彼女はPCの前で顔を赤らめながら戸惑っていた。
「お姉様・・・・祐子お姉様がこんなことを・・・(///)」 春菜のPCには、姉の祐子が
 自室でしていた行為の検索結果が表示されている。

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イメージ    自慰 の検索結果 約 3,310 件中 1 - 20 件目 (0.12 秒)

 (以下略)
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”自慰”という言葉の意味そのものは彼女も知っていた・・・・いや、むしろ『データ
 ベースに記述があった』という言い方が正確か。イメージ検索で表示されている
 女性は、大半が祐子と同じ表情になっている。苦悶?いや、違う。何かを恥じる
 表情と、快感を受け入れる喜びの表情が交じり合った複雑な表情。それは、
 かつて彼女のもう一人の姉・・アリサが浮かべていた表情と同じであった。

「顔だけではないわ・・・声も・・・」 それは昨夜遅く、試験勉強をしている筈の
 祐子にコーヒーの差し入れをもっていこうとした時のこと。



”っ・・・ ぁっ・・・ ぁん・・・ ぁっ・・・・”

 祐子の部屋のドアをノックしようとした春菜の聴覚センサーに、艶めかしい姉の
 声の反応があった。それは微かな音量であったが、メイドロボの春菜には
 はっきりと聞こえる。
「お姉様?」 その声の調子には聞き覚えがある。確か、アリサお姉様もあの時、
 こんな声で・・・・。興味がわいた春菜はドアに耳を近づけてみる。

”・・るな・・・・はる・・な・・・もっと・・”
 途切れ途切れで何を言ってるのかよく判らないのだが、少なくとも自分の名前を
 呼んでいることは理解できる。ふとドアを見ると、完全に締まっていない。2cm
 程度の隙間があいているので、中の様子を覗ける状態だ。
「・・・お姉様、一体何を・・・」
 そっと隙間をのぞき込んだ春菜の論理回路に衝撃の閃光が走る。
「お姉様!?」
 そこには、忘れもしない・・バスの中でアリサが浮かべていたのと同じ表情で
 自身の性器を弄くっている祐子の姿があった。思わず、コーヒーを載せていた
 お盆を落としそうになる。
「っ・・!」 カチャッと小さな音を立てたカップをおさえ、事無きを得る。慌てて
 部屋の中を確認してみると・・・余程夢中になっているのか、姉は気付くことも
 なく”行為”に勤しんでいる。
 胸をなでおろした春菜は音をたてないよう、お盆をそっと置いた。
”これで大丈夫よね” 自分でも何が大丈夫かよくわからなかったが、そんなことは
 どうでもいい。あの表情、この声・・・詳しいことは判らないけど、あの時のアリサお姉様と
 同じ状態に祐子お姉様が陥っている可能性は高い。であれば、記録すべし!
 春菜の動画記録モードが作動開始した。ほんの僅かな挙動も見逃すまいと、
 画質・音声の記録モードは共に最高画質にセット。メモリも不要なファイルを捨て、
 コマ落ちしないように準備完了。さて・・

 春菜の姉・・・もとい、メイドロボ「春菜」のマスターである祐子はベッドに寝そ
 べっていた。長袖のトレーナーに少し短めのスカートという地味な格好だが、
 今の祐子は誰にも見せられない・・見られたくない筈の乱れっぷりだ。
 トレーナーの裾は鳩尾より少し上まで捲りあげられ、その隙間から左手が
 突っ込まれている。その行き先は・・厚手の生地に遮られて見えないが、その
 動き具合からして乳房であろうと推測できる。乳房付近の盛り上がりはリズム
 よく動き続けていた。そして一方の下半身であるが、スカートは最早その
 役割を果たさない状態までたくし上げられていた。部屋のドアの方向からは、
 まさに両足がM字状に開いてるように見える。祐子はその真ん中に位置する
 草叢へ右手をあてがい、乳房を揉みあげている左手より繊細に、かつ早い
 リズムで「なにか」をもてあそんでいるようだ。

「ぁ・・・はる・・な・・・・・はるな・・・・」 祐子は妹の名前を呼びながら、自分の
 妹の顔を思い浮かべていた。妹の手が、わたしの秘所を優しくもて遊んで
 いる。それは、祐子が知り得る知識内では有り得ないことだった。なぜなら、
 今の春菜はメイドロボ・・・ロボットはえっちなんて出来っこない。あの恋しい
 目も、愛おしい手も、私に向けられる事なんて有り得ないんだわ・・・・。
 そう思えば思うほど、彼女の想いは逆に強くなってきたのだ。「人間の春菜」が
 まだ生きていた頃の思い出と、「今の春菜」の顔がオーバーラップする。
 切ない・・・切ないよ・・・春菜・・・わたし、貴女のこと・・・・
 先日、春菜のメンテナンスに付き合った時の事を思い出した。胸部のハッチを
 開けると、自分の妹が「ロボット」であるという事を嫌でも認識させられる。

 でも・・・その姿を見た時、私のあそこは・・濡れた。衝撃を受けたのだ。今までに
 自分でも感じたことのない、性的な衝動を。理由はわからない・・・そういえば
 春菜、ちょっと嫌がってたよね・・・あの表情を見た瞬間に、わたしのあそこは・・

キュン

「ひゃんっ」 妹の顔と、妹の駆動機構のイメージが重なった瞬間、祐子の秘所は
 更に敏感に反応した。「わたし・・おかしいかも・・・」 祐子の思いとは無関係に、
 彼女の手の動きが更に激しくなる。

「お姉様の動きが激しくなってきた・・・」 ドアの隙間から姉の様子を記録し続けて
 いる春菜。ふと、自分の股間に違和感があることをセンサーが告げてきた。
”・・・?” 記録を続けながら、手で股間を触ってみた。
「濡れてる」 指先の湿度センサが、ショーツの股間部分に予期せぬ水分が
 存在することを認識した。「液体が、私のあそこから分泌されている?」
 ローカルのデータベース検索。自身のリファレンスマニュアルに、合致されると
 思われる記述を発見。
「愛液 関連事項:人工バルトリン線液ポンプ、膣液ジェネレータ」
 春菜は愛液とその関連事項について、ローカルデータベースで全てを調査する。

”性的興奮? 快楽中枢デバイス制限未解除??” 今自分の身体に起こっている
 事が、春菜のメモリーに”知識”として記憶されていく。

 ふと祐子の動きが一層激しくなったかと思った瞬間、歓喜とも悲鳴ともとれる
 叫び声(とはいうものの、これも春菜でなければ聞き取れないぐらいだが)を
 上げ、姉は身体を目一杯そらした。
「お姉様!」 叫びそうになる自分を抑える春菜。あの挙動は・・・さっきデータ
 ベースにもあった『絶頂に達した瞬間』の挙動と一致する。そういえばアリサ
 お姉様も同じような動きをしてたっけ。

 次の瞬間、姉の身体からは全ての力が抜け、人形のように動かなくなって
 しまった。でも、息遣いだけは荒い。表情をズームアップすると、涙が流れた
 跡も見える・・・。行為の全てが終わった事を感じた春菜は記録モードを
 終了し、コーヒーカップが載せられたお盆を床から拾い上げると、そのまま
 音をたてないよう、静かに自室へ戻って行った。

”お姉様達の表情・・・声・・・” 自室に戻った春菜は、ついさっき記録したばかりの
 祐子の動画と、アリサの動画を比較している・・・何度も何度も繰り返し。
”苦しそうで恥ずかしそうだけど・・・” 最新のパターン認識ロジックを搭載している
 春菜のイメージ回路は、二人の姉に共通しているパターンを見いだした。
 『快楽』 そうだ、これは快楽を感じている表情だ。自分が未だに経験していない、
 未知なる感情表現。
 快楽そのものは、今までに何回も感じたことがある。お姉様達が喜ぶ顔、そして
 「あそこ」を刺激されている時の顔を見た時に・・・。自分の下着が濡れた原因で
 ある愛液が分泌されたのも、快楽を感じた事が原因であることは明らかだ。
 でも・・・

”自分の身体に直接受けた刺激で、快楽を感じたことはないわ。” あのバスの
 時もそうだった。アリサお姉様は明らかに快楽を感じているようだったが、自分は
 未知のデータを処理しきれず、感情回路が暴走しそうになっただけ。

 わたしも、姉と同じようになりたい。 姉と一緒に快楽を味わいたい。そして・・

 きゅっと胸が締めつけられると同時に、乾きかけていたショーツの股間が
 再び湿るのを感じた。寂しいことに、湿るだけで「快楽」はなかったが。

”・・・いいの。必ず、感じてみせる。そして、お姉様と『快楽』を共有するのよ”
 強い決意を胸に秘めつつ、冷えたコーヒーを片づけるために部屋を
 出た春菜。

「あら、春菜・・・まだ起きてたの?」 ばったりと姉にはちあわせ。
「お、お姉様!! その、今からコーヒーを持って行こうと思って!!」
「ありがと、じゃ、ここで・・」 慌てる春菜を尻目に、コーヒーカップに手を
 かけようとする祐子。
「あ、だめ!! ちょっと、砂糖の分量間違ったみたいだから、入れ直してきます!」
 冷えてるコーヒーは怪しまれる。そう判断した春菜は、姉がコーヒーカップを
 とる寸前に踵を返し、ダイニングへ駆けていった。

「・・・どうしたのかしら」 己の自慰が最後まで記録されているとは思っていない
 ようだ。「まぁ、いいか・・・なんだか今の春菜、可愛かったし」
 祐子は頬を少し赤らめつつ、部屋に戻って行った。


 そして、いつものように朝が来る・・。

(続く)