振翼機(オーニソプター)かぁ
高強度軽量素材は確かに必須だなぁ、けど軟質素材を捨てないで実現できないかなぁ
まぁ、人形ロボットが鳥形ロボットになるだけの話か…
推進燃料は不要になる分動力燃料が洒落にならない、となると追加されたジェネレータが…

などとブツブツ余所様のプランを検討していると、何やら重々しい音をゴロゴロと響かせながらウチのロボ娘がやってきた。
黒光する巨大な鋼鉄の筒、その他モロモロのパーツを目の前でテキパキと組み立て始めると…
「あの?ロボ娘さん?それは?」
「あ、マスター♪どぉです!わたし的飛行ユニットプランですよぉ♪」
…組みあがった世間一般では大砲と呼ばれるに足る外観のシロモノの前で、ドヤ顔で胸を張るロボ娘…
あぁ、そうだった、ウチの娘のAIは「ちょっと残念」クラスなんだ。
「飛行ユニットを内臓、もしくは外付けであってもそれごと飛ぼうとするから難しいんです!と、ゆーわけで据え置き型飛行ユニット『キャノンくん』です!」
「加農「砲」ってわかってんじゃねぇかっ!やめなさいっ!絶対に壊れますっ!」
「だいじょーぶですよぉ♪きちんと耐用限界計算済みで火薬量調整しましたからぁ」
「しかも火薬式かよっ!それにそれだと「飛んで」ねぇから!」
「滑空するだけのグライダーだって広義の飛行機に含まれるじゃないですか、似たよぉなもんですぅ♪」
言いつつ砲口の中にその身を踊りこませるロボ娘。
理屈を捏ねて正当性を主張する事でマスターの命令をパスするってアリなの?助けてアシモフ!
今からおっかけて引きずり出そうにも、覗き込んだ途端にドカンときたらそれこそオレの命がより高い天へ昇ってしまう。
「…OKOKもうわかった、弾道計算くらいはしたんだろう?着地予定地点をおれのノーパソに送っといてくれな…」
バラバラになった愛しいロボ娘を回収に行く、その未来図で鬱色に染まる胸から諦観のカタマリを溜息に乗せて吐き出した所で…
「へ?弾道けいさ…」
(ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン)
後半はかき消されて聞こえなかったが、どうやらオレの予想の上を行く残念なAIだったらしい。
あっという間に黒い点になって消えていく愛娘、その「方角」にPCに映し出した地図にザッと線を引くと、オレは回収の為に車を出した。

「イヤァ、シッパイシッパイ、チャクチノコトカンガエテナカッタデスヨォ♪」
「うるさい、だまれ、つうかソコじゃねぇだろ問題は」
耐用限界計算もどこへやら、案の定バラバラだったロボ娘の声がPCから響く。
ありがたい事に中枢ユニットの頑健さだけは折り紙付きだ、でなければもう10回以上コイツは「死んで」いる事になる。
「ケドチョットダケキモチヨカッタデスヨ〜ツギハマスタートイッショニトベルプランヲ…」
「却下だ…」
オレがその内の1回にも含まれていないのは…幸運と呼べるのだろう。
人が個人で空を得るにはまだまだ危険が過ぎるのかもしれない。
それは人と同じ動作を求められたロボットにも同じで…
「つまりは、オレが安全に飛べる装置が出来るまで空中デートはお預けってこった」
「フェ?エエエエエ!?デート!イヤソンナワタシハ…」
ディスプレイの中のロボ娘の「アバター」が顔を真っ赤にしてモジモジした。
このドジで可愛いロボ娘にまた新しい身体を作らなければ、そんな思いが胸に浮かぶ…
と、何故だろう諦観と同時に漏れたのは溜息ではなく微笑みだった。

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