「いってらっしゃい、弘樹」 「…いってきます」 小さな声でぼそりと呟いたあと、弘樹は玄関を出て行った。ここ最近、弘樹は元気がなくなってきている ように見える。こころなしか、顔色もすぐれない…寝不足だろうか? 今晩はご馳走を作ってあげることに しよう。 「さて、と」 私は自分の部屋に戻ると、生理用のナプキンとメンテナンスコントローラを手に取った。コントローラーは ともかく、ナプキンは本来自分に必要なものではない。 「ふぅ」 ショーツをゆっくり下げると、股間部分と私の人工女性器が糸を引いて繋がっていた。 「…ぎりぎりセーフか」 装着していたナプキンは、もうこれ以上水分が吸収できないという状態になっている。便座に座りって 太股を広げてみると、割れ目に近い部分の陰毛が透明の液で濡れ、部屋の照明を反射して淫らな輝きを 放っていた。 「んん…っ…」 ティッシュペーパーで液体を拭きとる圧力が皮膚に加わる度、快楽が頭脳へ伝わってくる。拭いても拭いても 粘液は留まることなく、じんわりと溢れ続けていた。 「だめだわ…仕方ない、このままで排出しよう」 本来、この液体は平常時に出るものではない…男性を受け入れる時、相手と自分を互いに傷つけないように する潤滑剤…要するに”愛液”と呼ばれるものだ。 私は予め用意していた、自動車のオイル交換用使い捨て廃液受けを床に置く。その上を跨ぎ、膝まづいて 太股で廃液受けを挟むように座った。 「コントローラを接続して…不要液の排出モード、開始」 コントローラのスイッチを押して暫くすると、下半身を違和感が覆う。 「んくぅ…ふあっ」 またもや快楽が身体を貫き、私の身体がぶるぶるっと震えた。私の身体の規格はかなり古く、今の最新の コントローラを接続したときにこのような症状が出てしまう。近々、コントローラのファームウェアがバージョン アップされるそうだから、それまでの我慢だ。 「ん…」 身体の震えが収まったのと同時に、少し黄色みがかった液体が割れ目から排出され始めた。これだけを見ると 人間の放尿そっくりだ。しかしこの液体は燃料電池の廃液に、私が飲んだ水分が混じったもの。固形の食料を 摂取した場合は大体3〜4日に一度、微細に粉砕されたものを体内から取りだすだけでいいのだが、水分に 関しては最低でも1日に一度は体外へ排出する必要があるのだ。 「弘樹…」 黄ばんだ液体が廃液受けの水分吸収剤に吸い込まれていく様を見ていると、ふと弘樹の顔が頭に浮かんだ。 机の上に置いて有る写真立てを見ると、弘樹がじっとこちらを見つめていた。 「やだ…弘樹…見ないで…」 写真の弘樹を見た瞬間、下半身がじわりと熱くなり始めた。人工女性器を中心に体温上昇が始まった事を示す シグナルが、ひっきりなしに頭脳へ伝わってくる。 「オ…オイルを補給しなくちゃ」 水分の排出が終わり、次は潤滑オイルを補給しなければならない。傍らに置いてあった専用のオイルボトルを 口に含み、一気に飲み干した。コントローラの画面を弄り、オイル排出サイクルを開始させる。 「だめ…こんなところ見られた…ばれちゃう」 焦げ茶色のオイルが、先程と同じ場所から排出されていく。下半身の中心で渦巻いていた熱い固まりは今や 全身に広がり、私の身体は意に反してがくがくと震え始めている。 「熱ぅい…」 身体の芯が激しく疼き、メモリーから弘樹の姿がランダムに再生されていく。私はこれ以上、性欲を抑えることは 不可能になった。 「欲しい…弘樹…」 ブラウスのボタンを外し、乱暴に脱ぎ捨てた。ブラの肩ひもを外し、ブラ自体を思い切りめくりあげると、枷を失った 大きめの乳房がぶるんと弾け出る。それを両手で乳房をすくいあげ、固くなった乳首を指先でつまんだ。 「ぁあんっ!! んっ…んんっ!!」 乳房がとろけるような快楽が私の頭脳を走り抜けた。股間からオイルを垂れ流しながら胸を揉みしだく自分を 弘樹が見ている…そう考えるだけで体に熱いものがたぎってくる そもそも廃液・オイル交換の作業は、弘樹に見つからないようにトイレでしていたのだ。しかし、私の中で日を増す 毎に大きくなってくる弘樹の存在…それは私の快楽中枢にも影響を及ぼしていた。本来なら数ヶ月の周期で自慰を すれば収まる筈の性欲が、ここ1ヶ月の間途切れることなく増えて続けている。 「んぅ…んっ…あぅ…いいっ…!!」 最初は1週間に一度、深夜の自慰でなんとか凌いでいた。しかし、先週から症状が更に悪化した…弘樹の事をほんの 少し考えると、普通に家事をしている時でも性欲がどんどん高まってくるのがわかる。それに伴い、人工バルトリン 線液の排出が止まらなくなってしまった。日常の行動に差し支えがでると困るので、生理用のナプキンでショーツの 外へ漏れる事を防いでいるのだ。 「あっ…あんっ、あぁうぅ…んんっ」 やがて廃液作業の時にも自慰が必要不可欠となり…今では"普通ではない”シチュエーションで自慰をしなければ、 性欲を抑えることができなくなっている。 「んっ…あぁ…はぁ、はぁ、はぁ」 オイル交換終了のサインがコントローラに灯った。波のように打ち寄せる快感をかいくぐり、オイルで汚れた割れ目を 震える指で拭きとっていく。 「う…あっ…」 もうオイルは拭きとれた筈だが、私の指の動きは止まらない。ティシュペーパーで何度も割れ目をなぞっていると、 バルトリン線液で湿って柔らかくなったティッシュペーパーを指が突き破った。 「はぁうっ!!」 指先が陰核を直撃したようだ。強烈な快楽が頭脳をゆさぶり、私は反射的に身体をのけぞらせた。 「ひろ…きっ!!」 私は思わず弘樹の名を呼んでしまった…血は繋がっていないとはいえ、私は息子として接している弘樹に性欲を 抱いているのだ。倫理を司るタスクが、激しく警告アラームを出している。しかし、それを性欲タスクが抑える。 二つの相反するタスクが私のAI内でぶつかり、思考が飛び始めた。風呂上がりの上半身裸な弘樹の姿が 思考の狭間で再生され、私の快楽は頂点に達しようとしていた。陰核をくりくりと玩ぶ指先の動きが、一層早くなった。 「あぁ…んっ…んんっ…あ、ああ、んんっ、あああーーーっ!!!」 私は前かがみになり、床へ突っ伏して身体を奮わせながら絶頂の快楽を味わった。股間にあてがった手の平に 生暖かい潮が当たり、周囲へ飛び散って淫らな音を立てている。 「ひろき…あなたが欲しい…」 その時に頬を伝わった涙は、快楽によるものだけではなかった。