「で?」 俺が顎を上げて促すとテーブルの上の彼女は話を続けた。 「は、はい。今日より啓介さまの、お、お世話させていただきます……」 顔を俯かせ、か細い声をあげる。 「ぶっ!」 テーブルの向かい側についていた妹が吹き出し、後ろを向いて咳き込んでいる。 テーブルの上の彼女はわずか身長160mm。外見は俺の好みにど真ん中ストレートだ。 ……リアルサイズであればだが。 テーブルには俺と妹の他に両親がついている。 そして部屋の片隅に寝かされたメイドロボ。 親父が『人の姿をした物の頭部が壊れていてるのを見るのは気味が悪い。』と言って その頭部は白い布で覆われている。が、仰向けに寝た人の姿の頭部を白い布で 被っているその外見は返ってシャレにならない雰囲気を醸し出していた。 「で、お前は直るのか?」 もう一度俺は彼女を促す。 「はいっ!コア構想に基づいてボディの各部はユニット化されていますから 頭部ユニットをご購入いただければ今すぐにでも。35万前後かかるかと思いますが」 「んな金があるかぁっ!」 彼女の言葉をさえぎった俺の大声に驚いたのか彼女はテーブルの上で尻餅をついた。 「そうだ。保障期間ってもんがあるだろ。それで修理できないか?」 テーブルに手をついて期待をもって迫る俺、しかし直ぐに打ち消される。 「説明書にもありますが、保障期間での無償修理の対象は消耗品と外皮に限られているんです。」 彼女は乱れたスカートを直しつつ、座ったまま申し訳なさそうに頭を下げた。 「兄貴。いい加減諦めたら?壊れちゃったもんはしょうがないんだしさ。」 彼女の向こう側から妹がニヤニヤ顔で提案する。 いや、こいつはただ楽しんでいるだけだ。だが、親父は素で同意らしい。 「そうだな。どっちにしても啓介はもう金ないんだろう?」 そう。俺は彼女を購入するために相当の金策を強いたのだ。もはや35万どころか5万だって出せない。 「よ、よろしくお願いします。」 彼女はそっと両手でテーブルの上の人差し指に触れた。 「…っだーっ!」 進退極まった俺は叫び声を上げてテーブルの上の彼女を引っつかみ、 更に部屋の隅に転がしてある彼女の外装を抱え上げると自分の部屋へと走っていた。 彼女が重かったのか、俺の目からは汗が流れていた。