ハァ、ハァ、ハァ… 放課後、一人の少女を残して誰もいなくなった教室に荒い息使いが響き渡る。 「ん…あっ…ああっ…いい…」 彼女の左手はスカートをまくり上げ、右手で股間の周囲をまさぐっている。 「あんっ…んっ…あぅんっ…ああ…だめ…とまんないよぉ…」 膝は大きく広げられ、両足を机の上に投げ出していた。沈みかかった夕日が、窓越しに彼女の股間を紅く 照らしだしている。 「直接…んっ…刺激するのが…こんなに気持ち…ふぁっ…いいなんて…」 彼女の割れ目周辺の皮膚が大きく捲れ上がり、その隙間に指を差し込んでいるのだ。人間では有り得ない 光景…その隙間に見えるのは、樹脂製のチューブや配線、そして金属フレーム。荒く聞こえる息遣いは、 過熱した筐体を冷やす為の放熱装置が激しく動作している証だ。 「んっ…あっ…なんか出ちゃう…だめ…あああっ!」 ぴしゅっという軽い音を立て、透明の液体が彼女の陰裂から噴き出した…その液体は机の側面を濡らし、 糸を引きながら滴り落ちていく。右手の人さし指と中指で挟んでいた人工女性器のパーツが、外側からでも 判るぐらいヒクヒクと痙攣していた。元はといえば、授業中に違和感が生じた股関節のパーツをメンテナンス するために行為だったのだ。その時たままた、指が人工女性器の感覚デバイスに触れてしまったのが事の 始まりであった。 「んんっ…関節の方も…ああっ…見なきゃ…ンあ゛っ!!」 今までよりも少し上の部位に手が触れた瞬間、僅かに残されていた彼女の理性は快楽の固まりに押し流されて しまった。スカートを持っていた左手で開きかかっていた股間部メンテナンスハッチを掴み、そのまま無理矢理 ハッチを開けて行く。ぶち、べきと何かがちぎれるような音がしたが、構わずにハッチをこじ開けた。 「こ、これで…」 開き切ったメンテナンスハッチの割れ目の裏辺りに、人工女性器のパーツや液体交換時の排出用チューブが 装着されているのが見えた。人工女性器のパーツの周囲には、感覚デバイスから伸びているであろう配線が 複雑に絡み合っている。 「直接刺激すれば、もっと…」 彼女が感覚デバイス先端に手をかけようとした瞬間、教室の外から声が響いた。 「!!」 「やれやれ、忘れ物をするなんてついてないぜ…」 教室の扉が開き、男子生徒が一人入ってきた。 「…ん? 良子、まだ残ってたのか?」 「ひ、弘光君! 先に帰ったんじゃなかったの?!」 良子と呼ばれた---先程まで秘部を露にしていた女子生徒が男子生徒の問いに応えた。服装も見た目はきちんと 着用しており、とても淫らな行為をしていたようには見えない。 「ああ、宿題と参考書を忘れてたから戻ってきたんだ…どうした? 机の下がべちゃべちゃだぞ?」 先程良子の股間から噴き出した液体は、彼女の席の床を汚したままだ。 「あ、これは、その…さっきお茶こぼしちゃって、机の上は拭いたんだけど…!」 床下の汚れをじっと見つめる弘光を見て、胸がかっと熱くなる良子。 「…ま、ほっときゃ乾くだろ。もう外は真っ暗だし、送って行ってやるよ」 メンテナンスを始めた時にはまだ見えていた筈の夕日はどこにもなく、すでに外は夜の帳に包まれていた。 (やだ…あたし、どれぐらいの時間あそこを弄っていたんだろ…) 「行くぞ」 「あ、待って」 教室をそさくさと出た弘光を小走りで追いかける良子。 (…?) 彼女の電脳に、股間から違和感が伝わった。弘光が自分を見ていないことを確認し、スカートの上から股間を 軽く手で抑えてみる。 (!! やばっ…) 「何やってんだ、おいてくぞ」 「ご、ごめん、弘光! あたし、ちょっとトイレ寄ってくから」 「待っててやるから早くしろ」 下腹部を軽くおさえ、内股で歩きながら女子トイレに入る良子。見た目は尿意を我慢している人間の女性そっくりだ。 そのまま個室に入ってドアを閉めた後、スカートをめくり上げてショーツを下ろす。 「うわ…どうしよう…」 ショーツを下げると同時に、股間のメンテナンスハッチがだらしなく両脚の間に垂れ下がった。自慰行為をしていた 時に見た人工女性器や廃液用のパーツでメンテナンスハッチがぶら下がっているような状態だ。 「さっきの音…ハッチが壊れた音だったんだ…」 ハッチのロック機構を手で触ってみる。彼女が知っている状態とは違い、複雑な形状をした爪とステーが完全に分離 してしまっていた。 「だめ…全然閉まらない」 何回もハッチを手できつく押え付けるが、手を離した瞬間にハッチがだらりと垂れ下がってしまう。 「おーい、良子! 大丈夫か?」 外から弘光が呼んでいる声が聞こえてきた。これ以上ここにいたら怪しまれてしまう…彼女は慌ててショーツをあげる。 普段より少し上に上げると、メンテナンスハッチを抑えるような形になった。 (これなら家まで大丈夫よね) 良子はそのまま個室を出、汚れていない手を洗うふりをした。 「いつまで入ってんだよ」 「ごめんなさい…私、今日はアレの日だから…」 「ったく、しかたねぇな…さ、いくぞ」 良子がトイレを出てから15分後、二人は閑静な住宅街の道を歩いていた。 「…良子、なんか今日のお前…変じゃないか?」 「そ、そうかな?」 少し焦る良子。弘光は彼女の幼なじみで、小学校に入学した時からずっと二人で通学をしていた。今通っている高校では、 自他共に認める恋仲でもある。そんな二人だから、相手の挙動が少しでも普段と違えば、それに気付くのは当たり前の話しだ。 「なんかさぁ、妙に歩くの遅いぜ…それに、歩き方も変だ」 「え…その…いつもどおりだって」 「腹の調子でも悪いのか? さっきからずっと…」 「いつもどおりだって!」 弘光の言葉に憤慨した良子が弘光から離れた瞬間、彼女の後ろからけたたましいクラクションが鳴り響いた。 「きゃーっ!」 「良子!!」 タクシーが転倒した彼女のすぐ側を通りすぎていく。 「危なぇじゃねえか!!ばかやろぉ!! 遠ざかって行くタクシーに向かって弘光ががなり立てた。 「う…」 「あ、良子! 大丈夫か!?」 「う、うん…ごめん…」 「立てるか?」 「うん、大丈夫」 弘光の手に掴まり、良子はふらふらと立ち上がった。メンテナンスハッチの調子が心配だったが、どうやら無事のようだ。 「怪我はないか?」 「大丈夫、擦りむきもないから」 「…とりあえず俺の家によってけよ。ここじゃ暗いからよく見えない」 「え?」 「ほら、もう俺の家の近所だし」 「でも…」 「今日はうちの親、旅行に出かけてるから気を使う必要はない」 「ん…わかった」 いつのまにか弘光の家のすぐ近所まで来ていたのだ。歩きだした弘光を追い掛けようと、良子も足を踏み出した…その瞬間。 (あっ…!!?) 彼女の耳に、下腹部…丁度股間の辺りから、”ばきっ”という大きな音が聞こえた。そしてその直後、真紅の快感が彼女の身体を 真っすぐつらぬいた。 「んぁ!!」 弘光は既に自宅についたようで、彼女の側にはいない。とめどなく押し寄せてくる感覚に、歯を食いしばって耐えながらふらふらと 歩を進める良子。 (何…これ…) 何も刺激を加えていない人工女性器から、快楽が絶え間なく伝達されてくる。今まで体験したことのない状況から逃れようとする ように、彼女は弘光の家の扉を開けた。 (続く)