今から40年くらい前。『萌え』という言葉が世間では使われていたらしい。
 その時代に作られた言葉。ツンデレ。
 最近では昔の本とかを見るくらいでしか絶対に出てこない言葉。
 俺も昔の文学が得意なヤツが友達に居なかったら絶対に知る事は無かったと思う。
「はい。コーヒー。まったく、充電中だったんだからそれくらい自分でやってよね」
 一人の少女が俺の部屋に入ってきて、机の上にコーヒーを置く。
 金髪ツインテール。切れ長のエメラルドブルーの瞳。スカートの短いエプロンドレス。
 彼女は俺の家のメイドだ。名前はシオン。
「シオン」
「なによ!充電するって言ってるでしょ!!」
「ありがとう」
「う・・・ばっかじゃないの。私がアンタにこういうことするのはそうプログラムされてるから。じゃあね!」
 シオンはそう早口にまくし立てると部屋を早足で出て行く。
 充電。プログラム。
 そう、彼女はロボットだ。それもまだ市場には出て居ない最新型の。
「あつっ。あいつ。また温度調整間違えたな」
 怒りっぽくて、主人を主人と思わないで、しかもたまにドジをする。
 市場に出ても誰も買わないだろ。
 シオンは俺の友人の祖父がプログラムしたものだ。
 その人は若い頃にツンデレに関して色々と本を出したりゲームを作ったらしい。
 その知識を生かして出来たメイドロボなんだけど。
「不良娘」
 俺がポツリと言うと、勢いよくドアが開く。
 そして、そこには怒りの形相で俺を睨むシオンの姿が。
「なんですってぇぇぇぇ!!」
「お前、充電してたんじゃないのか!?」
「うっさい!問答無用!!死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 俺はそんなシオンのテストユーザに選ばれた男。睦月コーマ、16歳。
 多分、幸運だと思う。

「はい。朝食」
 シオンはテーブルにトーストとサラダを並べる。
「もう少し愛想よく出来ないのか?」
「はぁ?」
 今朝からニコリともしない。
 機嫌がすこぶる悪そうだ。
「ぐだぐだしゃべってないで食べて。時間無いんだし」
「へ?あぁ、そっか。今日は月に一度のメンスぐへぁ」
 俺の顔面に拳がつき刺さる。
「メ・ン・テ・ナ・ン・ス!!」
 一応シオンはテスト用の筐体らしく、月に一度はメンテナンスを受ける事になっている。
 今回でまだ2回目だが。
 けど、別に本物の女みたくそれで機嫌悪くなったりしなくてもいいと思うんだけど。
「はぁ」
「なんだ。悩みか?」
「あんの親父ども、データ分析だとか言って私を裸にして全身くまなく観察するのよ!!セクハラよセクハラ」
「セクハラ?」
「セクシャルハラスメント。まったく」
 セクシャルって、今はまだロボットには人権は認められて無いからなぁ。
 それにしても、さすがに結構いい年齢の人が作っただけあって、たまに俺の知らない言葉が出てくる。
「なら、俺が見てやろうか?」
「は?」
「お前のマニュアルの中にやり方が書いてるし、マサナの爺さんも俺が見た方が本当はいいって言ってたしな」
「で、出来るわけないじゃない・・・アンタみたいな素人が」
 シオンの顔が少しだけ赤くなる。
 こいつ恥ずかしがったりもするんだ。
「お前が充電するのに使うベッド。あれにほとんど積み込んであるんだと。だから俺は指示に従って操作するだけ」
「ベッドに寝るだけ?」
「そ。まぁ、皮膚とかのチェックで1年に1回はあっちで看てもらう必要があるみたいだけどな」
「ん〜・・・でもなぁ・・・コーマ、機械に弱いしなぁ・・・壊されても困るし」
「ま、判断は任せる」
「・・・コーマはいいの?」
「何が」
「私が・・・色々見られたり触られたりしても」
 俺の頭に疑問符が浮かぶ。
 なんだそれ?ロボットなんだし、メンテナンスは普通だろ。人間的に言えばただの定期健診だし。
「別に」
「あっそ・・・アンタに聞いた私が馬鹿だった・・・じゃあ、行ってきます」
「おい。片付け」
「自分でやれば。じゃあね」
 それだけ言ってシオンが家を出る。
 なんなんだアイツは。

 携帯電話が鳴る。
「もしもし・・・あぁ、爺さ・・・じゃなかった博士」
 電話の相手はシオンを作った爺さん。もっとも博士と呼ばないとすぐに機嫌が悪くなるんだけど。
「シオン?朝出てったよ?・・・・・・え?まだ着いてない?・・・はぁ・・・探してみます」
 ったく。あの馬鹿。どこをほっつき歩いてるんだよ。
 俺は家を出て無人タクシーを拾う。
「研究所までの道に居ればいいんだけど」
 街中には人が少ない。代わりに持ち主の居ないロボットは大勢いる。
 ここ十数年の宇宙開拓で、ほとんどの人が宇宙に上がったのだ。
 なんか、このままこの街には俺とロボットしか居なくなるんじゃないだろうか。
 俺はタクシーを止めて交番に立っている婦警さん型のロボットに聞く。
「なぁ。ここらで金髪ツインテールのメイドロボ見なかった?型式はMAX−001A」
「少々お待ちください」
 ロボットはおもむろに上着を脱ぎだす。
 そこには鉄の塊のボディーが存在しており、そこの穴の一つに交番から伸びたケーブルを差し込む。
「・・・検索完了。南に5キロほどの海岸にお探しのロボットの反応があります」
「さんきゅ〜」
 てか、何で海岸に?
 ・・・あ、雨だ。
 俺が海岸に付いた頃にはかなり強い雨が降っていた。
「シオンシオンはっと・・・」
 ひょっとして、あそこで一人海を見てるのって。
「シオン!」
「あ、こ、コーマ?なんで?」
「それはこっちの台詞だ。ったく。ほら研究所に行くぞ」
 シオンは全くこちらの方に歩いてくる気配が無い。
「しゃあないなぁ」
 俺はタクシーを降りてシオンの元に走る。
 うへ、これだけで服がべちゃべちゃだ。
「いかない」
 おいおい。第一声がそれかよ。
「わぁった、んじゃ、俺が見てやるから、な」
「・・・いや」
「どうすりゃいいんだよ」
「どうもしなくていいよ!私は・・・このまま海に帰るから」
 ロボットが海に帰ってどうする。
「ほらほら。変な意地張ってないでこい」
「意地なんて・・・はって・・・な・・・ぃ」
 シオンが俺にもたれかかるように倒れる。
 こいつ・・・すげぇ発熱してるぞ!!
 俺はシオンを抱きかかえてタクシーに運ぶ。
 ロボットなのに・・・随分と軽いんだな。
「・・・・・・もしもし。あ、博士!シオンが、すごい熱で・・・え・・・研究所の・・・ダウンって
 俺の家の?・・・うん・・・わかった・・・自動洗浄ね・・・了解」

 シオンと一緒に届いたベッド。
 充電の他に様々な機能が付いているらしいけど、俺にはよくわからない。
 今はこれでシオンがよくなる事を祈るしかないな。
「よしっと」
 シオンを寝かせて、ケーブルを首の後ろに差し込む。
「あとは、モードを自動洗浄にして・・・よし」
 スイッチを居れると、ベッドに透明な膜が現れシオンを包み込む。
 まずは自動で服が脱がされた。
「え?」
 俺はロボットの体は何度も見た事ある。
 服に隠れない部分は人工皮膚で人間と同じだが、それ以外は本当に『機械』だった。
 けど、シオンの体は・・・まるで・・・
「人間の女」
 胸はちゃんと膨らんで・・・突起もある。
 下にさがればへそあり、脚も綺麗で・・・脚の付け根には・・・
「・・・コーマ」
 シオンの目が開く。
「ご、ごめん!!」
 俺はシオンの部屋から出る。
 シオンの部屋のドアに背中をつけ、ヘナヘナと座りこむ。
「嘘だろ」
 女の体なんて禁制のムービーでしか見た事が無い。
 ガキの頃なら、幼馴染のマサナのを見たけど・・・でも、全然違う・・シオンのは。
 あれからどれくらいたったのかわからない。
 でも、家の外が暗い。もう、夜か。
『コーマ』
 部屋の中からシオンの声がする。
「シオン・・・大丈夫か?」
『・・・うん・・・ありがとう』
「いや。いいけど・・・ありがとう?」
『なに?私がありがとうって言ったら変?』
「変じゃ無いけど・・・あ、ドアあけていい?」
『え・・・あ。うん』
 俺はドアを開ける。
 そこにはシオンが立っていた。
 よかった、いつものエプロンドレス姿だ。

「あの」「ねぇ」
 二人の言葉が重なる。
「なに?」
「・・・えっとね。体・・・見た?」
 いきなり核心を突かれた。
 シオンはいつもと違って、しおらしくてモジモジしてて。
「ねぇ・・・答えて」
「かわいい」
「え?」
「あ、な、なんでもない・・・えっと体は」
「・・・もう一回言って」
 シオンが俺に体を預けてくる。
「・・・かわいいよ。シオン」
「・・・ありがとう・・・嬉しいよ」
 俺はシオンを抱きしめる。
 柔らかい。本当に人間を抱きしめているみたいだ。
「ごめん・・・シオンの裸・・・見た」
「うん。いいよ」
「あのさ」
「ん?」
「これからは俺がメンテナンスする・・・他のヤツには・・・シオンの体・・・見せたくない」
 これが今の正直な気持ちだった。
 俺はシオンも他のロボットの例にもれず、機械の塊だと思ってた。
 けど、実際には普通の女の子で。
「そういうことは・・・体を見る前に言って欲しかったな」
「ごめん」
 確かに。なんか、体が人間だからシオンを守りたくなったみたいじゃん。
 って、実際に意識したきっかけはそれなんだけど。
「しお・・・て、てててててて」
 シオンが俺の腰を思いっきり抱きしめる。
「はぁ。すっきりした・・・これで許してあげる」
「あのなぁ。あたた・・・さすがにこれは」
「ふふん。許さない?許さなかったらどうするのよ」
「こうする」
「!?・・・んっ・・・ぅ・・・っぅ」
 シオンにキスをする。
 初めてしたキスは、甘くて・・・刺激的で。
「・・・ばか」
 シオンが本当に可愛く見えて・・・シオンを求めたくなった。

「シオン」
「はい?」
 あの後、メンテナンスを行いデータを研究所に転送。
 特に問題は無かったようだ。
 熱も、服が雨で濡れて放熱口の一部が塞がったとか。
 それは改善した服を送ってくれると言うので、それまで水に濡れた服を着せなければ問題ないらしいし。
「美味しいよ」
「当たり前じゃない。私が作ったのよ・・・愛情を込めてね」
 ニコニコとした顔で俺の方をちらりと見ながらモジモジとする。
 俺もそれが嬉しくて顔がほころぶ。
「って言えば喜んでくれる?」
 気づいたらシオンの顔は笑顔からニヤニヤとした笑みに変わっていた。
「ぷぷ。た・ん・じゅん。なんだから〜」
「おまえな〜」
「あははは。だってさぁ、いくら私でも今更この性格は変えられないも〜ん。ば〜かば〜か」
 俺は立ち上がりシオンの腕を取る。
「ちょ、あ・・・怒っちゃった?」
「怒ったよ。だから・・・もっと素直になってもらおうかな」
 俺はシオンの両手首を掴んで上にあげ、無防備になった首筋にキスをする。
「や、だめ・・・あ・・・コーマは・・・かわり・・・すぎ」
「仕方ないだろ。好きなんだから」
「好き・・・私が?」
 俺は答える代わりにキスをする。
 シオンの目が潤んで、そのまま瞑られる。
「・・・だったら・・・私も・・・変わってあげても・・・いいよ」
「俺は今のシオンが大好だぞ」
「でも!コーマは・・・もっと普通のメイドロボットみたく、誠実で何でも言うことを聞く子の方がいいんじゃないの?」
「お前と2ヶ月一緒にいるんだぞ?そんなの逆につまんねぇよ。俺はお前が好きなんだ」
 シオンの目から涙がこぼれる。
「あれ。変だよ・・・洗浄液・・・止まんない・・・故障かな」
 俺は涙をぬぐう。
 本当に人間の女の子そっくりなんだな。
「今日はシオンを愛してあげたい・・・いい?」
 シオンがうなずく。
 俺はシオンを抱き上げる。お姫様抱っこだ。
「あ、片付け」
「後でいいよ。さ、行くよ」
 シオンが俺の首に腕を絡める。
「ねぇ」
「ん?」
「・・・今日は・・・ご飯にね・・・愛情・・・いっぱい詰めたんだよ」
「気づいてた」
 本日3度目のキス。
 もう、俺はシオン無しでは生きてはいけないかもしれない。

「はぁぁんっっぅ・・・やぁ・・・そこ・・・だめ・・・」
 俺はムービーで見た通りのことをする。
 確か、ムービーでは男が女のここを。
 シオンのソコはぴっちりと閉じていたけど、指と舌でいじっていると段々と開き始め、中からヌルヌルした液体があふれてきた。
「何・・・これ・・・変な感じが・・・あぁ・・・ダメ、回路・・・焼き切れそう」
 文字通り何かのスイッチが入ったようだ。
「シオン。お前、痛みって感じないよな?」
「はぁ・・・はぁ・・・うん。知覚はするけど、痛みの設定は入ってないから」
「けど、快楽はちゃんと感じれるんだ。爺さんもいいもの作ってくれたよな」
 それに肩で息してるし、精巧というかほとんど人間そのものなんだな。
 俺はまたシオンのソコにむしゃぶりつく。
「はぅっん。あ。はぁぅ」
 シオンが声を上げる。
「していいか?」
「するって・・・何を?」
「セックス」
「どうするの?」
 知識ないのか?
「教えて」
「わかった」
 俺はシオンのソコに自分のペニスを当てる。
「入れるぞ」
「えぇ!?入れるって・・・ダメだよ。私、モノとか食べれないし、それに、専用のケーブル以外は入れちゃダメだって」
「ここは大丈夫なんだ・・・多分な」
「はぁっっ!?」
 俺はシオンを一気に貫く。
 さすがに処女膜とかは無いか。
「はい・・・入ってる・・・コーマの」
 きつい。これじゃあすぐに。
 俺は腰を動かす。
「んっ。は、ふ、ん、あぁ、へ、変、感覚、おか、おかしくなって」
 ソコがさらに俺のを絞めつける。
 うぅ。ヤバイって。これ、マジで。
「はう、あ、な、ん、あ、あ、あ、あ、わ、わわわ・・・なに、これ・・・メモリ・・・きえ、
 きえそ・・・あぁぁ」
 出して大丈夫だよな。
 くぅ。
「シオン!!!好きだ!!!!」

 朝。ん〜。少し腰が痛いけど、すがすがしい朝だ。
「シオン」
「はい?」
 シオンは朝食を用意してる。
「気持ちよかったよ」
「は?・・・何朝から変な事言ってるの?」
「え。昨晩」
「あぁ・・・何でかわからないんだけど、洗浄終わった後辺りからの記憶がぷっつり飛んでて。
 何かした?」
 何?まさか、昨晩のあれは比喩表現じゃなくて本当に。
「じゃあ、俺が晩飯の時に言った台詞は?」
「だから、記憶に無いって言ってるでしょ」
 おいおい。せっかく告白したのに。
「あ。マサナが迎えに来たよ」
 シオンはパンを俺に咥えさせて、コーヒーの缶をカバンにつめる。
「行ってらっしゃい」
 家を出る直前、俺の頬にキスする。
「覚えて無いけど・・・すごく嬉しい事あった気がする・・・別に好きとかそういうのじゃなくて・・・そうノリよノリ」
「シオン」
「ん?」
「いいか。これは永久保存だぞ。絶対にもう言わないから忘れるなよ・・・シオン・・・愛してる」
 俺はシオンの答えを聞かずに家を飛び出した。

「ねぇ」
 隣りを歩く幼馴染のマサナ。
「ん?」
「昨日のデータ欲しい?」
「何が」
「シオンに入れてあげれば全部思い出すよ。セックスのこともね」
「はい?」
 俺は驚いて脚を止める。
「シオンのデータはリアルタイムで私の届くの。安心して。おじいちゃんは知らないから」
「お前」
「あ、そうだ。もう一個聞きたかったんだ・・・気持ちよかった?私のおまんこをモデルにしたシオンのおまんこは」
 幼馴染はからかうような顔つきで俺に聞いてきた。
「私ね。届いたデータの映像と音声でオナニーしちゃった・・・だって、コーマのが私と同じ形のおまんこに入ってるんだもん。
 まるで自分のにいれられてるみたい」
 それだけを耳元で囁くと、呆けている俺を一度も見ずに、幼馴染は走って行ってしまった。