アタシ達の朝は・・・と言うか傭兵の朝は早い。
昔の人たちが何も考えず作りまくった戦争用の自立兵器とそのプラント。
それらから街を防衛する為にも、24時間いつでも戦力は欠かせないのだ。
「・・・アリスちゃん?早く食べないと、交代の時間が来ちゃうよ?」
ちなみに、アタシが説明している間に先に朝ご飯を食べちゃったのが、
アタシの姉さん・・・と言う事になっているアンドロイドのベル。
髪の長さと性格以外、アタシと殆ど同じだから嫌になっちゃう。
何考えて似せたのかは知らないけど、誰よ。こんなにそっくりに作ったのは。
小さかったころのアタシに似てればせめてアタシが姉に・・・
・・・ん?アタシ、小さかった頃どんな格好してたかな・・・?
まぁ、いいや。考えるのやめよ。
今はとにかく、目の前のご飯を食べるだけっ!
・・・私は、朝起きていつも考える事があります。
過去の人々は、どうしてあんな兵器と、その製造プラントを作ったのでしょうか。
誰の命令も聞かず、無差別に攻撃を繰り返す狂った兵器達。
私の妹、と言う事になっているアリスの様な人にしか見えないアンドロイドを作れる人々が、
何故自分達の作った兵器によって文明のほとんどを失ってしまったのでしょうか。
「・・・アリスちゃん?早く食べないと、交代の時間が来ちゃうよ?」
とりあえず、呆けているアリスちゃんには早くご飯を食べきってもらいましょう。
朝食もこのお仕事の報酬の内。残してゴミにしてしまうのはもったいないです。
・・・体つきも顔も私そっくりなのに、性格だけは正反対。
作った人がだれかは知りませんが、多分変わった人だったんだなぁと思います。
そう言えば、アリスちゃんと会った場所を調べれば資料がきっと・・・
・・・あれ?そう言えば、アリスちゃんとはいつどこで会ったんでしたっけ・・・
うーん・・・あら。
もうこんな時間ですか・・・そろそろ行かないといけませんね。
「幾ら哨戒とはいえ、村の周囲歩くのはやめた方が良いと思うんだけどなー。」
姉さんのシュピンネ―は多脚型だから良いだろうけどアタシのファルクスは二足歩行。
しかも増設したブースターのせいでバランス悪いからめちゃくちゃ揺れる・・・
要するに、酔うのだ。歩いてると。
ブースターふかしてやや浮いてれば少しは揺れが抑えられるけど、
戦闘も無い哨戒任務でそこまで燃料使うのは普通に勿体ないしできれば歩きたくないんだよね。
・・・正直、こんな乗り心地悪い機体使いたくない。だけど兵器相手に生身なんてまず無理だし、
村の自警団が使ってる農業用重機に手が生えたようなのは無いよりマシ程度にしかならない。
中古でも、少なくとも有人兵器が無いと傭兵なんて務まらないとはいえ・・・
「あーあ、ウェアウルフが欲しかったなぁ・・・」
四足歩行の格闘戦用機体・・・手の届かない高嶺の花を思ってぼやくアタシなのであった。
「そんな事言っても、何処から来るか分からない以上全方位警戒しておかないと・・・」
砲撃戦用のシュピンネ―だけじゃ、接近されてしまった時に危険ですし。
・・・とはいえ、アリスちゃんのファルクスを見て居ると、右にふらふら左にふらふら・・・
操縦用のソフトでも買った方が良いんでしょうか?
ただ、アンドロイド用のソフトなんて街の裏路地ぐらいでしか買えませんし・・・
お金をなんに使ったかを言えないのも問題です。アリスちゃん、自分では人間のつもりですし。
ただでさえシュピンネ―は弾薬費がかさんで節約しなきゃいけないのに、
私が無駄遣いした・・・なんて事になったら多分めちゃくちゃ怒られます。
機体操縦用ソフトなんて物、安い値段じゃ買えませんし・・・
「そんなレア物買えるほど予算無いですし、諦めてください。」
見た目も良くて高性能、人気が高いですからね。アレは。