「あの子、どうするの? エイミー…」
 「エイミーか? …まずは集積回路のアップグレード、情報処理速度・演算能力を高めたい。戦闘知識・実技は俺が仕込む」
 「有機体の筋力強化って難しいの。ああ、出来ないって程じゃないから安心して。…飽くまで能力と美観のバランスの問題」
 「女の子だからな。それは仕方無い話さ。必要になったら頼む。それよりも君の護衛担当の、キティの修理の方が先だろう」

 『マエストロ』は内心とは別の事を話題にした。このままでは弱音を吐いて3年前のようにまた『イェーガー』に負担を掛けてしまう。
挙句の果てには抱かれた後の朝に『君はもう大丈夫だ、一人で歩いていける』なんて走り書きのメモを残され、トンズラを決め込まれては
非常に困るのだ。実行されたら今度こそ自分で立ち直れなくなるだろう。みっとも無かろうが難だろうが、今の自分に最後に残された、
空の雲よりも高いプライドを捨てて年増女の執念を思い知らせるためだけに、それこそ地獄の果てまでこの男を追い駆けるに違いない。

 「それ、こんな所で油なんか売ってないで仕事しろって催促? 」
 「なあ…エイミーの画像記録には一体何が映っていたんだ? 」
 「もう! 自分の都合が悪くなったらすぐ他の話題ではぐらかすんだから。これを見て」

 『マエストロ』は自分の携帯情報端末を取り出して『イェーガー』の前でモニターを展開する。アングロサクソン系の50代の男が、
車内で笑顔で微笑み、確かに『エイミー』と唇を動かし呼び掛けている。時折その視界がぶれるのは、エイミーの視界準拠だからだろう。
男の顔に見覚えがあった。半年以上前に来日し、重要な『同盟国』の日本国首相と初顔合わせの『首脳会談』を持った男だった。

 「USのプレジデント…アーヴィン・E・コーンウェル大統領」
 「当たり。ねえ、プレジデントに娘が居るのはご存知かしら? 」
 「名前はエイミー…だな? 」
 「良くできました。当時、不必要な程のUSの公安・治安機関が動いたわ。…では本題に入らせて貰うわ。
  実は大統領の御息女、エイミー・A・コーンウェル嬢はUS本国から一歩も出て居ないのよ。けれども、
  USの現地政府機関には来日を伝えられ、現に来日した。ここまで言えば貴方なら解るわね『イェーガー』? 」
 「その正体は此処に居るエイミー…しかし何故…」 

 その後の画像が展開された。バラグラバを被った男達が車内に乱入する様が一瞬だけ映り、視界がブラックアウトする。画像の展開も
ここで終わり、モニターが『マエストロ』の手によって閉じられた。『イェーガー』は己自身の右頬を右手人差し指で一定のリズム間隔
を保ち軽く叩いている。『イェーガー』が思考を展開する癖だ。何か6ヶ月前の出来事に思い当たる節があったのだろう。眉間に寄った
皺が段々と深く刻まれて行き、唇の両端が下がって行く。口を開けば物凄く酷い悪態を吐きそうな顔だ。

 「…ばれたら大スキャンダルだぞ? ドロイドに人権など無いとか平気で言ってる奴等がやりそうな事だ。反体制勢力の内通者を
  焙(あぶ)り出すための囮に使ったな…。そう言えば会談の警備に駆り出された時、かなりの数の死体袋を見たのを覚えてる」
 「で、事は済んでドロイドのエイミーは処分された。ここまでの理解はいいわね? どう? 」
 「ああ、出来てる。…その処分を何かと法規制やら登録番号で足が付く本国では無く、来歴も問わん現地の違法ジャンクヤードに
  任せて作戦終了、か…。典型的な情報機関の遣り口だな…。反吐が出そうだぜ! 糞! 」
 
 『イェーガー』は左掌に右拳を勢い良く叩きつけた。パァン! と肉を打つ音が決して狭くは無い廊下の端から端まで響き渡る。
『マエストロ』はやや温くなったソフトドリンクを一気に喉へ流し込む。チラ、と『イェーガー』がその様子を羨ましげに見やる。
 
 「コーンウェル大統領は、あの国、USでは珍しくも無いドロイド排斥派。そんな人がもし事の真相を知ってしまったら? 」
 「当然、激怒するな。あと、娘そっくりの有機型ドロイドを必ずチリも残さず破棄しろと言い出すだろうよ。何せ州知事時代、
  有効雇用を生むためだけにドロイド導入制限州法を施行した実績まであるタカ派だからな…。因果なモンだぜ、全く…」
 「あ。一口、どう? 欲しいんでしょう? 」
 
 『イェーガー』が頷くと、『マエストロ』はニンマリとして缶を振って見せる。水音が全く出なかったのは、全部飲み干した証拠だろう。
『イェーガー』は右眉を上げ、コートの内側からミネラルウォーターの500mlのPETボトルを出し、口を付けてから一息で中身を空にした。

 「用意のイイ事。ねえ…水ぐらいゆっくり飲んだら? 」
 「水分補給に時間を掛けられない職業だったんでね。何事も時間に追われてたが、今は時間が余って手持ち無沙汰で困ってる」
 「気楽なものね…。さあ、休憩終わり、っと! お言葉通りキティから仕上げさせて貰うわ。ところで…住居の手配は済んでいるの? 」
 「ん? 職業柄、野営には慣れてる。戦場よりこの街の方がまだ治安がいいし、今日はどこかの路地裏で寝るさ」
 「…そこにドロイド持込修理に来たマスター用の客間があるから、エイミーの作業が仕上がるまで好きに使って頂戴、『お客様』」

 『マエストロ』は『イェーガー』の隣のドアを親指で指して、空き缶を『イェーガー』に渡し、そのまま作業室へと戻っていった。

 『おかえりなさぁい! お外でマスターはちゃんといい子にしてましたか? 『マエストロ』? 』
 「エイミー、『イェーガー』から生体集積回路の一部積み替えと、脊椎内記憶演算機構のバージョンアップを依頼されたから、ポッドに戻って
  機能停止しなさい。…くれぐれも自分で勝手に覚醒しないように。いいわね? 聞けないんだったら駆動系を除去して処置完了。どう? 」
 『…え〜と…。機能停止と言われましてもぉ…そのぉ…構造上ちょっと…。手や足をぽいぽい、って外されるの…わたしとっても嫌なんですけ…」

 ミシリ、と空気中の水分が瞬時に氷結したような音がした、とエイミーは感じた。『マエストロ』の冷ややかな視線を正面から受けてしまったのだ。
シャッターと為るべき目蓋が無い『素体』の今、視線を遮る事は出来なかった。名状し難き沈黙が流れる。『マエストロ』が携帯式ガン型電動ドリルを
手に取り、エイミーの前でトリガーを引いて見せる。ギュィィィィィィィン! と剣呑な唸りを上げて1cm径のドリルが回る。右唇の端を吊り上げて
『マエストロ』が笑う。その意味深な笑みを見た『素体』のままのエイミーが胸の前で拳を握り合わせ、脅えた素振りを見せた。

 『はわわわわわわわわ…! お、お言葉に従いますぅ…』
 「機能停止が出来ないのならポッドを外部シールドを下ろして密閉状態にして置くわ。大人しくしてなさいね、エイミー」
 『はぁ〜い…おとなしく、してま〜す…。(グスン)』
 
 エイミーがしぶしぶポッドに戻ると、『マエストロ』が各種ケーブル、チューブを接続。ポッドを密閉し、培養液を充填してからかなり頑丈そうな
外部シールドを引き降ろし、ロックした。それから「よっしゃあ!」とばかりにカラテの正拳突きのジェスチャーをして、首だけになったキティに
ニッコリと微笑んでみせる。キティはあからさまに怪訝そうな表情を見せていた。明らかに現在の『マエストロ』のテンションは、焦燥の色を明らかに
見せていた先程の比では無い。端的に言えば、浮かれている。初対面の時に抱いた冷静なイメージからあまりにも懸け離れている。

 『いったい今から何をしようとしているんだ? あいつ…エイミーをわざわざ閉じ込めたりして』
 「戦う事しか知らない貴女に、『とてもいい事』を教えてあげようかなぁって言う慈善事業よ」
 『…? 慈善事業、だと? 』
 「わっかるかなぁ〜? わっかんないだろうなぁ〜? うふ、ウフフフフフフフ…」
 『よ、よせ! なんか、なんかやだ! やめ…』

 喚き散らそうとするキティの首に繋がった解析装置の端末を『マエストロ』は操作し、キティの『意識』を狩った。キティは「ろ」と口を開けたまま
ガクン、と停止してしまう。鼻歌を唄いながら『マエストロ』は作業室の棚を漁る。目的のものを探し出した『マエストロ』が手に持っていたのは、
軍用の2足歩行ドロイド用小型バランサーだ。次に整備ベッドの端末を操作し、倉庫のパーツリストを呼び出し軽く頷く。目的のパーツは揃っていた。
着色済み乳化フロロカーボン、高級表皮組織、感覚伝達系擬似神経繊維、そして一番大切な肝心要のパーツ等…。偶然にも全てが揃っていた。いける。

 「さあ、お姉さんが女の子に『戻してあげる』。覚悟なさぁ〜い? こ・ね・こ・ちゃん」

 『マエストロ』はゴーグルを装備し、防塵マスクを装着する。そして高周波メスをキティの胴体の下腹に滑らせた。US戦闘用ドロイドの擬似血液である、
特有の白い組織液が溢れ出る。…全行程の作業終了時間は4時間後を予定していた。…『イェーガー』が眠りに就かないうちに仕上げねばならない。
改造成ったキティを見た『イェーガー』の示すだろう反応を想像すると、涌き上がる悪戯心が停められなかった。

『イェーガー』の左手首にある、腕時計型をした簡易通信デバイスのデジタル数字が22:30:32を示していた。ダブルベッドの上に胡坐を掻いて、
拡げ、今では骨董品としてプレミアまで付くと言う噂の火薬カートリッジ式ハンドガンを分解しクリーニングしていた。駐屯地を出て、この街に着いてから
真っ先に手に入れた『相棒』だ。デカイのが欲しい、と言ったら、店主の爺さんがまじまじと人相定めをして深く頷いてから店の神棚から下ろして来た
シロモノだった。握った途端、今までに持ったどんな銃器よりもしっくりとグリップが手に馴染んだ。火薬式だと聞いて、銃弾も出して貰い、マガジンに
装填し終えたその時に強盗が入って来た。思わず向けて撃ったら、臓物を撒き散らしてくたばってくれた。レーザーガン用のボディーアーマーを引き裂く
その威力に惚れ込み、値を聞くと…USダラーで119800だ。木箱には$1198としっかり書かれていたのだが、爺さんは死体を指してニヤリと笑い、

 『見たろあの威力を? あと弾丸5箱と予備マガジン6本もつけるが。いい買い物だぜ兄さん? 』

 と言った。惚れ込んだ弱みで、値切るなんて野暮はしなかった。爺さんにフィールド・ストリッピングを学び、原始的なサイトの調整方法も教わった。
整備用・潤滑用オイルもこの街ではなんとか手に入る事を聞き、ガッチリと握手をして別れた。妙に気に入られたらしく、困った事があればまた来なよと
わざわざ店を出るまで見送られた。装弾数はマガジンに7発、チェンバーに1発の計8発。わざわざ専用ホルスターまで出してきて、また吹っかけられて
買ったのも好意を持たれた原因の一つに違いない。表面をマット処理された、黒い金属製の銃。軍に居た頃の銃は同じく黒いのだが、高分子ポリマー製の
エナジーガンで、これに比べれば味気なさ過ぎた。この銃は100年前の遺物。スウェーデン・ハクスバーナ社設計、製造は嫉妬する神ヤハウェを今も
崇めるイスラエル。口径は50AE(アクション・エクスプレス)。その名はDESERT EAGLE、砂漠の鷲(わし)。かつては最強の拳銃と謳われた威力を誇った
火薬式のマグナム・オートマティック・ハンドガン。…過去の遺物だ。今時のハンドガンはエナジーパックで全てレーザー化されている。

 『譲るにはお願いが一つあるのさ、兄さん。…悪いがコイツを『マギー』と呼んでやってくれ。それだけだ』

 店主の妙な注文に黙って頷いたのも好感度を上げる原因だったのだろう。嘗ては『マギー』も、若い頃のこの店主と共に死線を潜り抜けたのかも知れない。
人は老いて行く。だが、道具は壊されない限り、磨耗しない限りその姿を保ち続ける。嘗(かつ)て最強を謳われた『人間の』突撃歩兵が持つ、同じく過去に
最強を謳われた遺物である『マギー』。運命とは皮肉なものだ。思考が展開されてはいるが、両手はハンドガンをアセンブルし終える。マガジンを叩き込み、
スライドを引いている。簡易通信デバイスのデジタル表示は22:32:35を示していた。…もう少し修練が必要だ。そう『イェーガー』が思い、拳銃を
もう一度分解しようとした時にドアがノックされた。弾薬は装填済み。何時でも撃てる。だがここは『マエストロ』の住処だ。紳士的に対応しなければなるまい
と『イェーガー』は判断した。すぐにハンドガンをホルスターに戻し、ロングコートを纏った。すぐにドアの正面に立たず、足音を立てずに蝶番側に回り込む。

 「誰か…居ないのか? 」
 「…何の用だ? まず名乗れ」
 「! 私だ…貴様が捕虜にしたキティ・アレン。なあ…? 入って…いいか? 」
 「鍵は掛けていない。入っていい。そのままドアを開けろ」

 最初に攻撃を仕掛けて来た時と比べ、随分と雰囲気が違って見えた。カッパーブロンドのショートヘアーにやや濃い色の眉、グリーンの猫を思わせる、目尻が
吊り気味の大きな眼はそのままだ。…黒のタンクトップに、隠された中身が見えそうな長さのデニムスカート姿は見かけ通りの歳相応の少女の印象を与えるのに
成功していた。アサルトベストとボディースーツを着ていないだけだが、仮にもこのキティは戦闘用ドロイドだ。武器を隠している恐れがある。『イェーガー』は
警戒しながら近づき、ボディチェックを開始する事にした。まずは右腕を取ろうと近寄ると、ハッと顔を背けたキティの目元が赤くなるのを確認する。

 「ちょっと待て。…オマエ、戦闘用ドロイド…だよな? 」
 「…ああ。自分でも戦闘用ドロイドのつもりなのだが…」
 「…何だぁ? まあいい、調べさせてもらうぞ」

 『イェーガー』はキティの言葉に引っ掛かるものを感じながら、相手の右腕を後ろに捩(ね)じ上げ壁に押し付け、武器を所持していないか、体を弄(まさぐ)った。
『イェーガー』の武骨な右手指が、可憐な少女の形をしたキティの身体の上を隈(くま)なく撫で回して行く。超微細震動ナイフ等の凶器を示す固さは無い。だが…
戦闘用ドロイドの反応にしては様子が限りなく『妙』だった。タンクトップの上からでも目視で判るほど、双乳の頂上を示す突起が…勃起していたのだ。それに何故か
呼吸も荒い。大体、呼吸の必要などさらさら無い戦闘用ドロイドが荒い息を吐くなど想像の外だ。荒い息と言うより…色気のある『熱い吐息』だ。ボディチェックを続ける。
次は下半身だ。大きく股を開かせる。顔に血液の凝集反応…興奮の朱が散っていた。『イェーガー』は大きな違和感が心に生じてくるのをようやく自覚した。何かが、違う。

 「んっ…あっ…はぁん…やぁだぁ…もっと…やさしくぅ…」
 「…上半身には武器は無い…無いんだが…! おい、オマエ! 『マエストロ』に何をされたんだ? 」 
 「知らない…知らない! カラダが、カラダが…おかしくなってくるっ…どうにか…どうにかしてくれっ…!」
 「!?」

 キティのデニムスカートを捲り上げた途端、『イェーガー』の目はその部分に釘付けになってしまった。戦闘用ドロイドには存在するはずが無いシロモノが存在していた。
ボディチェックの為に足を開かせていたため、その表面のぬめりが室内灯を反射し濡れ光っていた。妖しくも美しい、女性だけが持つ生命の生まれ出ずる門が、キティの
股間のスペース、恐らく何も存在しなかったであろう部分に穿たれていた。誘うように腰をグラインドさせるキティの腕とスカートを慌てて『イェーガー』は戻し、そのまま
ベッドへと座らせた。『イェーガー』は頭を強く振り、見たものを忘れようと努力する。表情が変わっても顔色が変わる事の無いはずの戦闘用ドロイドが、今では外見相応の
少女そのままの初々しい反応を見せていた。時折『イェーガー』の顔をチラッ、チラッと横目で盗み見て、手持ち無沙汰に両手の指を組み合わせたり、自分で自分を抱きしめ、
俯いてイヤイヤッ、として見せたりする。プログラムで指示・命令された反応では無い。急に感覚伝達器官が増えて戸惑っているだけだ。深呼吸を数回行い、『イェーガー』は
まず自分の本能を落ち着かせる。

 「…落ち着けるか? 」
 「だめだ…ミスフィード…。全然調整コマンドが効かない…」
 「ええとな…キティ。黙って自分のスカートの中身を見ろ。そしてその存在を理解し、受け入れ、納得しろ」
 「!! い、嫌だ…出来ない…怖いから…っ!!」
 「衝撃は確認出来たな? いいから落ち着け。俺の言ったことが理解できたなら実施しろ」 

 加減してキティの頬を張ってから、場違いにも、ぱんつぐらい穿かせてやればいいのに、とふと『イェーガー』は思ってしまう。『マエストロ』は意図的に席を外したのだ。
それからオートタイマーで覚醒させたキティの着替えのみを用意し、何も知識も与えずそのまま放って置いたのだろう。頭で理解させるよりもカラダで理解させた方が早い。
だがこうなる事を想像して…? そこまで考えた『イェーガー』の思考は唐突に中断を余儀なくされた。

 「い…嫌あああああああああああああああああっ! 何か、何かへんなのがついてるぅぅぅぅぅぅ?! 」
 「…やけに可愛い声を出すじゃ無いか、子猫ちゃん? そう、それが人間と一部ドロイドの女についてる器官さ。…おめでとう。赤飯炊くか? 」
 「こんなの…こんなのって…ひど…酷い…無断でこんなの取り付けるなんて…いくら捕虜だからって…こんなのっ…こんなのぉっ! 」
 「泣くな泣くな泣くなっ! …おーちーつーけったらっ! 俺がしばらく傍に居てやるから…落ち着け。いいな?」
 「わかった…やって…みる…」

 『イェーガー』はキティの隣に座り、ショートヘアをわしゃわしゃと大きな手で撫でてやる。『マエストロ』のこのキティに対する行為は純然たる好意から出たものだろう。
しかしキティは『戦闘用ドロイド』たる自分に誇りを抱いて必死になって存在して来たのだ。そんなドロイドに性器を強制装備させるのは言わば強姦、レイプに等しい行為だ。
元々組織・器官・関節・神経異常を痛覚で知らせるだけだった感覚器官が、これまで経験した事の無い感覚を、頭脳の情報処理中枢に絶え間無く伝えて来るのだろう。スレッド
処理が追いつかないだけなのだ。『イェーガ』は任務中に身体の一部を失い、一時的に感覚を遮断した部下のドロイドの例からそう判断していた。身体の修理が成って感覚を
『復活させた』時、同じ様に感覚の違和感から不安に襲われていたのを宥めた事を懐かしく思い出す。確かあの時は膝枕までねだられたな…。『イェーガー』はキティの頭を
撫でるのを止め、今度は背中を優しくさする。

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