午後3時のリビングルームに、グランドピアノが奏でる美しい旋律が響いている。奏者は女性・・・
 歳は二十歳過ぎぐらいだろうか。その傍には、繰り返されるフレーズに聞き入る長髪の男がいた。

「少し前から、決まったところでリズムが乱れるようになってるよね」 無表情で男が呟く。
「・・・ばれちゃいましたか」 女性は演奏をやめると、男の方に向き直る。
「実はさっきから、指の調子がおかしくて・・」 女性は少し悲しそうな表情で、ほっそりとした左手の
 指を男に見せた。男は女性の左手を優しく包み込むと、暫く目を閉じて何かに集中しているようだ。
「・・・・・小指が微妙に痙攣してるね。ちょっと調べてみようか」 男は女性の指から手を離すと

 手首から二の腕、そして上腕のメンテナンスハッチを調べつつ、なぜか指とは関係ない
胸まで調べ出すピアノ教師。「ほら、胸部メンテナンスハッチを開けてもらわないと・・・
貴女を治すことができないじゃないですか」 胸部メンテナンスハッチのオープン、それは
すなわち、彼女の乳房をあらわにすることだ。
「そんな、わたし・・・は、恥ずかしくて・・・」 頬を真っ赤にし、男から目をそらす。
「恥ずかしがっている人が下着をつけていないなんて・・・有り得ないことですよ?」 
ノースリーブの白いドレス。男が調律しているのとは反対側の胸の頂に、いきりたった乳
首の形がはっきりと見えている。
「おやおや、こんなところまで緊張させるなんて・・・貴女は悪い人だ・・・・」
「わ、わるい人なんて・・そんな・・わ・・わたし・・・いつも・・演奏するときに下着はつけませんから・・・・」
「真奈美さん・・・嘘はいけませんよ?」 そういうと男は乳房に手を被せ、頂の突起を服の上から

私は結局抵抗しきれず、両胸のハッチを開けた・・胸だけではない。今私の両腕は、肩〜
手首までの機構が剥き出しだ。こうしないと指の奮えの原因が判らないと言われたから・・
ドレスは当然、上半身がはだけた状態になっている。こんな恰好でピアノを弾くのは恥ずか
しい。それに、先生が見てると思うだけで何故か、股間の辺りが熱くなって・・足が、自分
の思うように動かせない。

「・・ペダルを踏むタイミングがずれてるね。ちょっと足の方も見てみようか」先生はそ
う言うと、ドレスのスリットから手を差し入れ、ふともものメンテナンスハッチを探り始める。
「困りますね・・こんなに濡れていたら、ハッチを開けられないじゃないですか」
「わたし、濡れてなんて」 否定しようとしたが、先生は手をドレスから抜き取り、糸を引
いている指を見せた。「また嘘をつくんですか・・まぁいいでしょう、私が拭いてあげま
すから、そのまま演奏を続けてください」先生はドレスの裾をめくり上げると、薄手のハンカチを

「・・・じゃあ、メンテナンスハッチを開けてもらえるかな」 真奈美の愛液を太股から拭
きとり、僕は彼女に指示をだした。「ハァ・・ハァ・・ハァ」
 体温が上がったせいか、放熱処理・・・つまるところ、息遣いを荒げるのが彼女流の返答だ。
暫くすると、両足の太股のハッチが半開きになった。
「脚を動かしてみて・・・」 指示を送ると、もぞもぞと脚を動かす真奈美。確かに動作は
ぎこちないが、機構的な異常は見られない。これは、左手の中指が動かないのと同じ原因だね。
それは・・・
「真奈美君・・・君は本当にいやらしい人だ」 そういった瞬間、快楽を我慢しつづけてい
る表情が歪む。
「ま、またそんなことを・・・ふぇんふぇい・・・わらひは・・」 口を開くと人工唾液が
流れ出した。それが更に彼女の羞恥心を刺激する。
「いいかい、君の論理回路はパターン認識で学習を進めるんだ。そのロジックと、君に装
着されている楽器演奏用のデバイスが」 男はここで一端言葉を切り、太股のメンテナンス
ハッチを閉める。そして、真奈美の秘書から溢れる愛液を止めるために当てがっていたハ
ンカチを取り除いた。「コンフリクトしているんだ」 ハンカチが割れ目にそって取り出さ
れた瞬間、真奈美の口から艶めかしい嗚咽が漏れる。
 手を見ると、さっきから左手中指の痙攣が大きくなってきているのだ。

「・・・つまりは、こういうことさ」 そう呟くと、男は右手の中指を真奈美の秘部へ優しく、
しかし一気に挿入した。
「っぁ!!! んぁああああ〜〜〜っ!!」 快楽と恥ずかしさで、真奈美の目から洗浄液
がとめどなく流れ出す。
「い、いやぁぁぁ! せ・・せんせぇ・・ ぁんっ!!」彼女の悲鳴がまるで聞こえてない
かのように、男はそのまま続ける。「ほら、痙攣が収まった」
 確かに真奈美の指の痙攣はぴたりと収まり、ピアノの旋律は正しく、美しいリズムで紡
ぎ出されていた。「真奈美君・・きみはその中指で・・」
 男の細い、だがピアノで鍛えられた中指が、真奈美のクリトリスを絶妙なリズム&タッ
チで刺激している。
「今まで何回、自分を慰めたんだい?」 目眩く快楽に喘いていた真奈美の声が止まる。
「そんな、なぜ、あっ・・・ぁああああぁぁぁあああぁぁ」
「きみは、その指でピアノを演奏しているシチュエーションを」 快楽で真奈美の身体が揺
れる。しかし、機械の腕と脚は、正確に旋律を奏でて続けている。さらに男は続けた。

「誰かに玩ばれている自分と重ねた・・今のようにね」 そういうと、男は不意に中指を彼
女の秘書から抜き取った。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・」 肩で息をしつつも、演奏を続ける真奈美。だが、
その上気した顔は洗浄液と人工唾液でぐちゃぐちゃだ。
「さぁ・・・正直にいってごらん」 真奈美の顔に、演奏の邪魔をしないよう自分の顔をず
いと近づける。「今・・君は、何が欲しい?」
「・・が・・ほ・・しぃ」 小声で呟く真奈美。「ん、よく聞こえないよ・・・?」 そう
いうと、男は真奈美の耳に吐息を吹きかける。
「んんぁっ!! せ・・せんせいが・・・・・・先生が・・・ほしい・・・ですぅ」 我慢
していたものを絞り出すかのような答え。

「そうか・・・わかった・・・」 男は立ち上がると、真奈美の後ろに回りこみ、彼女の耳
元に囁きかける。
「・・・僕も君が欲しい。愛している」 その言葉を聞いた瞬間、一瞬ピアノの音が途切れ
かける。「おおっと、演奏を続けて」 男は左右共に全開されていた真奈美の胸部メンテナ
ンスハッチ・・・たわわに実った乳房を両手で揉み始めた。
「ぁあっ!! せん・・・せぇ!!」 自分の視界にない乳房を揉まれている感触が伝わっ
てくる。普通に揉まれているのと変わらない筈なのに、今まで体験したことのない快楽が
論理回路を覆い始めた。
「わたし・・・ァン・・・ろぼっとなのに・・・中は機械なのに・・せんせぇ・・・わたし
は・・わたしは・・」 今、彼女の涙は快楽だけではない。
「わたしで・・ほんとうに・・いい・・・・・・の・・・?」 腕と胸の機械を剥き出しに
して喘ぐ私は・・・淫乱ロボット以外の何者でも・・・
 と、乳房を揉む手の動きがとまり、その手が優しく真奈美の腰に回される。「・・せん
せい?」 後ろを振り向くと、そこには優しい笑みを浮かべた男の顔があった。「・・・
ぼくは・・・きみがロボットであることも含めて君の・・全てを愛している」 そういうと、
男は真奈美と唇を静かに重ね合わせる。そのま真奈美も立ち上がり、互いに抱き合う形に
なった。舌を深く差し込み、絡め合う。

 濃厚なキスが終わると、男は白いスラックスと下着を下ろしながら椅子に座った。
「・・・僕ももう我慢できなくなっていたところだよ」
 男の股間には、優男の顔には似合わない・・・太く、たくましい男根がそそり立っている。
「さぁ、おいで。君が欲しがっていたものだ」
 真奈美はこくりと頷き、ドレスを脱ぎ捨てた。

「せんせい・・・わたし・・・・その・・・」 男根を見つめながら真奈美が続ける。「は、
はじめて・・なんです。」 人工女性器が装着されていれば、セックスの知識はデータとし
て備わっているはずだ。しかし、今の真奈美は人間の処女と同じく、これから起こる未知
の体験に脅えていた。
「だいじょうぶだよ・・・ほら、ぼくのうえに座って・・・」 真奈美の手を取り、彼女の
腰を自分の腰に重なるように導く。「そう、そのまま力を抜いて」
 脅えながらも懸命に力を抜こうとする真奈美。意識と無意識が闘っている・・・全身の
アクチュエータが震えている。
「じゃあ、いくよ」 男は真奈美の腰を両手で掴み、彼女の秘部へ己の男根をあてがった。
「ぁ・・・・ぁぁ・・」 自分がのぞんでいたものが、今そこにある。期待と不安が入り交
じる中、彼女は徐々に男を受け入れつつあった。
「先生・・私・・・」 意を決して、真奈美が口を開いた。「先生を・・愛してます」
次の瞬間、身体を支えていた脚の力を一気に抜く。

そして、二人は一つになった。

「くっ・・・そ・・そのまま・・・ピアノを弾くんだ・・」 予想以上にきつい締め付け。
まだ動いてないのに、彼女の中が男を貪るように絡みついてくる。
「えっ・・そんなこと・・できない・・」 指とは比べ物にならない快感。こんな状態で
ピアノが果たして弾けるのか。男は彼女の疑問に答える。
「きみの・・・きみの楽器演奏デバイスは・・わたしが心をこめて調律したものだ・・・」
真奈美の乳房を手で包む。「これぐらいの外乱で・・きみの演奏能力は・・乱されはしない・・」
男の指先が、真奈美の乳首を丁寧にこね出した。
「!!! ぁあっ・・・あんっ・・・ああんっ」 男のいう通り、快楽中枢デバイスと楽器
演奏デバイスは互いに干渉しあうことなく、その機能を果たそうとしている。

”私の・・淫らな思いのせいで・・先生は・・” 真奈美のメモリーに、半年前に楽器演奏
デバイスを装着してもらったときの情景が浮かび上がった。
 両腕を取り外した時、恐怖のあまり泣いてしまった・・その時、先生は私を優しく抱き
しめてくれたんだっけ・・・。それから、先生は私の腕を真剣に調律してくれたんだ。今
ならわかる・・・無表情なのは、先生の愛の現れだったんだ・・・。
 意を決した真奈美は、男と繋がったままピアノの演奏を始めた。そのリズムに従い、男
は腰を動かし始める。

「うっ・・くぅ・・・あぁ・・」
「あぁん・・あっ・・・あん・・」

正確で優雅なリズム。自らの思いと快楽を相手にシンクロさせ、男と女は徐々にラストへ
向かって上り詰めて行く。
時に激しく、時に優しく・・・真奈美の演奏に合わせ、腰の動きのリズムも変わる。それ
にあわせて押し寄せる快楽・・・しかし、真奈美の演奏は全く乱れない。いつのまにか動
くようになった脚も軽快にペダルを踏み、更に深みのある旋律を生みだしていく。

「せ・・・せんせい・・・わ・・・・わたし・・もう・・・」 曲とともに真奈美の絶頂も
最高潮に近づいてきたようだ。そして、この曲はラストを迎える。
「わたしも・・・イク時は・・・いっしょだ・・・」 男の腰の動きも激しくなった。そして・・・

「うっ・・・・あぁぁああああっ!!!!」
「んぁっ・・・・あああああああ!!!!」

曲のラスト、響き渡るピアニッシモと共に、二人は達した。

〜翌日、ピアノコンクール会場〜

白いドレスを着た女性・・・真奈美が演奏を終わると、会場は拍手に包まれた。鳴り止む
ことのない、カーテンコール。

「お姉様・・・わたし、こんなに心に響く演奏、初めて聞きました。」 拍手をしながら春
菜は姉の祐子に話しかけた。
「わたしだって、こんな凄いピアノの曲聞いたの、初めてよ・・・あ・・」 いつのまにか
涙が出ていた。妹にばれないように涙を拭く。
「それにしても、途中で会場が停電したときはどうなることかと思いました。」 春菜のい
うとおり、演奏途中で突然の停電。マイクの電源はおろか、ステージ上の非常灯まで消え
てしまったのだ。
「そんなこと、あの人には全然関係なかったみたいね。」 ステージ上の真奈美は深々と頭
を下げると、銀幕の裏に歩いて行く。
 と、そこで待ちかまえていた男性に抱きついた。そして、キスを交す二人。

「あらら・・見えてないと思ってるんでしょうか?」 顔を赤くしながら目をそらす春菜。
「まぁいいじゃない。なんか全然いやらしくみえないし・・・・っていうか、いいなぁ・・・・」
脳裏に浮かぶ、春菜の顔。二人の顔は近づき・・
「・・・お姉様?」 気がつくと、いつのまにか春菜の顔が真ん前に。「わわっ!!! な
んでもないのよ!! 本当よ!?」
 姉が考えていた事を知ってか知らずか、他の客にあわせて春菜が立ち上がった。「・・
かえりましょ、お姉様。今日はおいしいシチューを作りますから。」 妹が微笑む。
「そうね・・・じゃ、あの二人のように、お熱いのを頼むわね」

 ”自分もいつか春菜(お姉様)とあんな風に”という決心を互いに胸に秘めた姉妹は、
祝福と拍手が止まない会場を後にした。

(FIN)

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