熱帯夜は嫌なものだ。どうも寝つきが悪い。 「眠れないのですか?」 隣で寝ていた彼女にも気を使わせてしまう。 「私の冷却機能の設定を上げてみます。抱き締めてくれれば涼しくなりますよ」 「放熱側のほうが間に合わないよ。それに、熱を逃がすのは室内になるわけだし。なに、エアコンを買わない俺が悪いのさ。 夏の風物詩だと思ってあきらめるさ」 そう言って横になってはみるものの、眠れるわけが無い。 まどろみの中を行ったり来たりしているうちに、彼女が寄り添ってきた。 「抱き締めてはくれないのですか?」 背中から抱き着かれる。熱っぽい吐息は暑さのせいだけでは無さそうだ。 ぴちゃ、ぴちゃ……。深夜に響く水っぽい音。熱い吐息が部屋の蒸し暑さを増す。 体液で湿っぽいシーツが肌にまとわりつく。 ふいに頭を押さえつけられ、湿ったクレバスに口も鼻も塞がれる。 いつもの絶頂のサイン。 やがて、彼女の手足が弛緩して呼吸が楽になる。 私も彼女も呼吸が整わないうちに、悪戯を再開する。 蒸し暑く長い夏の夜。 終わることなく響く水っぽい音。