事件があってからの数日後の青島家。
ならんでソファに座り、テレビを見る二人。
なんとなくつけていた映画だったが。
今までなら普通に見ていたベッドシーンで何とも言えない雰囲気が漂っていた。

「……」
「……」
お互い意識しているのは明白だったがどうにも間が持たない。
瑞希もここまできたらはっきりすれば良さそうなものだが、まだ「貴方のことを考えると、
壊れちゃいそうなので、セクサロイド機能をつかいまくってください」とは言えないらしい。

「え、えと……今日は、お姉ちゃんもう寝るね」
「あ、そ、そう……。お休み」
「うん。お休み」
あ。と気がついたような顔で瑞希がもじもじとする。
「ん、どうしたの」
「えっと……えっとね。ヒロくん、お休みのキス、とかだめかな……」
恥ずかしそうに、でも大きな期待を込めて小さな声で呟く。
「……い、いいよ」
「え?ほんとっ!やったぁ!」
満面の笑みで目を閉じて、そっと顔を近づける。

ちゅ。

「……えー。ほっぺなの。ヒロくんのいじわる」
「お、お、おやすみっ!」

純情な弟は赤くなって逃げるように去っていく。
「あ……もうっ!」
とはいえ。瑞希の方も十分興奮していた。
(やったぁ!!)
飛び上がりたい気分を抑えて、満面の笑みを浮かべていると胸のなかからうぃん、と小さな
音がしてくる。
「あ……、い、いそがなきゃ……」

瑞希はいそいそと自分の布団に潜り込む。
瑞希のベッドには、非接触式の充電器が内蔵されている。
ケーブルによる充電も可能だが、通常はこちらでスリープモードに入って充電を行う。

が、しばらく前からは、ベッドに入ってからまずは乙女のお楽しみタイムだった。
それにこの興奮を活かさない手はない。
勃起した乳首に手を触れると、電撃のような刺激が回路を流れる。
「ん……っ!」
始めた頃はこれだけでもかなり満足だったが、どんどんと瑞希の行為はエスカレート
する一方だった。
特に弘樹との工事現場の一件。
いくらなんでも強烈すぎた。
あれからは普通に胸や股間をまさぐるだけでは全然物足りなくなっていた。

弘樹に抱かれていることを想像しているだけで、股間は濡れ、乳房が張りつめる。
「ひろくぅん……あけて……」
そう呟くと、瑞希は右の乳首をつまみ、くりくりと回していく。
同時に片手で、へその中に指を突っ込み、同じように指を回す。
スイッチとして機能させた時でも、乳首から伝わる快楽信号は止めようがない。
その刺激は瑞希のAIを直撃する。
「あ……ぅ……。んっ!」
かちり、と小さな音が二つ同時にすると、瑞希の右乳房と、腹がウィィン、という音と
共に開いていく。
「ひろくん……だめだよ……そんなとこいじっちゃぁ……」
弘樹の姿を思い浮かべながら、胸の中のセンサーをつん、と指で突っつく。
「あぅぁっ!あふぅ!」
続いて、腹の中のバッテリーを少しずらして女性器ユニットに刺激を与える。
「うぁああ!きもちいいよぉ!もっとぉ!」
胸と腹の回路から覗くLEDが数回点滅すると、どくどくと股間から熱い潤滑液が
吹き出してくる。
「う……ぁあ……とまんないよぉ……すごいい……。あは、ヒロくんのえっち……」

ひろくん、ひろくん、と小さく呟きながら左胸を揉み、股間に指を入れる。
「あ……あっ!すごっ!いっちゃいそぉ!あふんっ!」
体をのけぞらせ、横になってびくん、びくんと大きく体をのけぞらせる。

が、その時。
大きく跳ねた足がベッドの角に当たり、半身がベッドからはみだす。
「……う、わぁっ!!」
充電装置を内蔵していることもあって、瑞希のベッドはかなり高い位置にある。
そこから転げ落ちた瑞希の体が、うつぶせのような形で床に強くたたきつけられた。
運の悪いことに、上半身から落ちる形となり、開いた乳房が床にあたり、無理な方向に
力が掛かってしまう。

ばき。ぷち。バチッ!!

乳房の接合部パーツが折れ、配線が切れて火花が飛ぶ。

「……う、ぁああああああっ!!ZA、ZA、PIiiiiiii!!!」

火花が飛ぶ度、めちゃくちゃな快楽信号がAIを焼き、
体が跳ねる。
「PIGYAっ!GYAGYA、GAGAGAGAGA!!」
音声回路がエラーをおこし、叫びが意味不明のノイズとなる。
「……う、ぁあああ!ひぁんっ!ひぎいいいいい!!!だめえええっ」
ぷしゅ、ぷしゅと股間から、火花に合わせて噴水のように潤滑液が吹きあがる。
視界はブロックノイズで埋まり、真っ赤なエラー表示が点滅する。


工事現場では恐怖よりも弘樹を救いたいという想いが強かった。
だが、今は壊れてしまうことが怖かった。
弘樹ともう会えない。話せない。抱きしめられない。
そう思うと、耐えきれない恐怖が襲ってくる。
「ひろくぅん!ひろくぅん!たすけてええ!GYA!GA、PIIIIIII!!
こわれるっ、こわれちゃうよおおお!たすけてっ!」


『おねえちゃん!おねえちゃん!どうしたの!』
鍵のかかった扉を弘樹がドンドンと叩いている。
「ひぎっ!ぎ、いゃああああ!GIGIGIGIG!!!」
ぱちぱちと胸から音がする度、暴走した快楽信号がAIを焼いていく。
たすけて、またそう叫ぼうとした時に自分の姿に気がついた。
こんな姿を最愛の弟に見られたくはない。
「い、や……こ、こないでぇ!きちゃ、だめええ!ひぎっ!
ああああっ!pi−っっ!!」
異常信号はどんどん激しくなる。
『お……ちゃ……!」
音が聞こえなくなってくる。視界も狭まっていく。
壊れる。壊れてしまう。
「い……やぁ……」
意識がとぎれそうになるその時、視界の角に弘樹の顔が映る。
必死に何かを叫んでいる。
ひろくん。
そう呟いたつもりで手を伸ばそうとした瞬間。
瑞希は機能停止した。

意識が生まれる。
私はだれ?
私はメイドロボット試作型MFT−X0024B。
所有者は青島弘樹。
彼が私のマスター。
私は青島瑞希。
私は……。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
うっすらと目を開けると、眼を腫らした弟が泣き叫んでいた。
「お姉ちゃん!僕のことわかる!?お姉ちゃん!」
「ひろ……くん」
「お姉ちゃん!よかった!AIも、メモリも無事なんだね!」
「うん。大丈夫……だと思う。ちょっとまってね……自己診断ルーチンを……」
そこまで言ったときに右胸の状況に気がついた。
乳房が取り外されて、センサー類がむき出しになっているが、壊れた端子やケーブルは
きれいに取り外されている。道理で異常信号が止まっているはずだ。
「ご、ごめんね。応急処置だけど、あのままじゃまずかったから」
「ううん。ありがと。助かった。さすがだね」
「……」
赤くなってもじもじと、縮こまる弘樹。
うふ、と小さく困ったように瑞希が微笑む。
ああ。
もう駄目。
覚悟、完了。
きゅいん、と胸の機構がうずく。

「ヒロくん。お姉ちゃん……何してたかわかる?」
「……え。わ、わかんないよ」
「おねえちゃん……ヒロくんのこと考えて。ひとりでえっちしてたの」
「あ……あ……」
「ちょっと前からフリーズがふえたのってね。お姉ちゃん……えっちなことできるように……。
セクサロイド機能がついてからなんだ。前から。ずっと前から。ヒロくんの事すきだったの。
それで体がこうなったら……。あはは。我慢できなくなっちゃった」
そこまで言うと瑞希は、こちらがフリーズしたような弟にゆっくりとすり寄っていく。

「ね。もう。お姉ちゃん限界だよ……。ヒロくんとえっちしないと……壊れちゃうよぉ……。
おねがい。いっぱい。いっぱい私のセクサロイド機能つかって。お願い」
「お、お、おね、おねえ……ちゃ……」

真っ赤になって震えながら、弘樹の服が一枚ずつ脱がされていく。
ブラウス。
シャツ。
ズボン。
そして。
大きな山を作った下着。

「ごめんね。こんなかっこで……」
「う、ううん……。
ベッドに横になった弘樹を見ているだけでセクサロイドモードが起動してしまう。
胸のパネルの中、「SEXROID MODE」の文字が点滅する。
我慢できず、弘樹のペニスを下着の上からそっと一撫で。
「……く、ふぅん」
まるで少女のような、悩ましい声を弘樹があげる。
「可愛いよぉ……」
そう呟くと同時に、ぴ、ぴ、と胸から音がしてパネルが点滅し、うぃん、と左の乳房から音がして
乳首が尖ってくる。
(やだぁ……。何考えてるのか丸見えだよ……)

しかし。
「お、おね、えちゃぁんっ!」
弘樹の方も我慢の限界だった。
上体を起こすと、いままで抑えてきた感情をぶつけるように、左の乳房に
むしゃぶりつく。
「ひゃんっ!ひ、ひろ、くぅんっ!くはぁあっ!」
悶える声と共にむき出しの回路から、小さなビープ音が連続して鳴る。
それと共に画面が点滅し、快楽信号グラフが激しく増減する。
「お姉ちゃんっ!おねえちゃぁん!」
乱暴に乳首を舌で転がし、甘かみし、吸い付く。
さらに、両手で乳房を激しく揉みしだく。
テクニックもなにもない乱暴な攻めではあるが、瑞希は快楽信号の波に
押しつぶされそうになっていった。
何より、愛する弟が欲望を持って愛撫している。
それだけでもフリーズしてしまいそうな幸せ。
それに加えてこの状態では長く耐えられるものではなかった。

「ひゃんっ!ひゃぁああん!ひ、ひろくぅんっ!ふぇえええっ!?」
左胸からモーター音がとぎれなく響き、乳房が張りつめる。
「おねえちゃん……。すごい。おっぱい、大きくなってるみたいだよ……」
「ふぇっ!?ふぇええええっ!」

弘樹はまだ気がついていないが、メンテハッチがオープンになったこの状態では、
左の乳首は、以前と同じく操作スイッチとして機能していた。
しかも現状、瑞希はセクサロイドモード。
弘樹が甘かみし、乳首を攻める度に快楽信号の増幅量が変化していく。
「だめ、だめぇええ!ひろくんっ!スイッチ、すいっち、だめぇええ!……あああああああっー!!」
舌を絡ませると、少しだけ乳首が回転。それと同時に一気に増幅された乳房からの快楽信号が
瑞希を絶頂まで一気にもっていく。
「ふぁああああああっ……!!」

ばたり、と仰向けに瑞希が倒れ込む。
ぴ、ぴ、ぴ、と小さな音が胸から漏れ、激しくLEDが点滅している。
肩で息をしながら苦しそうな微笑みを弘樹に向ける。
「す、すごいぃ……。おねえちゃん、おっぱいだけでいっちゃったよぉ……。ひろくん、すごいなぁ……」
「そ、そんな……おねえちゃんこそ……すごかったよぉ……。ごめんね、乱暴にしちゃったみたいで」
ばつが悪そうに、赤くなる弘樹。
「うふ、いいんだよ。もっと……もっとしよ。……あ」
どうにも決まりが悪そうな弘樹の様子。
そっか。ヒロくんも……。
「ね。ヒロくん。……いれたい?」
「え。え、え……」
「ごめんね。お姉ちゃんばっかり気持ちよくなっちゃって。
フェラとかでもいいんだけど……。ヒロくんとの初めてのは、
お姉ちゃん……お腹に欲しいの……」
「……あ、あ」
「多分、人間の女の子よりずっときもちいいと思うんだ。
最高級品だよ?それに、私もお腹の中のセンサー……
ヒロくんのがかかると……すっごい信号が来るはずなんだ」
「そ、そ、そう……なの……?」
「ヒロくん……だいすき。おねがい、いれて」

そそりたつ、弘樹自身。
パンツをやさしく脱がせてそれを露わにする。
「う……わぁああ……」
ぴぴぴぴぴぴ。
胸の回路からビープ音が鳴り、一気に興奮度が上がる。
危ない。
いきなり見ただけで、またイってしまいそうになった。
「お、おっきいなぁあ……。ひろくん。すてきだよぉ……」
甘い声で囁くが、真っ赤になった弘樹は何も聞こえていない様子だった。
瑞希の方もまずい。
股間からの潤滑液が止まらなくなっているのが感じられる。
胸の中の点滅も激しくなっている。
見ているだけでも達するのはそう遠くないように思えた。
いや、それどころかフリーズしてしまいかねない。

「ヒロくん……じゃあ……いれるね」
こくん、と頷くのを確認。
騎乗位になって、ペニスを自分の入り口に添える。
「うあ……あああ……」
弘樹が小さなうめきをあげる。
粘膜がすりあう、その感覚だけでペニスがぴくぴくと震えている。
「あふんっ!あぅっ!」
当然、相応の快感は瑞希も感じている。
まずい。このまま二人ともイってしまったら、せっかくの初体験が台無しだ。
急がないと。
「ヒロくんっ……いくよぉ!」
一気に、腰を沈めて挿入。

「うぁあああああ!、お、おね、おねええちゃぁあああん!!」
「…………!!!っっ!」
セクサロイドとして最高級クラスの逸品である、瑞希の膣はペニスに絡みつくように、
それ自体が震えるように、「攻撃」を仕掛けてくる。
童貞少年に耐えられるような代物ではない。
弘樹は気が遠くなるような快楽に襲われていた。

一方の瑞希当人も状況は変わらない。
いや、それ以上だったかもしれない。
当然だが、瑞希は「処女」である。
こんな奥まで自分の指で刺激したことはない。
加えて、弘樹は並外れた巨根。
さらに先ほどの「スイッチ操作」でセンサーの感度があがっている。
声をあげることすらかなわず、時折ぴ、が、がとノイズをあげながらフリーズしたかの
ように身動きしない。
ただ、激しく点滅する胸の回路と、乱れる性感グラフが瑞希の快感を示していた。

しかし、その状態は十秒もつづかなかった。
渾身の力を込めて、弘樹が腰を一往復。
それが限界だった。
先端が瑞希の人造子宮奥を貫く。
「……!!!っ」
ぴぴぴぴぴぴ。ぴーっ!!
「……っっっっ!!!」
嬌声の代わりにビープ音が響き、胸の回路が点滅する。
がくがくと瑞希の体が震え、ペニスの締め付けが強くなり、バキュームが始まる。
それはもはや弘樹が、いや、普通の男性が耐えられる限界をとっくに超えていた。
「う、あああああっっ!おねえちゃぁあんっ!」
どくん。
一気に、人造子宮内が精液で満たされていく。
「ぁ、ぁああああ……!」
フリーズ寸前の快楽。自慰とは比べ物にならない快楽と幸福感が瑞希を包んでいた。

「はぁ……はぁ……」
「はぁ……ぴ……ぴが……」
繋がったままの二人の喘ぎ声、そして瑞希のノイズが部屋に響く。
ようやく回路の熱が収まってきて、話せそうになる。
ヒロくん、すごかったよ。微笑んでそう言おうとしたときに、弘樹の様子がおかしいのに気がついた。
「ひ……ひん……おねえちゃん……ごめん、ごめんね……」
小さなすすり泣き。
「ど、どうしたの!ヒロくん!痛かったの!?ま、まさかお姉ちゃんの中、どっか変な所でもあったの!?
故障しちゃってるとか、へんなバリとかついてたとか?そ、そんなことないと思うんだけどっ!」
「違う……お姉ちゃんの中……すごかった……。すごく、きもちよかったよぉ……。
でも……こんな早く出しちゃって……。ごめんね……。お姉ちゃんもイけなかったよね……。
ひっく……。ぼくだけ……ぼくだけ……」
なぁんだ。
大丈夫、お姉ちゃんもいっぱいイっちゃったよ。
そう言おうと思ったが、イタズラ心と姉としての見栄が頭をもたげてくる。
「……そう、だね。ちょっと早かったなあ。うふ。ま、許してあげる。でもこれからいっぱい練習して、
いっぱい抱いてね」
冗談のつもりだった、が言われた方はそうは思わなかった。
「……ご、ごめん!ごめんね!せ、せめて……もう一回……。いま出したから、
もうちょっと持つと思うんだ!」
「え……?ちょ、ちょ、ヒロく……ふぁあああああっ!!」
若さの証か、次の瞬間から弘樹のペニスが膨らみ始め、
すぐに先ほどと変わらぬ大きさと固さに達する。

「だ、だめっ!ひ、ひろくぅんっ!やんっ!」
「お姉ちゃんっ!おねえちゃぁんっ!」
勢いだけに任せて、激しく腰を振る弘樹。
二度も達してセンサーが鋭敏になり、、まだ回路の熱も収まりきっていない瑞希にとって、
この負荷は致命的だった。
「やんっ!だめっ!だめええ!きもちよすぎるう!おかしいっ!かいろがぁ!おかしいよぉ!?」
エラー音が胸から響き、パネルが激しく点滅する。
ぴが、がががががっ!きゅぴっ!
「だ、だめ、ざざざっ!、らめええ!」
音声回路がエラーをおこし、言葉にノイズが入る。
それらが目に入らないのか、弘樹は一心不乱に攻め続けていく。
「やぁああああ!ひぎぃいい!GI、gi、がきゅっ!ふぇええええっ!?
お、おねえちゃん!おねえちゃん、こわれるっ!こわれちゃうよぉおお!」
弘樹が動く度に達するような感覚が走り抜ける。
左胸が唸りを上げ、限界まで乳首がそそり立っていく。
その光景にさらに欲望がそそられるのか、ペニスがさらに固くなる。
「お、おねえちゃん……おっぱい……すごい……」
震える手が乳首に伸びる。
「あっ……ら、らめぇっ!ひっ!すひっちはぁ……らめぇっ!!」
クリッ。
快楽信号、増幅度、最大設定。
「ひぎいいいいいいっっ!! こわれるっ!こわれるうううう!? 
ふ、ふぇええええっ!?!きもちよす、GI!Zapiっ!!いっちゃうよぉおお!!」
再度、精液が人造子宮を満たした瞬間、胸の回路から火花が上がる。
「こ、ここ、こわれっ!こわれるぅううっ!ひ、ぎいいいいいいっ!!が、が、きゅぴっ!
ひろ、くぅん……っ!PI、GAーっっ!!」
がくがくと体を揺らしながら、四肢が不自然に振動する。
女性器ユニットの奥から、再度入力される熱い精液の感覚が、胸の回路にトドメを刺す。
一瞬、大きく体が跳ね、大きな火花が胸から上がる。
「ぴきゅっ!?ひ、ろ、くぅ……すごぃ……ぴ……が……」
直後、がっくりとうなだれて二、三度ぴくぴくと肩を震わせ、それっきりぴくりとも動かなくなる。
「……はぁ……はぁ……!?お、おねえちゃん!?おねえちゃぁああんっ!」

瑞希の機能は停止した。

「……おねえちゃんっ!おねえちゃん、大丈夫?」
再起動シーケンスの中、弘樹の顔で視界がいっぱいになる。
先ほどと同じだ。
違うのは……。
「あ……。あ……。ヒロくん……。……PI……あ。だめ……。お姉ちゃん、感覚系の
コントロールが壊れちゃった、みたい……」
性感帯は全滅の模様。それ以外の触覚センサーからもエラーがいくつか返ってきている。
「そ、そんなぁ……。ごめんなさい……。お姉ちゃん……」
「あは。いいのいいの。ヒロくん早かったとか嘘ついたバチだよ。ホントは最初ので完全に
いっちゃってたんだよ。ヒロくん、すごかったよぉ……きもち、よかったぁあ……がぴっ!」
音声にノイズが混じる。
「お姉ちゃん!」
「あちゃー。こりゃオーバーホールかなあ……。ま、右胸がこんなんだし……。
しばらく学校もお休みだね。……ヒロくん。浮気とかしたら承知しないからね?」
「し、しないよっ!そんなの!」
「ホントかなあ……。そのおっきなので、もう女の子泣かせてたりとか……」
そこまで言ったときに、弘樹の方が涙ぐむ。
「わぁああっ!嘘嘘っ!ヒロくん大好きっ!だから、ね……」
優しく、弘樹の唇を奪う。
唇の触覚センサーも機能していないはずだったが、何故か瑞希には
それが感じられるような気がしていた。

一週間後。青島家。
瑞希はインフルエンザで倒れたことになっていた。
うつるから、という理由をつけて見舞いも全て断っていた。
で。
今日がオーバーホールの完了予定日。

夕方、まっすぐ帰宅した弘樹はそわそわしながら待っている。
やっぱり、あの姉のことだからいきなり求めてくるんじゃないかな……。
答えてやるべきか、それともちょっとは焦らせるべきか……。
そんな事を妄想していると、かちゃ、と玄関の方から音がする。
「おねえちゃん?」
立ち上がった瞬間。扉がばたんと開く。
「ひーろーくーんっ!!」
弘樹の胸にダイブ。
マウントポジション。
いそいそと自分の胸をさらして、弘樹のベルトを外す。
気のせいか、また胸が大きくなっているような。
「ひろくうんっ!一週間、一週間、ひとりえっちもできなかったんだよっ!
ストレスで壊れちゃうかと思ったよっ!」
「お、おねえ、ちゃぁん……」
選択権なんかないですか、そうですか。
もはやあきらめたほうが早いようだ。
「ひろくん、ひろくんっ!でね。すごい、すごいよ!新機能つけてもらったんだよっ!
すぐ試したくてっ!」
言うが早いが、弘樹の頭を抱えて乳首を無理矢理口に咥えさせる。
「いっくよー!それっ!」
すぐに、ほんのりと甘い液体がじわりと噴き出してくる。
「すごいでしょ!おねえちゃん、おっぱい出るようになったんだよ!」
「ふむむっ!むぅううっ!」
息が、息が出来ない。
「えへへ!これでまたいろいろできるねっ!あ。胸の中もちょっと複雑になったからね。
ちゃんとその辺、メンテもよろしくっ!……ちょっといじってみる?……ほらほらぁ!
こっちが乳液タンクでぇ……。これが制御回路。全部性感帯としても機能するから、
メンテの時はしっかりいじって……じゃなくて注意して……って、あれ?ヒロくん、ヒロくん……?
し、しっかりしてぇえ!ひろくぅぅん!」

前途多難な二人に幸あれ。

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