「なんか秋みたいな涼しさですね」

ある日の昼下がり。
彼女が隣にいる縁側。もう何年経つだろう。
今日の空は女心を模したような姿だった。朝は通り雨、昼は暴風。そして、今は台風一過
のような青空。
そして風鈴の鳴る音も、まるで今までの夏を惜しむかのように。
そんな中で彼女は風流を感じたのか、不意に立ち上がった。

「お茶、持ってきます?」

今差し入れは必要ない。この刻を精一杯、彼女と。もう彼女は一週間も持たないのを私は
知っていた。
12年前に職場のお茶くみをしていた女性型アンドロイド、それが彼女だった。
そして私は次の年に定年退職、彼女は余命幾ばくもない私に一人でついてきてくれた。

先月さも当然のようにメンテナンス部品も底をついた。
私が長く生きすぎたのが誤算だった。その後老体に鞭打ってメーカー側に出向いて問い合
わせたが、「かなり古いので替えの部品は……」と言われた。
最近は次世代型アンドロイドが市民権を得た、と聞いた。半年単位で新しい少女達が生ま
れ、そして死んでいく。少女達の寿命は長くて8年とも。

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