俺は、処刑人だ。
友人達は否定するが、俺はそう思い続けている。
俺は、工場長だ。
友人達は肯定するが、俺はそう思う事が出来ない。
人型をした、人と同じように動く、されど人で無い機械。
俺は、廃棄されたそれらを処理する工場の唯一の人間であり、
確かに友人達が言うように俺は処刑人では無く工場長である。
しかし、此処で処理する存在は人に似過ぎている。
当然だ。人に似せるために作った物なのだから。
廃棄されたと怒り、引き取り先が見つかったと喜び、処分されてしまうと悲しむ。
稀に、この中に自分を機械と思いこんだ人間がいるんじゃないかと不安になるほどに人間らしい存在。
昔多くの人間が胸躍らせたソレは、今では愛玩用の哺乳類より安い存在となり果てた。
最も、コレに関しては本物の犬や猫の価値が家一軒分となった事もあるのだが…
それはさておき、そんな下手な人間より人間らしい存在と関わり続けていると、何度も奇妙な感覚に襲われる。
本当は人間など何処にも居ないのでは無いか、と。
心優しいわが友人達(半数以上は人ではないが)が聞いたならば、笑うか殴って正気に戻すか思案するだろう思考。
そんな思考を頭の片隅で揺らしながら、ゆっくり動き続けるコンベアを眺める。
『ヒトガタの機械』が『部品の集まり』に変わっていく、ベルトコンベア。
そのコンベアの横に立ち、自分と同じ存在を淡々と分解している少女達。
彼女達を眺めて居ると、微笑む者も、泣く者も、淡々と作業を続ける者もいる。
此処で働き、彼女達が何を思うのかは一人一人違うだろう。
けれど、その何人が俺の様に歪な思考を廻らせるのだろうか?
何人が、俺以上の歪んだ思考を抱えているのだろうか?
者と物との境界線は、何処に消えたか分からない。