部屋に雪崩れこんだ俺は脚で部屋のドアを蹴り閉め、
両腕の中にいるそれを倒れこむようにベッドの上に下ろした。
正直重かった。肩で息をして体中から薄らと汗を掻いていた。
「あ、あの、啓介さま…」
まだそれの体の下に通した腕の向こう側、俺の右手の中から彼女の声がする。
「啓介さま…つ、つぶれちゃいます…」
「うあっ!」
つぶれるという表現に驚いて思った以上に強い力で握り締めていた手を
慌てて放す。これ以上つぶれられては困るのだ。
俺はその外装の下から腕を抜いて、そのままベッドの前にへたりこんだ。
外装は殆どそのままだ。顔も、運が良かったのか頑丈だったのか傷一つ無い。
ただ、その後頭部だけは滅茶苦茶だった。
番は折れたり曲がったりしているし。フレームも歪んでいるらしい。
外れた後頭部は…見当たらない。居間に置いてきてしまったらしい。
そういえば彼女の持ってきた旅行鞄も置いてきてしまった。
「くそ…なんだってこんな…」
惨状をみて俺は呻いた。
「あの…すみません。私がもう少ししっかりしていれば…」
見れば彼女は俺がベッドの上に寝かせた外装の上に座って肩を落としている。
俺が握り締めていたために乱れた服もそのままだった。
だが、俺にはそんな彼女に優しい言葉をかけてやる余裕など無かった。
「そ、そうだよ。何でこんな事になるんだよ…」
「す、すみませんっ……」
そんな俺の呻きに、彼女は一瞬肩を震わせ、そのあとますます肩を落とす。
「もう少しで…俺の悲願が達成するところだったんだぞ…」
「悲願…ですか?」
「そうだよっ!ついに俺だけのロボ子を手に入れて!もう少しだったんだ!」
ついに堰を切ったように、俺は洗いざらいぶちまけていた。
「朝優しく起こしてもらったり、勉強中に珈琲なんか持ってきてもらったり!
あまつさえ休みには一緒に買い物に行ったりだな!ついでにその帰りに
ちょっと寄り道して帰ったりとかっ!そんな甘く甘酸っぱい
ロボ子との生活がだなぁっ!」
「あ、あのっ!」
俺の言葉をさえぎり彼女は声を張り上げた。
少し震えながらその小さな身体が、大きな身体の上で立ち上がっていた。
「わ、私、がんばりますからっ!」
皺になった服の上の小さな顔を、同じくらいしわくちゃにして泣いていた。
言いたい事はまだまだあったのに、そんな彼女を見た途端、
俺は何も言えなくなっていた。

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