マシだ。」
俺の相棒であるコイツは、クレストのエリスモデルだ。
すっかり旧式の癖して、優秀な学習機能はコイツに悲しいくらいの人間臭さを与えた。
「でも、きっと自爆しない可能性だって…」
それも、狙撃屋の相棒には不釣り合いなお人好しな人間臭さを。
敵であっても、自我のロクに無い軍用の人形であっても、コイツは同情しちまうらしい。
コイツのAIの基礎設定組んだヤツを殴りたくなるような優しさである。
「狙撃は1ショット1キル、悪くても2ショット1キル。ソレで仕留めなきゃヤバいんだ、加減なんてできない。」
神様。アンタを恨む。
心優しい俺の相棒は、俺が銃を撃つといつもこの会話を繰り返す。
優秀な学習機能もコレだけは学習してくれず、俺は何時も咎めるような視線と涙声での懇願を受けるんだ。
「もう、こんな仕事辞めて都市に帰りましょうよぉ。マスターならきっと他の仕事も…」
そうして、俺は何度繰り返したか分からないいつもの答えを返す。
「お前と結婚できる日が来たら、考えてみるさ。」
それが現実になる事を祈りながら。

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