その日、学校から帰宅途中の和美の胸は、今までにない程の鼓動で揺らされていた。
「お…女の子に…あたしのお腹に、あんなのが入ってるなんて…」
 学校の性教育の授業で初めて見た、男女の性器。保険の先生が、腰〜太股の人体模型を使って
 丁寧に説明してくれた。最初は一部の男子生徒が先生をからかっていたが、先生が説明を進めて
 いく内に、皆真剣に聞き入るようになっていた。性器の外観、構造、そして子供の作り方。
”へぇ、男の子のおちんちんってあんな風になってるんだ”
”あれが大きくなるなんて信じられない
”しかもあれ、あたし達の股間に入るんだって…嫌だわぁ”
 友達全員が男性器の話題で持ち切りになっていたとき、和美は配布された解説書に目を奪われていた。
(わたしの股間に…こんなものが入ってる…)
 それは、女性器の図解だった。股を開いて正面から見た図、そして断面図。和美はその形状の
 複雑さ、そして神秘的な機能の事で頭が一杯になっていたのだ。自分の身体の下腹をそっと撫で
 ながら、子宮の模式図をじっと見つめる。”胎児のゆりかご”という、精巧なシステムが自分の
 中にもあると思うと、彼女の背筋がぞくっとした。
 (家に帰ったら…確かめてみよう)
 学校から帰宅した彼女はそのまま自室に駆け込み、ドアの鍵をしめた。
「ふぅ…」
 溜め息をついた和美は鞄を椅子に置き、ベッドの端に座り込む。
「…」
 深呼吸を数回繰り返し、心を落ち着かせてから立ち上がると、スカートの裾をめくりあげた。
 そのままパンツのサイドに手をかけてスルリと脱ぎ捨て、手鏡を片手に床へ座る。
「私の…」
 合わせていた膝をゆっくりと開き、手鏡で自らの股間を映し出してみた。
「…よく見得えないや」
 膝の開き方が中途半端だったせいか、太股の間に走る縦スジが鏡に映し出されているだけだ。
 割れ目の中央付近には何かが詰まっているように見えるが、小さ過ぎて確認が出来ない。
「図解だとあんなに中身がよく見えてたのに…」

 鏡を持っていない方の手を割れ目にかけようとしたが、その手が途中でぴたりと止まる。
(…本当にあんなのが…あたしのお腹に入ってるのかしら)
 二枚の扉を目の前にして、彼女の心にはある種の恐怖心が芽生え始めていた。
「…そうだ…春海ならきっと…」
 彼女の頭に、一人のメイドの姿が浮かび上がった。メイドロボの彼女なら、私の疑念にきっと
 答えてくれる筈だ。そう思った瞬間、ドアをノックする音が和美を現実へ引き戻した。
「和美様? どうかされましたか?」
 あわててパンツを履き直す和美。
「な、なんでもないの!」
 服装を素早く整え、ドアの鍵を開ける。少し間をおいて、ドアの向こうから黒髪の少女が
 顔を覗かせた。
「御返事が聞こえるまで、初回のノックから1分12秒を要しています。体調に何か異常が…」
「大丈夫よ、うん」
「お顔の色に変調が見られます。通常時と比較すると、赤味成分が23.87%増加していますが」
「あ…その…ほら、今日は走って帰ってきたから、体温が上がっちゃったのよ、きっと」
「…確かに心拍数も平常時より高い傾向が見られます」
「汗もかいたし…そうだ! お風呂! お風呂に入りたいな」
「入浴には少々時間が早いかと思われますが」
「汗かきっぱなしだと、気分が悪いわ」
「…申し訳ありません、ただいますぐに準備を」
「ちょっと待って!」
 踵を返し、立ち去ろうとした春海の肩を掴む和美。
「なんでございましょう?」
「…わたしの背中、流してくれないかな」
「お湯の温度はこれぐらいでよろしいでしょうか」
「うん、熱過ぎず温過ぎず…丁度いいわ」
「ありがとうございます」
 和美の身体を流しながら頭を軽く下げ、笑みを浮かべる春海。試作品の塊である彼女には、それまでの
 ロボットにはない様々な技術が用いられていた。

 大宮電工株式会社会長、大宮 重太郎。人間の肌触りだけでなく、関節駆動に人工筋肉を用いた
 汎用アンドロイドが大ヒットしたおかげで、今や納税額ベスト100の頂点を極める男に成り上がった。
 彼画が発案した製品の中でも特に売れたのが、一般家庭向けメイドロボだ。人間に圧迫感を感じさせない
 サイズ、柔軟な動作。そして最新のソフトウェア技術を駆使した、当時の同型ロボットと比較しても群を抜いた
 コミュニケーション能力。それらの最新試作パーツのテストベッドとなっていたのが、大宮家のメイドを
 勤める”春海”だった。
「笑顔、すごく自然になったわね。なんだか本当に嬉しそう」
「そう見えますか? お母様が先日試作された、表情の遷移ロジックが功を奏していると思われます」
「お母さん、笑顔には本当にこだわってるものね」
「わたしも和美様にお褒め頂いて、嬉しく思います…もっと和美様のお役に立ちたいです」
「ふふふ…」
 数ヶ月前から春海のAIには、”欲望”がプログラミングされていた。単純な受け答えだけではなく、
 自らの欲求に従って動作し、知識を手に入れ、自身の思考ルーチンを構築していく。単純な受け答えから
 行われる学習ではAIが成長する方向性が限られてしまう…しかし、自分の欲望を満たすという”禁断の
 リンゴ”を得た彼女は、無限の可能性を得たのだ。
「なぜ笑うのですか? 私は何かおかしなことを申しましたか…教えてください、和美様」
 作られたばかりの頃と比べると、彼女の挙動はかなり人間らしくなってきているが、こちらが意味深な事を
 少しでも見せた途端に教えを乞うてくる。その様は言葉を覚えた手の子供のようであり、悪い気分はしなかったが。
「ねぇ、春海」
 湯船につかり、身体を洗っている(これも春海が和美に教えて欲しいと懇願したことだ)春海に
 話しかけた。
「いかがされましたか?」
 シャワーで身体の泡を洗い流しながら春海が答える。
「ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな」
「和美様がおっしゃられることなら、なんでも」
「じゃあ…そのまま立ち上がって」
「こうですか」
 シャワーのお湯をとめ、中途半端に泡が身体に残った状態で春海が立ち上がった。
「そうそう。次は…こっちに歩いてきて」
「かしこまりました」
 湯船の前まで春海が歩を進める。
「ん…そこで止まって」
 和美の言う通り、春海は湯船の前で立ち止まった。丁度和美の視線の先に、春海の股間が位置する状態だ。
「そこでじっとしてて…泡が邪魔だわ…」
 股間にこんもりと付着していた泡に、和美が手で湯をかけて洗い流した。そして泡の切れ目から、先程和美が
 鏡で見た割れ目がその姿を現す…筈だったのだ。
「嘘…」
 あるべきものがない。少なくとも和美の中では、春海の股間にも自分と同じものがついている筈だった。
 しかし今和美の目の前にあるのはつるりとした肌のみである。股を閉じている状態なので、ほんの少しであるが
 割れ目のようなものが出来ていた。
「春海、股を開いて!」
「こう、ですか?」
 肩幅より少し広い程度に足を開く春海。股間の割れ目は消え失せているが、和美は春海の股間を何度も何度も
 凝視し、指で触れ、擦った。

「どうされたのですか、一体…」
「一体も何もないわよ! なんで…なんでないのよ!」
「おっしゃられている意味がわかりません」
 和美は湯船から勢いよく立ち上がり、春海と同じように股を開いた。左手で大陰唇を開き、右手でそれを
 指さして叫んだ。
「これよ!」
「それは女性器ですが、それがどうかされたのですか」
 自室で己の身体に感じた恐怖は、既に微塵もなかった。春海の、自分についてないのは当たり前だと言わん
 ばかりの口調に、和美の頭の中で何かが切れた。
「どうかされたのって…なぜあたしにはついてて、春海にはついてないの!?」
「それは、和美様は人間であり、私が人間ではないからです」
「違う…違うの! あたしが言いたいのはそんなことじゃないの!」
 疑いようのない事実。春海はアンドロイドで、和美は人間だ。両親からも常々聞かされていたことだし、
 今更それを否定するつもりはない。
「アンドロイドだからって…身体はあたしと同じで…なのに付いてないのって…」
「申し訳ありません、何故和美様が怒られているのか…わたくしには理解不能です」
「嫌だ…やだよ! そんなの…」
 和美はふらふらと後ずさり、湯船の淵にへたりこんだ。彼女にとって春海は、少なくともアンドロイド以上の
 存在だったのだ…つい先程までは。
「和美様…」
 その想いが、想いを寄せていた本人に否定された。

 『春海は人間ではない』

 言葉尻だけを捉えていた事実が、和美の心に大きくのしかかり始めていた。

「和美様」
 春海の視線が、和美の股間で止まっていた。和美は大股を開いたまま湯船に座り込んでいたので、彼女の
 秘所が何にも邪魔される事なく、春海の光学センサーの有機樹脂フィルタに映り込んでいる。
「これ…は…?」
 春海は湯船の際へしゃがみ、放心状態で座り込んでいる和美の股間を覗き込む。本来なら和美を慰める
 べきであったが、この時の春海は女性器に対する興味の優先度が勝っていたのだ。
「似ていますが…違う…」
 それを全く知らない訳ではなかった。データベースには女性器の構造や説明が収められており、春海はそれらの
 データと、光学センサに捉えている実物を事細かに比較しているのだ。画像とは違うあざやかなピンク色の
 体組織、別の生物のように蠢く小陰唇と膣口。そこからはバルトリン腺液がわずかに零れ、湯によるものとは
 明らかに違う輝きを放っている。今まで未使用だった欲望が、彼女のAIを突き動かした。

(知りたい。人間の女性器の全てを。)

 次の瞬間、春海の手は和美の股間へと伸び、その指先が和美の秘部に添えられる。
「ん…んん」
 突然下半身から伝わってきた未知の感触に反応し、和美の身体は大きく痙攣した。
「あっ!!」
 和美の表情が歪み、腰が引ける。
「も、申し訳有りません!」
 春海が慌てて手を引っ込める…が、その手首と掴まれた。春海が驚いた表情を浮かべ、和美の顔を見上げる。
「…待って」
「和美…様?」
「もっと見て…触ってよ…同じものがあなたにもある筈なのよ…だって、春海…あなたは…あたし…の…っ!」

 和美の言葉は、そこで途切れた。彼女の身体が大きくのけ反り、振り乱された髪がばらりと後ろに垂れる。春海の
 指先が、和美の割れ目をそっと撫で上げていた。
「…ぁあんっ!」
 風呂に響く、淫靡な喘ぎ。春海の聴覚センサがその声を余す事なく捉え、AIに伝える。
「和美様…」
「ん…ぁ…もっと近くで…見て…」
 春海は立ち上がり、言われるままに和美へ近づいていく。湯船に入って再びしゃがみこむと、風呂場の照明を
 てらてらと反射している大陰唇が春海を待ちかまえていた。
「…これが…人間の…」
 両手を添えて陰唇の隙間へ指を差し込み。そのまま左右に開くと小陰唇が顔を出した。その上部に陰核であろう
 組織を包み込んでいる鞘が見えている。
「んっ…くっ…!」
 春海が指を動かす度、和美は股間から容赦なく押し寄せる快感に脳を揺らされていた。下半身、特に下腹部から
 しみ出るような熱さが広がり始めている。
「女性の殆どがクリトリス包茎と言われておりますが…」
 和美の陰核は、微妙に鞘からその頭を覗かせていた。春海は小陰唇を片手で器用に開き、もう一方の手で陰核を
 覆っている鞘をつまむ。
「包茎って…あぁん! んぁ゛っ!!」
 親指と人さし指で鞘をつまみ、エンドウ豆を出すようにしごく。プリプリと陰核が振れるのに合わせ、和美が
 悲鳴にも似た喘ぎ声を上げる。
「んっ! うあ゛っ! ひぃ!」
 春海にとって、全てが新鮮な情報だった。人間とはこのような反応を示すのか…彼女のAIは今や、その殆どの
 タスクが欲望によって動かされている。そうこうしている内に、陰核がその姿を現してきた。春海は黙ったまま、
 陰核に顔を近づける。
「春…海…」
 涙を流しながら、和美は春海の顔を見た。自分の秘部を見つめるその姿を見た途端、彼女の欲望もついに堰を切った
 かのごとく溢れ始める。
「欲しい…欲しいよぉ…春海ぃ…」
「和美様…」
「あなたの口で…私を…」
「…かしこまりました」
 春海は僅かにうなずき、一瞬の間をおいてから和美の蜜壺へ接吻を交した


(続く)

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