AM1:00…メンテナンスコントローラによって仕込まれていた、記憶整理モードが自動的に起動した。
 私の記憶メモリはいくら拡張してあるとはいえ、その容量は無限ではない。そのため、一週間毎に
 メモリー内を整理し、不要な記憶を消去する必要があった。

「…またあの時の…」
 タイムスタンプは今から10年前…丁度、弘樹が小学校に入学する直前の日付だ。


『やめろ!!何故そんな…!!』
 部屋の隅に転がっている男性が、腹を押えながら私に向かって叫んでいる。

『お願い…やめ…ガはっ』
 視線を正面に戻すと、女性が苦悶の表情を浮かべていた。首には私の手が掛けられていて、ぎりぎりと
 咽を押しつぶしているのだ。そして彼女の顔は、今の私そのものであった。

『駄目です…マスター…身体の制御が…効き…ま…せ』
 私は涙を流しながら、女性の首を絞めているのだ。筐体が暴走し、弘樹の父…三沢隆の腹をフルパワーで
 殴りつけた。手が自分の意志に反し、弘樹の母である裕美の首を絞め続ける。

『弘樹…逃げ…』
『あ…ああ…』
 寝室の扉の前に座り込んでいた少年は、裕美の願いもむなしくただ座り込んでいるだけだ。私は動かなく
 なった裕美の身体から手を離し、弘樹の元へゆっくり歩みだした。
『お願いです…弘樹様…逃・げ・て』
『い、いやだ…』
 震える弘樹の首に手を掛けた瞬間、突然画像がぶつりと途絶えだ。


 【 メ ン テ ナ ン ス モ ー ド 起 動 … メ ン テ ナ ン ス レ ベ ル= MAX に 設 定 さ れ ま し た 】


 私のメモリー再生は、突然のメンテナンスシグナル受信によって強制停止させられた。

(どうして!? 今の時刻は…AM2:30…まだ終了予定時刻になってないのに)
 メモリー整理モードからメンテナンスモードへ遷移させられて目を開けた私は、視界に広がる光景を疑わざるを
 得なかった。

「ひ…弘樹」
「どう、母さん…メンテナンスモードを強制起動させられた気分は?」
 冷ややかな表情を浮かべ、私をじっとみつめている弘樹。四肢を動かそうとしたが、人工筋肉のコントローラからは
 ”アクセス拒否”の非情なレスポンスがあるだけだ。

「な、何をしてるの!?」
 腰と首はまだ動かせるようだ。顔を上げて弘樹をにらみつける。
「これ、ネットのオークションで買ったんだ。小遣いを半年分投入させられたよ」
 弘樹の手に見覚えのある装置が握られていた。手帳大のそれから伸びるコードは、汎用アクセスポートになっている私の
 ヘソに接続されている。
「まさか弘樹、あなた」
「大丈夫だよ、説明書も付属してたんだ…それにしてもすごいね、これ。こんなこともできちゃうんだ」
 弘樹がメンテナンスコントローラを弄ると同時に、私の頭脳にメンテナンスシグナルが送信されてきた。

 【 人 工 女 性 器 自 己 診 断 モ ー ド : 性 感 係 数 = MAX 】

「え、ちょっと、それは…!}
「これで開始、と」

 【 自 己 診 断 モ ー ド 開 始 】

 弘樹がコントローラのEnterキーを押した瞬間、下半身の中心がかっと熱くなった。

「あ…あ゛っ!!?」
「うわぁ…」

 自己診断モードは何度か試したことがあるので、手順は私も知っている。最初は、人工バルトリン腺のテストだ。

「すごい…や…」
 弘樹の手が私の股間に伸びる。触感は僅かだったが、自己診断モードによって数百倍に増幅された快楽が、私の性欲
 タスクを焼ききらんばかりに刺激した。

「はぅあ゛っ!! んンん゛っ〜〜〜っ!  んぁあ゛ああっ〜〜〜〜!!!」
 私は身体をあらん限りに反らせ、ベッドの上をのたうちまわった。股間から熱い液体が溢れ出し、私のあそこをどんどん
 濡らしていく。

「母さん、すごすぎるよ。ちょっと触っただけでこれだもんな…じゃあ、これを弄ったらどうなるのかなぁ」
「これって、や…やめなさ…」
 私の制止を聞かず、弘樹は割れ目の狭間に咲いている小さな花芽を指先で玩び始める。

「ん゛ふぅぅっ!!!」
「人間と…そっくりだね」
「はう゛っ…いやっ…んくぅ!!」
 弘樹が指に力をこめる度に私の身体が大きく跳ね上がり、視界が一瞬真っ白に染まる。

「愛液がどんどん溢れてくる…」
「いやぁ…ああ…やぁ…」
 弘樹は花芽から離した指を私の前にかざした。透明の粘液が、糸を引いて私の乳房に滴りおちていく。

「母さんの蜜…」

 弘樹は手についた私の愛液を舐め、花弁が剥けてしまったであろう私の陰核を再びつまみ上げる。
 花びらの加護を失った雌しべは、弘樹の動きをより正確に私へ伝えてくる。

「あぐっ!! ア゛あああんん〜〜〜〜ぁああっ!!」

「…めだよ、母さん…あれぐらいでシステムダウンしちゃ」
 過負荷で一時的に稼働が止まった私は、メンテナンスコントローラによって再起動されたようだ。
「お願い…もう…やめて…」
 当然のごとく、身体は自己診断モードのままだ。性感係数もMAXに設定されている。
「これからが本番だよ。聞きたい事がね、山ほど有るんだ…」
「!」
「じゃあ始めるよ」
 弘樹がコントローラを操作する。しばらくしてコントローラから送信されてきたコマンドに、私はがく然となった。

「だめ!! 弘樹、それだけはやめてっ!!」
「…腕部・脚部を強制排除…人工筋肉ジョイント、及びフレーム接続部開放…実行」

 【 緊 急 コ マ ン ド 受 信 : コ マ ン ド 実 行 】

四肢の感覚が消え去り、エアが漏れる音が響く。程なくして、私の手足は身体から逃げるように飛び出した。

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