日曜日の夜、青島家。
「はぅん……あふぅ……」
「あんっ!ひゃんっ!」
「ヒロくん……もっと、やさしくしてぇ……あふっ!」
瑞希の部屋から切ない喘ぎが響く。

「もおっ!お姉ちゃん!黙っててよ!集中できないよ」
「だ、だってぇ……」

瑞希はベッドの上で、腹部メンテナンスハッチを開けて喘いでいた。
数日前、瑞希用のバッテリーパックが研究所より届いた。
本来、前回メンテで交換するものだったが、手配が間に合わなかったので
弘樹に交換してもらえ、と父からの手紙付きで。

そんな訳で、予備電源を繋いだ上で姉のなかをドライバーでいじくりまわしていた弘樹だったが。
確かになれない手つきで、バッテリー以外のパーツもいじってしまったとは思うが、
ちょっと声をあげすぎじゃないだろうか。
しかも……そんな、切ない声で。

しかし、瑞希にしてみれば無理もない。
バッテリー取り付け部の裏側は、ちょうど人造子宮と膣のパーツ。
ちょっと手がずれる度に、それらにバッテリーの角が当たるのだ。
好きな男の子に、そんなところをいじられる、そう思うと
興奮の抑えようがない瑞希だった。

「あぅぅんっ!ひぁんっ!」
「もうっ!お姉ちゃん!」
「……くすん」

「終わったよ、お姉ちゃん。……大丈夫?」
「だ、大丈夫……バッテリーは……ひぁああ……も、もうおしまい?」
瑞希にとって、至福の時間が終わる。
「何言ってるの……。ほんとに大丈夫?再起動したほうがいい?」
「う、ううん……今日は……このままで……いいよ。フリーズしても家だし大丈夫だよ。はぁ……はぁ……」
「そう……。無理しないでね」
立ち上がりかけた弘樹だが、心配そうな顔で瑞希の横に座り直す。
「ねえ……お姉ちゃん」
「ん?なに」
「お姉ちゃん……最近、やっぱり調子悪いように思うんだけど。
本当に、どっか壊れてない?お父さんにオーバーホールしてもらうように頼んでおこうか」
不安げな顔で瑞希を見つめる。
「あは。大丈夫だよ。ヒロくん。お姉ちゃんはそんなポンコツじゃないぞ?
丈夫で長持ち、パワーもある、スーパーロボットだぞ」
「そ、そういう事言ってるんじゃなくて!ねえ、ちゃんと考えてよぉ。僕、お姉ちゃん壊れちゃったら
やだよ……。僕で出来ることならなんでもするからさぁ……」

弘樹は小柄で、ともすれば小学生に間違われそうな体格だが、可愛らしい顔と引っ込み思案なところが
母性本能を刺激するのか、女子には密かに人気がある。
瑞希のものが母性本能なのかは疑問の余地があるだろうが、弘樹の泣きそうな顔はとにもかくにも
彼女のAIを刺激しまくっていた。

『あああああっ!ヒロくぅん!かわいいよおおお!ほんとに何でもしてくれるのかなあ!』
しかし、真剣に心配してくれる弟に向かって「実は私のCPUはエロ妄想で溢れてしまって、
いまにも壊れちゃいそうです。
ですのでいっぱいえっちなことをしてください」などと言えるわけがない。
さすがにそれくらいの羞恥心は持っていた。

でも。こう、間接的なイベントならなんとかならないだろうかと考える。
ちょうど……見たくて仕方ないものがあるのだが。

「本当に……なんでも?」
「うん。何かあるの?」
「えっと……えっとね」
赤くなってもじもじと、上目遣いで話しかける。
可愛らしい仕草に弘樹の心拍数も上がっていく。
「な、何?」
「うん……えっと。えっと……」

「じゃあ。一緒にお風呂入ってくれる?」

ぶううっ!
弘樹は盛大に吹き出していた。
「な、なんで吹き出すのよぉ!」
「も、もう!からかってばっかりで!知らない!」
「あ、あああっ!からかってなんかないよぉ。本気……じゃなくてえ、ま、まってえ!」
バタンッ!
叩きつけるように扉を閉めて出ていく弘樹。
「ち……だめかぁ、でもいいもん。手は打ってあるもん。ふんっ!」

いけないこと、を覚えた瑞希は数日に一度は自慰行為をするようになっていた。
最初は弘樹の画像を見ながらしていたが、すぐに物足りなくなった。
そこで「素材開発」を始めていた。
手順
・まずはネットで男性ヌード画像を収集。
・できるだけたくましいのを選択。
・弘樹の顔画像と重ね合わせてできあがり。

……平たく言えばコラ画像である。
できあがった当初は見るだけでイきかけたくらいの衝撃だったが、
ひとたび体格の差にきがつくと、すぐに物足りなくなった。

と、言う状態で今、彼女は弘樹の裸が見たくて見たくてたまらない。

そこで話はその日の明け方にさかのぼる。
青島家のバスルーム。脱衣場。
「ここらへんかな?もうちょっと……こっちかな」
もぞもぞと瑞希が小さなPC用カメラを設置していた。
「試してみよ……」
自分の無線ネットワークを通じて、カメラをデバイスとして接続する。
「ん……お。見える見える」
視界の隅のウィンドウに自分自身が映る。意識をそちらに向けるとレンズが動いて、
視界も上下する。
「よしよし。これでOKっと!えへ」

何のことはない。弟の盗撮準備である。いや、直接見るのだから覗きか。

「さってと……起動っ!」
視界にウィンドウが開き、風呂場が移る。
「よしよしっ!あとは……おおおっ!きたぁああ!」
ため息をつきながら、弘樹が入ってくる。
「さあはやくっ!はやく脱いじゃってっ!」
ベッドの上で、一人で悶える瑞希。
端から見ていると、すっかり気の毒な人になっているが当人は真剣だ。
「ちょ、ちょっとお!なんで後ろむいちゃうのよぉ!」
セーターを脱いている間、弘樹は反対側を向いていた。
「こっち、こっちむいてよお!……あっ!」
上半身裸の弘樹がカメラの方を向く。あばらが出るほどではないが、薄い胸板、白い肌が幼い魅力を
倍増させている。
「うぁああああっ!かわいい、かわいいよぉ!ひろくぅん!きゃぁっ!」
真っ赤になってベッドを転げ回る瑞希。

「い、いけない……次が重要じゃないの……」
集中して弘樹の挙動を見守る。
「さ、さあ……」
しかし、ズボンに手をかけると、弘樹はまた反対を向く。
「えええええっ!な、なんでぇえ!こっち、こっちむいてよおお!」
その声が届いたのか、ズボンとパンツを脱いでから……ゆっくりと脱衣篭に手を伸ばすと、
正面がカメラの方を向く。いよいよ……、と思ったが。
「か、か、篭がじゃまあああ!」
肝心の場所がまるでモザイクがかかったようにちょうど見えない。
「そんなああ!もうちょっとなのにいい!」
いやいやをすると、連動するようにカメラが左右を向く。

その時。
手が滑ったのか靴下を落とした弘樹が篭をおいてカメラの方に踏み出す。

必然、丸見えになった。

「……う、うわああああああ!お、お、おっきいぃ!!」
弘樹の「モノ」は巨根といってさしつかえない大きさだった。
瑞希が集めた画像と比較しても、見劣りしない。
毛は薄かったが、身長とのアンバランスさが大きさを、より以上に見せている。
「ひ、ひ、ヒロくんっ!いやぁん!すごっ!」
真っ赤になって両手で顔を覆うが、視界のウィンドウが消えるわけもなく、
ますます弘樹のヌードが目に入る。
「あ、ああああん!らめぇ!こ、こんなおっきいのいれたらお姉ちゃん、壊れちゃうよぉ!」
いやいやをしながら叫ぶ。
まだ勃起もしていないのにあの大きさなら……。
「ど、ど、どんなにおっきくなっちゃうのかなああ!?かちかちなのかなあ!?
……うわぁああ!さすが私のひろくんだぁあ!お姉ちゃん、うれしいよぉお!やんっ!」

ますます赤くなって、ベッドを揺らしてさらに転げ回る瑞希。

そんなことは知らない弘樹は、すぐに風呂場に入って視界から消えていった。

瑞希のCPUは「あれをいれたとき」の想像でフル回転していた。
「や、や、やぁんん!あふううう!」
体をのけぞらし、びく、びくと震える。
「だ、だめえ!ヒロくんっ!あはぁ!そ、そんな一気にいれたらぁ!あふんっ!」」
胸の中から、外からも聞こえるような作動音が響き、同時に服に二つの突起が浮かび上がる。
服の乳首への締め付けが、快楽信号を呼び、股間から潤滑液があふれ出す。
「だ、だ、だめぇええ!あふんっ!ひぁっ!?」
もうこうなれば止まらない。バッテリー交換だけでも高まっていた性欲が爆発する。
「あんっ!あああっ!ヒロくんっ!あはぁああ!あ、あ、あああっ!」
股間をまさぐり、服の上から乳首をつまんで悶え続ける。
「ヒロくん、ヒロくん!ふぁああっ!いいよぉ!」
うぃん、うぃん、という作動音が胸から響き、豊かな乳房が上下する。
手を当てているだけでも、その度に快楽信号が胸の回路から流れ込んでくる。
股間の割れ目に手を伸ばし、指を乱暴に突っ込んでかき回す。
「ふぁああ!ヒロくんっ!もっと、もっとぉ!」

限界が近くなったその時、シャワーを浴び終わった弘樹が脱衣場に戻る。
暖まったせいか、先ほどよりも一回り大きくなったものをぶらげて。
当然、瑞希の視界にもそれが映る。
「うぁあああああああっ!?ひ、ひっ!ひろっろっろっろろろろろくんっ!うわぁああああ!!」
センサーからの刺激ではないが、その興奮が快楽中枢回路にトドメを刺し、瑞希は絶頂への
会談を一気に駆け上っていった。
「ふぁあああっ!?だめぇ!だめっ!い、いっちゃうう!ふぁあああああん!ひろくぅんっ……!」
ホワイトアウト。


「だめだあ……やっぱ、お姉ちゃん……ポンコツだよお……ひっく……」
さすがにやりすぎだったと思ったのか、瑞希はすっかり自己嫌悪に陥っていた。
「ごめん、ごめんね……。でも、我慢できなかったんだもん……」
ベッドにこもって独り言を続ける。
「で、でも……もう一回……あ、あれ?」
先ほどの映像を再生しようとして、それが出来ないことに気がつく。
「あああ!カメラは外部デバイスだから……録画モードにしないと記録されないんだっ!
さ、さっきの……あああ、キャッシュにものこってないよお……。ぜ、全部パー……」
こうなると、瑞希は明確な映像の記憶を再生することは出来ない。
人間のようなおぼろげな記憶、整理された情報の断片のみだ。
はっきりしているのは、「とってもおおきかった」こと。

「うぁあああああんっ!!も、も、もったいないいい!」
かちゃ、と音がして寝間着を着た弘樹がドアの端から顔を覗かせる。
「お、お姉ちゃん……さっきのこと、気にしてるの。ごめんね。別に……怒ってるわけじゃないから」
「ひろくぅん……ひっく……あ。来ちゃだめっ!」
ベッドの下は先ほどの行為でびしょびしょ。そんなのは見られたくない。
「……」
悲しそうな顔をして弘樹が去っていく。
「あ。ち、違う、ちがうよお!ヒロくんっ!ごめん、ごめんなさいいいい!うぁあああんっ!」

何に謝っているのか、何が悲しいのかもう解らない瑞希だった。