あの日から丁度一週間。また同じような悪夢にうなされて目が覚めた俺は、あの時と同じように台所へ
 行こうとしていた。
(…?)
 扉の向こう側から、何かが呻いているような声が聞こえる。普段なら全く気付かないような音だ。
 あれから2週間、母さんの”あの姿”が、俺の脳裏から離れる事は全くなかった。それどころか、
 母さんに対する疑念は膨らみ続ける一方だ。ロボットが子供を産む、というのは聞いた事がない。
 つまり、俺は母さんの…いや、そんな筈は…

「…んっ…あっ」

 疑念が更に膨らみかけた時、扉の向こうから喘ぎ声が聞こえてきた。間違いない、あの日聞いたのと同じ
 声だ…俺は扉に耳を押し当てた。
(母さん…何を?)
 「ん…やっぱりこれだけじゃ駄目だわ…」
(何がだめなんだ…?)
 30秒程してから、再び母さんの声が聞こえた。
「これで…よし」
 ピッという音が聞こえ、続けて「がしゃっ」という大きめの音が響いた。その後はパソコンの拡張ボードを
 抜き差しするような、乾いた金属音が立て続けに聞こえている。正直いってこの時の俺には、何をやって
 いるのか全く想像もつかなった。
「ん…む…んふぅ…んっ」
 母さんの声が聞こえた。最初に比べて妙にくぐもった声だし…ちゅぷ、ぴちゃという変な音も混じって聞こえて
 くる。これはまさか…?
「ふぁ…んんっ! んっ!んん…っ!!」
 艶めかしい声の聞こえる間隔がどんどん短くなってきた。ベッドの軋み音もそれに伴って激しくなって
 きている。俺の股間のブツも自分の意志と反して固くなり、今にも暴発しそうな勢いだ。
「んっ…ふぁ…んっ…んんっ!! ふぁああああっ!!」
 みしっという軋み音と共に母さんの悲鳴が聞こえ、急に静かになった。俺はあの時と同じように、部屋へ
 舞い戻って布団に潜り込んだ。

(母さん…一体どうしたってんだよ…)
 俺の中の疑念は、今にもはちきれんばかりに大きくなっていくばかりだった。


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 あれから更に一週間が経過した。今日の俺は布団ではなく、パソコンの前に座っている。パソコンの画面には
 4分割されたウィンドウが表示され、そのウィンドウには見慣れた風景が映し出されていた。
「母さんが何をやってるか…これではっきりする」
 罪悪感が全くないという訳ではない。母親の部屋に盗撮用のカメラを仕掛け、それをこうやって見ている俺は
 盗撮ビデオを売りさばいている連中と何ら変わらないからだ。でも、今の俺の中では罪悪感以上に、母さんに
 対する疑念が大きく膨らんでいる。
(俺は…小学校以前の記憶がない)
 先週から俺は、母さんの目を盗んで家の中を探り回った。母さんの部屋に”証拠”は見つからなかったのだが、
 それ以外に不自然な事はあった。
(小学校以前の、俺に関する記録がない…アルバムも見つからない)
 俺が物心ついたとき、既に親父はこの世にいなかった。しかしそれはあくまでも、小学校低学年の時の記憶で
 あり、俺が幼稚園や保育園に通っていたというような記録は全く残っていないのだ。そう、まるで俺の記憶が
 何者かによって故意に消されているかのように。

 様々な想像を頭に巡らせてる内に、母さんが動き始めた。パソコンの時計はAM3:00…仕掛けてあったマイク
 からは目覚まし時計の音も聞こえてこなかったのに、いきなり寝床から起き上がったのだ。まるで母さん自体が
 目覚まし時計であるかのように。

「何をやってるんだ?」

 ベッドから一度起き上がり、画面外に消えたと思ったらすぐに戻ってきた…が、母さんはパジャマと下着を
 脱いで真っ裸になっていた。その手には、1週間前に見たのと同じ装置が握りしめられている。
『んっ…』
 装置から伸びているケーブルの先をヘソに押し込んだ瞬間、あの声がパソコンのスピーカーから聞こえてきた。
 俺は息を飲み、カメラ撮影ソフトのズームボタンをマウスでクリックして母さんの姿を大きくする。

『…くっ』

 母さんの顔が一瞬歪み、苦悶ともとれるような声と電子音が響く。そして次の瞬間。
「…あ…そ、そんな!?」
 俺は思わず声を上げてしまった。母さんの体が、腰の辺りを境にして真っ二つになってしまったのだ…いや、
 正確にいえば真っ二つではない。上半身と下半身はいくつかの太い線と、金属製の骨のようなものでまだ
 繋がっている。それは、あの時に見た母さんの右足の中身と殆ど同じものだった。

『…んくっ』
 母さんは更に驚く行動に出る。下半身を両手で押し下げ、腰の関節を完全に分離させたのだ。母さんが手で
 下半身をずらすごとに、シャコ、ガシャという乾いた金属音が響く。
 やがて上半身と下半身を繋いでいるものが線だけになると、母さんは尻を両手でもちあげて腰を折り曲げ、股間の
 部分を顔の前にもってくるような体勢をとった。もう、こんなこと…人間では不可能だ。
『んっ…ふっ…』
 俺は無言でパソコンのボリュームを更に大きくした。母さんの声と一緒に、ゼリーかプリンを啜るような音が
 聞こえてくる。
『んン…ジュプ…ふぁっ!…ヌチュ…んん』
 股間に埋めた顔があまりよく見えないのだが、状況と音からして何をやってるのかは容易に想像できる。
 それが頭に浮かんだ瞬間、不意に母さんが顔を股間から上げた。
『…ふぁ…いっちゃう…』
 ぼそりと呟き、股間の割れ目をひと舐めする母さん。舌が割れ目からゆっくりと離れるのが惜しそうに、舌先から
 ぬらりとした粘液の糸が伸びる。
「…っ!!」
 俺はもう我慢できなかった。パジャマとパンツをずりおろすと、俺のブツが先端を濡らして高々とそそりたっている。
「く…ううっ」
 母さんの動きに合わせ、俺は自分のペニスを激しくしごき上げた。下半身が震えだすのと同時に、母さんも
 時折自分の股間から顔を僅かに上げ、はっきりとした喘ぎ声を漏らしている。
『ふっ…あっ…ンンっ…ああっ…ンぁああ」
「くっ…うぐ…あう…くうぅう」
 ペニスの根本から先端に向けて、一気に熱い滾りが迸る。

「ぐ…ああっ…ううあ!!」
『ム…あふ…ああああっ!!!!』

 俺と母さんは同時に達した。その刹那、俺は聞いてしまった…常夜灯でテラテラと輝く粘液で濡れた、母さんの
 口から漏れたかすかな呟きを…。

  『 ひ ろ … き ……』

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