「ともねえ…」
その瞬間…おれは…時が止まった様な錯覚を覚えていた。
あの頃と変わらぬ姿の『ともねえ』…。
整った柔らかな丸顔に、大きな蒼い瞳。
艶のある綺麗な赤毛。前髪は眉毛に軽く掛かるほど長く、両側は耳元まで軽く掛かるほど長い。
そして長い髪をきっちり二つに束ねて肩の先まで垂らし、髪留めには白いリボン。
昔、見慣れたエンジのブレザーとスカート…丸衿のワイシャツに更に赤いネクタイ。
整った顔立ちはとても愛らしくも、清楚で知的な印象があり、今見てもアイドルで通るだろう。
そう…ともねえ…そのものだ!

だが…。
その顔立ちが、今更ながら巴に実に良く似ていて…我に返った。
そうだ…これは『トモミ』だ!
ともねえじゃない!!

考えてみると…髪の色やアレンジ…瞳の色が違うだけで、随分印象が変わるものだ。
巴は明らかに、ともねえがモデルであり…このトモミと並べたら、きっと姉妹か母娘の様だろう。
それほど、改めて見るトモミの姿は巴に良く似ていた。

ふと、気付くと、ブレザーの両肩が何かがこすれたように僅かに千切れていた。
多分、バンとジェーンが撃った時の痕だろう。
倒れた様に見えたが、咄嗟にかわしたのに違いない。
…少しほっとすると共と同時に、トモミがほぼ無傷であるという事実は、おれが今、絶望的な
状況にある事を改めて示唆していた。
「…いや…トモミ…だったな」
おれは小銭をポケットに戻し、ちらとトモミの後ろを見た。
…他に誰もいないのか?それとも、下で待ち構えているのか?
トモミは暫し無言でおれを見つめていたが、僅かに小首を傾げ、ほんの微かに笑みを浮かべた。
「あなたの事は…記憶にあります」
「え?」
だが、トモミの顔からは、すぐに笑みが消え、無表情になった。
「昔…昔の朋さんの記憶に…」
「それはそうだろうさ。おまえは、ともねえの分身だったんだからな」
おれが皮肉っぽく言い放つと、トモミは、これまたほんの僅かにだが…悲しそうに…首を振った。
「それは…そうです。でも…わたしには」
「ともねえの姿をしていても…違う…そうだろ?」
「そうです…でも…彼女の記憶や経験は…持っているのです」
「……記憶や経験は…って言ったな?…なら、どうして巴を狙うんだ?巴だっておまえと同じだろう?」
トモミの様子が…思ったより控えめで、しかも…妙に好意的な事に気付いて、おれは訝った。
ここにいるのは…いわばラスボスだろう?
なのにどうして、おれを力づくで連れて行こうとしないんだ?
疑念が段々と大きな疑問に変わり、おれは少しずつ焦り始めた。
これはトモミの巧妙な罠では無いのか?上手く騙して巴を捕まえようとしているのではないか?
…だが、トモミの次の言葉には、思わず飛び上がりそうになった。
「狙っているのは…シンクロイド・システムであって…わたしではありません」

「ちょっと待て!…システムがどうして巴を狙うんだ?それにおまえの本当の目的は何なんだ?」
すると巴はそっと両手を胸にあて、静かに首を振った。
「シンクロイド・システムは…巴がわたしの精神状態を乱す物として捉え、封印するか、改造しようと
しています。…でも、わたしは違います」
「どう…違うって言うんだ?」
おれは少しずつ…トモミに対する警戒心が薄れていくのを感じていた。
明らかに敵意は感じない。
だが…信用するには、まだ早すぎる。
「わたしは…巴に会いたいのです…システムの一部としてで無く、同じひとの分身同士として」
「会って…どうするんだ…旧交でも温めるつもりかい?」
これまた皮肉混じりに言ったが、トモミは初めて満面に笑みを浮かべて、小首を傾げながら頷いた。
…これって…巴と同じリアクションじゃないか?
そしてトモミは目をつぶり、祈るようにおれに囁いた。
「わたしは…わたしの欠けているものを…巴に分けてもらいたいのです」
「…欠けている…もの?」
「はい」
「それは…何だ?」
「それは」
トモミは僅かにためらいながら…静かに、小さな声で言った。
「朋さんの…心…です」

暫くの沈黙があった。
おれの頭の中に、巴の言葉が蘇る。
<ただ…ともねえ…『朋』としての記憶は殆ど受け継がれなかったのですが、意識…心は
このわたしに遺されたのだと思います>
<じゃ…巴の心は…>
<たぶん…『朋』がベースになり、改めて巴として完成されたのだと思います>
「…それは…無理だろう」
おれの言葉に、トモミは目を見開き、どうして?という抗議混じりの表情を浮かべた。
「ともねえの心は…今は巴自身のものだ。ともねえの記憶が無くなって以後、巴自身が自分で
得たものであって…元のままではない」
「…それでも…それでも良いのです!!」
いつしか、トモミの声に悲痛なものが感じられ、おれは、何か胸をつかれる思いがした。
「それでも良いって…だってそれじゃ…君は巴と同じに…いや巴自身になるって意味だぞ?」
「そうです…わたしの望みは…それなのです!」
…トモミの言葉に、おれは暫く言葉を失った。
これが演技だとしたら…アカデミー賞…オスカーものだろう。
当然、そのまま信じられやしない…そう、言い切りたいところだか…。
気が付くと、トモミの蒼い瞳が僅かに潤んでいる事に気付いて、思わず吐息をついた。
「おいおい…泣くなよ。…って言うかさ…どうしてそんな事を言うのか、理解出来ないんだよ」
正直…先刻まで皮肉っぽい事を言っていたおれが、何だか意地悪しているような気がしてきて、
少しずつ…妙な罪悪感が心の奥底からこみ上げてきていた。

「だって、君は今、既にこうしてここにいるじゃないか。何故、今更…」
「わたしには朋さんの記憶や知識、経験はあります。…でも、朋さんとしての意識や人格といった
決定的な『心』の部分が無いのです」
「でも…君自身の…今の君の人格は…」
「わたしには…ご覧のように意識はありますが、生まれたての赤子と同じく、不完全なものしかありません。
…と言いますか…改めて目覚めて以来…この胸の奥底に、ぽっかりと穴が開いたような…常に寂しい思い
しか無いのです…」
「ぽっかりと空いた…穴だって?」
確かに…この時代のドロイドにしては、やや感情に乏しい気はしていたが…。
それでも…普通に会話する分には、支障なく感じられていたのだが。
トモミ本人にとっては…とても大事なものなのだろうか?
「記憶も経験もあります…でも、朋さんの心が無いと…それはただの知識でしかありません。何故、
そうしたのか、何故そう思い、感じたのか…それが『良く判らない』…理解できない。それが悲しく、
寂しく…そして、そして、それがとても辛くて…怖いのです」
「まてよ…それじゃ…ここが判ったのも」
「はい…過去の記憶から…殆ど無意識に判りました。」
「…そうか…そうだったのか…」
おれはこの『隠れ場所』を、何故トモミが見つけたのか、改めて理解できた。
ここは、ともねえに教え、こっそり、一緒に遊びに来たこともある場所だった。
だから、おれが逃げ込んだ時、トモミだけが迷わず追ってこられたのだろう。
だが、それと同時に、トモミにとっては、まるでそれらは『本能』のようなものでしか無く、ただの
知識としてしか理解できない、不思議で異質な事象でしか無いのに違いない。
それはおそらく…ともねえ自身が、かつて封印し、テロリストたちも、シンクロイド・システムも、
それが不要であると判断して元へ戻さなかった『ともねえの自意識』や『心』であり、トモミは、
それを取り戻したい…そう言っているのだ。
…なまじ、ともねえの記憶や知識、経験を持っている為に…巴とは反対に、自分の心に
自信が持てず…自分が不完全なもの…という思いに、常に苦悩していたのに違いない。
「わかったよ」
おれは頷き、小さく苦笑した。
「…おれから巴に頼んでみるよ」
え?という顔で、潤んだ瞳のままトモミはじっとおれを見つめ、それから、おずおずと口を開いた。
「本当…ですか?」
「ああ…ただし、巴が自分の心は、自分のものだ…とか言い張ったら、その時は、オムニ社の
技術者に頼んで、ともねえが施した封印の解析待ちになるが…」
途端に、ぱあっと明るい表情になり、トモミはおれの両手を取ってぎゅっと握り締め、それから
自分の胸に押し当てた。
「ありがとうございます!」
トモミがきらきらと瞳を輝かせながら、おれを見つめ、なおも握った両手を自分の胸に押し当てる。
や、柔らかな感触…巴ほどじゃないが、程良く張りのある弾力と柔らかさに、思わずどきっとした。
ち、ちょっと待て…ティーンの女の子の姿で、それはマズかないか?
…けれどトモミはそのまま、おれの手を頬ずりし、静かに目を閉じた。
「わたしは朋さんでは無いですけど…懐かしい…思いがします」
ごめん…おれは今…とても邪な想像をしていた。
おれは自分を恥ずかしく思った。

「それにしても…これからどうしたものかな…」
トモミがそっと手を離すと、おれはちらと窓の外を見、腕組みした。
「それに…さっきの娘たちはどうしたんだ?」
「わたしが…向こうで見かけた…と、システムに伝えたので、大通りに向かっています」
「嘘を教えたのか…」
「偽電は…情報戦では良くあることです」
そう淡々と答えるトモミに、おれは少し空恐ろしいものを感じたが、感情に乏しいのだから仕方ない。
「巴たちは…見つかったのか?」
やはり巴たちの事が気になる。
「…どうなんだ?…シンクロイド・システムは把握しているのか?…教えてくれ!」
思わず、少し強い調子で問い詰めて、トモミを見据え、組んでいた両手を解いた。
トモミの蒼眼がじっとおれを見つめ、それからそっと首を振った。
「いいえ、大丈夫…まだです」
トモミはそう言いながら少し横を向き、それから何を思ったか、ちらちらとおれを上目遣いで見た。
「やはり…心配ですか?」
「当たり前だ…巴はおれにとって…」
「貴方にとって…何ですか?」
「え?」
トモミが問い質す様な聞き返し方をしてきたので、おれは少々面食らった。
大体…トモミは、昔の、ともねえの姿や声のままである。
ともねえ一筋で来たおれに…この質問は正直酷だし、しかもトモミには…事によると全く理解し難いかも
しれないが…ともねえの記憶は…理屈どおりなら、総て残っている筈だ。
そうなると…おれがともねえに…幼い頃とはいえ…愛の告白などした事を覚えている事になる。
それが…両方とも分身とは言え、おれにとっては巴が総てだ…と、決めたばかりなのだ。
う…これは厳しい。
だが…巴とは既に…何度も…その…愛し合った身…やはり、彼女を裏切る訳にはいかない!!
だけどなあ…。
トモミが…ラスボスか…という予想に反して全然悪意が無い…どころか、何だか不憫になってきて。
この上、トドメを刺すような事は…本当は言いたく無いのも本音だ。
「教えてください…」
上目遣いに見つめる仕草が、何だか哀願するように見えて、本当に困ってしまった。
だが…ケジメをつけるのも…男だ。仕方が無い…。
おれは溜息をつき、そして一度目を閉じて深呼吸してから、一気に言った。
「今…一番大切な…存在だ」
目を開けると、案の定…落胆した様子のトモミの顔が見え、罪悪感で切なくなったが…悲しいかな…
出会った順番が悪かった。
ごめん…ともねえ…。ごめんよ…トモミ!

…トモミは、小さく吐息をついた。
ドロイドには、本来必要の無い行為だが、ここ十年来のAIは、人間の行為と同じく、感情に合わせて
全く同じように再現出来るようになっている。
つまり…それだけガッカリしている現れなのだが…。
ふと…おれの顔を見上げると、何を思ったか、そっとおれに身を寄せてきた。
「トモミ?」
意図を測りかねて聞き返すが、それには答えず、トモミはいきなりおれの背中に両手を廻して、
おれの胸に顔を埋めてきた…。
「ちょ…おい…何するんだ!?」
引き離そうとするが…トモミの腕は、まるで万力か…超合金の拘束具の様な力で、おれの身体に
しっかり…ぎっちりと巻きついたまま離れない。
…幸い、締め上げてはいないので、苦しくは無いのだが…これでは…身動きできない!
「おい…悪い冗談はよせ!離せ…離れろ!」
巴の顔がおれを見上げる。
上目遣いで…ちょっと悲しげで…申し訳無さそうな…そして切なそうな…。
蒼く濃く澄んだ瞳がうるうると滲んでいる。
…うわぁ…そんな顔で見ないでくれぇ!
大体…その顔…巴とそっくりじゃないか!!
あ…い…いかん…巴を思い出したら…しかも…この柔らかな感触は…。
やべ…いかん…こんな所で…勃起しかかってやがる。
全く…おれの身体ときたら…この節操なしめ!!
「やめろ!おれは巴一筋なんだ!!」
アパートの中のフロアだと言う事も一瞬忘れて、おれは叫んでいた。
「離せ!トモミ…正気を取り戻せ!!」
「確かに…わたし…寂しさのあまり…どうかしているのかも知れません。でも…どうか今だけでも
こうしていてはくれませんか?」
もしかすると、トモミの記憶の中で、特に印象の強い存在の一人がおれなのかも知れない。
だから失われた『心』を、埋め合わせたいと思っているのかもしれないが…しかし。
「き…気持ちは判らないでもないけど…おれは巴だけと決めてるんだ…許してくれ!」
だが、トモミの次の言葉に…おれの理性は飛びそうになった。
「…でしたら…わたしも…『巴』になります!!」

トモミは両手を離して、素早く髪を解き始めた、
しめた…離れた…と思った途端、いきなり当身を食らわされ、後ろのソファに倒されてしまった。
いや…決して乱暴にでは無いのだが…まるで柔道か合気道の師範の様な巧みさで…。
両手が塞がっているのに…なんて器用な奴だ…って…それどころじゃない!!
トモミの髪がストレートに下ろされ、そのままおれを見下ろすや…間髪入れず、ソファから下ろした、
おれの膝の上に跨り、そのまま両脚の間隔を狭めて身動きを封じたではないか。
「や…やめろ〜!」
何とか立ち上がって跳ね除けようとしたが…逆に両手をトモミの両手で押さえつけられてしまい、
これでは昆虫か蛙の標本状態だ…。
「そんなに…わたしがお嫌ですか?」
トモミがうるうると瞳を潤ませて、おれにその可愛らしい顔を近づけ、そして小首を傾げて訊ねる。
「違う!…ともかく巴が先だと」
ふいに両手が離され、トモミが上体を起こした。
はっと気が付くと、長い髪を器用に、丁寧にひとつに束ねて、後頭部のやや上できゅっと絞っている。
そして…トモミが両手を下ろした時…ふぁさっと長いポニーテールが脇にこぼれ…。
そこには…赤毛でやや童顔な『巴』の姿があった。
そして、切り揃えられた前髪の下の瞳を輝かせてにこっと笑った。
…あ〜…こんなの反則だ…馬鹿野郎…こん畜生!
い…いかん!今度こそ…げ…限界だ!!
ともねえと…巴がひとつになったような…こんな…
おれの理想の姿では…テも無くイっちまいそうだ!
思わず目を閉じ、横を向こうとしたが、優しく…だが少しずつ顔を正面に向けられてしまった。
そして、少しだけ腰を浮かせた巴はスカートの中に右手を入れ、ごそごそと何か始めた。
スカートが僅かにめくれ、ちらちらと純白の布がずらされていくのが見える。
…ほ…本気だ…。
なおもブリッジの体勢で逃れようとしたが…そのままトモミは改めて膝の上に跨り直し、今度はズボンの
ベルトを苦も無く外して、そのままファスナーに手をかけた。
そこはもうギンギンにテンぱって、大きく膨らんでおり、触れた瞬間、トモミは一瞬驚きに目を丸くし、
それからすっと目を細めて、まるで獲物を前にしたネコのように小さく舌なめずりした。
こ、こんなリアクション…嘘だろう!?

清楚で可愛らしい顔立ちなだけに、まるで何かに取り憑かれた様なその姿は、愛らしくも淫靡だった。
両手で必死に抵抗するが…トモミの白魚の様な美しい両手は、その外観に反して物凄い力で、おれの
抵抗などものともせず…ファスナーをひき下ろし、ズボンまで下ろし、そのままブリーフの上から、
おれの大きく勃起したモノに手を触れ、それからそ〜っとつまみ上げた。
「く…よ…よせ…トモミ」
ちょんと摘んでは、あは…と小さく嬉しそうに微笑むトモミ。
そしてそっとブリーフの腰ゴムを掴むと、ゆっくりと引き剥がしていった。
その途端、ブリーフで抑えつけられていた、おれの肉棒はピンと勢い良く弾けながら屹立した。
「あん…」
トモミが無邪気に、満面の笑みを浮かべてそれをじっと見つめる。
…結局、全然抵抗できなかった。
トモミが、位置を整えるべく、時折り腰を浮かせているのに…である。
そしてトモミは、おれの膝に跨ったまま、おれの…隆々と勃起したモノを暫しじっと見つめ続けた。
血管まで浮き出し、先端からからじわりとカウパー腺液が滲み出し…びくびくと弾け掛けている。
「とっても大きい…」
まるで視姦されているようで…恥ずかしいのだが、トモミの視線が妖しい可愛らしさでたまらない。
おれには本来そういう趣味は無いし、情けないことに…股間廻りを完全に丸出しにされているのに、
トモミに見つめられて、もう爆発寸前に膨れ上がっているのだ。
とろんとした…僅かに恍惚とした…熱い瞳で、肉棒からおれに視線を向けるトモミ。
やめろ〜!ともねえの…巴の顔で…そんな…そんな淫靡な表情をしないでくれ!!
…だけど…その表情が、おれ一人に向けられたものだと思うと…可愛くて愛おしくて…たまらない!
「うふ…」
トモミが手に口をあて、愛くるしく、くすっと笑った。
「…とっても嬉しいです…こんなわたしに…こんなに、こんなに大きく弾けて……感じてくださって…」
そう囁くや、腰を浮かし、スカートの前裾を浮かして…おれの逸物の上に静かに…跨っていった。
おれのモノが…美少女のスカートの中で、まるで別な淫靡な生き物に吸い込まれ食べられて行く様な、
妖しい錯覚を覚えて、背筋から腰にかけてぞくっとする快感が走り抜けた。
温かく…そしてねっとりと湿った生き物の中に、飲み込まれ、優しく口の中で咀嚼されるような感触で、
それでいてきっちり…包み込むように…温かく、じんわりした甘美な感触で締め上げられ、うねうねと
淫らに、おれの反応に合わせて、刺激を加えるようにくねらせながら、おれの理性を狂わせていく…。
いつしかトモミは胸をはだけさせ、意外と大きな乳房をぽろんと取り出して、おれの両手をあてがい、
恍惚とした表情で「あん…」と、可愛らしく声をあげた。
赤く長いポニーテールが左右に垂れて激しく揺れ、大きな胸の谷間に赤いネクタイが下りている。
そして次第にトモミ自身が腰を使って、ゆっさゆっさとピストン運動を行い、時おり激しく声を上げた。
さらに動きは上下、前後左右に…と、微妙なグラインドをかけ、その都度おれのモノは亀頭や竿を
優しく嬲られ、愛撫され…心地よく締め上げられ…もうギンギンに怒張しきっていた。

「あん…まだ……駄目…ですぅ」
そう言うや、トモミの唇がおれの唇と重なり、小振りな舌が伸びておれの口の中に入り込んできた。
そしておれの舌に絡ませると、さらに口腔の中を貪るようにねっとりと舌を這わせ、おれの唾液を
からめとると、こくん…と、小さく咽喉で音を立ててそれを飲み干した。
そしてうっとりした顔でおれの胸に顔を埋めると、きゅっとおれのモノを締め上げ、再び動き始めた。
今度は再び身を起こし、おれの股間の上で、膣から子宮の奥深くまで肉棒を突き刺して…。
おれのモノがすっぽりトモミの中に入りきり…まるで少女を串刺しにして激しく攻めている様な錯覚を
覚え…おれの頭は……それでも…何とか…理性を…取り戻そうとしたが…。
トモミの優しい締め上げ方は巧みで、かつ異様に濃密で、その甘美なテクニックに段々朦朧としてきた。
しかも、それと同時に、時おり見せる切なそうな、あどけなく清楚な少女の面立ちが一層そそられるのだ。
ぼんやりとした頭の中、次第に、心地よい快楽がじわじわとこみあがる。
大好きだったともねえと、最愛の巴が、ひとつになり、トモミの姿になって降臨し、今おれと交わっている。
優しくも激しく、まるで貪るようにおれの上で乱れ、甘く切ない声を上げ続ける愛らしい少女の姿が、
ともねえになり、巴になり、そしてトモミに重なる。
「とも…と…とも…」
三人の誰を呼ぼうとしていたのか判らない。
トモミがゆっさゆっさと腰を優しく激しくグラインドさせる度に、時おりのけぞり、切なげに声を上げる姿が
たまらなく愛おしく…。
手を伸ばし、トモミの果実を思わせる張りのある乳房に両の手を掛け、半ば無意識に揉み上げ、そして
サクランボを思わせる乳首を摘み上げた途端…。
「ひゃん!」という嬌声と共にトモミが一段とビクンと弾け、おれはその仕草に、ついに耐え切れずに
異様に大きく感じる肉棒の先端から、この上も無く熱くて濃くて、どろりとしたマグマを噴き出させ、
少女の子宮の奥まで一杯に流し込まれ、それが果てしなく吸い込まれて行く様に感じた。
ああ…トモミの中は…熱くて…柔らかで…ほど良くしとっていて…何て気持ち良いのだろう。
理性を失ったアタマの片隅で、そんな言葉が走る。
「う…」
思わず声を立て、腰を引きそうになったが…トモミは逆におれの両手を胸からそっと離すや、自分から
しがみつき、無意識のうちに、おれはトモミを抱きしめる姿勢になっていた。
「もう一度…もう一度だけ…シて…ください」
おれの胸に顔を埋めたトモミの声が悲しげに震えている。
「それで…終わりで構いません…」
そう言いながら…きゅっとおれのモノをそっと締め上げ、萎えかけていたのに、再び力を取り戻していく。
ああ…また込み上げてきた…何ていう…テクニシャンなんだ…。
駄目だ…このままじゃ…また。
そう、ぼんやりと思った時…トモミは哀願するように言った。
「どうか…最後のおねがいです…ぼっちゃま…」
え!?
その言葉に、おれの頭は…瞬時にして理性を取り戻した。
「おまえ…今…」
顔を上げたトモミは悲しげに微笑む。
どういうことなんだ?
ぼっちゃま…って呼ぶのは…巴だけじゃないか?
ともねえだって…おれをそうは呼ばなかったし…。

…おれは…一瞬、逡巡した。
だが…その面持ちに、悲しい決意の様なものを感じて…受け入れてやることにした。
巴…ごめん!
謝って許される事じゃ無いと思うけど…おれは…トモミに、もうひとりのおまえの姿を見た。
とても切なく…愛おしくなってしまった。
これが最後だと言うのなら…これは…おれの意思で…。
「わかったよ…これっきりだからね…」
おれは…精一杯の優しさをこめて、トモミをの頬に手をあて、そして優しく唇を重ねた。
その瞬間…悲しげだが、それでも精一杯の笑顔を浮かべ、トモミはゆっくりと目をつぶった…。

…行為が終わり…持っていた、ありったけのティッシュで余韻の後始末をし、
少々ためらったが…丸めて共同ゴミ箱に捨てて、二人並んで洗面台で手を洗った。
住人さん…ラブホテル代わりにして本当にごめんなさい!
それに…幼い頃の聖地をこういう形で汚してしまうなんて…。
その事実を改めて実感するとちょっと凹んだが…
トモミが…穏やかで、満足そうな笑みを浮かべている事に気付いて…良しとする事にした。
あのままじゃ…確かに悲しげで…可哀想だったしな。

改めて二人並んでベンチに腰掛け、窓の外の夜空を見た。
すっかり星空で、時計を見ると21時を廻っていた。

暫くの沈黙の後、おれは思い切って口を開いた。
「君は…これからどうするつもりだ?」
行為が終わってから…初めておれは本題に入った。
「シンクロイド・システムのブレインである以上、おれたちの敵になるわけだろう?」
「わたし個人としては、あなたに敵対する意思も理由もありません」
トモミは目をつぶり、それから左手をこめかみにあてた。
「ただ…システムは、今はわたしの上位に立ち、かつ必要不可欠な存在としていて、常にわたしに
アクセスしています」
「それじゃ…さっきまでの…あの行為は…」
トモミは眼を開き、くすっと笑って首を振った。
「いいえ。あれはわたしと…あなただけの秘密です」
ほっとすると共に、初めに会った時に比べて、トモミがごく自然に笑う様になっている事に
気付いてちょっと驚いた。
…恋はひとを成長させる…って…そりゃ違うよな。
でも…ごく自然に女の子らしく話せているような気がしてならない。

「でも、だからこそ、巴を狙っているのです」
トモミは、そう言いながら、僅かに不思議そうにおれの顔を見ながら何度もまばたきした。
…おっとっと…今は関係ない。
「もしかして、君が巴とリンクすると…シンクロイド・システムが不要になるから…かい?」
「そうです。そうなると、わたしの知識も記憶も、総て使えなくなるのです」
「では…君が…リンク・システムのエリアから出れば済むのではないのかい?」
少なくとも巴はシステムの探知の届かない所にいて成功している。
だが、トモミは首を振った。
「わたしとのアクセスが途絶えた途端…シンクロイド・システムは、今現在コントロールしている
総てのドロイドたちのAIのデータを破壊して…道連れにします」
「おい…何だって?…それじゃ…人質じゃないか?」
おれの言葉に、トモミは沈痛な面持ちで頷き、再び眼を閉じた。
「シンクロイド・システムを奪ったテロリストたちが…そう仕掛けたのです」
「道連れ自爆…か。いかにもテロリストらしいな」
「はい…でも、もうひとりのわたし…巴が、わたしとリンク出来れば、シンクロイド・システムの
存在が不要になり、活動停止のコマンドを送る事ができます」
「つまり…ともねえの代わりに『シンクロイド・システムの上位者』として、巴が君と直接アクセス
出来れば、システムは存在意義を失くし…総てを切り離されるわけだな」
「そうです」
トモミは眼を開き、おれの方に向き直った。
「巴には、朋さんの意識や『心』が残っています。正確には、巴も分身ではあるのですが、本来、
シンクロイド・システムは『心』を写し、リンクするもの…だからオリジナルの『心』を持つ巴にしか
出来ない事なのです」
「しかし…それでこの騒ぎは収まるのか?」
「それは大丈夫です」
トモミは揺ぎ無い自信に満ちた視線でおれに答えた。
「元々は、人とドロイドを繋ぐ為の物…それが開発の過程で違う使い方が出たに過ぎず、本来の
上位命令権はこちらにあるのですから」
「でなければ…あんなに躍起になって巴を追い回すわけは無い…か」
そう言ってから、おれはふっと苦笑した。 
「巴は君が呼びかけているもの…と思っているけどね」
「それは」
トモミは困惑気味に首を振った。
「仕方が無いと思います。…システムがわたしに偽装してメッセージを送っているのですから」
「おれも…君にこうして会うまでは…とても信じられなかった」
「では…今は?」
トモミがじっとおれの眼を見つめる。
「信じるよ…君自身は無実だってね」
おれを見つめる蒼い瞳が僅かに細められ、トモミはにっこり笑った。
ああ…穏やかで安心した…とても良い笑顔だ。

「しかし…一体…なんでこんな事になっちまったんだろうな?」
おれは…この事件についての最大の疑問を口にしていた。

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