「ホシュぅ……」
 画面の向こうで、ホシュはほっと一息ついた。
 解像度も甘いディスプレイの中には、安堵の声が流れている。

 即死回避、乙。

 ホシュの好きな言葉の一つだ。
 生まれたばかりのスレッドを待ち受ける最初の難関。これを越えれば、
祭やスレ乱立などの事件が無い限りスレッドの安寧は保たれる。後は
住人の書き込みがない時、ホシュが定期的に保守してやればいい。
「ホシュ!」
 ホシュ、と全然保守する必要もないのに意味不明な発言を打ち込んで
おいて、背もたれに満足げに身を預ける。 

「あら、即死回避しましたの」
「ホシュ!」
 そこに入ってきたのは例によってホシュ子だった。どんなスレッドだかは知らないが、
ホシュ子も同じ保守仲間。即死回避を喜ぶ気持ちは良く分かる。
「じゃあ、お祝いですわね」
 ホシュ、とホシュが首を傾げると、ホシュ子は持っていた紙袋から棒のようなものを
取り出した。何かのコネクタのようだが、太めのマジックほどの棒の根本に打ってある
ロゴはホシュのドライバ一覧にも載っていないメーカーのものだ。
「オーナーから借りてきましたの。貴女の接続規格でLANに直結出来るそうですわ」
 ホシュ子が開いたマニュアルには『旧式の汎用コネクタ経由でLANケーブルに接続
できるように!』などと書いてある。正直すさまじくうさんくさかったが、まあ、そこはそれだ。
「ホシュぅ!!」
 そう言われ、ホシュもにこにこと喜んでいた。
 廃棄寸前のおんぼろアンドロイドでも、ノートPCをちまちまいじるよりはネットに直結して
保守作業をした方が断然早いに決まっている。上手くいけば、次スレ立てくらいは出来る
ようになるかもしれない。 

「で、貴女ドライバは?」
「ホシュ……ぅ」
 問いかけに首を横に振るホシュ。
 ホシュ子も聞いた事がないメーカーの、見た事もないツールのドライバだ。
当然ながら彼女より古い型のホシュが持っているはずもない。
「じゃ、これドライバですわ」
 紙袋の中からさらに小さな板きれを。黒いプラスチックで作られたそれは、
3.5インチのフロッピーディスクだ。
「ホシュぅ……」
 今ではCDに取って代わられてついぞ見かけなくなったそれを恥ずかしそうに
見つめながら、ホシュはカコカコとメモ帳にタイプする。相変わらずホシュとしか
喋れない、難儀な構造だ。
「『安全装置の都合で一人じゃインストールできない』……はぁ?」
 その発言を見て、ホシュ子も流石に声を上げた。二世代前のアンドロイドでも
一人で出来るというのに……初期型はそんなことさえ一人では出来ないのか。
「……仕方ありませんわね。大サービスですわよ?」
「ホシュぅ」
 はちみつ色の柔らかい金髪に、さらりとした銀髪が重なった。 

 うつむくホシュの唇に、薄く頬を染めたホシュ子が唇を触れ合わせたのだ。
座ったままのホシュのあごを上向かせ、桜色の唇に舌を押し込んでいく。
「ん……ほし……ゅぅ」
 くぐもったホシュの声を聞きながら、小さな歯やほんのり暖かい舌をゆっくりと
蹂躙するホシュ子。隅々まで舐め、十分に湿らせてやる。
 そっと唇を離せば、ホシュはホシュ子の唾液をこくりと飲み下した。
「あー。もう、この子は!」
「ほ、ほしゅぅぅ!」
 再び押し付けられるホシュ子の唇。またもやたっぷりと唾液を流し込まれ、
ぷちゅりと唇を離される。
「接続補助剤と金属保護剤を呑み込んでどうしますの。おバカ」
 そうぼやきつつ、フロッピーをホシュの口へ。隙間から溢れたホシュ子の唾液が
ホシュの白いワンピースに滴り落ちるが、気にした様子はない。 

「ホシュ。ドライバ、インストール開始」
 頬を赤らめているホシュの耳元に、そうコマンド。
「ほしゅぅ……」
 ホシュの瞳から輝きが消え、その代わりに耳元のLEDが数度点滅する。
再起動のLEDが付き、弛緩した唇からとろとろと唾液がこぼれ落ちた。
「……ほひゅ!」
 再起動完了。
 その様子を満足げに眺めたホシュ子は、唾液に濡れたホシュの小さな胸を
ひょいと掴んだ。さわさわと撫でさすり、硬い場所を手のひらで見つけ出す。
「ほひゅぅっ!」
 ホシュの声が、ひときわ高く鳴いた。ぷっくりと立ち上がった乳首を押し込まれ
たのだ。それと同時に、ホシュの口からドロドロに濡れたフロッピーディスクが
半分ほど吐き出される。
「それで、ドライバは?」
「ホシュ!」
 今度こそごくりと唾液を呑み込み、元気良く片手を上げてみせた。
「……で、接続はどうせ自分では出来ないのでしょう?」
 どこか愉しむようなホシュ子の声に、その手がへろへろと崩れ落ちる。
『おねがいします!』
 そう発言してぺこりと頭を下げるホシュに大げさにため息を吐いてみせると、
ホシュ子はホシュを立ち上がらせた。 

「じゃ、貴女はこれでもくわえてなさいな」
 部屋の隅のハブに持ってきたLANケーブルを繋げ、さらにコネクタにの根本に差し込む。
かりと接続されたのを確認し、ホシュの口に太いそれをぐっと押し込んだ。
「ホシュ……ぅ」
 喉元まで差し込まれたそれに軽くむせつつも、口内に残ったホシュ子の唾液を舌で懸命に
絡ませ始める。
「オーナーからお預かりした大事なコネクタですもの。傷つかないよう、よぉくお舐めなさいな」
 その様子を満足げに見つめ、ホシュ子はホシュの膝丈までのスカートをめくり上げた。
 奥にある小さな三角形の布を細い指でつ、と撫でると、薄い埃が絡み付く。
「随分と汚れてますわね……少しはクリーニングなさい。痛みますわよ」
『だって……コネクタなんか使わないと思ったから……』
 メモ帳に書かれた文字がホシュ子に見えるはずがない。それでもホシュは太いものを
くわえたまま、いつもの習慣で恥ずかしそうにそう発言する。
「まあ、カバーしてあるだけマシですけれど」
 そう言うとホシュ子はホシュの前にひざまずき、腰からショーツをすいとずり下げた。
股間がしっかり見える程度に下げておいて、ホシュ子はその奥へと顔を進める。固く合わされた
膝頭が赤い服に包まれた小振りな胸に当たり、ふにゃりと歪む。 

「きれいですわね。ほとんど使ってないのかしら」
「ほ……っ。ホシュぅ……」
 ホシュのつるりとした縦型のスリットの様子を確かめて、ホシュ子は指を口に含んだ。
ぺちゃぺちゃと唾液をたっぷり絡ませると、糸を引くそれをホシュにそっと触れさせる。
「ホシュ……ぅ……っ!」
 ぴったりと閉じたスリットに沿わせるようついと撫でれば、ホシュの口からくぐもった声が
流れた。
「こら、ホシュ……」
 薄い唾液を口からとろとろとホシュのスリットに直接垂らしつつ、ホシュに声を荒げる。
ホシュ子の唾液はクリーニング液やグリスの意味合いの強いものだ。こうして塗り広げる
のも、自分では濡らせないホシュのためなのに……。
「ホシュ……ホっシュぅ……」
 軽くこすってやるたびにホシュは甘く鳴き、恥ずかしそうに膝をすり合わせる。その度に
ホシュ子の胸元が揺さぶられ、ホシュ子の頬にも淡い朱が浮かんでいく。
「ホシュぅ!」
 ぺちゃりとした感触に、ホシュは思わず身を震わせた。
 ホシュ子の舌が、ホシュのスリットに直接触れたのだ。
「接続不良を起こしても良くて?」
 蛍光灯を弾いててらてらと光るスリットに必要以上の唾液をまぶし付け、奥まで舌を差し
込んでいく。こぼれ落ちた透明な液体が、すぐ下に張られたショーツの網に絡め取られる。 

「ほっ……ひゅぅぅっ!」
 ぬめ付く感触が、今度はずるずると吸い上げられた。股間のドライブが
電源を落とされぬまま抜かれるような感触に、腰から力が抜けそうになる。
「そうそう。業務はお続けになって結構ですわよ。お忙しいでしょう?」
 淡く濁った液体をごくりと嚥下し、ホシュ子はそう言って薄く笑った。濡れた
唇をぺろりとひと舐めし、再びホシュのスリットへ顔を埋める。薄く口を
開いているが、まだまだ入りそうにない。
「ホシュぅ!?」
 時計を見れば、もう業務時間だった。高性能のホシュ子はともかく、
いちいち作業の遅いホシュでは時間をフルに使わないと無数のスレッドを
保守しきれない。
「ほ……っ」
 黒く太いコネクタを頬張ったまま。デスクの上のノートを引き寄せ、崩れ
そうな体を両手で支えつつ、ホシュはキーボードを打ち始めた。舌で舐め
られる度に打鍵位置を間違え、唇で吸われる度にマウスの指示位置が
ずれる。
「ほしゅ……ぅ」
 打ちすぎた発言をバックスペースで消しながら、甘く喘ぐホシュ。瞳は
とろんと潤み、ディスプレイの文字すらもよく見えなくなっている。もちろん、
内容の把握など出来ようはずもない。
 埃よけのフィルムが張られたキーボードの上に、口から溢れたホシュ子の
唾液がぱたぱたと滴り落ちる。
「ほ……しゅぅ……」

−多重書き込みです! あと(以下略)−
−多重書き込みです! あと(以下略)−
−多重書き込みです! あと(以下略)−
−多重書き込みです! あと(以下略)−

 警告メッセージも読みとれず、ひたすらにホシュと書き込み、発言キーを
クリックするホシュ。
 アカ停止を食らう寸前で、ホシュ子から次の指示が来た。 

「じゃ、挿れますわよ」
「ほっ……」
 舌が離れ、口のコネクタも引き抜かれる。一息ついたのも束の間。
「しゅぅぅぅっっ!」
 同じ場所に、もっと硬い感触が押し入ってきた。太く、固い……ホシュ子の
シルバーブロンドの向こうに見えるそれは、長い尾を曳いた真っ黒いコネクタだ。
「あら、もっと柔らかくした方がよかったかしら?」
 結合部にとろとろと唾液を滴らせながら、銀髪の娘は静かに笑う。ひねり
込むように、ずぶずぶとコネクタを押し込んでいく。
「ほしゅぅ……」
 ついにホシュの膝から力が抜けた。白く塗られた床の上に、くてんと力なく
崩折れる。発言欄に打ち込まれた文字列は、ホシュどころか意味すら成して
いない。
「まあ。並列処理も出来ないなんて、悪い子だこと」
 くすりと笑い、天井を向いているコネクタの根本を下に向けてゆっくりと押し込んで
いく。重量がかかるぶん、立ったままよりもすんなりとそれを受け入れるホシュの
スリット。
「ほ……ゅぅ……」
 ひくひくとうごめくそれが、ついに根本までコネクタを呑み込んだ。
「ホシュ。接続開始、ネットワーク設定はデフォルトで」
 頬を赤らめて喘いでいるホシュにゆっくりと覆い被さり、揺れる耳元にそうコマンド。
「あ……ぁはあ……っ! ほっ……ほゅぅうぅぅぅぅゅっ!」
 流し込まれるコマンドの群れに、ホシュの小さな身体ががくがくと揺れた。口から
漏れる意味を成さない言葉は、機械を支配する、人間には聞き取れない言葉の
連なりだ。
「……ほ……ホシュぅ……」
 あっという間にシステムダウン。 

「……あら?」
 ぐったりと倒れ込んだホシュからとりあえずコネクタを引き抜き、放り投げてあった
マニュアルを手に取る。ぱらぱらとめくると、ある項目が目に入った。

−以下の機種には対応しておりません−

「……ホシュ」
 そこに書かれていたのは、間違いなくホシュの型式番号。
 そりゃ、エラーも出るはずだ。
「……まあ、こういう事も、ありますわよね」
 いそいそとホシュの乱れた着衣を整えて証拠を消し、ホシュ子は生活感のない
部屋を後にするのだった。